☆一輪の白い花   作:モン太

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ツーマンセル

ゼツに呼び出されて向かって見れば、小さな小屋。

 

その中でデイダラが青い顔で眠っていた。

 

「ちょっと、どうしたの!?」

 

話を聞けば、どうやら頬と腕についた切り傷から毒が介入したようだった。

 

デイダラは意識はあるものの、グッと固く目を閉じ、毒の浸透に耐えている。 

 

「どうだ。解毒できるか?」

 

私の後ろでヒルコの尾がゆらりと揺れる。

 

「私に医療忍術の心得はないわよ。」

 

「普段薬を作ってるじゃないか。」

 

「薬は作れるけど、それだけよ。かなり強い毒。任務で?」

 

とりあえず解毒薬を用意する。

 

「いや、追い忍だ」

 

その呟きにサソリが小さく舌打ちした。

 

「どいつもこいつも、油断しやがって」

 

本当にそうだ。つい最近忠告したばっかりなのに。

 

「…う…」

 

デイダラが痺れと苦痛に顔をゆがめるのを見て、早速解毒薬を飲ませる。

 

「デイダラを狙って…」

 

「いや。砂の追い忍だ。それゆえ毒が強い」

 

「……え?砂の追い忍って事はサソリがターゲット?」

 

「他の抜け忍を追っていたようだがな。俺を知る奴がいて戦闘になった」

 

「じゃあ、デイダラは貴方をかばって?」

 

私の問いに、サソリが無言で踵を返す。

 

その動きに合わせたように、デイダラが小さくつぶやいた。

 

「避けた」

 

「え?」

 

視線の先、デイダラは痺れる腕を持ち上げて、人差し指でサソリを指す。

 

「避けたんだ」

 

「避けた」

 

もう一度言ってデイダラは腕をポトッと布団の上に落とし、苦痛に顔をしかめる。

 

短いその言葉に、大体のことを察した。

 

追い忍の毒の攻撃。

 

クナイか手裏剣かその手法や状況までは分からないが、サソリなら避けずとも傀儡を使ってうまくはじくと思い、デイダラは後方で何か仕掛けようと準備していたのかもしれない。

 

だが…

 

砂忍の扱う毒が強いのを知っていて…

 

デイダラが後ろにいるのを知っていて…

 

「避けたんだ…」

 

ジトリとサソリを睨む。

 

「フン」

 

サソリは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 

「そいつの油断だ」

 

「仲間でしょ。」

 

「砂の毒はきつい。傀儡に着くと、変色するかもしれないからな」

 

「……………はあ。とりあえず調合表見せて。」

 

「それはできない。オレの秘密だからな。」

 

「…ねぇ。まだゴネるなら私怒るよ。」

 

少し怒気を放ってサソリを睨む。

 

「……チッ。」

 

サソリが巻物を渡してくる。

 

「…5分だ。5分だけ見せてやるから覚えてさっさと返せ。」

 

早速目を通していく。

 

今自分の手持ちの薬草で解毒できるのか。

 

先に飲ませた解毒薬で副反応が起きないか、即座に頭の中で整理する。

 

そして巻物をサソリに返した。

 

「ちょっと待ってて。」

 

「早くしろ…」

 

「…………」

 

呆れて思わず睨みつけようかと思ったが、先に解毒薬を調合してからだ。

 

巻物を広げる

 

「口寄せの術」

 

調合器具を口寄せする。

 

頭の中で整理した薬草も口寄せして並べる。

 

そして作業すること、1時間。解毒薬が完成した。

 

「とりあえず、急拵えで作った物だけど、大分楽になると思う。…その前に毒抜きね。」

 

仮面を外す。

 

デイダラの傷口に口を当てて血と傷口周辺の毒を吸い出す。

 

「お前、直接吸って平気なのか?」

 

サソリが驚いた声を上げる。

 

「どうせ数時間も経ってしまっているから、傷口周辺の血液の毒素は薄くなってるわ。今のは解毒薬を飲んだ後にまた、傷口周辺の毒に侵されないように吸い出しただけ。」

 

まあ、本当の事を言えば、毒物に耐性があるだけなんだが。

 

傷口を消毒する。

 

「……う…」

 

強い痛みはないものの、違和感とピリピリとした刺激を感じ、デイダラが顔をしかめる。

 

沁みるけど我慢して。

 

「解毒薬を器に入れてもらえる?」

 

デイダラに多少は罪悪感を感じているのか、サソリは「分かった」と素直に手伝う意思を見せる。

 

そうして、3度作業を繰り返し、ようやくほとんどの毒を消し終えた。

 

「あとは明日の朝、解毒薬を飲めばもう心配はいらないと思う。だけど1週間は安静にしたほうがいいかも」

 

「そうか」

 

 サソリの低い声で返事する。

 

「コン。」

 

デイダラがまだ少し顔をしかめながら体を起こす。

 

「まだ無理だよ」

 

しかし、デイダラは割としっかりとした動きで起き上がった。

 

「いや、もうここまで来たら起き上がれる。うん」

 

両手を何度か握って、にっと笑う。目が合った瞬間、デイダラが驚いた顔をする。

 

「お前、そんな顔してたんだな。」

 

「どんな顔でもいいでしょ。」

 

「違いない。」

 

デイダラが小さく笑う。

 

「オイラ、毒の耐性は強いほうなんだ。子供の時から、免疫つけるために色々飲まされてるからな」

 

「そんな…」

 

壮絶な子供時代を垣間見て、言葉が出なくなった。

 

「今回のはきつかったけど、まぁ死ぬほどじゃねぇぜ。うん」

 

体を伸ばしながらまた笑う。

 

当たり前のように口にされた過去の事実。

 

「無理しないでね」

 

「うん?大丈夫だって。ありがとな、コン。」

 

「…うん」

 

サソリの声が続いた。

 

「デイダラ、動けるのか」

 

「あー。1週間もいらねぇけど、2・3日は難しいな…うん。痺れで手がうまく動かねぇ」

 

「役立たずめ」

 

チィッとヒルコの奥から聞こえた舌を打つ音に、デイダラのこめかみがピクリと揺れる。

 

「誰のせいっスかね」

 

「お前の油断だと言っただろう。オレの動きを見てなかったからこうなったんだ」

 

「いやいや、あそこは旦那がはじいてからの、オイラの喝だろ!うん!」

 

「お前の爆破ですべて飛ばしてからのオレだろ。普通に考えれば」

 

「くそー!かみ合わねぇ!」

 

痺れの残る手で髪をぐしゃっとつかみ、デイダラはむすっとそっぽを向いた。

 

「せっかくこの間手に入れた新しい粘土で盛大にやってやろうと思ったのによ。うん」

 

その言葉に、サソリが少しあざけるような口調で続く。

 

「二度と毒に負けないように、この間手に入れた【釉薬の秘伝書】から作った毒を飲ませてやろうか。新しい免疫が付くぞ」

 

「いらねぇ!」

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。あんまり騒いだら、もっと長引くよ。とにかく今は体を休んで」

 

私の言葉に従い、デイダラは体を横にする。

 

「でもよ。旦那、どうする?」

 

布団をかぶりながらのデイダラの言葉にサソリがしばらく黙してから答える。

 

「任務の日取りは変えられん。明日の夕方、オレが忍び込ませた手下の潜脳操砂の術が解けるからな。必ず落ち合わねばならない」

 

「明日任務だったの?」

 

「うん?ああ」

 

「でも明日はさすがに無理だよ」

 

サソリに視線を向ける。

 

「役立たずめ」

 

その言葉にデイダラが言い返すより早く、サソリは部屋から出て行った。

 

「む、むかつくぜ…。うん」

 

デイダラは顔をひきつらせながらフンッとそっぽを向いたが、すぐにこちらに振り返った。

 

「なぁ、コン。もう帰るのか?」

 

そのつもりにしていたが、デイダラの経過も気になり、首を横に振った。

 

「明日の朝まではいる」

 

デイダラは「そっか」と嬉しそうに笑った。

 

「デイダラは、なんで暁に入ったの?」

 

ついとそんな言葉が出てしまい、ハッとした。

 

質問には質問が返ってくる…。

 

私もあまり言いたくない過去を話さないといけない。

 

「それは…」

 

ぼそりとデイダラが口を開いた。

 

「それはイタチのやろうが…」

 

「え?」

 

思いがけない名前が出てデイダラを見る。

 

その視線に、デイダラは少し黙り「なんでもねぇ…」とそっぽを向いた。

 

どうやらイタチと何か関係しているようだったが、それ以上話す気がないデイダラの雰囲気に、私も口を閉ざした。

 

「それより、コン」

 

しばらくしてからデイダラが向き直る。

 

「大丈夫なのか?」

 

「何が?」

 

「……正直、今までお前を見てて、暁は合ってないんじゃないか?」

 

「え?」

 

「何でお前みたいな奴が抜忍をやってるのか聞かねぇよ。でも、無理してるんじゃないのか?」

 

「違うよ。別に無理なんかしてないよ。」

 

「そっか…」

 

同じように笑ったデイダラ。

 

突然サソリが低い声をかけてくる。

 

「とりあえず、明日からの任務は組織との話で鬼鮫と行く事になった」

 

「…え?」

 

「鬼鮫の旦那と?」

 

「日程は変えられない。だが我々は基本ツーマンセルだ。お前が動けないなら他に誰か連れて行くしかない」

 

それなら私は何なのだ。殆ど一人で活動しているぞ。

 

「それで、鬼鮫さんを」

 

「そうだ。ちなみにデイダラ、お前は明日本拠地に放り込みに行く。オレが帰るまで待ってろ」

 

その言葉に、デイダラは「ゲ…」と顔をゆがめた。

 

「ぜってートビがうるせぇ。うん」

 

うんざりしたようにそう言い、大きな欠伸を一つする。

 

「騒ぎすぎだよ。もう寝て」

 

デイダラはまだ何か言いたそうな顔をしてはいたが、さすがに体の疲労を感じたのか、促されるまま横になり、すぐに寝入った。

 

「明日こいつが起きたらすぐに出る」

 

「そっ。今度は二人とも仲良くね。」

 

サソリが何か言おうとしてくるが、無視して小屋から出た。とりあえず、明日の朝までは経過観察かな。

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