「よく戻ってきた。白、藍。霧隠れの状況を教えるんだ。」
白と藍が帰ってきた。正直生きて戻ってくる可能性は5分と見ていた。特に藍の実力はお世辞にも高くは無い。部の悪い賭けになると思っていた。
二人の報告は概ね手紙で見た内容と相違はない。特に藍の情報収集能力の高さは意外だった。戦闘は苦手でも観察眼と分析力に長けている事がわかった。これは藍が俺達の裏方で動いた方が能力を発揮できるかもしれないな。
もしこれが霧隠れの諜報部などにいれば、必要以上に知りすぎて、消されるタイプになっていただろう。
たしかに詰めの甘さもある。最後の最後に青に見つかったらしい。顔を青くして報告する彼女の様子を見るに完全に不意を突かれていたようだ。見逃された理由はよくわからない。藍の予想では青は寧ろクーデターを歓迎しているのではないかと言うが、真相はわからない。だが、生きて帰ってこれた事は評価できる。
白も実戦を積み重ねた事でより実力を付けた。もう俺レベルでもある程度戦えるぐらいにはなったか。
かなり盤石な体勢が出来てきた。あとは資金さえ解決すればいい。今はガトーというスポンサーがいる。こいつの任務を機械的やっていればいい。
最近は波の国の交易路に橋を掛ける輩の妨害工作をする任務ばかりで退屈だが。
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「おい、再不斬!……タズナが消えた!!」
バタン!と扉を勢いよく開けて入ってくるグラサンの男。この男が波の国を牛耳っているガトーだ。
「……タズナ?」
確か橋作りのリーダー格の人物だったはず。
「橋建設の音頭をとっている人物です。」
「……なるほど、それで?」
「私の監視から逃げたんだ。何処かの里にでも助けを呼ばれては困る。すぐに見つけ出して、始末しろ!」
「任務という事だな?」
「ええい!なんでも良いわ!すぐに始末するのだ!!」
此方に怒鳴り散らすと部屋を出ていった。
「どうされますか?」
「戦闘能力もない唯の一般人だ。鬼兄弟でも過剰戦力だろう。……聞いてたな?早速準備にかかれ。」
「「はっ!」」
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「口寄せの術」
ボフンと煙からユキウサギが現れる。
「鬼兄弟の監視をお願い。」
ユキウサギは言葉を発さない。だけど、意図は伝わったようで窓から飛び出していった。
「心配性だね。」
「一般人だけなら、確かにそうかもしれない。だけど、この国の人は皆貧しい。助けを呼ぼうにも忍びを雇えるだけの資本金はない。じゃあ逃げたのか?……多分それも違う。長年ガトーと争っていたんだ。ここで逃げ出すような人では無いと思う。なら安いお金でも助けてくれる忍の伝手があるかもしれない。だとしたら、その忍のメリットは?……… 依頼の報酬では無いのなら、波の国そのもの。この国は雨隠れの里のように大国に挟まれて、戦争では荒廃しなかった。でも物流の要所ではある。実際にガトーが牛耳っているのが証拠。こんな大事な場所なのに、隠里がない。こんな奇跡のような土地は他に無い。なら、他の国が支配力を強めたいと考えてもおかしくない。これなら、少ない報酬でも優秀な忍が派遣されるかもしれない。」
「考えすぎじゃないかな?」
「杞憂ならいいの。」
そうしてユキウサギと鬼兄弟を見送り、帰ってきたのはユキウサギだけだった。