☆一輪の白い花   作:モン太

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代償

「…ク……クロ………」

 

「…シロ姉さん?」

 

手足が震える。指先まで感覚がなくなるようだ。砂漠の真ん中なのに、酷く寒い。なのに身体を流れる汗が止まらない。

 

ダンゾウと大蛇丸は繋がってる。なら、クロの生態情報を持っていても不思議ではない。

 

そう、理屈はわかる。だけど、心が拒否していた。

 

クロはダンゾウに騙されていた。私の為の生贄。それが彼女だと知った。

 

不幸ではある。だけど、しがらみからは解放されたはずなのだ。

 

なのに今も私の所為で彼女を苦しめる事になる。

 

それが我慢できない。次第に頭が熱を持つようになる。

 

「大蛇丸ゥゥゥゥウウウウ!!!!!!!」

 

大蛇丸を斬り殺そうと足を踏み出す。

 

「!?」

 

だけど、クロが回り込んできて進路を塞ぐ。

 

それだけで私の激情と脚が止まってしまう。

 

「あれ?…体が勝手に……」

 

クロは戸惑いの表情になる。

 

状況の目まぐるしい変化に戸惑ってるんだろう。

 

「……うっ!」

 

「クロっ!」

 

突如、クロが頭を押さえ出す。

 

「……なに、これ………?」

 

「クロッ!……しっかりして!!」

 

私がクロに駆け寄ろうとした瞬間、頬をクロの忍刀が割いた。

 

「痛っ…」

 

「い…いや、…体が勝手に……そんな…姉さんを殺すなんて………」

 

穢土転生の命令に抗おうとして苦悶の表情を浮かべるクロ。

 

「ね…姉さん……助けて………」

 

次の瞬間、クロから表情が抜け落ち、機械の如く斬りかかってくる。

 

クロッ!……意識が!

 

完全に操られてる。

 

左から斬撃が来る。それを氷剣で受ける。

今度は鋒を変えて、手を狙って来る。それに合わせて私も手首を捻って忍刀を弾く。

忍刀で突きが放たれる。氷剣の腹でガードする。

今度は右から来る斬撃を身体を左に動かして氷剣で受ける。

 

「あら、反撃しないの?…そのままじゃジリ貧よ。」

 

遠方から大蛇丸が煽って来る。

 

クロに攻撃なんて……

 

機械的に振われる刀をいなす。クロの剣は下忍レベル。精々が中忍レベル。このまま防御していれば私がやられる事はない。だけど、それで終わらない事も事実。

 

上段から振り下ろされる刀を弾く。晒された胴体に剣を振り抜く。

 

「貴女にその子の首を刎ねる事ができるのかしら?……また、殺す気なの?」

 

大蛇丸の声に私の剣がピタッと止まる。

 

脳裏に蘇る彼女の生首。

 

首を刎ねるつもりなどはない。それでも剣が止まってしまった。

 

そして、クロが上がっていた腕を振り下ろしてきた。

 

鮮血が舞う。

 

左肩から斜めに切り裂かれた。

 

ガクッと足に力が抜けかかる。

 

「フッ、これなら楽しめそうね。」

 

機械的に動いていたクロが止まる。

 

ビクッと震えたかと思えば、口を開いた。

 

『……お前の所為だ。』

 

「え?」

 

横に一閃される剣。

 

でもそれをガードする事ができなかった。砂漠に私の血が飛び散る。

 

彼女の口から出る怨嗟の声に恐怖し、身体が動かなくなったからだ。

 

『お前が私を騙した。』

 

「…ち、ちが……」

 

『お前が私を殺した。』

 

「……ち、違うの……」

 

『いいや、違わない。お前が殺したんだ。』

 

「……ご…ごめんなさい………」

 

砂漠が私の血の色で染まっていく。

 

『何でお前はのうのうと生きてるんだ?』

 

「…………」

 

身体に言葉と忍刀の刃が次々と刺さっていく。

 

『私はお前を一生許さない』

 

その言葉で遂に私は膝を着いてしまう。

 

涙で滲む視界の中、真っ赤になった砂に忍刀を振りかぶる影が見える。

 

それでも俯いたまま顔を上げる事ができない。

 

そうして目を閉じたその時。

 

頭上で金属同士がぶつかる音が響く。

 

顔を上げれば、クロの刀を砂鉄の棒で止められていた。

 

「おい、いつまで無様晒しているんだ、小娘。」

 

「……サソリ?」

 

「そいつはただの人形だろう?……惑わされて大人しく斬られるのは、罪滅ぼしでもないぞ。……ただの自慰行為だ。」

 

サソリは此方を見ているわけではない。大蛇丸と三代目風影の相手に集中している。デイダラも加勢して戦ってる。私だけが、俯いて泣いている。

 

「……いつまでそいつの魂を苦しませるつもりだ?姉妹なら、救ってやれ。」

 

クロの顔を見る。無表情に私の返り血を浴びた顔。返り血が涙のように、正気の無い瞳から流れていた。

 

私はゆっくりと立ち上がる。

 

「……ありがとう、サソリ。」

 

「……ふん」

 

本当は気が付いていた。さっきの言葉も大蛇丸が操作して、クロが吐き出した言葉のような錯覚をさせていただけだって事に。それに気がついていながら、斬られていた私をサソリは見抜いた。だから、自慰行為だと断じ、甘えるなと叱ってくれたんだ。

 

砂鉄が散っていく。自由になったクロが飛びかかってきた。私はそれを避ける事なく、クロの体を抱きしめた。

 

「ごめんね、クロ。」

 

「…………」

 

「……ゴフッ」

 

クロの忍刀が腹を貫いてきた。思わず血を吐き出してしまうけど、それでも離さない。

 

「辛い想いをさせて、ごめんなさい。……不甲斐無い姉でごめんなさい。……貴女を護れなくてごめんなさい。……それでも私は貴女の分も生きていくつもりよ。……だから、おやすみ、クロ。」

 

クロの身体から力が抜ける。

 

「ね…姉さん。」

 

塵が舞い上がる。

 

「……ありがとう…………」

 

クロの体が完全になくなり、中から知らない男性の遺体が出てきた。

 

これが穢土転生で生贄にされた人………

 

私は大蛇丸へと視線を向ける。

 

三代目風影同士の激しい大規模な戦いに、デイダラの爆撃と大蛇丸が口寄せした大蛇が暴れ回る戦場は混沌を極めていた。

 

お腹を押さえながら歩く。

 

重症ではあるけど、まだ戦える。

 

走る事はできない。お腹の傷が痛んで仕方ない。

 

でも、やれる事はできる。

 

「氷遁・万華氷剣」

 

虚空に無数の氷剣を作る。数百本の総列の氷剣の鋒を大蛇丸へと向ける。空が青いから見えにくくて丁度いい。物質感知系なら気が付かれているだろうけど。

 

私はサソリとデイダラに被害が及ばないタイミングで、数百本の剣を射出した。音速で飛来する剣弾を防ぐ事が叶わず、三代目風影が粉々に砕けた。

 

「なに……!?」

 

続けて、大蛇も氷剣の雨に晒されて死亡する。

 

「口寄せ・三重羅生門!!」

 

巨大な門が大蛇丸の前に現れる。氷剣の雨に門は粉々に破壊されるが、3枚目を砕き前の剣弾を撃ち尽くした。

 

「……ふふふ、残念だったわね。怒りに任せて、術を放っても私には届かないわ。」

 

「コン!!……大丈夫か!」

 

デイダラが此方に気が付いて、駆け寄って来る。

 

「空からの攻撃はどうしたの?」

 

「悪い、迎撃されちまった。……って、それよりもその怪我、大丈夫なのかよ?」

 

「……問題ないわ。さっさとあいつを倒そう。」

 

再生した三代目風影の穢土転生が突如解除される。

 

「あら?術の拘束が弱かったのかしら?」

 

どうにも、穢土転生の術を完璧には扱えていないようね。

 

大蛇丸は流石に不利を悟ったのか、アジトへと逃げ込む。

 

「逃すか!!」

 

デイダラが小型の鳥タイプの起爆粘土を追従させて、アジトごと爆破した。

 

「芸術は爆発だ!!…喝!!!」

 

「……おいおい。」

 

大蛇丸のアジトが音を立てて崩れ去った。

 

「どうするの?」

 

瓦礫の山を見て私は問う。

 

「…探すしかないだろ。」

 

どうやらこの山から大蛇丸の死体を探そうという事らしい。

 

「……悪いけど、私は傷の手当てをしたいから、休ませてね。」

 

「なら、オイラが傷を見てやる。」

 

「おい、それはこいつの自業自得だ。……俺一人でこの瓦礫の撤去させるつもりか?」

 

「でもよお、旦那……」

 

「こっちの瓦礫はお前がやった事だぞ、デイダラ。」

 

「あー、はいはいわかったよ。」

 

「二人とも覗いたら、殺すからね。」

 

「……てめぇが負った傷だろう。何偉そうな事を言ってやがる。寝言は寝て言え。」

 

そういうと二人は瓦礫に向かって歩いて行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「痛ぅ〜」

 

服を脱ぎ、髪留めを外して水遁で汚れた体と傷口を洗う。

 

滝隠れの闇医療忍者に治してもらわないといけないわね。応急処置で包帯は巻くけど、結構重症。

 

体を清めながら考える。

 

今回のクロとの思わぬ再会で考えされる。ずっと目を逸らしていた自分の罪。

 

振り返れば、いつも流れに任せて誰かを失ってきた。兄さんも再不斬さんもクロも。不足の事態に対処できず、誰かに守って貰ってばかりの私。今回だって、サソリに助けられた。

 

いつまでも依存体質ではダメだ。だから私は失う。運が悪いとか、他の所為にするのも間違っている。全ては私に力がないからだ。

 

もっと力を得て、自分の行いに責任を持てるようになるんだ。

 

その責任こそが私が戦い続ける事で証明されるはずだから。

 

体を風遁で乾かして、服を着る。

 

誓いを胸に私は二人の元へ歩き出した。

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