『弱め』な大黒柱   作:レスト00

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最近、クオリティ下がってるなと思ってきてる作者です。
何とかせねば……

では本編どうぞ


親子

 

 

 西住まほにとって、幼い頃の父親は少し怖い存在であった。

 理由は単純で、いつも目を瞑っているのにまるで見えているように行動する彼が、幼い頃の彼女にとっては不気味に思えたからだ。

 なら、どうして彼女は父親である彼のことが好きになったのか。それもある意味で子供らしい理由であった。

 

「貴方は西住の長女です」

 

 親ではなく周りから言われ続けた言葉。

 それを誇りに思うようになったのは、母親であるしほの姿を見ていたからだ。まほはその堂々とした姿に幼いながらも憧れたのだ。

 そして彼女は彼女なりに、西住家の長女として相応しくあろうとした。

 もちろん未だに小学生にもなっていない彼女にできることは多くなく、精々が親の手をかけずに自分のことは自分でする程度であったが。

 そして、言動や行動も憧れる母親の真似をし、凛とした態度を取るようになる。

 だが、それとは真逆の存在が彼女にはいた。

 妹のみほだ。

 彼女はどちらかといえば手間のかかる子であった。子供らしい失敗も多いが、物怖じすることなく、何でも挑戦しその度に周りの大人をハラハラさせていたりする。

 その点、まほは色々と器用だったのだろう。失敗しないように慎重に事を成そうとする彼女は、あまり失敗をすることがなく手のかからない子であった。

 だが、それが彼女にとって幸せであったのかはまた別だ。

 子供にとって、大人から気をかけてもらえるというのは愛情を受けていると同義だ。そして、この二人の姉妹のウチより気に掛けられていたのは言うまでもなくみほの方であった。

 その事をまほは不満に思うことは意外にもなかった。何故なら、彼女も妹のことは好きであったのだから。だが、そこに寂しさを感じないことはありえない。何故なら彼女も子供なのだから。

 そして、その寂しさを感じるようになってから、彼女はある実験をし始める。

 それは、みほが大人たちに構ってもらっている間、まほが隠れてそれを探しに来る大人がいるのかどうか、というものだ。

 要するに彼女なりの、周りの大人に対する構ってもらうためのアピールである。

 そして、そんな彼女の試みは一発で結果が出ることになった。

 

「まほ、どうしたの?」

 

 母屋から離れた戦車の車庫。その中に置かれている西住家保有の戦車のうちの一両の中に隠れていたまほ。隠れ始めて三十分もしないうちに、問いかけるようなそんな言葉が彼女の元に届いたのだ。

 

「おとうさん?」

 

 幼く小さな身体で戦車の外によじ登るようにして出てきた彼女は、車椅子に乗りいつものように目を閉じている父親を不思議そうに見つめながらそう呟いていた。

 それから幾度となく同じことをしたが、結果は同じ。どこに隠れようともまほを最初に見つけるのは父親である彼であった。

 

「おとうさんはどうして私の場所がわかるの?」

 

 幾度目かのかくれんぼの帰り道。ふとした疑問を彼にぶつけるまほ。その答えは簡潔であった。

 

「だって、まほは僕の娘で、僕はまほのお父さんだから」

 

「――――――おとうさんってすごい。なら、ずっとまほを見ていてくれる?」

 

 笑顔で返されたその言葉に、幼いまほは目を輝かせながらそう聞いた。その返答は、彼女に負けず劣らずの笑顔と、ふわりと頭に置かれた掌の優しい感触であった。

 この頃から、彼女の中で父親という存在がよくわからない存在から、自分をずっと見てくれる優しい存在へと変わる。

 

「父様、あーん」

 

「…………いや、だからね。まほ、僕は自分で食べられるよ?」

 

 そんなまほにとって、最重要で何千、何万と思い返している思い出を再び思い出しながら、膝に載せた父親の口元に昼食の雑炊を掬った木匙を運ぶ彼女であった。

 

「この雑炊は少し熱いので、手馴れている私が父様に食べさせるほうが安全です」

 

「そんなに凛々しく言ってもダメだからね?…………それと、時々首の辺りに顔を近づけるのやめなさい。息が当たってくすぐったいから」

 

 今現在、西住まほにとっては至福の時間であった。

 その二人の親子のやり取り――――と言うには少しあれであるが、その姿を見ていたタカシとおやっさんは最初は呆れた表情をしていたが、気にするのがアホらしいと思うと二人は二人で昼食を楽しんでいた。

 

「父様は私が嫌いですか?」

 

「そんなことはありえないから。と言うか、僕の事を考えてくれるなら、自分で食べさせてくれ」

 

 不毛なやり取りをしつつも、なんだかんだで食事は進む。

 甲斐甲斐しくと言うには、少しやりすぎな世話をしながらも自分の食事をきっちりと終わらせるまほに「もはや何も言うまい」と思う三人であった。

 そして食事も終わり、お開きの時間はやってくる。

 

「今日はありがとうございました」

 

「気にするな。こっちも懐かしい顔に会えたんだ。それにお前さんの演奏っていう珍しいもんも聞けた。得をしたのはこっちも同じだ」

 

 料亭での会計を終える。

 その後、店の外でおやっさんとの会話をしつつ、背後でまほが落ち込んだ声で「父様の……演奏……」などと呟いているのを全力でスルーして、握手をする。

 

「そこの嬢ちゃんと、家元の嬢ちゃんも来てるってことは戦車道の予選会もそろそろか」

 

「ええ。……家出のことも含めて、少し目立つようにしていましたし」

 

 全国戦車道大会。

 今年から戦車道を復活させた大洗女子学園の戦車道チームはそれに参加する予定であった。そして、何の因果か今年の予選抽選会はここ大洗で行われる。

 その為、参加する各高校の戦車道チームの代表は大洗に集まってくるのだ。

 それを把握していた彼は一計を案じた。

 昨今、インターネットなどの情報伝達が早く、広い社会の中で、噂程度でも自分の存在を匂わせる何かを彼はしてきていた。

 例えばそれは、学園艦という閉鎖的な空間の中で“散歩に出る時に歌を歌う車椅子の男がいる”というもの。

 例えばそれは、ある学園艦に有名な作曲家が来ているというもの。

 大きな情報としてはそんなところである。

 そして、その情報と言う餌に必ず家族である二人は食いつくと踏んでいた彼は、料亭での演奏の前にタカシに頼み、ある女性にメールをしてもらう。

 そのメールの内容は、その料亭の住所とそこで行われる演奏のことであった。

 

「その女性ってのは……」

 

「まぁ、簡単に言えば共犯者ですよ」

 

 そこまでの説明を聞いておやっさんは少し呆れていた。

 現在の西住家を仕切っている、若しくは手綱を握っているのはこの男ではないかと思いながら。

 

「じゃあ、おれはもう行くぜ。家族は大切にしろよ――――今のうちにな」

 

 最後の言葉は彼にしか聞こえなかった。

 

(流石榊さん……見透かされている)

 

 自身の車に乗り込みながら、大洗の学園艦の方に帰っていくおやっさんを見送ると、今度はタカシの方に彼は向き直る。

 

「タカシ君。今は娘もいるので、今日はこれからオフで構いません」

 

「は?」

 

「ウチの娘がここに居るということは来ていると思いますよ?貴方の後輩」

 

 そこまで言われて、タカシはハッとする。

 しかし、母校の後輩の姿を思い浮かべると同時に職務放棄と言う言葉も脳裏によぎる。

 その為、迷う素振りを見せるタカシに対し、彼は出来るだけ優しい声音で言葉を投げかける。

 

「短期とは言え、今日までほとんど休みもなかったので、羽を伸ばしてきてください」

 

「そんな!先生との生活に不満を感じたことはないですよ。…………でも、その、ありがとうございます」

 

 一度頭を下げ、失礼しますと言い残すと、タカシは携帯を取り出しながら大洗の街に駆け出していった。

 

「父様、彼は?」

 

「後輩がサンダース高校で戦車道をしているそうだよ」

 

 その説明だけで納得したのか、それとも二人きりになれたところに他人の話をこれ以上する気がないのか、まほがタカシについて尋ねてくることはなかった。

 

「さて、少し早いけど戻ろうか?演奏して少し、疲れた」

 

 満腹と疲労感から、心地よい眠気がやってくる。

 その身を預けてしまいそうになる感覚に抵抗しながら、彼はまほに現在の住所を口頭で伝える。

 そして、久方ぶりに娘に車椅子を押してもらいながら、二人の親子は実家とは異なる家へと向かう。

 

「父様…………その、母様とみほは大丈夫でしょうか?」

 

 その道中、思い出したようにまほは口を開く。

 今更になって不安になってきたのか、まほの声は不安に満たされていた。だが、そんな不安を振り払うように、彼はいつもどおりの声で話す。

 

「大丈夫だよ」

 

「でも……」

 

「しほさんはまほとみほのお母さんだからね」

 

 その根拠のない言葉に脱力しそうになるが、その言葉を信じたいと思っている自分がいることに内心で驚くまほであった。

 

 

 

 





次回は件の共犯者さんの登場や、久方ぶりのしほさんとのイチャイチャ(?)の予定です。
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