ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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『小泉家の長男~スクールアイドルは政治を変える...かもしれない~』でお馴染みの真姫神rambleさんです。花陽ちゃんのお兄さんがいれば…という設定で、最愛の妹である花陽はじめ八人の女神に面白可笑しく振り回されています…By企画主催者


黒き翼―比翼の鳥―

 

―――――わたし...おにいさんのおよめさんになるんだから!

―――――おーう待ってる待ってる~

―――――むぅー!しんじてないわね!?ぜーったいわたしの"とりこ"にしてやるんだから!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

全くもってヒトの未来は読めないな、それもとりわけ女の子のは。子供の時から変わらない子もいれば、成長した姿を見たら「....誰ですか?」と聞きたくなるような変化というか変身する子だっている。俺にも幼馴染――と言っていいのか分からんくらい歳は離れているが――がいるが、彼女は後者だ。

 

小学校くらいまでは俺の後ろをついてくるような可愛いやつだったんだが、中学に上がってしばらく見なくなったと思ったら...怪電波を拾ったのかほんのり中二病を患ってた。あの時はマジで焦った...。

 

 

「おーい!おにーさーん!!」

「話をしていたら湧いて出ておってからに...諸悪の根源」

「ちょ、だれが諸悪の根源よ!ヨハネは何もしてないわ!」

 

 

今でてきたのが話題の少女、津島善子だ。病気に罹った末に自分の呼称が「ヨハネ」になってしまった(外見は)文句なしの美少女である。日常会話に支障をきたすほどの中二病ではないが、少し関わるのがめんどくさそうに思われる(らしい)性格の持ち主。まぁ言葉に関しては慣れるといい、俺は慣れた。

 

 

「おい善k「ヨハネ!」...面倒な。ここでは先生と呼べ、お前は生徒で俺は教師だ。分かったか?」

「もう授業は終わったんだからいいじゃない。そ・れ・に、私とお兄さんは堕天使の黒い翼を分け合った"比翼の鳥"なんだから!私のカンパ、軍団(レギオン)に属するリトルデーモンの第一号...それがお兄さんよ」

「だからなんなんだよリトルデーモンって...訳が分からんぞ」

「何って、リトルデーモンはヨハネの信者よ。...あっそうだ、これあげる!これを貼れば貴方もヨハネのと・り・こ♡」

 

 

なんて言いながら渡されたのはシールだった。黒い翼が広がったような...だが片翼だけだ。例えるならば「天使が広げた白い翼を片方切り取って黒く染めた」感じか。....分かりにくい例えだなオイ。

 

 

「誰が虜か...。というかこのシールはなんだ?」

「そのシールはヨハネがリーダーを務める"悪魔の軍団(デモニック・レギオン)"の団員である証ね。頑張って作ったの!」

「作ったのか!?」

「そうよ!結構頑張ったんだからね。あとお兄さんのは特別性なの、カッコいいでしょ?これだけすっごく気合い入れて作ったのよ」

「あん?なんで俺のだけ?」

「え!?そ、そそそれは...!」

 

 

善子の言葉を聞いて湧いてきた、当然の疑問をぶつけてみたらめっちゃ動揺した。なんでさ....。

 

 

「なぜそこで詰まる...俺"だけ"ってことは理由があるんだろ?」

「も、もちろんあるわよ!...でも秘密、教えられないわ」

「...は?なんでだよ」

「秘密ったら秘密なの!もうこの話は終わり!帰るわよお兄さん!!」

 

 

そう言って声を荒げた善子...強引に話を打ち切られてしまった。けどまぁこいつくらいの年になると言いにくいことの一つや二つでてくるだろう、と自分で理由を考えてこの場は追及しないことにした。

 

それに彼女も女の子であり、さらには思春期真っ只中なのだ...いわゆる"お年頃"ってやつかねぇ。なんとまぁ難儀なことよ。

お年頃というのも、実のところ...アイツには恋慕の情を抱く異性がいる。もちろん確証を得ての断言だ。根拠はいたって単純、好意を寄せられているのが俺だってこと――それだけ。

 

ラノベの鈍感主人公ではないから、恋愛感情向けられてることくらい分かる。...てかアイツら不思議だよな~。いくら「好き」って言われてないとはいえ、あれだけあからさまなアプローチ受けても気づかないんだから流石だぜ。

っとそんな話(鈍感主人公)は置いといてだ...俺は彼女の好意には応えられない、と思っている。別に善子の容姿が気に入らないとかではないぞ?贔屓目なしにしても、可愛い部類には間違いなく入ると俺は見ている。問題なのは容姿云々ではなく...年の差だ。なんせ10歳近く離れているからな。

 

俺みたいな片足おっさんに突っ込んだような年齢の奴よりかは、同年代の少年と青春を謳歌するほうがいいに決まっている。浦の星は女子高だから野郎はいない為、出会いがあるかは分からんがね...。

まぁいろいろ言っているが、俺は今の距離感が好きなんだ。この兄妹のような関係で以って騒いでいるときが一番楽しい。もっともらしい事を理由にしているけど...本当は今の関係が変わってしまうのを恐れている、大人のくせしてとんだチキン――ただの臆病者だったってだけの話。

 

 

....なんて情けない男だ。

 

 

 

 

 

***

 

―――男は不変を望む。臆病であるが故に。そんな自分を嫌悪しても、これまでと変わることのない関係が続くことを望む

 

―――少女は翼を求める。その翼はいつも隣にいてくれたから。彼がいるから、彼と一緒だから飛んでいられる。少女と男は比翼の鳥、片方が欠けると墜ちてしまう。故に少女は対の翼を求める

 

***

 

 

 

 

善子に話を切られてから少し経ち、学校から家に向かう道の途中...いきなり立ち止まったと思ったらこんなことを口にしてきた。

 

 

「ねぇお兄さん?ヨハネはお兄さんが好き」

「...藪から棒にどうした」

 

 

本当にどうした?突然歩くのやめたり、俺が好きだなんて口走ったり。俺からしてみれば"何をいまさら"って感じだが、なにか彼女なりに言いたいことでもあるのかねぇ...。

 

 

「小さいころから私とお兄さんはずっと一緒だった。...ううん、ヨハネがお兄さんと一緒にいたかったの。だって、好きになったから!お兄さんを好きになったから...」

「...!」

 

 

いくら知っていたとはいえ...実際に告白されてみるとクるものがあるな。なんせ俺は関係を変えたくないから。

 

 

「...そんなこと、とっくの昔に気づいてたさ。お前の気持ちを知りながらも、今までずっとそばにいた」

「じ、じゃあ「だが!」....え?」

「だが...俺は今みたいな関係が、兄妹のようなこの距離が心地よかった。できることならば、このままお前が離れていくまで変わらないでくれと...妹のままであって欲しいと、そう思っていた」

 

 

本当に情けない...。決心して告ってくれた女の子に対して、こんな本音をぶちまけるとは。度し難いほどに弱い男だな、俺は。

 

 

「お前が、津島善子が好きになったのはこんなに弱い男だぞ?悪いことは言わない...他のヤツ探せ。お前はかわいいからな、きっといい男を見つけられるだろうよ」

「....。....はぁ」

「おい、なぜため息が出る」

「だって...ねぇ。堕天使であるこのヨハネが、お兄さんの弱いところに気がつかない訳ないじゃない。お兄さんのことならなーんでも知ってるんだから!そんなところも含めて好きよって言ってるの!」

 

 

こいつぁびっくり、まさか全部ひっくるめて好きだと言われるとは...。予想外もいいとこだ。そこまで好きなのかと。

 

 

「...俺の心は弱いぞ?情けない奴だぞ?」

「知ってる」

「...だいぶ年が離れてるぞ?それに教師と生徒だ、どんな反感買うか分からんぞ?」

「年の差なんて関係ないわ。このくらいの差で結婚してる人たちなんていくらでもいるもの。それに、先生と生徒のイケナイ恋愛なんて...まさに堕天使のヨハネにはピッタリじゃない!」

「本気...なんだな」

「とーぜん!それに言ったでしょ?私の"虜"にしてやるって」

 

 

こんなにもまっすぐな思いをぶつけられて答えてやらねば男が廃る、か。

 

 

「...俺の負けだ!お前の気持ちはよーく分かった」

「ふふん、人を惹きつける魅力をもって生まれた堕天使って本当につらいわー....どうお兄さん?私の気持ちは伝えた。どんなお返事くれるの?」

「それはな...こうだ」

 

 

俺はそういってシールを台紙からはがして、自らの右手の甲に貼りつけた。そう、帰る前にもらったシールだ。こうして改めて見てみるとカッコいいな...。

 

 

「これで俺は軍団のメンバーだ。立ち位置は...."一番に堕天使の虜になった、人生の伴侶"ってとこか?」

「伴侶?伴侶ってことは...じゃあ!」

「あぁ...お前の告白、受け取った。ちょっと肩書きは変わるが、これからもよろしくな」

「うん...うん!もちろんよ!だってヨハネとお兄さん―いいえ、"あなた"は比翼の鳥であり...」

「黒い翼を分けあった存在、ってか。それなら、こうして手を繋げばいいな」

 

 

善子の左手をとって自分の右手と絡める―所謂"恋人繋ぎ"だ―と、俺は逆の手を彼女に差し出した。

 

 

「ほれ、はよ寄こせ」

「...?何を?」

「シールだよシール!どうせ自分のも作ったんだろ?貼ってやるから渡しなってこと」

「え!?は、貼って、くれるの?...やだちょっと恥ずかしい―」

「何言ってんだあれだけ好きだって言ってきたくせに。あと俺だって恥ずかしいんだよ早く渡してくれ」

「うー...なら、ハイ。....よ、よろしく」

 

 

シールを受けとって、貼る。ただそれだけなのに酷く緊張する。なんか結婚式の指輪交換みたいだ...この後に誓いのキスがああああっとこれ以上は危険だ、気恥ずかしくてヤバいことになる。

何も考えるな...無心だ...無心になれ...手、綺麗だな違うそうじゃない!無心だっていってんだろ!

 

...ぺたり、と。

 

 

「...これでいいな。俺の右手とお前の左手、手を繋げば一対の翼になる。これで、いいだろ?」

「さ、さすがは私の伴侶ね!発想にロマン...?があるわ!」

 

 

彼女は何とも満足げな表情を浮かべて、自分の手を眺めている。しばらく"己の手を見てニヤつく美少女の図"が道のど真ん中で繰りひろげられたが、ふとこちらを見上げてきた。

 

 

「このヨハネを満足させたからには、ご褒美をあげないとね!....ちょっとかがんで?...もうちょっと...うん、そのくらいでいいわ」

 

 

....だいたい予想はつくが、ここはおとなしく待ってやろうじゃないか。

 

 

「...ありがとう、私の大好きなお兄さん――」

 

――チュッ

 

「これからよろしく!私の恋人さん!今まで以上に...もっともーっとヨハネの"虜"にしてあげるから――」

 

 

あぁ分かってるさ、俺の恋人よ。こうなった以上、俺はお前を絶対に離さない。もっと素敵な生活を送ろうじゃないか!そのためなら、出来ることは何だってしてやる。"一蓮托生"の意味通り、どこまでもついて行ってやるから――

 

 

 

――覚悟しなさいよね!!

――覚悟しろよな!!




どうも、真姫神です。最近まったく更新してないけど、私は生きてます。

簡単な生存報告をしまして、書いた感想でも。
今回はサンシャイン二次ってことで「はじめての挨拶」をずっと聞いてたんですよ。そしたら久しぶりに聞いたヨハネちゃんの「夏風邪ね!」がツボりまして(笑)
じゃあ書いてみようってなったのがこの短編です。

文字数はそこそこ、内容考えるのがやっぱしんどかったです...参考になるもの少ないし。しかもビックネームに挟まれてるし。でもなんとか形になったこのSS、楽しんでもらえたら幸いです!

あんまり長いのもアレなんでこの辺で...読んでくださり感謝です!!
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