☆一輪の白い花   作:モン太

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変わる心情

岩と石の紛争は呆気なく終わった。元々戦力差の大きい事に加えて、我々暁を3人も雇ったのだ。過剰戦力で一瞬で勝負がついてしまった。

 

任務の報酬をゼツに渡して、帰路に着く。

 

イタチと鬼鮫に別れを告げて、石の国へ向かう。

 

これからやる事があるからだ。

 

戦争が有れば、勿論そこには戦争孤児となった子供がいる。彼らを早急に保護してあげないといけない。

 

すぐに死んでしまうし、運がよくても犯罪者になる可能性が高い。

 

「水分身の術」

 

30人の水分身を作って戦争被害者の捜索にあたる。チャクラがもっと有れば、更に増やせるけど、私のチャクラ量じゃ、戦闘能力を極限に下げても30人が限界。鬼鮫さんのチャクラ量が羨ましい。

 

石の国が風の国のお隣で助かる。距離が短いからすぐに避難させてあげる事ができる。

 

倒れている子供を見つけては、兵糧丸と調合した薬を飲ませる。比較的軽度の症状の子供は近隣の医療所へ連れて行く。重傷者や両親が死んでしまい、完全に孤児になってしまった子供は石隠れの里や砂隠れの里へ預ける。

 

1週間かけて救助活動を行うが、全ての子供を救う事はできない。そこから後は遺体の収用作業に切り替える。

 

死体を漁る動物などを追い払って埋葬してあげる。全ての遺体を収用できるまでに2週間かかってしまう。

 

それが終われば、大きめの石を氷剣で削いで墓石にする。氷の花を添えて手を合わせる。この花は私が死なない限り、自然に溶ける事はない。

 

こんな事はただの自己満足。自分を慰めている行為に過ぎない。孤児院に子供を預ける事は必要な事でも、死んでしまった者達を埋葬する事に合理性はない。それでも、彼らが生きていた事を私だけでも覚えていてあげたいから、こんな事をしている。

 

「いつもこんな事をしているのか?」

 

「手伝ってくれてありがとう。」

 

ずっとイタチが見ていた事は知っていた。理由は知らないけど、特に何か悪さをしてる訳でもないから、無視していた。途中から遺体の収用もこっそり手伝ってくれていた。

 

「いつもじゃないよ。……できない事の方が多いよ。すぐに次の任務とかあったりもするからね。……鬼鮫さんはどうしてるの?」

 

「四尾の情報を集めている。」

 

「手伝わないの?」

 

「焦っても、簡単には見つからない。」

 

「それもそうだけど。」

 

鬼鮫さんばかり働かせるのも可哀想じゃない?……まあ、イタチの方が先輩みたいだから、いいのかもしれないけど。

 

イタチはじっと墓石を見ている。

 

「どうしたの?」

 

「何故顔を隠さない?……普段は面で隠しているのに、孤児を見つけた時などは面をしない理由はあるのか?」

 

「そりゃ勿論あるよ。……顔を見て感謝してくれたら嬉しいし、逆でも構わないからね。」

 

「………逆?」

 

「今回は戦争で攻撃側に回った訳だけど、こうして顔を出していれば、覚えてくれるでしょ?……例え私に恨みを持ったとしても、それが生きる原動力になってくれればそれでいいの。私への復讐を糧に力をつけるなら、それでも構わないって思ってるの。だから、孤児の子供達には顔を隠さないようにしてる。」

 

「………一つ聞いていいか?」

 

「……いいよ。」

 

凄い間を取って聞いてくると何を聞かれるのか身構えてしまう。

 

「………お前は何故抜忍になった?」

 

「抜忍になった理由?」

 

「そうだ。お前のこれまでの行動で、抜忍になる理由が見当たらない。」

 

「それはお互い様じゃないかしら?」

 

「………どういう事だ?」

 

「貴方も抜忍なんて何だか似合わないって思うのよ。」

 

「……オレのビンゴブックは知ってるだろ。……それが全てだ。」

 

「……なら、私もそれが全てよ。」

 

「…………」

 

イタチはどうも納得してくれないようだ。

 

「………はあ、そうね。貴方になら話してもいいかもしれない。」

 

直感的にこのイタチという人物と私は、似たような境遇を辿ってるかもしれないと思ってる。

 

「何処から話そうかな。………サスケ君と戦った事は知ってるよね?」

 

「……ああ。」

 

「じゃあ、その後の話からだね。」

 

木ノ葉に来てからの事を想起する。

 

思い起こされる沢山のトラウマに思わず表情を歪めそうになるけど気合で耐える。

 

「……ふふふ。」

 

「………?」

 

いや、この際この兄貴気取り相手にトコトン甘える事にしようかな。

 

「………あの後、一人生き残った私は木ノ葉へ送られたわ。そこでこれからの身の振り方を火影様に決めてもらう筈だった。」

 

「………筈だった?」

 

「そう、案内された先にはダンゾウが居たわ。」

 

「……!?」

 

イタチの目が見開かれる。

 

「私はよくわからないままに『根』の見習いとして、木ノ葉に身を置く事になったわ。…それからは『クロ』という年下の女の子と数ヶ月間、生活を共にした。そして、大蛇丸が木ノ葉を襲撃した後ぐらいに『クロ』との殺し合いを命じられたわ。」

 

「…………木ノ葉の暗部では有名な話だ。『根』では同じ釜の飯を食った仲間同士で殺し合いをさせる。真に心を殺した忍を作るためだ。」

 

「そうなんだ。………でも私の場合はちょっと事情が違ったのよね。」

 

「…どういう事だ。」

 

「一緒に生活してた『クロ』だけど、彼女は全く忍の訓練を受けていない女の子だったの。それこそアカデミーレベルの忍術しか扱えない正に一般人だったの。」

 

「……それはつまり、」

 

「そう。殺し合いじゃなくて、『生贄』。…それが彼女の運命。それを知らない私達は皮肉な事に姉妹と呼べる位には仲が深まったわ。そして、運命の日。私は彼女に生き残ってほしくて、自死を選んだの。」

 

「………だが、お前は生きてる。」

 

「彼女には明確な目的があった。木ノ葉の孤児院出身だった彼女は、忍になって孤児院にお金を落としたかったそうなの。それを聞いていたからね。…命を譲ったの。………だけど、ダンゾウはそれを許さなかった。血継限界の私を手元に置いておく為に『生贄』を捧げたのに、それを不意にしようとしたから。そして、『クロ』は目の前で首を刎ねられたわ。」

 

涙が出てくる。

 

「……ちょっと…待って、すぐに……落ち着くから。」

 

「…………」

 

イタチが無言で頷いてくれる。

 

本当に優しい人だな。

 

涙を拭って、深呼吸をして落ち着かせる。

 

「ダンゾウは『根』刃向かった私を許さなかった。手足を捥いで、血継限界を増やす為の苗床となれと言ったわ。」

 

あの時は本当に恐怖を感じたわね。逆に言えば、あそこ迄追い詰められたから氷遁に目覚めたのかもしれない。

 

「私はその場から逃げ出したわ。逃げてる中で氷遁にも目覚めたわ。そして木ノ葉から抜けた。」

 

「それが抜忍になった経緯か?」

 

「ちょっとだけ続きがあって、逃げた先で大蛇丸の手下のカブトに待ち伏せされてたのよ。結局、捕まって大蛇丸の元に連れて行かれたわ。そこで全ての真相も知った。」

 

「……真相?」

 

「ええ。私が『根』に連れて行かれたのもカブトが待ち伏せしていたのも、大蛇丸とダンゾウが繋がっていたから。」

 

「やはり、そこは繋がっていたか………。」

 

イタチがボソッと何か言った。

 

「うん?……どうしたの?」

 

「……なんでもない。」

 

「そう?……大蛇丸も私の事を狙っていたみたいで、危うく人体実験を受ける所だったの。だから、死物狂いで大蛇丸と戦って逃げたの。それから2年ぐらい経って、小南にスカウトされたって訳。暁なら大蛇丸とダンゾウから身を護りながら、孤児を助けたりできるって話だったから。………これが私の今までの話だよ。」

 

「そうか。」

 

「大蛇丸やダンゾウに復讐しようとは考えなかったのか?」

 

「え?」

 

「今のお前の力ならそれも可能だろう?」

 

「確かにそうかもしれないね。未だにダンゾウと大蛇丸からは捕獲の為の刺客が送り込まれてくるしね。……だけど、正直にいうと怖いの。」

 

体が震えてくる。

 

「もう大蛇丸より強い事は自覚してるんだけど、それでもあの時のトラウマでどうしてもダンゾウと大蛇丸は怖いの。任務で大蛇丸と戦う時は絶対に一人じゃない時しか戦えないのよ。前はイタチが駆けつけてくれているのを感知できていたから、戦えてただけなの。………失望した?実は私って凄く弱いの。」

 

そう言って笑ってやった。

 

「………別に弱いとは思わない。オレはお前程強い人間は中々居ないと思ってる。」

 

そう言いながら、イタチが私の頭を撫でてきた。

 

思わず目を見開いてしまう。

 

「お前の話を聞いていればわかる。……普通の人間ならそんな運命を呪い、闇に囚われる者が多いだろう。だが、お前は自分を見失っていない。」

 

「……そんな事無いよ。私だって世界が憎いって思ってしまった事もあるもん。」

 

「……だが、お前は他人を救う心を失っていない。気が付いていないようだが、人が信念を貫く事は容易では無い。ましてやお前のような境遇では尚更だ。」

 

「………信念なんて、大袈裟な。」

 

「………よく今まで頑張ったな。」

 

見開いた瞳から涙が溢れる。

 

限界だったのかもしれない。

 

自分はまだやれると思ってたけど、心は悲鳴をあげていたのかもしれない。

 

何でこんなにも簡単にベラベラとしゃべったんだろう?

 

イタチの写輪眼って事はない。私には幻術が通用しないから。

 

だから、これは素直な本心。

 

イタチ相手なら話していいかもしれないなんて上から目線。………本当は私がイタチに聞いて欲しかったんだ。

 

「……うぅ……グスっ…うぅ…………」

 

気がつけば私はイタチの胸で泣いていた。

 

背中と頭を撫でてくれる手が酷く優しい。

 

本当に限界かもしれない。

 

兄さんを重ねてるだけだと言い訳していたけど、この心が暖かくなる気持ちはまるで………

 

「……ありがとう、イタチ。」

 

本格的に駄目になる前に離れて涙を拭う。

 

「ごめん。私の所為で服が濡れちゃったね。」

 

「お前が気にする事じゃない。」

 

「そう。じゃあもう話はいいでしょ。鬼鮫さんを手伝ってあげたら?」

 

「………そうだな。」

 

「イタチ…………?」

 

「………いや、何でもない。では、オレは行く。」

 

「うん、いってらっしゃい。」

 

今度は自然に微笑む事ができた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

コン。本名は雪藍。

 

サスケが里の外で戦った最初の忍。カカシ小隊との戦闘後、木ノ葉へ護送された後の事は知らない。木ノ葉の忍になっているだろうということしかわからなかった。

 

だが、1年ほど前にその存在が暁に加わった。察してはいた。氷遁を使える者がこの世界では殆どいない。氷遁を使う時点で誰か特定する事は容易い。だが、何故抜忍になったのかわからなかった。

 

暁に入るという事は彼女もまたS級犯罪者。

 

だがビンゴブックには雪藍もコンも載っていない。実力だけは確かなものがあるが。

 

オレはサスケと木ノ葉を守る目だ。この新たな加入者が脅威になるか監視する。

 

だが、監視すればするほどに疑問が湧く。

 

オレを相手に全く警戒心がない。いや、オレだけではない。鬼鮫やデイダラ、サソリ、小南にペイン、そしてマダラに対しても本当に仲間であるかの様に振る舞う。暁はS級犯罪者の抜忍集団。集まってはいるが、お互い本当の信頼関係なんて構築している者などいない。振る舞いが抜忍のそれではない。

 

例外は飛段と角都にゼツ。

 

相方のゼツは飛段達に普段向ける敵意は無いが、あまり関わりを持とうとしていない。

 

人間に見えない見た目の為か?…だが、それならサソリも似た様な物だが。彼女なりの何か明確な線引きがあるのかもしれない。

 

オレが監視を続けていく中で、最も脅威を感じた事は、月読が効かなかった事だ。

 

忍界最強の幻術と言っても過言ではない。それが写輪眼でもない忍が抗ったのだ。しかも、彼女自身に自覚が一切無い。

 

それどころか、無理に使用して吐血し、心配までされる始末。

 

彼女は薬の知識が豊富であった。幼い頃から師匠に教わっていた様だ。彼女の薬を始めて飲んだ時は、その身体の軽さに驚いたものだ。

 

それからも彼女はオレに世話を焼き続けた。いや、オレだけじゃない。他のメンバーにも同様だ。嫌っているらしい飛段や角都にも説教しては殺し合いをしている。

 

どう見ても犯罪をする様な人間には見えなかった。

 

だから聞いた。何故、オレを恐れないのか?

 

ビンゴブックで知っているなら警戒する筈なのだ。同胞殺しの汚名を背負ったオレだ。自分の背中が心配になって当然なのだ。

 

理由は本名と共に教えてくれたが、的を得た回答ではなかった。サスケの名前が上がったが、本心ではない様な気がした。

 

だが、それ以上にサスケに危害を加えないか心配になった。正体が雪藍ならば、カカシ小隊に肉親を殺された恨みを持ってる筈だ。

 

だが、それに対しても恨みが無いと笑って答えた。その笑顔に嘘は無さそうだと感じた。それと同時に何故オレを恐れないのか、何となくわかった気がした。

 

そうして偶に一緒に行動し続け、気がつけばオレも彼女に世話を焼く様になっていた。

 

自身の信じがたい行動に驚愕した。

 

まさか、オレが彼女にサスケを重ねているとでもいうのか?

 

オレの困惑を他所に彼女はどんどんオレに懐いていった。

 

鬼鮫とも仲が良く、話し込んでいる所を目撃する事が多々あった。

 

『彼女との会話が心地良い』

 

鬼鮫がふと溢した言葉にオレは驚いた。鬼鮫もオレと同じ同胞を殺した過去を持つ。お互いどういう人間かわかっている様でわかっていないそんなある意味で似た者同士。

 

絶対に口にしないだろう言葉が、逆に鬼鮫の嘘偽らない本心を口にしたんだと確信した。

 

そうして1年が過ぎ、先程彼女が孤児を助ける所を確認する。前からそんな事をしているとは聞いていた。実際に目にしたのは初めてだったが。

 

何故、あの様な者が抜忍になったのか。

 

疑問が湧く。だが、サスケと木ノ葉を守る目の役割としては、そんな事はどうでもいい筈だ。

 

なのに、気になって仕方なかった。仲間を心配し、敵を殺さない様に無力化する。……死んだ他人が貶されているのを聞いて涙を流す。

 

そんな姿の何処かにオレの琴線に触れる物があったのだろう。

 

抜忍になった理由を聞いた。

 

オレ自身も理由がわからない。

 

こんな人間が抜忍になるにはそれなりに壮絶な過去があるだろうと何となくは察している。

 

だからなんだ?……それを聞いて自分を慰めたいのか?

 

オレもよくわからなかった。

 

彼女は口を開いた。だが、やはり内容は残酷な運命を辿った軌跡だ。話しながら、涙を流す彼女を見て、胸が痛くなる感情に戸惑う。もう話さなくていいと何度か言いそうにもなった。

 

最後に自嘲の言葉と共に壊れかけた笑顔を見せられて、思わず頭に手を置いてしまった。オレには似合わない慰めの言葉も言った。

 

泣崩れかけた彼女を抱きしめて、背中を撫でた。

 

何故、オレはこんな事をしている?

 

年下で慕ってくる姿にサスケを重ねたのか?

 

他人に世話を焼きたがる姿にイズミを重ねたのか?

 

人の痛みに涙を流す姿にシスイを重ねたのか?

 

そしてオレの腕から離れた彼女を名残惜しいと感じる己の心情を疑った。

 

戸惑いを隠せないまま、オレは彼女の元を去った。

 

オレはサスケの為に生きているんだ。目的を見失うな。サスケ以外の事は二の次だ。

 

そう言い聞かせても、脳裏にあの涙がこびりついて離れなかった。

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