☆一輪の白い花   作:モン太

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方針

「................あれ?」

 

ここは......?

 

私は目を覚ますと見慣れた木目の天井を視界に入れる。

 

私達のアジトだ。

 

いつの間に私は寝てたんだろう?

 

微睡む頭を右に傾けるとお兄ちゃんの寝顔があった。

 

やっぱり綺麗な顔だなぁ.........。

 

最近は凛々しい顔でカッコイイと思ってたけど、こうしていたら女の子みたいだなって改めて思う。

 

雪のように白い肌。どこまでも透き通った癖のないストレートな漆黒の黒髪。

 

私もこんな美人だったらなぁ。

 

男のお兄ちゃんに言ったら、怒られるだろうけど、やっぱり可愛いなと思う。

 

「痛!......」

 

起き上がると同時に胸に痛みが走る。

 

服を捲ってみると、胸元を包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 

「そういえば...........」

 

思い出した。私、追い忍に斬られたんだ。

 

あたりを見渡す。特に何かが変わった訳では無い。いつもと変わらないアジトの様子だった。

 

「..................」

 

助かったって事はお兄ちゃんが助けてくれたんだよね。

 

お兄ちゃんを改めて見る。

 

お兄ちゃんは穏やかな寝息をたてている。

 

きっと私の看病もしてくれたんだろう。

 

胸が温かくなる。

 

「..........ありがとう。」

 

私は小さく呟いた。

 

「..........っは!」

 

そこで、私は気づく。と同時に顔が赤くなる。

 

ちょ、ちょっとまって!

 

ここには、私以外はお兄ちゃんと再不斬さんしかい居ないじゃない!

 

私のむ、胸を見られた?

 

私は慌てて捲った服を元に戻す。そのまま自分の胸を掻き抱いた。

 

まだ6歳。全く発育してはいないけど、私もれっきとした乙女。

 

「.....ど、どっちだろう?」

 

お兄ちゃんか?再不斬さんか?どっちに見られたんだろう?...........包帯が巻かれているって事は、そういう事だもんね。

 

そうやって一人で悶々としていると扉が開いた。

 

「よう、目が覚めたか。.......何をしている?」

 

再不斬さんが入ってきた。再不斬さんはお兄ちゃんと私を確認して眉を顰めた。

 

「な、なんでもないです!」

 

胸元の手を素早く戻す。

 

「.......まあいい。早く白を起こして、部屋に来い。飯にするぞ。」

 

それだけを言うと扉は閉まった。

 

「.......ふう。」

 

思わず力が抜ける。気が動転して挙動不審になってしまった。

 

「お兄ちゃん、起きて。」

 

私はお兄ちゃんを揺する。

 

「う....うん?....!!藍!!?」

 

お兄ちゃんが目を覚ます

 

「うんおは....!!!」

 

その瞬間抱き締められる

 

「....心配したんだよ!また藍を失うんじゃないかって心配だった!!僕が護れなかったんじゃないかってすごく心配したんだ!」

 

というとお兄ちゃんがさらに強く抱き締める

 

「だから....もう絶対藍に触れさせない!....僕が藍を守る!」

 

「お兄ちゃん....嬉しいけど....傷口痛むから....」

 

痛い~

 

「は!....ご....ごめん」

 

と言ってお兄ちゃんは離してくれる。

 

だから私は手を握った

 

「藍....?」

 

「お兄ちゃん........私は弱いし、足手まといかもしれない.....でも、それでも!私はお兄ちゃんと再不斬さんと一緒にいたい!支えたい!」

 

「....藍........僕も藍と再不斬さんと一緒にいたい!再不斬さんが捕まるのなんて嫌なんだ....藍を失いたくないんだ!」

 

「....お兄ちゃん........ごめんね....これからは、もっと修行頑張って、お兄ちゃんを守れるように.........再不斬さんの足手まといにならないように努力するから.........」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

藍が目覚めた。僕は心の底から喜び、反射で抱きしめていた。

 

それから、しばらくお互いが涙ながらに自分の想いをぶちまけていた。

 

「おい!お前らいつまで寝てやがる!さっさと来い!」

 

再不斬さんが額に青筋をたてて、部屋に入って来た。

 

「「す、すいません!」」

 

僕達は慌てて、再不斬さんの後を追う。

 

先にご飯を食べてしまえばいいのに、律儀に僕達を待ってくれるこの人は、やっぱり優しい人だと思った。

 

先程の藍の言葉。

 

藍がそんなふうに考えていた事にショックを受けていた。

 

僕が迷わなければ、本当はあの程度の忍は簡単に倒せた。いくら疲労があっても僕には秘術がある。

 

藍を傷つけ、藍が思い詰めるような事をしてしまった。

 

僕は甘えていたのかもしれない。

 

再不斬さんの道具になると言っておきながら、手を下す事に恐れ、いつも再不斬さんに頼っていた。

 

その結果がこれだ。危うく、僕はこの世で一番大切なものを失うところだった。

 

藍を守り、再不斬さんの道具になる。

 

最初に誓ったはずじゃないか。

 

再不斬さんを、藍を、大切な人を守るためには容赦しない。忍びという道具として感情を捨てる。

 

僕は決意を改めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あれから数ヶ月。

 

二人の年齢も7歳を超えた。

 

俺が敢えて追い忍を二人に嗾しかけた結果、白が覚醒した。

 

藍が手傷を負ったが、大きな収穫になった。その藍もあれから少し成長し、下忍でも上位に位置する実力にまでなった。

 

白も実力が大きく伸びた訳では無いが、敵に対する容赦が無くなり、術も技もキレが一段階上がった。

 

暫くは二人の心の傷を癒さなければならないが、それが終われば次は藍に人殺しの経験を積ませる必要があるな。

 

藍は白以上に甘いところがある。初めて死体を見たときの反応もそうだ。

 

白と藍の実力もどんどん離れていっている。双子の兄妹で守る側と守られる側という構図が出来上がっている状態は白の力が発揮されやすい状態ではあるが、このペースで差が開くと今度は藍が白の足手まといにしかならない。

 

二人にとってそれで良くても、俺の道具としてはそれでは困る。

 

早急に藍の成長も促さなければならない。

 

俺の理想のために。


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