カブトの穢土転生を止めるべく、イタチと一緒に森を駆ける。
イタチは穢土転生で操られていた時から、カブトの位置がわかっていたらしく、そこに向かってる。
「マダラと戦ったと言ったな。」
………その話題は痛い。
「しかも、さっきの話の流れだと一人で戦ってたのか?」
「……マダラに暁を抜けるって言ったら、戦闘になっただけだよ。」
「当たり前だ。……もっとうまくやれるだろ?」
「マダラのあの時空間忍術なら、不意打ちを受けるかもしれないからさ。正面から喧嘩売った方がいいって思ったんだ。」
「………はあ、もういい。……それで、昨日降った雪はお前の仕業か?」
「ん?ああ、そうね。」
「スサノオを無理やり使わされた。それ程の防御をしないといけない危険な術なのか?」
「あれは、穢土転生の魂魄を溶かす雪だよ。……まあ、そう設定しただけでそれ以外も溶かそうと思えばできるよ。」
「成程、カブトが焦ったのも頷けるな。だがーー」
イタチはこちらに向いてきた。
「さっきナルトにも言った事だが、お前にも当てはまる。……一人で全てを熟るとは思うな。確かにオレの想いをお前に託したが、お前一人でそれをやれとは言っていない。だから、ナルトやキラービーにも託したんだ。」
「……大丈夫だよ。私には今まで色んな人に支えられてるから。」
「それだけじゃダメだ。ナルトは今も多くの仲間がいるが、お前の仲間は小南以外、全て死んでしまってる。それでは結局、さっきのナルトと変わらない。心構えはしっかりしてても、現実で誰も支えてくれる人間がお前にはいない……それが心配でならない。」
「死んで尚、心配してくれるなんて、本当に貴方は優しいね。」
「冗談で言ってる訳じゃないぞ。」
「わかってるよ。……でもね、イタチ。私少し怖いんだ。………私が仲良くなった人達はみんな死んでしまう。小南も一度死にかけた。私と関わる所為で、誰かが死ぬのが怖いの。」
「…………」
「…………」
「成程。………なら、小南が助かった理由はなんだ?」
「……それは、小南が死にかけた所を助けたから。」
「なら、そうすればいい。仲間が危機に陥れば、お前が助ければいい。お前が苦しい時には仲間に助けてもらえ。当たり前な事だ。」
イタチが小さく笑った。
すっと胸の内が軽くなった様な気がした。
「………うん、ありがとう。」
雨が降ってきた。
その後、暫く森を駆けていたらサスケ君とすれ違った。
案の定、サスケ君が私達を追いかけて来た。
「待て!!…イタチなのか!?」
「…………」
「待てって…言ってんだろうが!!」
サスケ君のスサノオの手がイタチに伸びる。
それをイタチのスサノオの手が弾く。
ちょっと!私に当たりそうなんだけど!
「このスサノオ…やはりお前はイタチ…!」
「どうするの、イタチ?」
「…まさか…お前までコレを使えるようになっているとはな…」
「なぜアンタがここにいる!?死んだ筈だ!!」
「カブトの術…今のオレは穢土転生だ。今は止まってられない…やらなければならない事がある。」
「そんなの知るか!!アンタがこうしてオレの目の前にいる…聞きたい事が山のようにある!!」
「後にしろ…と言っても聞かないか…」
「アンタが言ったんだ!オレと同じ眼を持ってオレの前に来いと!ならなぜ逃げる!?オレに嘘をついた後ろめたさか!?それとも真実を語る勇気が無いからか!?オレはもうアンタの全てを知ってる…!だからオレは木ノ葉を潰すと決めたんだ!」
「お前と戦った時、言った筈だ……人は思い込みの中で生きている…そう考えられないかと。その現実は幻かもしれないと…オレの真実が本当に…」
「オレはもう幻の中には居ない!!アンタの幻術を見抜ける!これはアンタの眼だ!!」
「強気な物言いは変わって無いが…お前の後の事は人から聞いた…随分変わったと…」
「違う!!アンタがかつてオレの全てを変えたんだ!オレは死ぬ筈だった!両親と一緒にアンタに殺される筈だった!なのに…なぜオレだったんだ!?なぜオレだけ残した!?なぜオレが…!!父や母と何が違う!?なぜオレばかりが…」
「お前は当時何も知らなかった。うちは一族の愚考も何も…子供だった。そして、お前の為だけではない…オレはうちはであるお前の手でいつか裁かれたかったのだと思う。そのためにお前の中の憎しみを利用した。だから失敗したんだ。結局オレはお前に憎しみを与え、里を抜けさせ…罪人してしまった……お前が正しい道を歩いていく事を願っていたのに…オレは死ぬ以前より…お前が違う道に行かぬよう…分かれ道の無い一本道に誘い込むようにした。道案内の立て札を嘘と瞳力で書き換えてな。」
「…何も知らず、オレだけ呑気にその一本道を歩くだけか…!?オレはそんな道、望んじゃいない!!」
「ああ…確かにそうだ。どう行くかは自分で決めるものだ。」
「幾ら立て札を書き換えようと、もうオレの眼はその上塗りを見抜く!」
「フ………」
「何がおかしい!?」
「…いや………道案内は何も立て札ばかりじゃなかったんだな…」
ナルト君の事か……
「オレは本来、死人だ。これ以上は語るまい。」
「アンタは生前、オレに構ってくれず、いつも許せと額をこづき逃げるだけだった。死んだ今でもまだ逃げるのか!?」
「逃げてる訳では無い。言った筈だ。やらないといけない事があると。口寄せの術!!」
大量のカラスがサスケ君に纏わりつく。
「クソ!!」
「…お前はここにいろ。」
イタチがスサノオで岩肌を殴る。
「サスケ君、ほっといていいの?」
「……お前はサスケが入らないように見張っててくれ。」
「………はあ。サスケ君、かわいそう。」
イタチが岩壁に入っていった。
すぐにサスケ君がやってきた。
「そこをどけ。」
私は道を譲る。
あまりにもあっさりと開けた事にサスケ君が訝しむ。
「……いいのか?お前はイタチにここでオレを止めるように言われたんだろ。」
「イタチが勝手に言っただけで、私は了承してませんからね。…まあ、ナルト君に託した手前、あまり多くを語りたくは無いんでしょう。それに兄としてのプライドが邪魔して、素直になれないみたいですね。……まあ、私としては、せっかくお互いの事情を知ったのに、そんな事ですれ違ってる貴方達が不憫で仕方ないので、さっさと仲直りして欲しいと思っています。……だから、どうぞ。」
「………フン。好きにしろ。」
そしてサスケ君の後についていけば、イタチと大蛇丸みたいになってるカブトがいた。
こいつが兄さんと再不斬さんを弄んだやつか。
そんな事を一瞬考えたが、意外にも怒りが湧く事はなかった。
きっと私も同じ穴の狢だからだろう。
「………思うようにはいかないものだ。全く。」
イタチがこちらを悩ましげに見てくる。
私はそれにニッコリと微笑みで返す。
「………はあ。」
「追いついたぞ!こんなところで一体…!大蛇丸……なのか!?」
「クク、少し違う…」
「…!その声は…カブト…!」
「戦争協力の見返りがこのタイミングで自らボクの目の前に来ちゃうとはね…ラッキーだよ…」
「………」
イタチが鋭い目つきでカブトを睨む。
写輪眼で睨むと迫力が凄いね。
「!?どう言う意味だ?なぜお前達がこんなところで…」
「ややこしい状況だよね。ボクが簡単に説明しようか…」
「説明してろ…その隙に穢土転生は止めさせて貰う。」
「この術に弱点は無い…リスクもない…イタチ、君の方にはそれを説明したいんだけど…とにかく君が動くにもサスケ君が大人しくしてないと思うけどね。焦ると止められるものも止められないかもよ。」
この隙にまた雪でも降らせようか。
凄まじい神性を感じる穢土転生体がいつの間に出てるし、そいつの所為で大量に死傷者が出てる。今は五影で対処してるみたいだけど、時間稼ぎにしかなってない感じ。
ナルト君の方も九尾の力がより強くなってる。だけど、他の尾獣たちもいっぱいいるね。
剣気での技は印が必要ないから、棒立ちでもバレないのが利点だね。
“
一度この雪を凌いだ穢土転生体ばかりだから、あまり効果がないかもしれないけど、穢土転生体の行動を阻害はできる。
その間にもカブトは戦争の説明をしている。
「…ってのが戦争の話。で、君はうちは一族の仇であるイタチをまた倒したい。ボクがこの世に転生させちゃったからね。そして、イタチの味方をする藍の事も邪魔だ。つまりサスケ君とボクにとって、この二人が障害という訳だ。…どうだろう。ここは一つ協力して2対2で戦おうじゃないか?同じ蛇の力を持ち、同じ師を…」
「アレを師と呼ぶ気はない。…それにお前は何も知らないようだな。オレは今、イタチと話をする為にここまで追って来た。」
「………なら君は今…どっちの味方なんだい?」
サスケ君が手裏剣を投げる。それをイタチが迎撃した。
「何故だ!?こいつは大蛇丸と同じ…だとしたらオレの敵だ!そして今はアンタらの敵でもあるんだろ!」
「…分かった。話は後で聞いてやる…代わりにまずこいつを倒す…ただし殺すな。」
「!?」
「穢土転生の術者を殺してしまっては、術が永久に解けない。まずはこいつをオレの月読に掛け、その術を止める方法を聞き出す。…そして月読に嵌めたままこいつを操りオレがこの術を解く!」
「流暢にボクの倒し方を喋ってくれちゃって…口程上手くいくといいけど、この術には弱点もリスクもないってさっき…」
「どんな術にも弱点となる穴がある。この術の弱点とリスクはこのオレの存在だ!」
「私は手出ししないから、兄弟で仲良く生捕にするんだよ、イタチ、サスケ君。」
「…君が手出ししなくても、ボクは君を殺すよ、藍。ボクの穢土転生を沢山、減らしてくれた礼をしておかないとね。」
「…イタチ…アンタはいつもオレに今度だ、後だと嘘をつき、あげく死んだ。だから今度こそ、約束は守って貰う!」
「性格は死ぬまで変わらないが…オレは一度死んでる。そのつもりだ。」
「兄弟で仲間外れですか、面白い。」
そうして始まった戦い。
うちは一族のそれも万華鏡写輪眼の兄弟相手に意外にも善戦するカブト。
だけど、突然カブトの動きが止まる。
「これがイザナミね。」
「視覚じゃない瞳術とはどう言う事だ?」
「イザナミは自分と相手…二人の体の感覚によって嵌める瞳術だ。」
「どう言う事だ。」
「瞳力である場面を切りとって、錯覚を利用して無限ループを作り出す能力だ。勿論、失明する事と引き換えにする。イザナギと同じだ。」
「カブトの意識は幻のイタチとオレを相手にずっと無限に続くループの中で閉じこめられるって訳か…」
「いや、この術にはそのループから抜け出る道がちゃんと用意されてる。そもそもイザナミはイザナギの術者を戒め救う為に作られた術だからな。」
「ん?どう言う事?」
「イザナギはサスケも少しは知ってるようだが、アレは運命を変えるうちはの完璧な瞳術だと言われていたそうだ。己の結果に上手くいかない事が有れば、その結果をかき消し元に戻れる。言わば、都合のいい結果だけを選びとっていける仕組みだ。」
ならあの時のマダラの攻撃もイザナギだろうね。左目が失明していたし。
本当に反則ね。ならあの時、最低でも3回は仕留めないとマダラを止めれなかったって事になるね。…あのすり抜け能力相手に。
「大きな戦においてうちは一族が失敗できない時にイザナギが大きく貢献した。しかし、結果を思うままに変えられる術には失明以上のリスクがあった。その強すぎる瞳力は術者を驕らせ暴走させる要因となった。イザナギを使う者が一人なら問題は無い。だが、それを二人以上になると、うちは一族内で都合のいい結果の奪い合いが始まった。それを止める為にイザナミが作られた。視覚相手に視覚で嵌めれないからな。イザナギで都合のいい結果に変えようとすると、ループに囚われる仕組みだ。だが、イザナミはイザナギを止める為の術。ちゃんとループから抜け出る道も作られていた。」
「………!?」
「これは本来、うちはの仲間を傲りと怠慢から救う為の術だ。本来の己の結果を受け入れ、逃げなくなった時におのずとループは解ける。運命を受け入れるように導く術。抜け道のある術など実戦では危なくて使えない。そう言う意味でイザナミは禁術になっている。」
「だからカブトが己を受け入れたら、術は解けるのね。」
「そうだ。」
「何故こんな術をわざわざカブトに掛けたんだ?脱出できるってことは…」
「…こいつは昔のオレに似ていた。全てを手に入れたつもりで何でも成せると盲信しようとする。だからこそ、己の失敗に怯え、己に失敗は無いと自分に嘘をつく。結果、それを誤魔化す方法として他人を信用しなくなったのがオレだ。カブトの場合は他人の力までも自分自身の力だと思い込んだ。」
「………」
「こいつの事もわかるんだ。この忍の世に翻弄された者同士。どうしても自分自身を許し、認める事ができない事も…確かにこいつのやってる事は間違ってる。だが、こいつだけを責めるのも間違いだ。カブトにも気付いて欲しい。………オレが気付かされたようにな。」
イタチがこちらをチラッと見てくる。
ただサスケ君は納得いかないようだ。
「こんな奴の為に何で兄さんがそこまでする義理がある!?こいつと兄さんは違う!兄さんは完璧だった!」
「サスケ…オレはお前に
「…………」
「オレを見てオレに無かったものを探して欲しい。だからオレを完璧だったなんて言ってくれるな。まずは…ありのまま自分を自分自身が認めてやる事だ。そうしさえすれば誰にも嘘をつく事はなかった。お前にもオレ自身にも。………嘘に信用は無く、背中を預ける仲間はできん。そして嘘は本来の自分すら見えなくさせる。」
イタチがカブトの方に向く。
「………これより穢土転生の術を止める。」
イタチが再びこちらに振り向く。
「これで戦争の終わりが近づく。」
「なら…兄さん。アンタも…」
「…オレは木ノ葉隠れのうちはイタチとして…もう一度里を守る事ができる。もうこの世界に未練はない。」
「何故だ!?兄さんにあんな事をさせた木ノ葉の為に何でまた兄さんが!!兄さんが許せてもオレが木ノ葉を許せない!!この世に未練が無いだと!?オレをこんな風にさせたのは兄さんなんだぞ!!」
「お前を変えられるのは、もうオレじゃ無い。」
とはいえ、叫びながらも暴れないあたり、それなりに聞き分けが良くなっているように見える。
「だからせめて…この術を止める事がオレの今できること。ナルトに託した事を蔑ろにしない為にもな。」
「最後にちょっとは話してあげてもいいんじゃない?」
「オレは死人だ。オレの事ならお前に託してる。」
「〜はあ、頑固ね。」
イタチはカブトに月読を掛ける。
万華鏡写輪眼は伊達ではなく、一瞬で解術の印を引き出す。
「もう…何を言っても無駄なようだな。」
「………」
「アンタを見かけた時…トビやダンゾウの言った事が本当なのかどうか確かめたいとアンタに着いてきた。だが、確かめられたのはそれだけじゃなかった。……アンタといると昔を思い出す。…兄を慕っていた幼い日の気持ちをな」
「………」
「だからこそなんだ。昔のような仲の良かったオレ達兄弟に近づけば近づく程…アンタを理解すればするほど…アンタを苦しめた木ノ葉への憎しみが膨れ上がってくる。前にも増してどんどんそれが強くなる…アンタがオレにどうして欲しいのかは、わかってるつもりだ。アンタはオレの兄だからこそ、オレを否定するだろう。でもオレもアンタの弟だからこそ、アンタが何を言おうとも止まらない。ここで兄さんが里を守ろうとも…オレは里を潰す。」
「…………」
「さようならだ。」
“穢土転生の術…解”
後でフォローしてあげないと、サスケ君荒れそうだなぁ。
イタチの体が光出す。
塵が徐々に舞い上がる。
「まだ…間に合う……」
イタチがふらつきながら、こちらに歩いてくる。
「少しずつ意識が遠退く感じだ……」
いよいよイタチともお別れか……
胸が痛くなってくる。
寂しくなるな。ちょっとの間だけでも一緒にいて居心地が良かったから尚更ね。
「さよならの前に二人に話したい事がある。………藍。」
「………はい。」
「……オレはお前に助けられた。………お前から他人を信じる強さを教えてくれた。………お前が居たから最期まで戦えた。………お前はオレの代わりに沢山泣いてくれた。」
「私も貴方に沢山守ってもらった。……私が泣いてる時は、側に寄り添ってくれた。………いつも心配してくれた。……ありがとう。だから安心してね。」
「……ああ、こんなオレを支えてくれてありがとう。……だからこそ、オレを安心させてくれ。」
「……うん。………わかったよ、イタチ。」
上手く笑えているかな。
イタチを安心させなきゃいけないのに、思わず涙が少しだけ流れてしまった。
でも仕方ないよね。この胸の愛おしさは止められないから。
「サスケ。…お前が確かめたかった事を教えよう。…もう嘘をつく必要はない。…お前と別れたあの夜…。オレのやった事はトビやダンゾウの…言った通りだ。お前に…全ての真実を見せよう。」
イタチがサスケ君に月読を見せる。
私はそれを見る事は叶わない。
こんな時だけは、自分の幻術が効かない体質が無ければいいのにと思ってしまう。
「オレは…お前にいつも許せと嘘をつき、この手でずっと遠ざけてきた…お前を…巻き込みたくなかった…だが、今はこう思う。お前が父と母を…うちはを変える事ができたかもしれないと…」
実際、サスケ君の言葉でイタチは狂気を抑え込んでるものね。
「オレが初めからお前とちゃんと向き合い、同じ目線に立って真実を語り合っていれば…失敗したオレが今更お前に上から多くを語っても伝わりはしない。だから今度こそ、本当の事をほんの少しだけ。お前はオレのことをずっと許さなくていい…」
イタチがサスケ君の頭を合わせて目線を合わせる。
「お前がこれからどうなろうと、おれはお前をずっと愛してる。」
そのままイタチは光に包まれて昇天した。その時、イタチと目が合った。
『愛してる』
声は出ていない。だけど、確かにそう口が動いてた。
その微笑みは反則だ。
「うん………私も愛してるよ。」