「やっぱり南宮先生は知っていたんですね」
「まあな…その人形、残してきたのは失敗だったな」
「いえ。そうではなくて。昨晩、わたしたちが戦った相手のことです」
「え?あのオイスタッハとかいうオッサンのことか?」
「はい。それにあの人工生命体の女の子も…彼らが魔族狩りのようなことをしていたのを、警察は前から知ってたということですよね」
「ああ…だろうな。市内の登録魔族に警告が出てるようなことも言ってたし」
「ですが、彼らの素性までは、まだ把握していないのだと思います」
「素性?」
「犯人がロタリンギアの殲教師だということです」
「そうか…襲われた連中は、意識不明の重態だとか言ってたな…」
「はい。今のところ、彼らと直接戦って無事だったのは、わたしたちだけですから」
「どうしてさっき那月ちゃんにそのことを言わなかったんだ?ああ見えても、あの人は攻魔師資格保持者だぜ。警察にも顔が効くみたいだし」
「先輩…本気で言ってるんですか?」
「え?」
「攻魔師資格ならわたしだって持ってますよ。どうして獅子王機関の人間が、警察に泣きつかなければならないんですか」
「いや、どうしてってことはないんだけど」
「ただの通り魔事件なら警察の仕事ですけど、ロタリンギア正教、それも殲教師クラスの人間が絡んでるとなると、これは立派な国際魔導犯罪です。獅子王機関の管轄ですよ」
「そ、そうなのか。ただの縄張り意識とかじゃないんだな」
「で、昨日のことですけど、先輩は「今はまだ」と言われていましたが、最悪先輩も狙われるかも知れません」
「はあ⁉︎狙われるって」
「はい。昨日の殲教師の人工生命体がやっていたことですが、魔力を食べていました。そしてそれは、南宮先生が言っていた通り先輩も狙われるかも知れません」
「ですので、一応調べたほうがいいかと思い、この島にある西欧協会の施設の一覧です。見ますか?」
「この中の何処かに、協力者と一緒に潜伏している可能性が高いです」
「…そうなのかな」
「なにか間違ってましたか?」
「いや、そんな単純でいいのかって気が」
「は?」
「いや、いくらロタリンギアって情報を知らなくても、オッサン達の外見くらいわかってるんじゃないかと思ったんだが。あと、オッサンが法衣を着てたことも」
「そうですね…そうかも知れません…」
「だったら、警察が真っ先に西欧協会を調べるんじゃないか?」
「あ…」
「で、でも、だとしたら彼らは今どこに?」
「そうだな…えーと、外資系企業とか?」
「はい?」
「いや、殲教師だからって、協会以外の場所にいたらまずいってことはないだろ。そもそもあのオッサンが本当に殲教師なのかどうか。勝手に名乗ってるだけかも知れないしな」
「な、なるほど」
…ここまで式神を付けて聞いてたけど、このままじゃあの殲教師に会ってしまうかも知れない。
…あれ、お兄ちゃん達がいない。
___________________________________
「_____ロタリンギア国籍の企業?どうしてそんなことが知りたいわけ?」
「いや、どうして…と言われても、そんなにたいしたようじゃないんだが」
「まさか、あんた…あの姫柊って子に頼まれたんじゃないでしょうね?」
「え?いや、まさかそんなバカな。いやいや」
「……」
「本当に違うって。そう、夏休みの宿題の自由研究で調べてるんだよ。ロタリンギアについて」
「は?自由研究?」
「仕方がないわねぇ。はいはい、調べてあげるわよ」
「ああ。ありがとう、浅葱」
「だから感謝は形で示せってのよ。ロタリンギアの企業ね…ないわよ、そんなの。島内には」
「ない?一社もか?」
「ロタリンギアの企業と取引したり、代理店契約を結んでいる会社はいくつかあるけど、働いてるのはみんな日本人。だいたいヨーロッパ系の企業が絃神島に支社を置く理由はないでしょ。魔族特区は欧州にもあるし、最近の円高でほとんど撤退しちゃったんじゃない?」
「…撤退?」
「そうか…浅葱、撤退済みの会社は調べられないか?できれば閉鎖した事務所がそのまま残ってるようなやつがいい」
「うーん、確か過去五年だったら、記録が残ってたような気がしたけど…」
___________________________________
「見つけた。あれは…クラスメイトかなぁ?多分さっき式神が聞いてたこと、殲教師がいる場所を探してるんだろうな」
「式神が見てる限りだと…アイランド・ノースの第二層のB区画?…あっお兄ちゃんが出て行っちゃった」
「私も行かなきゃ。その前に目の血拭いて行こう」