私の名前は
私には双子のお兄ちゃんがいるの。お兄ちゃんって呼ぶといつも笑ってくれるからそう呼んでるの。名前は白。白い肌に綺麗な黒髪の名前に負けない、まるで女性の様に美しい私のお兄ちゃん。村には同年代の子供が居なかったからいつもお兄ちゃんと遊んでいる。私の世界はこの小さな村で完結しているけど、大切な家族とお兄ちゃんがいるだけで毎日が幸せに暮らせた。
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今日は両親の畑仕事の手伝いは無く、朝に洗濯のお手伝いを済まして僕は妹とかくれんぼで遊んでいる。今は僕が鬼で妹が隠れている。
「白ちゃん、こんにちは。今日も藍ちゃんとかくれんぼ?」
「こんにちは。はい。」
僕が走っていると、近所のおばちゃんが話しかけてきた。この人は僕達が産まれた時からずっと世話をしてくれた人だ。この人以外にもこの村では、皆が優しくしてくれる。生活は決して裕福ではないけど、村全体が繋がっている感じだ。ちなみに村の皆は僕を白ちゃんと呼んでいる。僕は男なんだけど...
「本当に仲が良いのね」
「は、はい。」
おばちゃんの言葉に少し恥ずかしさを覚えながらもなんとか返事をして駆けていく。
妹を探すため近くの樹に登り、辺りを見回すと少し遠くの茂みに綺麗な水色の髪が見えた。僕は彼女の背後から静かに近づき声をかける。
「みーつけ「きゃあ!」った...」
急に後ろから声をかけられたのに驚いたのか、藍は悲鳴をあげて、尻餅をつく。そんな彼女に手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「もう!お兄ちゃん見つけるの早いよ!」
余程自信があったのか、悔しそうに口を尖らせるものの、僕の手を取ってくれる。
「どうやって見つけたの?」
「えーと、少し樹に登って...」
「あーっ!ずるい!樹に登るのは、禁止って言ったでしょ!」
一回木に登って藍を見つけた事があった。その時は藍が駄々をこねて機嫌を直すのが大変だった。それ以来、藍から木登り禁止を言い渡されてしまっていた。僕はそのことをすっかり忘れていた訳ではなく、故意だったりする。
藍は如何にも、私怒ってます!という感じでそっぽを向く。僕はその姿に苦笑いするしかない。
「ごめん、僕が悪かったから...」
「............」
ダメ元で謝るが、藍は許してくれそうにない。
「なら、いいものを見せるから許してくれない?」
「....本当?」
「本当だよ」
「なら、許してあげます!」
彼女の透き通る橙色の瞳が輝く。彼女にはやはり笑顔が一番だと思う。この笑顔が見たいがために意地悪をしてしまうのは秘密だ。
僕は藍を連れて家の裏に回る。
「早く見せて!早く!」
「じゃあ、見ててね。」
僕は藍の目の前で手を翳し念じる。すると、僕の掌に水の球体ができる。
「わぁあ。凄い綺麗...」
藍の橙色の瞳を細まる。藍が喜ぶ様子を見てさらに力を込める。すると風が集まり、僕にはよくわからないけど水球が凍る。今僕にできる精一杯だ。
「凄い!私にもできるかな?」
「藍も練習すれば、きっとできるよ!」
それから、しばらく練習したけど...
「うーん、全然できない!」
「できない!できないよ〜!」
藍が駄々をこねてしまった。
「お兄ちゃんはどうやったら、できたの?」
「なんとなく、力を込めたらいつの間にか出来てたかな」
「ぶー! それズルい!」
「大丈夫!僕も手伝うし、藍もきっとできるよ。」
僕は周りの大人達からは、年齢の割に大人びていると言われる。やっぱり、手の掛かる妹を持つと兄はしっかりするものなのかな。でも、こうして甘えてくる妹はとても可愛かったりして、悪戯心がくすぐられる。
結局、藍が飽きるまで練習したけどその日には習得できなかった。
「あー!もう! 疲れた!」
「お疲れ。明日もやってみる?」
「うん!」
藍は悔しそうに口を尖らせるけど、僕が明日も練習してみるかと聞けば、花が咲いたような笑顔を向けてくれた。
この一途な少女なら、きっと習得できるだろう。とても楽しみだ。
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その日の夜
私達家族みんなで囲暖炉で晩御飯を食べる。いつも木製のお茶碗に炊いた稗と畑で採れた野菜の糠漬け、豪華な時は味噌汁が付く。お母さんに料理をしてみたいと頼んでみたけど、まだ包丁を持つのは危ないから駄目って困り顔で怒られた。
食事をしている時もみんな笑顔で私もみんなで囲むこの時間が大好きだ!
「...でね。今日はお兄ちゃんが手品見せてくれたんだ!」
「へえ、どんな手品なんだ、藍?」
「うーんとね。それは秘密!私もできるようになったら、お父さんに見せてあげる!」
「それじゃあ、お父さん楽しみに待っておくよ。」
「うん!」
あれは、完璧にできるよになってからの披露するつもりだ!お父さんがどんな顔するか楽しみだな!
お父さんは楽しそうに私の話を聞いてくれたけど、突然険しい表情をする。
「今日、忍びが村の外でうろついてるという噂が村であった。」
その言葉にお母さんも顔を顰める。
「まったく...戦争、内乱...本当に忌々しい。やはり何事も平穏が一番だな。」
「でも、この村にいれば大丈夫。」
「...ええ、そうね。」
お母さんの返事に少し引っかかるものを感じたが、よくわからなかったから、気にしなかった。
「二人共、あまり村の森で遊ばないようにな。」
「「はい。」」
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あれから、半年ぐらい経ったのかな。季節はすっかり冬で雪が積もって村全体が銀世界になる。かなり時間かかっちゃったけど、私も水の手品ができるようになったの!まだ、凍らせたりはできないけど。
「お兄ちゃん!見て!私できたよ!」
「うん。よく頑張ったね、藍。」
お兄ちゃんが私の頭を撫でてくれる。子供扱いしてくるお兄ちゃんを怒ろうと思っても、私の頬が勝手に緩まってしまう。
「私これお母さんに見せてもいいかな?」
「うん。お母さんもびっくりして喜んでくれるよ。」
お兄ちゃんの優しい笑顔に心が暖かくなる。その笑顔に後押しされてお母さんのところへ駆けて行った。
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お父さんは今日は、霧隠れの里に出稼ぎに出ていていないけど、お母さんはいるはず!と探してら、お母さん発見!お母さんは家の前で藁を編む作業をしていた。
お母さんは私達やってきた事に気付いている様子はなく、その顔は真剣そのものだ。作業の邪魔をしてしまうのは気が引けたが、今はこの喜びを分かち合いたい気持ちが強くて、声をかけた。
「お母さん!お母さん!」
「どうしたの、藍?」
お母さんがこちらを向いて微笑む。やっぱり、お母さんって美人だなぁ。幼いながらもそんなことを思う私。まあ、私達のお母さんなんだから、世界一の美人さんに決まってるもんね!
「お母さん、藍が見せたいものがあるんだって」
「あらあら、どうしたの?」
「今からお母さんに手品しちゃうの! お兄ちゃんに教えてもらったの!」
「ふふ、白もしっかりお兄ちゃんやってるわね。」
お母さんが微笑みを浮かべるとお兄ちゃんは顔を少し赤くして頬を掻いていた。私はその姿をとても美しいものの様に見えた。たまにお兄ちゃんは実はお姉ちゃんなんじゃないのか?って疑ってしまう事がある。だって、あんな綺麗な白い肌と黒髪は後ろから見れば、女の子だって思ってしまう。というか、前から見ても女の子の様に見える。
「じゃあね。お兄ちゃんも一緒にやろ!」
「うん。」
「じゃあ、いくよ!せーの!」
そう言って、私達はお母さんに水を使った手品を披露した。お母さんが驚いて喜んでくれると信じて。