「おおおおおおおおおォ!」
「えっ?」
「なっ…」
私はついさっきまで目の前に迫っていた虹色に輝く腕が勢いよく吹っ飛んでいった光景に少し驚いてしまった。
「せ、先輩?」
「なにやってるんですか、先輩⁉︎こんなところで____⁉︎」
「それはこっちに台詞だ、姫柊、綾花!このバカ!」
「バ、バカ⁉︎」
「…」
「様子を見に行くだけじゃなかったのかよ。なんでお前が戦ってるんだ!」
「そ、それは____」
「綾花は急に消えたと思ってたらこんなところにいるし!」
「…すみません。コンビニに逃げてました。」
「…で…結局、こいつらはなんなんだ?」
「わかりません。あの男は、ロタリンギアの殲教師だそうですが…」
「ロタリンギア?なんでヨーロッパからわざわざやってきて暴れてるんだ、あいつは?」
「先輩、気をつけてください。彼らは、まだ…」
彼女の警告が終わるよりも先に、ケープコートを着た少女が立ち上がった。少女の背後にはまだ虹色の眷獣が実体化したままだ。
「先ほどの魔力…貴方は、ただの吸血鬼ではありませんね。貴族と同等かそれ以上…もしや第四真祖の噂は真実ですか?」
「再起動、完了。命令を続行せよ、"薔薇の指先"____」
「やめろ、俺はべつにあんたたちと戦うつもりは____」
「待ちなさい、アスタルテ。
「先輩、下がってください!」
「姫柊!」
「危ない!」
「えっ?綾花さん⁉︎なにを____!」
私は下からくる右腕を避けて上からくる左腕を足場にした。
「…あ」
そしてそのまま、少女の頭の上に乗った。
「…アスタルテ!行きますよ」
「命令受諾」
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朝、私は家で目から出てくる血の処理をしていた。
「…血、目から血が。…あれか、壊された事無かったからなぁ。」
「っ痛。どうしよう。学校に行かなくちゃいけないのに」
「…式神への繋がりを取り敢えず切っておこう」
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「…何とか止まった。でも、周りが血だらけだ」
「取り敢えずお風呂に入ろう」
「〜♪」
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「時間がない。はぁ、転校初日に遅刻かぁ」
「暁 綾花、いるか?」
「はっはい!」
「昼休みに生徒指導室に来い。あとちょっとこっちに来い。学校まで連れて行ってやる」
「はい?…貴方は誰ですか?」
「南宮那月。彩海学園の高等部の教師だ。ほら、行くぞ」
「ちょっと待ってください。服も着ていないので」
「…よし、いいな。行くぞ」
「はい」
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昼休みが始まってすぐ、私は南宮先生の所へ向かった。
「来たか、暁」
「はい」
「…そっちか。お前が岬のクラスの転校生か?」
「はい…中等部三年の暁です」
「ようこそ、彩海学園へ。歓迎するぞ。余計な揉め事を起こさないでくれるなら、特にな」
「はい」
「さて、後はあの二人が来るのを待つか」
そのあと少しして二人が来た。
そして先ほどと同じ事を南宮先生がいいその後に、
「さて、おまえたち。昨日アイランド・イーストで派手な事故が起きたのは知ってるな?」
「え、ええ。それはまあ」
「実はその近くで"古き世代"の吸血鬼が一匹、確保されたようだ。重傷を負って死にかけていると、誰かが匿名で消防署に通報したらしい。マスコミにはまだ伏せられているそうだがな。何か心当たりはあるか、三人とも?」
「その"古き世代"は、表向きは貿易会社の役員だが、密輸組織の幹部ではないかと以前から警察に疑われていたらしい。どうやら昨日の倉庫街には、その取引によく使われていた場所らしくてな。組織の下っ端は、取り引き相手についてはなにも知らないと言ってるそうだが」
「…はあ」
「爆発事故が起きる少し前、そのあたりで眷獣が暴れている姿が目撃されている。つまり死にかけで発見された男は、何者かと戦っていた、というわけだ。"古き世代"の吸血鬼を、半死半生の状態にまで追い詰めた敵。こいつが爆発事故に絡んでいる可能性は極めて高いと私は思うわけだが…何者だろうな?」
「さ、さあ」
「ふむ…ところでな、この島で死にかけの吸血鬼が発見されたのは、実は昨日が初めてではなくてな」
「え…?」
「ここニヶ月ばかりの間に、警察が把握しているだけでも六件ばかり、似たような事件が起きている。今回のやつで七件目だ。さすがに"古き世代"が巻き込まれたのは初めてだが」
南宮先生が机の上に分厚い資料を投げ出した。
警察の捜査資料のコピーらしい。町の監視カメラの映像を拡大したものだ。
「あれ、この人って」
「那月ちゃん、これは何だ?」
「今まで襲われた魔族のリストだ。そこに写ってるのは六件目の被害者。発見されたのは二日前だそうだが…知り合いか、暁綾花?」
「いや、この前見た事あるな〜って」
「そうか」
「こいつらは…どうなったんだ?」
「入院中だ。一命は取り留めたそうだが、今も意識は戻ってきてない。生命力が取り柄の獣人と、不老不死の吸血鬼を相手に、どうやったらそんなことができるのかは知らないが」
「おまえたちを呼び出したのは、それが理由だ」
「え?」
「なにが目的かは知らんが、この無差別の魔族狩りをしている犯人は、今も捕まっていない。つまり、暁古城、おまえが襲われる可能性もあるということだ」
「あ、ああ…そうか。そっすね」
「企業に飼われている魔族や、その血族には、魔族狩りに気をつけろと既に警告が回っているらしい。おまえにはそんな上等な知り合いはいないだろうから、あたしが代わりに警告してやる。感謝するがいい」
「はあ。それはどうも」
「というわけで、この事件が片付くまでは、しばらく昨日のような夜遊びは控えるんだな」
「は…」
「いや、夜遊びとか言われても、何のことだが」
「…ふん、まあいい。とにかく警告はしたからな」
「ああ、そうだ。ちょっと待て、そこの中学生」
私は呼ばれたので少し驚きながら振り向いた。
そうすると隣で
「…ネコマたん…」
という声が聞こえた。
「忘れ物だ。そいつはおまえのだろう?」