ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――待ちわびて』   作:鍵のすけ

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「輝く君たちとのヘンな関係」や「ラブライブ!~数奇な運命の果てに~
」、「笑って嗤う彼女と女神達」でお馴染みのトゥーンさんです!By企画主催者


どうも、この企画に参加させていただいたしがない二次作家トゥーンと申します。
千歌メインのお話となっています。
約4200文字程度と短いですが、お楽しみいただければ幸いです。
それでは、皆様の「高海千歌」を想像しながら、ご覧下さい。



何色に染まる?

「ほら、朝だよ。起きてよー」

 

早朝だというのにうるさい。多分あいつだ。この明るく、覇気のある声はあいつに違いない。

だからこそ布団に潜っても悪くない。あいつだから許される。

「もー、起きてってば。遅刻しちゃうよ?」

どうせ歩いて数分なんだからどうだっていいだろう。声を無視して更に布団に包まる。

「おーきーろーっ!」

そんな元気な声と共に布団がひっぺがされた。眠たい目で睨みながら、文句を言ってみると、彼女は──高海千歌は頬を膨らませながら、そんな勝手は知りません!と言ってベッドから引きずり落としやがった。

無言で睨んでも、ふふんとした態度を変えないまま。いつもの様に我が道を行く態度だ。こいつの竹を割ったような性格は好きだけど、幼馴染だからといって自分の部屋に入ってくるのはいただけない。そう言ってみれば、千歌はキョトンとした顔で

「別に長い付き合いなんだからさ、そう恥ずかしがる事ないと思うんだけど……」

あーあー、こいつやっぱりこういう奴だよ。

 

ふと気が付けば隣にいて、違和感無く寄り添ってくれる、いい女。

 

……いかんいかん、朝から何考えてる。

「それはそうと、朝ごはん用意しておいたよ。あっ、寝癖もひどいからちゃんと直しておくんだよ?」

通い妻かお前は。まるで出来の悪い息子に注意する様に母性溢れる表情でピシッと指を指すのはやめていただきたい。

とりあえず着替えるから出て行けとそれとなく伝えてみる。

「言われなくてもわかってるよ」

以心伝心である事を素直に喜べばいいのか、それとも悩めばいいのか。この奇妙な距離感は嫌ではないけど、なんというか……

そんな事を思考の片隅に置いて着替えてからリビングに行ってみれば、ご丁寧に千歌は椅子に座って待っていた。

「じゃあ、食べよっか」

いや先食べてろってお前。

「だってせっかく起こしたんだから、一緒に食べたっていいじゃん」

はいそーですか……全くコイツにはかないっこない。

ホント、可愛い人たらしだ。

 

 

 

もう通う学校も違うってのに、千歌と一緒に同じ道を歩く。一体何時からだったかも思い出せない。ただ、こうやって隣でひょこひょことアホ毛に近しいものを揺らして、どうしてか心地好さそうにしている千歌は、幼い時からそうだった。海に行く時も、遊びに行く時も、ほぼ全て。

「こうやって一緒に学校行くのも久しぶりだったね。何だか昔に戻ったみたいで不思議だね」

否定する物がないからそうだな、と同意すると、えへへと微笑みながら、恥ずかしそうに頬を赤くする。

「……反応薄いなぁ」

……聞こえてるぞ。

「それはそれとしてさ、この前ね──」

誤魔化しついでのたわいない話。嘘を吐くのが下手くそなのも、相変わらずだ。多少オーバーなリアクションの千歌に相槌を打ちながらブラブラ歩いてれば、もう別れ道。

「あっ……もうなんだ。じゃあ、また帰りにね」

……帰りも一緒かい。まあ、待ってやるか。

 

それでいざいつもの別れ道に来てみれば、千歌はいなかった。騙しやがったかと思ったけれど、考えてみればあいつも何かあったんだろう──

「おー待たせっ!」

後ろから衝撃、ついでとても柔らかな感触。そして重い。千歌が後ろからのしかかって来た。いい香りがする。

「ねぇねぇ待った?待ったでしょー?でもねでもね、君より早く来て私の方が待ってたんだよー?へへっ、びっくりした?」

横目で見てみればとても良い笑顔。耳に吐息がかかってくすぐったい。しかも胸が当たってるからどうも口が動かない。

「ねえ聞いてる?おーい」

のしかかるのをやめて正面に回り、頬に手を添えジッと見つめてくる。お前の所為だとは言えないから、お返しに千歌の頬を引っ張ってみる。

「いふぁいよ」

同じく引っ張られたが、こうしているのも何だか楽しい。不思議なものだと驚いて、つい笑ってしまえば、彼女もつられて笑い出す。磁石の様な関係だ。落ち着いた頃には、頬を引っ張る手も下ろしていて、何故か寄っ掛かりあっていた。

「あはは……はぁー、笑った。じゃあ帰ろっか!」

花が咲いたような笑顔で手を引っ張られる。よくわからないけど、まあ可愛いものが見れたのは嬉しいかな。

「ほら走ろうよ!時間が勿体無い!」

はいはいと返事をして千歌の後を追う。図らずも追いかけっこのような形で、自宅へと向かう……

「いやぁ〜、なんか疲れちゃったねぇ〜……」

自宅へ向かう……

「ん?どうしたの?じっと見つめちゃって。もしかして見惚れちゃったとかぁ〜?」

なんでお前がいるんだよ。なにしれっとソファーに座ってるんだよ。そしてなにしれっとみかん出して剥いて食ってるんだよ。

「え?ダメ?」

小首を傾げてうーんと悩む千歌。変なところで鈍い。更にみかんを食って、何か名案が浮かんだような、そんな顔して突然

「あー!エッチな本見られるの嫌なんだね?ごめん、でも興味無いから別にどうだっていいや」

全然違う。

「あれ?違うの?んー……じゃあ、何か女の子みたいな趣味があるとか?いや、そうだったらもう知ってるか。全然わかんないや」

鈍すぎるぞ千歌。ニブチンすぎてお前の心は小説か何かの主人公かと思ってしまうぞ。

「え、何々?何か簡単な事なの?」

男の家に女がそうやすやすと入るんじゃない、と告げてみる。が、さして効果はないようでああそっか、で終わりである。悲しいくらいに我々は仲良しこよしだ。男女のそれをも超越してしまった、なんというか、そういった……こう、長年寄り添った夫婦のような距離感のままだ。

けれどそれが悪いことだとは思わない。

「そうだ。前さ、クラスで話題になったんだんだけどさ、その……ウチの先輩に告白された人がいるんだって。あの、女の子同士で」

突然の話題である。

「それでさ、思ったんだ。もし……君か私か、どっちかがどっちかに告白したらどうなるんだろうかなって、不意に思ったんだ。果南ちゃんとか、曜ちゃんとか、色々聞いてみたんだ。でもみんな決まってこう言うの、『それは千歌にしか分からない』って。けれどさ、私にも分からないんだ。君なら……どうかな。分かる?分かるなら、教えて欲しいな」

……告白ね。一口に告白と言っても、それが愛の告白だとは分からない。もしかしたら千歌の先輩は後輩に何か大切な事を伝えたのかもしれない。それが歪んだ形で伝わって、そうなったかもしれない、とえらく真剣な顔をした千歌を見て思う。のほほんとしていた表情は、いつの間にやら今まで見た事ない真剣さを帯びている。千歌にとって、これは重要な意味を持つのだろう。

 

まあそれはそれとして、俺か千歌のどちらかがどちらかに愛の告白をした場合だが。

何も変わらないのが俺の意見だ。

「なにそれ?」

考えてもみろお前。こんな風に気付いたら隣でみかん食ってるクセに、不快感は無く、あるのは心地良さと違和感の無さだ。仲が良すぎる以上、何をしようが変わらないだろうよ。梨子や曜なら話は別だったろうが、幼馴染で人がグースカ寝ている間に家に勝手に入ってきて飯用意して寝癖注意して、一緒に学校行って一緒に帰ろうとして、そして気付けば人の家に入ってる。これの何処に変化する要素があるんだと、はっきり分かるだろう。

いくらか掻い摘んでだが伝えてみたものの、このニブチンは全く分かってくれなかった。

「だってさ、告白だよ。彼氏彼女の関係になったなら、何か変わるのが普通だと思うの。ほらさ、デートとかしたりするようになるじゃん」

はてさて困った。ではどう伝えるか。

デートと言っても一緒に出かける事だ。つまるところ、俺たちは結構な頻度でデートしている事になる。けれど、俺たちからしてみれば、幼馴染なんだから一緒に出かける事をデートとは思わなくて、その上別に甘酸っぱくもない。つまりもしも告白して、それが成立して、デートをしたとしても、幼馴染として長くいた時の感覚のおかげで、全く変わらないというわけだ。

「うーん……でもそうなると、一緒に出かけた時に恋人らしい事とかするようになると思うんだ」

千歌は何故かしたり顔で、そんな事をズイと身を乗り出しながら、楽しそうに言った。どうしてそんな顔でそんな事を言うのかは分からないが、愉しそうなのはよく分かる。

じゃあ恋人らしい事ってなんだろうか。生憎俺には想像つかない。千歌はどんな事が恋人らしい事だと思うのか、それを尋ねる。多分彼女はそれを知っているから、こんな事を聞いてきたんだろう。

「え、そっ、それは……キ、キス……とか」

極端だなおい。

「抱き合ったり、あとは……あとは……あれ、ないや。案外何も無い……?」

な?俺の言った通りだろう。

「なんかヘンに腹立つけど、確かにそうだね」

納得した顔でみかんを頬張る千歌。その千歌の手にあるみかんを少し千切り、同じように頬張る。そうした俺を驚いた表情で見て──しばらくしてから突然あー!と大声を出した。

「これ!この距離感なんだ!君が言ったのは!!やっと分かった!あー、そういう事だったんだぁ。なるほどねー……確かになにも変わんないね」

そうだろうそうだろう。

「でも私は」

千歌はそこまで言いかかって、何とも言えない表情に顔を歪めて、俯いて、手を握り締めて

「……やっぱなんでもない!」

少しの沈黙の後、自分で完結してしまった。

「みかんいる?」

俺の家のみかんなんだが。

「手出してるじゃん」

うっせ。

「素直じゃないねー」

渡されたみかんの皮を剥きながら、隣に座る幼馴染を見つめる。実に何とも変わりない、見慣れた横顔。肩が触れ合う距離でも、多分心はみかんの木一つ分くらいの距離があるに違いないと思う。

二つくらい食べたところで、千歌は突然頬に手を当てて振り向かせて、一言。

「大好き、だから付き合って」

しばらく思考する。数秒か、数分か、あるいは数十分か。沈黙の後、俺は了承した。千歌が肩にもたれかかる。だけど二人でみかんを頬張り続ける。

「本当になんにも変わらないんだ」

不満気に、しかし嬉しそうな声でそんな事を言う。

「……なんて言うか、告白って大した事ないんだね」

いや一人納得しないでくれ。

「さっきのは忘れて。私たちはやっぱり、こんな風に付き合ってなんとかよりも、何も意識しないで、隣で一緒にみかん食べてるのが一番だね」

確かに、こんな風に一緒にみかんを隣で頬張り合ってるのが、俺たちにはお似合いなのだろう。

 

「ずっと一緒がいいね」




いかがだったでしょうか。
あえて千歌の内心描写を削っていますが、これは読者の皆様の思う「高海千歌」を描きたいと思ったからです。
まだキャラ設定もあまり定かではないこの時期だからこそ、私の思う「高海千歌」を描くよりも、その方が面白いだろうと考えの元、そうさせていただきました。
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