ユキウサギから連絡が来た。
音隠れの里の湖で、大蛇丸の勢力と木ノ葉の勢力が三尾を巡って争っているらしい。
様子の確認と捕獲されると厄介なので、それの妨害する為に水分身を派遣する。
そういえば、音隠れには来た事がなかったな。大蛇丸の根城の一つだって分かってはいたけど。危険すぎると思って避けていた。まあ、今回は仕方ない。
そうして、水分身の私がたどり着いた先には、湖の中心で3人が小舟に乗っていた。
何してるんだろう?
目を凝らす。
1人は大蛇丸の右腕のカブト
もう1人はこの前戦った晶遁遣いのくノ一。
もう1人は知らない。初めて見る顔だ。男の子だね。
男の子は頭に何かしらの器具を着けて、かなり疲弊している。それを心配そうに見守るくノ一。
様子を見るに三尾を制御しようとしてるのかな。男の子は大蛇丸の一味って言うよりかは、実験体かもしれないね。
どっちにしろ、止めるべきか。
私は茂みから出て、湖の水面を歩く。
向こうもすぐに此方に気が付いたようで、小舟を漕いで、カブトと男の子が去った。残ったくノ一が足止めかな。
私の姿をしっかりと確認してきたくノ一が凄まじい形相で睨んでくる。
美人が睨んでくると怖いわね。
そりゃ相手方からしたら、因縁あるよね。戦闘は避けれそうに無いね。しかも今の私は水分身。スペックが10分の1だ。
だからって、氷遁をおいそれと使えない。ユキウサギの情報通りなら、木ノ葉の忍もやってくる可能性が非常に高いから。
最悪は水分身だし、やられても構わない。
「お前はあの時の氷遁遣い!カブトが言ってた暁ってのがアンタだったとはね!」
あの時は暁の事を知らされてなかったのか。
まあ、今じゃこの近辺で暁の事を知らない者は少ないだろう。
「お久しぶりです。あの時は無事で何よりです。」
しっかり逃げれるように術を放った甲斐がある。
「このクソ餓鬼が!!!舐めてるんじゃねーぞ!晶遁・手裏剣乱舞!!!」
いきなり大量の六角手裏剣が飛んでくる。
千本を取り出し、私に当たる物だけを狙って迎撃する。
「このッ!!晶遁・御神渡りの術!!!」
結晶の棘が水面を走って此方に向かってくる。
足にチャクラを集めて跳んで回避する。
「晶遁・一糸光明!!!」
随分と容赦がないよね。
飛んでくるレーザーを空中で体を捻り、回転さて回避する。
着地と同時に瞬身で接近して千本で斬りかかる。
「チッ!晶遁・翠晶刀!!!」
あのトンファー型の刀が現れる。
水晶の刀で迎撃される瞬間に腕を引いて、フェイントをかける。その瞬間に相手の顎を蹴り上げる。
「グハッ!!」
即座にジャンプして相手の背後をとる。
影舞葉。
左脇腹を蹴り、右足で相手の胴体を絡める。そのまま体を回転させて、左手で殴って、右手で殴りつける。そのまま、左足で顔面を蹴り付ける。その際に右足を離して、最後に踵落としを決めて水面に叩きつけた。
「グゥッ……」
くノ一は蹲って痛みに悶えている。
「すごいですね。まだやれる気力があるなんて。」
くノ一が此方を睨みつけてくる。だけど、どうにも立ち上がれないようだ。
私が足を進めた瞬間。
「晶遁・破晶降龍!!!」
くノ一が術を放てきた。
今の私にこの術を正面から突破するのは不可能。
攻撃される瞬間に飛び退いて回避した。凄まじい水飛沫が上がる。
もう大技ばかり使って。ビショビショじゃない。
易壁としつつもくノ一の気配が遠ざかるのを感知した。
とりあえず退ける事には成功したね。ただ……
水飛沫が治れば今度は15人の忍に囲まれた。額当ては木ノ葉。見知った顔もある。
ナルト君とサクラさんだ。
「暁!!…やっぱり現れたね!」
「三尾を狙いに来やがったか!」
「オレ達がアンタを捕まえる。」
「此奴は二十小隊とも何度か交戦している奴だ。いつも逃げられている。逃げ足が速いのが特徴だ。」
「気をつけて、どんな能力を持ってるかわからないわ。」
「これだけの人数で袋叩きにすりゃあ、捕まえることもできるぜ!」
殆どが中忍。だけど、上忍も一部混ざってる。
5人が上忍で10人が中忍レベルか。
流石に15対1は無理だ。しかも水分身だと尚更。だけど、水分身だからこそ気兼ねもない。
「行くわよ!!」
凄まじい量の忍具が飛んでくる。
くノ一が巻物から大量の忍具を射出してくる。
自分に当たる物だけ目掛けて、千本を投げる。
弾かれた忍具が別の忍具に当たり、見事に軌道を逸らす。
「螺旋丸!!!」
背後からナルト君が攻撃。
屈んで躱しながら、術を発動している腕を掴んで此方に走って来ていたサクラさんへ投げ飛ばす。更に左右から蹴りを放ってくる二人組の対処に移る。
「「木ノ葉剛力旋風!!!」」
「牙通牙!!!」
頭上からも攻撃がきた。
「「八卦空掌!!!」」
前後から空気砲が放たれる。いや、チャクラ砲と呼ぶべきか。
「影縫の術!!!」
それだけじゃない。足元から、影が触手のように波を切り裂きながら迫ってくる。
更に視線を奥にやれば、くノ一の1人が此方に両手を掲げて構えをとっている。
あれは山中一族の心転身の術。罹れば一撃の危険な術。回避できれば、隙が大きい。でもこれだけ多勢に無勢なら、デメリットは皆無。
「水遁・水牙弾」
水遁で両サイドの蹴り技を放って来てる2人に攻撃。足元を崩す。
「水遁・破奔流」
前方のチャクラ空気砲を相殺し、波を起こして影を相殺しにくいようにする。
「風遁・風切りの術」
背後のチャクラ空気砲を相殺。
「風遁・烈風掌」
頭上から来てる突進体術の回転を利用。烈風掌でいなして、即座に離脱。心転身の斜線から逃れる。
着地した瞬間に黒い影を感じる。
見上げると巨大な腕が振り下ろされていた。
「部分倍化の術!!!」
膂力での勝負なんてできない。
やっぱり包囲網が苦しい。抜け出さなければ。
瞬身で張り手をかわして、離脱しようとする。
だが行手を無数の虫が遮って来た。
これは油女一族の寄壊蟲。
足を止めたのが不味かった。
「木遁・大樹林の術!!!」
背後から無数に枝分かれした樹木が襲いかかる。
これって、伝説の木遁忍術じゃ……
「忍法・超獣戯画!!」
小型の鳥が襲いかかってくる。
気配感知をする。
……いた。ユキウサギの場所を把握。私が歩いて来たところから動かずに岸辺にいるね。
それからトビも観察してる。
助けて欲しいんだけど、水分身だからいいか。
木遁の術に突っ込み、槍のように飛んでくる枝を体を回して回避する。
小型の鳥は体を回した際に千本で射抜いた。
近づく事でプレッシャーをかける。
無数に何度も枝分かれしては、襲いかかってくるが、回避は容易い。
遠距離からくる空気砲や影、忍具の雨に寄壊蟲の攻撃も全て術で相殺しながら、身体捌きと速度で回避する。
ただ、防戦一方。攻撃に移る事が全くできない。
遠距離攻撃が止んだら、次は螺旋丸に桜花衝などの体術攻撃に常に心転身の術に気を配って動き続けないといけない。
ジリ貧だね。ただ、貴重な情報も結構あるからできれば持ち帰りたいと思う。
攻撃の嵐の中、咄嗟に巻物に端的に情報を入れる。それを千本に巻きつける。
何度目かの忍具の雨。同じように迎撃と見せかけて、情報付き千本2本を投げる。
一本はトビの元へ、もう一本はユキウサギのところへ。乱戦状態で誰も気が付かない。
千本なんて小さくて細い針。クナイや忍具、起爆札が散乱している状態では誰も気にも止めない。
そうして適当に飛んでいったように見える千本はトビとユキウサギに届いた。
中にはメッセージを書いてある。
“木ノ葉と大蛇丸の手勢多数。デイダラを呼んできて。”
「何で掴まんねーんだ!!」
「恐ろしく速い。」
「術の印の速度も桁違いだわ。1人で全ての術を相殺して来てる。」
「体術も恐ろしく上手です。」
「なに、体術なら我々も負けてないぞ!なっ、リー!!」
「もちろんです、ガイ先生!!」
あれが鬼鮫さんの言ってた体術遣いね。
そして、あの影を操っているのが、飛段を倒したシカマル君。
その他は角都を倒した手練れ。
「はあ……はあ…」
息が切れる。流石に水分身のスペックでは厳しい。
颶風水禍の術なんて大技も使えない。水分身のチャクラが切れてしまう。
「とはいえ、相手も限界に近い。捉えて終わりだ。」
と次の瞬間、水面が爆ぜた。
凄まじい神性の気配を感じた瞬間には跳んでいた。お陰で巻き込まれなかった。
水面に着地。見上げれば巨大な亀の化け物。三尾ね。これだけ暴れてたら、そりゃ出てくるよね。
トビは未だに動いていない。
デイダラを呼んでって言ったのに………
同じ要領で三尾の情報と今し方、交戦した木ノ葉のメンバーと大蛇丸の部下三名の情報をトビとユキウサギに渡す。
千本はトビの顔スレスレを通り、木に刺さる。トビが腰を抜かす演技をしているけど無視。そんなものに構ってる余裕がない。
周りには木ノ葉の忍はいなくなっていた。今ので流された者やそうでない者も撤退したみたい。
包囲網が解かれて助かったけど、逃げ遅れた私は1人で三尾の相手をしないといけない。
情報としてはこれ以上はないだろう。適当に消えればいいけど、一応実力の確認は必要かな。水分身で勝てるとは思わないけど。
眺めていると、三尾の口元にチャクラが集まる。
すぐに足にチャクラを集中。
次の瞬間、大きな水弾が3つ放たれる。
瞬身の術で回避。回避した先で、今度は尾尻が叩きつけられる。
それもかわして走る。
破壊力は凄まじい。だけど、動きが比較的遅くて、直線的だから回避は余裕。
ただ現状の私では傷一つつけることはできないだろうけど。
再びチャクラが口元に集まる。
今度のは大きそうね。
黒いチャクラと白いチャクラが集まり球体を作る。
確か五尾も同じ技を使って来てたね。おそらく尾獣の奥義なんだろう。……技名は尾獣玉だっけ。
三尾に突っ込む。
ここで必要なのは退避ではなく、突貫。三尾の至近距離で尾獣玉を爆発させる。
尾獣玉で三尾にダメージを狙うと共に大きな水飛沫をあげて貰って、ここから逃げ出すためでもある。
次の瞬間、尾獣玉が放たれる。
突っ込んでた状態から今度は全力の瞬身で後方へ飛ぶ。
巨大な水飛沫が上がる。打ち上げられた水が雨のように降り注ぐ。
「ぐっ!」
何とか転がりながらも湖の岸辺にたどり着いた。
まあ、たどり着いたというか風圧で飛ばされたというべきか。
ただ、この程度の戦闘能力なら特に問題はなさそうだ。
「はあ…はあ……はあ」
だけど、水分身の私にとっては限界。
もう動けない。……だから背後からの気配に気付いていながらも回避できない。
背中から胸に手刀が貫通した。その手刀は雷のチャクラを纏っている。
これは雷切。
「ぐっ!」
「油断したな。」
そう言えば、さっきの包囲網ではカカシさんはいなかった。
「シカマルの作戦勝ちだな。……袋叩きで勝てればよし。駄目でも包囲網を抜ける為に能力を使えばよし。それが駄目でも敵が安心したところでオレが仕留めればよしだ。更には外からお前の戦いを分析する事もできる。」
「……成程、知将ですね。」
だけど………
「……それなら、今回は私の戦略勝ちですね。」
そう告げて、私の体は水に還った。