☆一輪の白い花   作:モン太

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既視感

既視感はあった。

 

最初に情報を聞いたのは、飛段と角都と戦う前後の事。

 

五代目が暁の捕獲及び抹殺の為に放った二十小隊から度々会敵しては、逃してる暁がいる事を聞いた。

 

まともに戦う事なく逃げに徹する事と、会敵回数の多さから、影分身である可能性が高い事も挙げられた。他の暁はその戦闘能力の高さから逆に二十小隊が撤退するばかりだから尚更だ。

 

飛段と角都の討伐後、シカマルや五代目と暁の対策を練っていた時も要注意人物として挙げられた。

 

影分身で情報を集めている事から、能力に慢心しないタイプ。頭がキレて隙が少ないとのシカマルの分析だった。どうにか油断を誘わないと尻尾を掴ませてくれないだろうと結論が出た。いつも逃げに徹する事から、実はそこまで強くは無いんじゃないかとの意見もあったが、暁に限ってそれは無いとの判断が下された。

 

そして、三尾を巡って大蛇丸達と矛を交えながら、封印の機会を窺っていた時にチャンスが訪れる。

 

予め暁が現れる可能性が高い事は分かっていた。だから常に三尾のいる湖を感知タイプのメンバーで交代で見張っていた。

 

そして、現れた暁は大蛇丸の部下の血継限界の晶遁を使う紅蓮と戦闘になった。しかも相手は、ずっと能力が不明だった仮面の暁だった。

 

更に朗報だったのが、あの紅蓮を圧倒していた事だ。いつも逃げていた奴が、戦っていた。それもかなり強い。

 

恐らく本体だろうという事ですぐに、この時の任務で来ていた全員で囲んで捕らえる事で作戦が練られた。

 

シカマルが立てた作戦。

 

普段ならツーマンセルで動いている暁だが、好都合な事に一人。今は紅蓮と戦闘している事から、紅蓮に暁の能力を引き出して貰いつつ、体力を奪ってもらう。更に暁が紅蓮を退けて油断したところで、全員で囲んで捕らえる。保険でオレが外から監視する。16人、4小隊もいるからこそできる、贅沢な人員配置だ。更にはガイやヤマト、五代目の右腕シズネさんがいるこれ以上無いメンバーでの作戦。

 

ただ、ここで早速一つ目の誤算が出た。紅蓮が全く歯が立たなかった事だ。写輪眼で見切れない血継限界に、多彩な能力の晶遁はオレですら手こずっていた相手だ。それを体術だけで攻略してしまった。予想を大きく上回る戦闘能力に背筋に嫌なものが流れる。

 

それでも、その様子を見ていたナルトが作戦の続行を主張した。シカマルやヤマト、ネジなどの冷静なタイプは危険だと中止を主張したが、サスケに繋がる可能性があるならと結局敢行される事となった。

 

15人に囲まれる暁。詰みだ。普通であればだが。あれだけの戦闘能力を見せた奴だ。何が起こるかわからない。常に写輪眼で監視する。

 

だが、悪い意味で予想は的中する。写輪眼でも印を見切れない程の術スピード。四代目に迫る程の速度の瞬身にガイ並みの体術。そして白眼を使っているかのような危険感知能力の広さ。恐らく、感知タイプでもある事が予想される。まるで、木ノ葉の里でうちはイタチと対峙した時の緊張感を感じた。

 

だが、手こずってる内に三尾が暴れ出してしまった。

 

流石にこれ以上は危険過ぎるという事で撤退する事になった。

 

だが、オレは監視を続けた。オレは湖の中心から離れた場所にいるからだ。せめて、奴の能力を暴かなければならない。直感でわかった。こいつはイタチ並みに危険だ。

 

そして、三尾との戦闘が始まる。

 

相変わらず巧みな身体捌きで三尾をいなす様は凄まじいが、違和感を感じた。

 

幾ら何でも能力を使わなすぎでは無いか?三尾相手に余裕があるようには見えない。追い詰められているのは、この距離から見てもわかった。あれだけの基礎能力が有れば、ツーマンセルで尾獣を狩る事もできるだろう。だが、一人だ。出し惜しみしている場合では無い筈。

 

まさか、特殊能力が無いのか?確かにあそこまで基礎能力が高い忍は居ない。その点ではあの忍は忍界一の使い手だ。あれがイタチの可能性も考えられるが、恐らくくノ一だ。暁のマントでわかりにくいが、ボディラインから見て間違いない。しかも、ナルト達と年齢にそこまで差が無いように見える。

 

そして三尾がチャクラを溜めて、黒いチャクラの球体を作る。

 

流石にオレも身の危険を感じ、離脱しようとするが、まさかあの暁がその球体に接近し出したのだ。

 

ありえない自殺行為。あれ程の高密度なチャクラを喰らえば、五影でも死ぬレベルだ。それに突っ込むとは、何か能力があるのかと思ったが、なんとあの攻撃から離脱してみせた。

 

『なんてレベルの戦いをしてるんだよ、全く。』

 

思わず悪態をついてしまった。

 

そして確信した。特殊能力はないが、基礎能力だけで、五影レベルに達してる。それこそがこいつの能力だと分かった。

 

そして湖から着地する暁。あれに突っ込んで生還できるなんて、まともな神経ではない。だが、かなりギリギリのようでフラフラな姿は又と無い好機。これ程の使い手は本当に厄介だ。それを確実に仕留める。

 

やはり限界だったようで、簡単に仕留めれた。気が付いていたようだけど、身体が全く動いていなかった。万全だったらと思うと恐ろしいが、ここで打ち取れたのは僥倖。

 

だが、水分身だった。

 

一度も目を離していない。こいつが水分身を使ってる事は一度もなかった。

 

まさか、今までの戦い全部を水分身がやっていたのか!?

 

戦慄する。水分身は本体のスペックの最大でも10分の1しか能力を発揮できない。

 

少ないチャクラ量でできる実体のある分身では一番簡単ではあるが、一番弱い分身でもある水分身。

 

今までのが水分身。つまり本体は10倍の能力を有している事になる。

 

やはり、暁は油断できないと改めて認識する。この情報はすぐに五代目に伝えようと思った。

 

だが、それ以外にも気になった事がある。本当に些細な事だ。

 

髪色と仮面。別に水色の髪色が特別珍しい訳ではない。霧隠れの追い忍の仮面も珍しいものではない。

 

 

 

だが、既視感があった。

 

 

 

とは言え、当時は戦闘力の高さに目を奪われていた為、すぐに思考の彼方へと消えた。

 

その後、サスケが大蛇丸を倒したり、イタチを倒したり、自来也様が亡くなられたり、里にペインがやってきたり、五影会談でサスケが暴れたりと、情勢が著しく変化していき、その対応に追われる事になる。

 

次に相見えたのは、一人で先走るサクラを追いかけた先での事。

 

何故かマダラと戦っていた。あのマダラと互角に渡り合う様は、以前に感じていた危惧通りの戦闘力だった。だが、あの時はサスケの方が優先度が高く、また暁同士で潰しあってくれればと、放置した。

 

その後はまた逃げられた訳だが。一瞬で姿を消したあの術………。まるで飛雷神の術のようであり、あの暁が扱えるのなら、それは間違いなく、暁の中で最強と言っても過言ではない使い手だ。

 

でもそれ以上に気になった事があった。

 

マダラと戦っていた時に使っていた武器だ。彼女は()()()を使っていた。

 

 

 

くノ一で氷遁を使い、水色の髪色に霧隠れの追い忍の面を被る少女。

 

 

 

既視感はもはや無視できないレベルとなっていた。

 

 

 

里に帰った後、オレはすぐに調べた。

 

もしかしたら、あの子かもしれない。だとしたら……

 

オレは波の国で再不斬にあの子を託された。今頃里で平和な戦いの無い暮らしをしてる筈だと思っていた。

 

だが、もし彼女が暁だったとしたら………オレは…………

 

当時の事を調べたが、結果としてはわからないというのが、結論だった。

 

イビキの所まで来ていたのは確かだが、それ以降の足取りが追えなかった。

 

普通なら異常だ。あくまでも敵の捕虜だ。行方がわからないなんてあってはいけない。だが、当時の事を知っているであろう三代目は亡くなり、木ノ葉の里もペインが暴れた為に当時の資料が失われていた。

 

更に調べる必要ある。

 

今の今まで放置していて、今更どの面下げって感じだが、オレの予想が当たってたら、再不斬に顔向けできない。

 

だが、時間がそれを許してはくれなかった。

 

忍界大戦が始まってしまった。世界の命運を握る戦争だ。ナルトを守る戦いでもある。

 

…………敵は暁。

 

部隊隊長を任命された時に再確認された事実に、ガラにもなく手が震えた。

 

『顔色が悪いぞ?…流石のカカシでもこの戦争は緊張するんだな!…よし!我がライバルの為にもオレが一肌脱ごう!…オレ達の青春はこれからだ!!』

 

おまけにこうして、親友に慰めてもらう始末。このままじゃダメだと気合を入れた。オレの肩には忍連合の命がかかってる。

 

そうして始まった第四次忍界大戦。

 

オレの部隊が当たった相手がまさかの再不斬と白だった。最近何かと当時の事を思い出していた為、これも偶然なのかはたまた………

 

だが、状況は更に混迷を極める。

 

オレの部隊が展開している中に氷の翼を生やした天使が降りてきた。

 

もう一度見れば、3年前の姿がチラついた。

 

「…カカシさん。少しそこの二人を私に譲ってくれませんか?」

 

最早、声も彼女にしか聞こえなくなっていた。

 

そして、再不斬の口から決定的な言葉が出る。

 

「………藍か。」

 

「…何!?」

 

自分でも驚く程、白々しいセリフが出たと他人事のように思った。

 

これは単なる現実逃避だ。わかっていてもオレの頭は上手く働かない。

 

そして、明かされる素顔。

 

曝け出された顔はやはり知った顔。童顔な美しい顔立ちはあの頃のまま。しかし、その目付きが変わっていた。

 

一眼見て感じる。こいつは危険だ。

 

とても暗く冷たい眼をしていた。

 

だが、それはサスケのように憎しみに囚われ、闇に落ちた眼とはまた違う。サスケの方は憎しみというある意味人間らしいものがある。

 

だが、これはなんだ?

 

上手く言葉で表せない……まるで水晶を見ているかの様に透き通った冷たさを感じる。それでいて、闇に囚われている様な気配も感じない。狂気に陥ってる訳でもなく、理性を感じられた。

 

マダラの様な闇そのものの眼とも違う。うちはイタチの様な闇を映し出す眼とも違う。サスケの様な闇に囚われた眼とも違う。ナルトの様な力強い生命力のある眼とも違う。

 

言うなれば、抜き身の刀。それが一番しっくりくる言葉だ。触れるもの全てを切り裂く刃。

 

一体、どんな人生を歩めばこんな眼ができるようになるんだ…………

 

人は理解できないものを本能的に恐怖する生き物。

 

正にそれが視線の先にいた。

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