「先輩…どうして…そんな…いや…あああああああっ…!
雪菜の手の中から、槍が落ちた。首だけとなった古城を、両手で必死に抱きしめる。しかし、古城からの返事はない。
オイスタッハはその光景を無表情に眺めて、戦斧を下ろした。
雪菜にはもう戦闘を続ける力はないと判断したのだろう。神格振動波駆動術式が完成した今となっては、オイスタッハにあえて雪菜と戦う理由はない。
「行きますよ、アスタルテ…我らが至宝を奪還するのです」
「____命令受諾」
…お兄ちゃんが…お兄ちゃんが!
許さない…殲教師も、私も!
だから、とりあえずお兄ちゃんの所に行かなきゃ!
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「…
「えっ⁉︎…綾花さん。これって?」
「これ」
そう言って私は雪霞狼を持ち上げた。
「だっだめです!それは…私が」
「でも、もう使わないでしょ。先輩、死んじゃったし」
「…」
「ちゃんと返すよ。私が死ぬか彼等を倒せたら」
「じゃあ、もう行くね。雪菜ちゃん」
そう言って私は飛び出した。
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「____命令完了。機密隔壁の封印を破壊しました」
「行きなさい、アスタルテ。私たちが求めているものは、この先にあるのです」
「命令受諾」
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「命令完了。目標を目視にて確認しました」
「…………」
「お…おお…」
「ロタリンギアの聖堂より簒奪されし不朽体…我ら信徒の手に取り戻す日を待ちわびたぞ!アスタルテ!もはや我らの行く手を阻むものはなし。あの忌々しき楔を引き抜き、退廃の島に裁きを下しなさい!」
「その前に、私の用事を済まさせてもらえますか?」
「なに?」
そこには目の周りを真っ赤に染め、雪霞狼を持った綾花がいた。
「ねぇ、先輩を(お兄ちゃんを)殺したのはあなたですか?」
「…先ほど第四真祖なら殺しましたが、なにか?」
「そうですか。では、あなたたちを倒します」
「ほう、そうですか。ですが、邪魔立てするというならば実力を持って排除するまで____アスタルテ!」
「命令受諾。執行せよ"薔薇の指先"____」
「…許さない」
私はまず、アスタルテ、人工生命体の方へ駆け出した。
まず、右から右腕、左から左腕。
左に飛んで左腕を足場に右腕に飛び、眷獣を飛び越えた。
「アスタルテ!」
「獅子の巫女たる高神の剣巫が願い奉る
破魔の曙光 雪霞の神狼 鋼の神威をもちて
我に悪神百鬼を撃たせ給え!」
私は祝詞を唱えつつ、結界を抜ける為にある物を取り出した。
途中で倒れていた特区警備隊が持っていた閃光手榴弾だ。
「くっ!」
「雪霞狼!」
貫く為に力を一点に集中させた雪霞狼は"薔薇の指先"の結界を抜け、後ろにいる、オイスタッハの所まで抜けた。
そして私は入り口の方へ雪霞狼を投げ、そのままオイスタッハに攻撃した。
「鳴雷!」
だが、私の攻撃は戦斧で止められてしまう。
防がれた私は、その戦斧をそのまま蹴り離れた。
「とりあえず、これで」
私は背中に背負った銃、サブマシンガンをオイスタッハに向けて撃った。
だが、
「アスタルテ。やりなさい」
私が撃った銃弾は全て弾かれ、人工生命体の少女が少しずつ近ずいてきた。
そして、弾が切れた。
残りの武装は、式神とエンチャントしたナイフ、これでどうにかしなければ。
「…どうしよう」
「なら、人に頼ればいいじゃねえか」
「えっ?」
綾花が、入り口の方へ視線を向けると、そこには古城、お兄ちゃんが立っていた。
その横には彼女、雪菜が雪霞狼を持っていた。
「そうですね。綾花さん、少しは人に頼ってもいいと思います」
「…うん」
そしてお兄ちゃんは
「なあ、オッサン。俺はあんたに胴体をぶった切られた借りがあるんだ。とりあえず、
「貴様…その能力は…」
お兄ちゃんの全身に稲妻が包む。
「さあ、始めようか、オッサン____ここから先は、
「いいえ、先輩。
「…
そう言い雪菜は、雪霞狼を構え、閃光のような速度でアスタルテへと向かった。
そしてお兄ちゃんは、青白い稲妻を撒き散らしながら、オイスタッハへ殴りかかった。
「…お兄ちゃんと雪菜の援護をしなきゃ」
「確かに凄まじい魔力ですが、そのような無様な攻撃で私に触れることはできませんよ。まるで浅はかな素人同然ですね、第四真祖!」
「同然じゃなくて、本当に素人同然なんだよ!」
「じゃあ、素人の動きじゃなければ当たるんですね」
私はオイスタッハの後ろへ回り込み、式神を使ってお兄ちゃんの方へ注意を向けた。
「!前ですか」
「残念。後ろだよ!」
「何!”
「きゃっ!」
「汚ェぞオッサン__そんな切り札をまだ隠し持ってやがったのかよ!」
「先輩……!?」
私は未来視に従って見た未来を本当にしないように避けてゆく。
「そういうことなら、こちらも遠慮なく使わせてもらうぜ。死ぬなよ、オッサン!」
「ぬ……!?」
「"焔光の夜伯"の血脈を継ぎし者、暁古城が、汝の枷を解き放つ____!」
「疾く在れ、五番目の眷獣、"獅子の黄金"____!」
お兄ちゃんが、なにか言葉を言い、雷光の獅子、お兄ちゃんの眷獣が現れた。
「…先輩、気をつけてください」
「これが貴方の眷獣か…!これほどの力をこの密閉された空間で使うとは、無謀な!」
雷の獅子の前足がオイスタッハに目がけて振り下ろされる。
その攻撃はオイスタッハにかすめただけだった。
だが、それだけでオイスタッハの巨体が数メートルは跳ね飛ばされていた。
「アスタルテ____!」
殲教師がアスタルテを呼んだ。
そして雷の獅子がアスタルテに向かって攻撃を仕掛けた。
神格振動波の防御結界が、古城の眷獣の攻撃を受け止め反射する。
「きゃっ!」
私の頭に、瓦礫が当たった。
未来視で未来も見ていたが、疲労で動けなかった。
そして意識が薄れて私は気絶してしまった。