「逃げんなよ」
ゼロは目を血走らせていた。
「まずいな…」
モモンガはつぶやいた。
ゼロの種族である夜叉には「鬼の怒り」という特殊能力がある。この能力はシャルティアの「血の狂乱」のようなものである。
「鬼の怒り」は戦闘を行うときにランダムに発生するものでゲーム時代は3分間味方のパーティーメンバーも巻き込んで周りにいるプレイヤーやNPCを無差別に攻撃するもであった。
現実世界になった現在ではビビりだったゼロは非常に好戦的になるというような感じになった。
「試合は中止だ!!ゼロさんを止めろ!!」
「すいません!<トワイン・プラント>」
モモンガが叫んだ瞬間にマーレが魔法を使いゼロを拘束しようとする。
「うっとおしいな」
ゼロは自分の手足を拘束した植物を引きちぎる。
「す、すごい…」
「マーレ、邪魔だよ」
”ダンッ”
マーレのほうへ走り出すゼロ。そして、
「うわっ!」
マーレを殴り飛ばし追撃をしようとするが動きが止まる。
「<影縫いの矢>か…おらっ!」
一瞬動きを止めることが出来たがすぐに解除される。
「アウラ!これをゼロさんに当てろ!!」
モモンガがアウラにアイテムを投げる
「わかりました!<ターゲッティング>おりゃ!」
”パコン!”
アウラが投げたアイテムが当たった瞬間にゼロは意識を失った。
「し、知ってる天井だ…」
「今回は知ってるバージョンなんですね」
「モモンガさん…あっ!コキュートスは?アウラとマーレは大丈夫ですか!?」
異形種は確かに苦手だが自分の友人たちが作りだした子たちを傷つけてしまうのは望まないのである。
「三人とも治療を受けて完治してますよ、確率でいえば2%とはいえ鬼の怒りが発動した時の事を考えていなかった僕の責任です。本当にすみませんでした!!」
全力で頭をさげる骸骨に若干ビビりながら
「いえいえ!僕も忘れてたんですからお互い様ですよ!!だからもう頭上げてください!」
「ありがとうございます。でも今回は迷惑かけたのでせめてものお礼も用意しておいたんで」
「お礼ですか?」
「はい、戦闘になってしまって鬼の怒りがいつ発動するかわからないのでゼロさんに側近をつけることにしました」
「え!?いやいや!いいですよ気を使うし!」
「もうゼロさんの側近になるように本人にも行ってしまってるんで、今更そんなことを言うと傷ついちゃいますよ」
「そんな…虫?アンデッド?せめて!せめて動物っぽいやつがいいです!!」
「ユリですよ」
「しょ、植物ですか?」
「ユリ・アルファですよ…ゼロさん好きでしょ?」
「え!?いやいや!ユリが側近とか緊張して何もできなくなりますよ!!」
「誰が相手でも何もできないでしょコミュ障が、まぁそういう事で」
「え!?ちょっと!」
叫んでいるゼロを無視してモモンガは部屋を後にした。
「はぁ、」
モモンガは部屋を出た後に大きく溜息を吐いた
(あんなにニヤニヤしながら嫌がられてもな…)
ゼロは無意識に口角が上がっていた事に気付いていなかっのだった。
ーその頃六階層ではー
「お姉ちゃん、ゼロ様に何を投げたの?」
「豆」
「へ!?」
「だから豆!」
「そんなすごい豆があるんだね~」
「何の豆だったんだろうな~あれ」
「こ、こんどモモンガ様に聞いてみようよ」
「でも、ゼロ様の弱点だよ?不敬にならないかな?」
「あ!そっか~でもなんで豆なのか気になるな~」
節分を知らない二人にとっては考えても一生わからないことであった。