ビンゴブックを熟読し、特に霧隠れの忍については徹底的に洗い出した。
そこで見つけた今回の任務に於いて、重要人物。
それは白眼殺しの青。木の葉隠れの日向一族から奪った白眼を霧隠れで唯一扱える忍。この人の存在がある限り、変化の術での潜入は不可能。チャクラの活性化を白眼で見切られてしまう。
つまりは紛れ込むのでは無く、誰かに成り代わる必要がある。それでいて変化で顔を変える事ができない。……つまり結論は
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「おい、そっちに行ったぞ!」
「フォーメーションCだ!」
「水遁・水龍弾の術!!」
「水遁・水陣壁」
視線の先では抜忍と追い忍が戦っている。
抜忍1人に対して、4人で囲んで袋叩きにしている。実に見事な連携で抜忍を追い詰めていき、最後は忍刀で首を刎ねていた。
私達2人は約3ヶ月程、この追い忍部隊を尾行している。抜忍である私達が、追い忍を追いかけるなんて変な話だ。
だけど、今回紛れ込もうとしている部隊が正に眼前の部隊だ。あのメンバーと入れ替わりを狙っている。
だけど、行動にボロが出ないように監視し、入れ替わる予定の人物の受け答えや使う忍術、得意戦術を観察する。
そしてある程度データが取れたと判断した為、今日入れ替わりを決行する事になった。
4人での内、2人は遺体を回収して去った。観察だと約1時間程で戻ってくる筈。
ツーマンセルで動く事で相方に異常があってもすぐに対応できるようにするためらしい。
今はちょうど2人入れ替えを狙ってる訳だから、好都合だけど。
「じゃあ始めるよ。」
「了解。」
「水遁・霧隠れの術」
兄さんが霧隠れの術を使う。みるみると視界は白い霧に包まれる。
サイレントキリングに関しては、実は兄さん以上に得意だ。私の特異体質によるところだと思う。音を頼りにしなくても、何となく気配を感じる事ができる。感知タイプとも違うようだけど、再不斬さんにも良くわからないらしい。
また気配消しも得意だ。霧に紛れて千本を投げる。
投げられた2本の千本は見事に2人の急所を貫き、血の一滴も流さずに絶命した。
即座に遺体から服と仮面を取り、着替える。遺体は兄さんが巻物の逆口寄せで回収した。
行われた時間はたったの7秒。だけど、この交代劇の準備に3ヶ月も使ったのだ。これくらい簡単にいってくれないと時間をかけた意味がない。
そうして待つ事、50分。遺体を運んだ2人が帰ってくる。
「異常はなかったか?」
「ああ、こちらに異常はない。」
「じゃあ、次のターゲットを狙うぞ。」
何食わぬ顔顔でフォーマンセルに加わる。
どうやら疑われてはいないみたい。特徴的な髪色は染めて黒髪にしたし、瞳もカラコンで黒目にしている。声色を変える訓練も問題なくやっていた。暗部の面を被っているから、この程度の変装でもバレなかった。
その後も追い忍として抜忍を2人仕留めた。
そしてそのまま霧隠れへと潜入した。
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5年ぶりに戻ってきた霧隠れの里
クーデターの時の騒がしさはなりを顰め、何処か暗い雰囲気の漂う里内は以前と変わりなかった。
4人で里内を歩き、水影がいる里の中央の建物に入る。
今の恐怖政治を行なっている四代目水影。そんな政治体制故に警戒心が強く、水影本人を見る事はなかった。部屋の中にいたのは、警戒していた青。
「暗部追い忍部隊隊長の青だ。今日も水影様に変わって任務の成果を聞く。」
「本日は抜忍のザシとツー、トンネにロンの4人を仕留めました。」
「了解した。検死班の確認が済み次第。報酬を渡す。各自、明日の任務もよろしく頼む。……では、散!」
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報酬が渡された後、4人は解散した。
殆ど会話はなかった。当然だろう。こんな状況じゃ誰を信じればいいのかわからない。碌に口も利けない環境だろう。私達にとっては都合がいいけど。
私達も怪しまれないように、すぐに家(元の体の持ち主)へ帰った。
案外バレなかった。恐らくだけど、青という人が付けていた右目の眼帯。あれの下が白眼何だろう。変化の術や水分身などのチャクラを使った偽装ならバレていたかもしれない。
水の国に入る際の暗号も3ヶ月間調べていたから問題なかった。
「口寄せの術!」
ボフンと白い煙が出る。中から白いうさぎ2体が現れる。
私が契約しているユキウサギだ。戦闘能力は皆無。故に警戒される事も無いし、路地を走らせていれば、見つかる事も無い。仮に見つかっても口寄せ動物とは思われない。それにかわいい。
1体には霧隠れ里の地図と水影いる建物の見取り図。青を直接確認したこと。水影は現れなかったこと。現在所属している追い忍部隊の構成員の事。またその戦闘能力を記した紙を飲み込ませる。
もう1体には明日の行動の予定をしたためて、それを飲み込ませる。
2体のユキウサギを家の路地に放つ。
地図を持たせたユキウサギは再不斬さんの元へもう一体は兄さんの元へ向かわせる。
こうして潜入1日目は終了した。
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「今回のターゲットは鬼灯三日月だ。」
「どんな術を使う?」
「主に水遁忍術だ。水鉄砲の術は派手さはないが、殺傷力と速度、何より発動時間が短い。不意打ちであの世行きになりかねん。注意しろ。」
「了解です。」
淡々と抜忍を追う。この日も同じように追い忍に紛れて任務を行う。
森を数時間移動すればターゲットを見つけた。
「水遁・水龍弾の術!」
三日月が術を放ってくる。
「水遁・水陣壁!!」
「水遁・水喇叭!!!」
メンバーの二人が防御と攻撃の連携で水龍弾を返す。
私が千本を構えて突っ込む。
クナイと千本で打ち合う。
この人結構強い!!
私の速度に対応してくる。
「水遁・水喇叭!!!」
「チィッ!!!」
それでも4対1は苦しいようで追い詰めて行く。
先輩がクナイを構える。
「終わりだ!!!」
だけど、あっさり躱される。いや、厳密には見当違いな所を振り抜いていた。
「ーーえ?」
「どういう事だ?」
他のメンバーも武器をからぶらせる?
「うわああああああ!!!!!!」
よくわからない状況の中、メンバーの一人が絶叫をあげる。気がつけば、他のメンバーも発狂していた。
どういう事?
そこで気がつく。
蜃気楼………
まさか、幻術?
そういえば、霧隠れの里には二代目水影の鬼灯幻月が蜃気楼を利用した幻術を使用していた話を聞いた事がある。この人も鬼灯一族。なら使えるのかもしれない。
「解!!!」
「「「!!!」」」
メンバーが全員、正気に戻る。
よかった無事で。
この時の私はスパイでありながら、偽りの仲間を本気で心配していた。今に思えば、本当に甘い事だと思う。
「蜃気楼を飛ばす!風遁・大突破!!」
風遁を使えば、敵は丸裸になる。
私は千本を投げる。その千本は三日月の首の秘孔を貫く。
こうして、三日月の捕獲に成功した。それと同時に私には幻術に耐性がある事に気がついた。
幸い誰にも気が付かれていないけど、その後の任務でも私には幻術が効いていなかった。
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それからは地道に追い忍の仕事と霧隠れの情報を集めていた。
里中心の地下には使い手のいない忍刀がある事。
双刀・ヒラメカレイ
この一本しか今の霧隠れには無いそうだ。しかも、もうすぐこの刀に選ばれる忍がいる事もわかった。長十郎という私達と殆ど歳が変わらない少年が持つようだ。
私と変わらない年齢で再不斬さんと同じ七人衆に選ばれるなんて、とんでもない天才だ。これは再不斬さんのクーデターの大きな障害になるかもしれない。
また、水の国の大名家でお家騒動があったらしい。ただ、これはしょっちゅう起こる出来事のようだ。
それから、大物として六尾の人柱力のウタカタという忍を霧隠れは必死に探している情報。
また、追い忍部隊として仕事をする事で追い忍がどうやって抜忍を追っているかもわかった。
これは私達が追い忍に追いかけられた時に役に立つだろう。
スパイ活動から既に4年。もう情報は出尽くしたと見ていい。
『今日の任務にて脱出しよう』
ユキウサギでの文通で兄さんから提案があった。
『了解』
手紙で返事する。
今の班は兄さんとは別になっている。定期的に班員を交代する事で不必要な連帯感を持たないようにしている。
再不斬さんの話で知っていたけど、とことん冷徹な里なんだなと思う。もし普通に霧隠れで育って、再不斬さんが事件を起こさなければ、兄さんとアカデミーで殺し合いをしていたかもしれない。
そう思うと背筋が凍る思いをする。
何はともあれ準備を始めよう。
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今日も抜忍を追いかける。
今目の前にターゲットがいる。
「水遁・水流鞭!」
追い忍の1人が水の縄が放つ。
「クソッ!」
縄が巻き付き捕獲する。
「雷遁・感激派!」
「グアッ!」
抜忍が感電して倒れる。
四人で遺体を取り囲む。
「遺体を運ぶぞ。」
「了解。」
一人が遺体に触れようとした瞬間、紫色の煙が辺りを包んだ。
全員が四方に散開する。
「新手か!?」
皆がクナイを構えて警戒する。だが次の瞬間………
「グッ!」
「うっ!」
「ど、毒か!?」
全員が体から力が抜け、倒れる。
これは煙幕ではなく、毒ガス。
全員が藻がき苦しむが、10分もしない内全員が死んでしまった。
そして毒ガスも完全に晴れ、この地方特有の霧に包まれる。その中から一人、起き上がる者がいた。
それが私。
身体についた土を払う。
この毒煙は私が仕込んだ物だ。もし3対1で戦闘になれば、私の実力では逃げきれない。だから、戦う事なく無力化を狙った。
私にはある体質がある。それは毒や薬物が効かない体質だ。
最初は私のチャクラ不足を補う為に兵糧丸を飲んだ時だ。全く効果が現れず、チャクラが回復しなかった。それから、兄さんとよく集めている薬草。これも実は私には効果が出なかった。
逆に栗霰串丸との戦闘時、奴のワイヤーには麻痺毒が塗られていた。それで兄さんは行動不能になったけど、私には効かなかった。
鬼兄弟との戦闘でもやはり毒が一切効いていない。
別に傷の治りが早い訳でも無い。だけど、どういう訳か人工の薬や毒には耐性がある事がわかった。今回はこの体質を利用した訳だ。
これで534人。
今まで殺してきた人数だ。この潜入任務を始めてから人を殺す事が圧倒的に増えた。いちいち嘆いている暇も無いから、心を無にしてきた。それを人は慣れというのだろうか。
もしそうなら、もし自分が好きなように生きれるなら、忍には絶対ならないなと思った。
再不斬さんの元にいた方が良かったかもしれない。後悔は毎日していた。だけど、それは兄さんに全て押し付ける事と同義。兄妹なんだ。苦しい事は二人で分け合えばいいんだ。
だからごめんなさい。
私は骸となった3人に心の中で手を合わす。
早く兄さんと合流しよう。
「どこへ行く?」
歩こうとした足が止まる。
振り返れば、右目に眼帯を当てた忍がいた。
「………青隊長。」
仮面の下で思わず、顔を顰める。いつも最大限警戒していた。気づかれている兆候は見えなかった。
強いチャクラを感じる。誤魔化しは効かないようだ。
「ここで何をしている?」
発する言葉が不可侵の熱波の如く押し寄せてくる。実力は再不斬さんクラス。
私では到底敵う相手では無い。兄さんでも善戦できるかといったところ。
何故バレたのか、今はどうでもいい。とにかく逃げに徹する必要がある。
霧隠れの術は白眼相手には意味をなさない。
千本を取り出す。
「いくつか問いたい。」
すぐに戦闘になるかと思われたが、相手は印を結ぶ様子を見せない。
どういうことかしら?
「再不斬とは、桃地再不斬の事か?」
何で知ってる?
ここまでバレているなら、私の背後関係も全て筒抜けのはず。隠し事は一切無意味か。
「………そうよ」
「では、いつ潜入した?」
「4年前ね。」
「そうか、ユキウサギは夏は茶色の毛並みになる。夏場でも白いユキウサギがいれば、知識がある者が見れば疑問を持つ筈だ。次は気をつける事だ。」
そういうと青は去っていった。
見逃されたのか?
何で?
疑問は尽きない。今の話を信じるなら、ユキウサギに警戒した青がユキウサギから私達のことを突き止めたのは間違いない。
しかも、あの調べっぷりからしてもっと前から私達の事を知っていた筈。ずっと見逃され続けていたのか。
わからないけれど、早く兄さんと合流しよう。
私は瞬身の術でその場を去った。