戦争が始まる。きっと敵も味方も多くが犠牲となる。出来るだけ、犠牲者を減らしたい想いはあれど、そんな悠長な事も言ってられないのが戦争。今回、戦力を頼りに派遣されたからには、私が一番多くを殺してしまう事も考えられる。
今更ながら、どんどん兄さん達に顔向けできなくなっていく。きっと私が死んでも兄さんのいる天国には行けないだろうな。
でもそれもいいかもしれない。今の犯罪者の私を兄さんが喜んでくれるはずがないから。そんな姿を見せずに済むならそれもいい。
戦況は良くないようだ。当然だろう。雲隠れは忍五大国の一角を担う最強国家だ。それに小国一国で未だに生き残っていることが奇跡だ。理由として考えられるのは、その狭い国境。
狭い国境が、雲隠れの大群を押し留める効果があるんだろう。だから持ち堪えられる。少なくとも数の不利を緩和している。
だけど、質は覆せない。
雲隠れの豊富な人材に対し、霜隠れは殆どが中忍レベル。極僅かに上忍クラスが数名いる程度だ。
これでは雲隠れの名のある忍などには全く歯が立たない。
「依頼により、参上しました。暁のコンと申します。」
「良く来てくれた。霜隠れ上忍でここの指揮官を勤めているトーキだ。戦況は察しておろうが、此方が押されている。お主の働きで戦況が好転する事に期待しておる。」
『おい、女一人で大丈夫なのか』
『高い金を払ったんだぞ。これで失敗したんじゃ目も当てられない。』
ギャラリーの声が聞こえる。
もう少し聞こえないように言って欲しいものだ。
「わかりました。早速現場に向かいましょう。」
「ああ、頼む。」
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最前線へ向かう途中で水分身を使う。15人程作って、国境の拠点に穴が開かないようにそれぞれを配置した。
本体の私は最も強力な敵がいる場所へ向かう。
拠点に着いた。戦況はやはり圧されていた。霧隠れの忍との戦闘で次々に簡易的な医療所に怪我人が運ばれる。腸が腹部から溢れだすを片手で押さえながら満身創痍の状態でやってくる者、重度の火傷で男女の区別すら付かない者。怒号や苦痛の声で溢れていた。
「援軍か!……よく来てくれた。」
此方に気が付いた霜忍が嬉しそうに駆け寄ってきたが、此方が一人だと気付いて一気に落胆してしまったようだ。
「申し訳ありません。援軍と呼べる程の力添えはできませんが、ご協力します。」
『俺たちは必死だってのに、外から来る連中は金儲けだけが目的なのかよ!』
小声が聞こえる。負傷した者達の目を見るに皆が似たような想いなのだろう。所詮は遊びに来ただけの外様。まあ、一人しか派遣しなかったリーダーもリーダーだ。とはいえ、暁は10人しかいないからどちらにせよ。大群をよこす事は無理だ。
そのかわり一人一人の仕事ぶりで数を補うとしよう。
「早速、頼む。ここから5km先まで敵が来てる!!何とか食い止めてくれ!!!」
随分と適当な指示だ。それ程までに追い詰められているのか。
「わかりました。では向かいます。」
瞬身の術で一気に戦場に向かう。
成程。大体が5対1。それに向こうは上忍が多数。……これでよく耐えれたものだ。
「何奴!?」
早速一人が刀で斬りかかって来る。
身体を半歩避けて、千本で首の秘孔を突く。
突かれた者は仮死状態となって倒れる。
こんな多勢に無勢の状況なら、霧隠れの術を使いたいのだけど、おそらく霜忍が対応できないだろうな。
とりあえず、これ以上敵にも味方にも死傷者が増えにくように、私にヘイトを集めよう。
「水遁・破奔流」
雲忍に向かって無差別に鉄砲水を浴びせる。
人数が多い事で適当に放ってもヒットする。
「はああ!!雲流・火炎斬り!!!」
破奔流から逃れた者が斬りかかってくる。
雲隠れも忍刀遣いが多いようね。
さっきと同じ要領で首に千本を突き刺そうとするが、クナイが飛んできて阻止される。
「姉ちゃん!サンキュー!!」
「アツイ!!もっとクールになりなさい。」
「「はああ!!雲流・三日月斬り!!!」」
木ノ葉流の三日月斬りは見た事あるけど、雲流は初めてね。
左右から男女が斬りかかってくる。
「風遁・烈風掌」
斬撃を風圧で逸らし、男性の腕を掴んで思いっきり、女性に向かって投げる。その投げた反動を利用して、飛んでくるクナイを回避。フリーになっている火炎斬りを放つ忍に千本を投げる。
「カルイ、オモイ!引きなさい!!」
「「ハイ!!」」
いい判断。即座に間合いを取り直す判断をしたのは、あの金髪の女性。見たところ、上忍で指揮を担っていると見ていいか。
凄い体付きね。線の細い私の体型とは正反対。暁のマントを羽織っていると余計に女性扱いされない私からしたら羨ましい事この上ない。
そんなどうでもいい事は、頭の隅に追いやる。
せっかく、数の有利を取ってるんだから、全員が突っ込んで団子状態になるのは避けたいよね。
「みんな、間合いは広めに取りなさい。」
「はあ!?何でだよ!…こっちが圧倒的に有利なんだから、さっさと決めちまおうぜ!」
「カルイの言う通りだぜ!ここはアツイ一撃で終わらせようぜ!!」
「もっとクールに相手の力量を見て言いなさい。相手はかなりの手練れよ。」
「やばいよ。こんなの相手にしないといけないとか……。ダルイ隊長じゃないと相手にならないんじゃ……」
「だあぁぁっ!お前はいつもネガティブなんだよ、オモイ!!」
随分と賑やかな小隊ね。さて……
「お話は終わりましたか?」
瞬身で彼らの目の前まで移動する。
「「「「!?」」」」
「水遁・破奔流」
彼らの目の前で鉄砲水を放つ。
刀を持っている3人が一斉に散開した。
いい反応。
リーダー格の女性は逃げずに術を放ってきた。
「雷遁・感激波!!!」
返す刀で雷遁を放ってきた。
「風遁・風切りの術」
「火炎斬り!!」
私の風遁を利用して、巨大な炎の斬撃が飛んでくる。
「水遁・破奔流」
「雷遁・感激波!!!」
これじゃイタチごっこね。
数は向こうが有利だから、仕方ない。
瞬身の術で距離を空ける。
「何て速さの瞬身だ……。」
「何をビビってんだ!!ビー様や雷影様に比べれば、遅いだろ!!」
「その二人を基準にしないといけない時点で、ヤバいって。」
「秘術・千殺水翔」
お喋りのところ悪いけど、奇襲させてもらうよ。
千殺水翔を囮に、もう一度瞬身で接近。アツイさんを蹴り飛ばす。
やっぱり、忍術合戦よりも体術の方が得意だ。
「アツイ!!」
「くっ!」
「このぉ!」
オモイさんとカルイさんが斬りかかってくる。
カルイさんの刀を左手の人差し指と中指でつまむ。所謂白羽取ってやつだね。
そのままオモイさんの刀の軌道へカルイさんの刀を持っていく。
カンッ
二人の刀が衝突して弾かれる。動揺しているオモイさんの足を引っ掛けて体勢を崩させる。
そこにサムイさんがクナイで妨害してきた。そのクナイを右手キャッチして、カルイさんに投げる。左手で千本をサムイさんに投げてこれ以上の妨害を阻止、そこで体勢を立て直したオモイさんが再び斬りかかってくる。前方に向かって跳躍して回避。
「バカめ!!4人相手に空中に跳ぶなんて自殺行為だ。」
成程、上手く嵌められた訳か。
下をみれば、ちょうど四方を取り囲むように全員がいる。
そして、クナイでが全方位から飛んでくる。
起爆札付きね。生半可な回避や弾き返しはできない。
私は空中で身体を捻り、千本をサムイさんとカルイさんのクナイに投げる。
衝突したクナイと千本は軌道を変えて、飛んでくる全てのクナイの軌道と起爆札の何枚かを射抜いた。
ドカァン!!!
爆風も計算に入れてクナイを弾き、爆風を利用して包囲網を離脱した。
近くで爆風に晒されたカルイさんとアツイさんが負傷する。
「くっ!」
「はあ、はあ…はあ。」
「はあ……はあ」
「…………」
私は何とか無傷で着地する事ができ安堵する。
ふう。今のは危なかったわね。少し油断しすぎかしら。
「……まだ、続けられますか?…引いてくださるのなら、追いかけるつもりはありませんが。」
「テメェ、舐めた口聞いてんじゃねぇ!!!お前なんか「やめろ、カルイ。引くぞ」……ちっ」
「今のを見ただろ。こいつはまだまだ力を隠してる。息一つ乱れていないんだ。私達よりも遥かに格上よ。恐らく、ビー様や雷影様でないとこいつを仕留めれないわ。」
「クッソ!!……雷影様に申し訳ねぇ!!!」
「とにかく今はあいつの事を雷影様に報告だ。行くよ!」
そうしてサムイ小隊は撤退した。
それから、同じ様に袋叩きに遭ってる霜忍の方の所に駆けつけては、雲忍を撤退に追い込んだ。
最初に破奔流を当てたことが幸いして、敵の足並みは崩れていた。お陰で此方の被害はかなり押さえれた。
私以外のところでも水分身が担当したエリアも被害を食い止める事に成功していた。
これで何とか霜隠れの人達の悲壮感を払拭できればいいのだけど……