☆一輪の白い花   作:モン太

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懇願

五影救出に向かう直前に香燐さんが加わった。

 

医療忍術を使えるメンバーが居なかったので助かる。

 

その香燐さんはサスケ君と別グループという事に不満がある様子。

 

それにしても私って、つくづく大蛇丸と縁があるみたいね。全然、嬉しくないけど。

 

感じる五影の気配はとても弱々しい。全員やられてしまったようだ。

 

五影を蹴散らせるって、やっぱり本物のマダラは格が違うね。

 

「随分なザマね、綱手。」

 

「ゲェ…でっかいナメクジ…倒すのに塩どんだけいるかな?」

 

「あれは湿骨林から口寄せされたカツユの本の一部…あれでもすごく小さい方よ。」

 

「今はナメクジより五影だろ!大蛇丸様もいちいちそいつの言う事、気にしないでいいから、さっさと用事済ませてさァー。」

 

「サスケ君と離してこっちに連れてきたのが、そんなに不服?」

 

「その通…じゃねーよしィ!さっさ行くの…水月てめェー!!」

 

「何でボクが責められんの!ナメクジ見たら塩かけたくなるもんでしょ誰だって!!」

 

「水月君も香燐さんも落ち着いてください。今は五影を救出しましょう。」

 

「まずは綱手ね…行くわよ。」

 

綱手様の元まで移動する。

 

「無茶をしたようね、綱手。」

 

綱手様の胴体が真っ二つに裂かれていた。

 

これでまだ生きてるなんてすごい生命力。流石は初代様の孫という訳ね。

 

小さな無数のカツユが必死に胴体をくっつけようと蠢いてる。

 

綱手様も力を使い過ぎて、皺だらけの顔になってる。

 

「…大蛇丸…?」

 

カツユが臨戦態勢になる。

 

「カツユ…私は五影の処置をしにここへ来た。敵じゃないわ。」

 

「信じられる根拠がありません!ましてや、暁を引き連れているなら尚更です。それにアナタは死んだ筈です!!」

 

「怪しい行動をしたと思うなら酸で今度こそ本当に殺すといいわ…」

 

カツユと大蛇丸が睨み合う。

 

「ゴホッゴホッ!」

 

綱手様が危ない……

 

「わかりました。アナタを信じましょう…」

 

今揉めてる場合じゃない。

 

それに変な真似をすれば私が止めればいいだけ。

 

「マンダと違って物分かりがいい…さて…ではまず…他の影達はどこ?」

 

「私の分裂体の中で回復中です。皆さん重症でなかなか…」

 

「しかし…カツユ…アナタがいて何故回復がこの程度なの?」

 

「私は綱手様の百豪の力に呼応して力を使う事ができます…今の綱手様はすごく弱っておいでで…私の力を充分に発動出来ないのです。」

 

「…そういうシステムだったかしら………まあ、よく思い出してみても、ここまで弱った綱手を初めて見るから…そうなのね…」

 

「口寄せが解けかかってるのをどうにか堪えつつ、回復に集中している状態です。なので、綱手様の体をうまく繋げる事もできず…」

 

「水月…綱手の下半身を持って上半身を繋げなさい。」

 

「え〜〜〜〜!バラす方が得意なんですけどォ!…うげェ…ナメクジが濡れてグネグネ気持ち悪いよぉ〜〜〜!」

 

「そりゃお前もだろうが!!人型の分、お前の方が気持ち悪いし、変だろ!」

 

「水月君、嫌なら私がやりましょうか?」

 

「暁の服を着たアナタも大蛇丸と同じです!ここで私が監視します!動かないでください!」

 

「……そういう事なので、水月君お願いします。」

 

「え〜〜〜〜!」

 

「お前、女にケツモチやらせるとか、恥がねーのか!」

 

「香燐…アナタは噛ませて回復させてあげなさい。」

 

「え〜〜〜〜!サスケ以外に噛まれるのヤダなぁ…ウチ。」

 

「あ!!サスケ好きを公言したね今!!」

 

「ちっ…違がァ…!!あんなクソヤローサスケ好き…くねーだろが!!ウチを殺しかけたのが…たまらない…違うかァー!!」

 

「何言ってんの!?………フン…サスケに噛まれる前から歯形だらけだろ君!!」

 

「るっせー!!今はサスケ専用なんだよ!!」

 

「開き直んな、入れ歯製造機!!…だいたいどういうシステムだよ、君の体は!君の方が変だろ!!」

 

「んだとォ〜コラァ!?」

 

仲がいいなぁ…………

 

「水月君、香燐さん。早くお願いします。…変なのはお互い様です。仲がいい事は大変よろしいですが、五影様方は一刻も許されない状況なんですよ。………私の手が滑る前にお願いしますね。」

 

少しだけ、殺気を出して微笑む。

 

二人はテキパキと作業を進めて、綱手様を回復させてくれた。

 

なんだ。やればできるじゃないか。

 

香燐さんの回復能力も素晴らしいね。感知能力にも長けてるし、これほど優秀なら、どこでも引っ張りだこだろう。

 

「綱手様、もう大丈夫です!」

 

「綱手、少しは私に感謝なさい。」

 

「…………里を裏切ったお前が今更……何故だ?」

 

「今は色々と興味の幅が広がってね。…昔は自らが風となり、風車を回したいと思ってたわ。でも今は、いつ吹くかも分からない他の風を待つ楽しさも知れた…その風を楽しむ前に密封されたくないからね。」

 

成程。昔は自分で事を動かす方が楽しかっけど、今はサスケ君の行末に期待している訳か。……こいつが何か仕出かすことは減ったって事かな。危険である事に変わりはないけど。…いつ心変わりするかわかったもんじゃないし。

 

「………相変わらず訳の分からん事を…だが、少し変わったか…」

 

「人は変わるものよ。…それか、その前に死ぬかの二つ。」

 

「まあいい。回復させてくれた事には感謝する。で、戦争の事は知ってるのか?」

 

「もちろん、だからこうして協力してるのよ、アナタに。」

 

「私が戦況を報告します。」

 

「!?…お前、どうやって戦場に!?」

 

「じゃあ、私達はもう行くわ。アナタは影達の回復に集中する事ね。」

大蛇丸達3人が去っていく。私もそれに追従する。

 

香燐さんの感知圏を離れたタイミングで再び姿を現す。

 

「綱手様、ご相談があります。」

 

「……お前は…………大蛇丸と一緒に行ったんじゃ……」

 

「大蛇丸に付いて行ってるのは分身です。」

 

「お前は、カカシが言ってた仮面の暁か?」

 

カカシさんがなんて言ってるのかは知らないけど、仮面を被ってたのはトビと私だけだ。

 

「仮面を被っていたのは私とトビだけですから、おそらくそうでしょう。」

 

「要件を言ってみろ。…チンタラやってる暇もあまりないだろう。」

 

一度深呼吸をする。

 

少し緊張する。

 

「…綱手様、貴女にお願いがあります。…………うちはイタチの名誉回復です。」

 

「………意味がよくわからん。」

 

綱手様は本当によく分からないのか、戸惑いの表情を見せる。

 

「うちはイタチに掛けられている汚名の返上に尽力をお願いします。」

 

きっと、これはイタチにとって余計なお節介だろう。彼の目的を一番に考えるなら、大罪人うちはイタチ。そしてそれを討ち取り里に貢献したうちはサスケ。この構図を破る事になる。そもそも彼は自分の名誉なんて求めてもいない。

 

でも彼を一番に考えるなら、偽りの罪で後世を悪人として語り継がせるなんて許せない。

 

そう。これは私のエゴだ。それでも、うちはイタチだって、木ノ葉隠れの英雄である事に変わりない。

 

「……お前が言ってる意味がわかっているのか?」

 

「はい。」

 

「………うちは一族虐殺。里抜け。此度の戦争の原因である暁の一員。……これだけの罪を犯してるのは事実だろう?」

 

「……間違いありません。」

 

「……とんだ寝言だな、小娘。さっさと去れ。私はお前のようなガキの相手をしてる暇は無い。」

 

「この穢土転生の術を止めたのが、うちはイタチだったとしてもですか?」

 

「………何?」

 

「うちはイタチはカブトに穢土転生されました。そして、穢土転生を乗っ取り、カブトに逆襲。穢土転生の術を解術する事に成功しました。これはひとえに木ノ葉を守る為。」

 

「…………仮にそれが事実だとして、何故木ノ葉を守る?イタチは暁の一員だろう。」

 

「ですが、木ノ葉のうちはイタチでもあります。」

 

「……イタチは里を抜けた抜忍だ。木ノ葉を守りたいのなら、抜忍にはならないだろう。それが全てだ。」

 

「………任務だからです。」

 

「……何の話だ?」

 

「うちは一族を抹殺し、全ての罪を背負って、抜忍になる事が木ノ葉からイタチに与えられた任務だからです。」

 

「………は?」

 

「更にイタチはサスケ君の憎しみを煽り、力を付けさせ、己を討ち取らせる事で、うちは一族の仇を討った英雄うちはサスケに仕立て上げ、誰にも手出しされない状況を作ろうとしていました。」

 

「………ちょっと待て!!理解が追いつかん!………うちは一族抹殺が任務?……何を言ってるんだ……うちはは木ノ葉最強の名門一族だ。里がそんな事を指示する筈が無い。バカバカしい。」

 

「……当時うちは一族は里へのクーデターを計画していました。」

 

「……クーデターだと?」

 

「…そうです。クーデターを画策する要因は里の成立ちまで遡ります。柱間様とうちはマダラの争い、千手一族とうちは一族の確執。水面化では解消されず、80年間も表立ってでは無くとも、溝がありました。その不満が爆発するに至ったのがクーデターです。」

 

「…それをお前が知ってるのは何故だ?」

 

「……イタチから聞きました。」

 

「………そんな話を鵜呑みには出来んな。」

 

「……当時を知っているのは、相談役とダンゾウ様に三代目様のみです。今、戦場では三代目様が大蛇丸に穢土転生されて戦っておられます。……仮に三代目様に聞けずとも、戦争の後に相談役に聞いていただければ、真偽を確かめられると思います。………それにサスケ君も既にその話を知ってしまってます。……サスケ君がイタチを倒した後、里に帰らず、逆に木ノ葉への復讐に走っているのはそれが原因です。」

 

「…イタチがサスケに話したのか?」

 

「……いえ、サスケ君にはトビとダンゾウ様が話したようです。三代目様とイタチも先程、穢土転生体で再確認していました。……また、ナルト君、カカシさん、ヤマトさんも同じ情報をトビとイタチから確認しています。」

 

「…………」

 

綱手様が難しい顔で黙り込む。

 

安易に信じていい話ではないけど、信じざる負えない状況を無視する事もできないと言ったところか。

 

「……だが、お前ら暁が木ノ葉に何をしたか、忘れた訳じゃない…」

 

地面に手を付いて頭を下げた。

 

「……どうしても許せないなら、私を木ノ葉の奴隷にしても構いません!!……それでもダメなら、今ここで私の頭蓋を砕いてもらっても構いません!!……虫のいい事を言ってる事は重々承知しています!!!……それでも!!それでも、どうかお願いします!!!」

 

「……土下座か。それは脅しのつもりか?」

 

「…………」

 

「……頭蓋を砕いてもいいと言ったな。」

 

綱手様が足を振り上げる気配を感じる。

 

次の瞬間、私の頭のすぐ左の地面が砕けた。視界の端で綱手様の足が地面を砕いているのが見えた。

 

一瞬、意識が逸れた瞬間にマントの襟を掴まれて、立ち上がらされた。

 

視界には綱手様の右拳が見えた。

 

顔面を殴られる。凄まじい力に視界が大きく揺さぶられる。

 

続けて、右足で腹を蹴り抜かれた。

 

ボキボキボキィ!!ブチブチブチッ!!

 

身体の中で色々なものが壊れる音が響いた。

 

襟を掴まれている為に吹き飛ばされる事なく、衝撃が全て身体を破壊し尽くす。

 

「ゴホッ!!!」

 

尋常じゃない量の血を吐き出す。内臓が何個か潰れたか…肋骨も何本か折れてしまったな。

 

更にもう1発パンチが顔面に向かって飛んでくる。

 

大きすぎるダメージで濁る視界に映る拳。

 

流石にこれは死んだわね……

 

だけど、顔面に入る前に止められた。

 

「………これだけやられても、避ける素振りも無しか……」

 

襟を掴んでいた手を離される。

 

全く力の入らない体はそのまま地面に崩れ落ちる。

 

「……お前の話を全て信じる事はできない。……が、猿飛先生に真偽を聞くだけ聞いてやる。」

 

「……あ………ありが……とう…ござい……ます………」

 

「………理解できないな。自分の命乞いならともかく、他人の名誉回復など。しかも、命懸けで頼みに来るなど、正気とは思えん。……何故、そこまでこだわる?」

 

そんなの決まってる。とてもシンプルで簡単な理由だ。

 

最後の力を振り絞って、顔をあげる。

 

血と砂でドロドロになった顔で綱手様を睨みつける。

 

「……愛する…人の為に………戦うことの……何が不思議………なんですか?」

 

「…………」

 

それでも、気力だけではどうにもいかずに再び地に臥してしまう。

 

「ヒュー…ヒュー……」

 

片方の肺も潰れてしまってる為か、呼吸が苦しい。

 

視界がどんどん濁っていく。身体の感覚も段々と鈍くなっていく。

 

すると、うつ伏せで倒れていた身体を仰向けに変えられる。綱手様が屈んで私のお腹に手を当てた。綱手様の手が緑色の光を放つ。

 

これは掌仙術。…………医療忍術。

 

「……な…何を………してるんですか?」

 

「…………黙ってろ。」

 

「………あ……貴女は……五影様の……治療を………しないと…………」

 

「………五影は今、カツユが治してる。問題ない。…………お前は味方なのか?」

 

「ナルト君と……サスケ君と………木ノ葉の味方……です………」

 

綱手様が私の顔にも掌仙術を使う。

 

「…顔は女の命だ。そんな潰れた顔で前線には行けないだろう。」

 

「………ありがとう……ございます。」

 

「……フン…治ったら、さっさと行け。いつまでも後方で油を売ってる訳にはいかないんだ。わかったな。」

 

「はい、綱手様。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大蛇丸と一緒にやってきた暁の服を纏う少女。

 

暁ではあるが、大蛇丸と共に私の治療に邪魔する事なく、去っていく姿を見て、一応は味方かと区切りを付けていた。

 

だが、大蛇丸が去った後から再び現れた。

 

こんなコソコソと二人きりになるタイミングで、火影の私と会おうとするあたり、やはり敵で暗殺を狙ったものかと警戒した。

 

そこで彼女が懇願してきた内容に困惑した。

 

『うちはイタチの名誉回復』

 

最初何を言ってるのか本当にわからなかった。

 

改めて聞いても、同じ回答が返ってくるだけ。

 

様々な疑問が湧いた。

 

疑問をぶつければ、スラスラと返事が返ってくる。だが、信じられない内容ばかりの返事だ。

 

火影である自分の知らない事実の列挙。とても信じられない。そもそもこいつは木ノ葉の忍ではない筈。

 

他里の人間が木ノ葉の事を知ってることも意味がわからない。

 

到底信じられないが、一応誰から聞いたのかと聞くと、イタチから聞いたそうだ。

 

話にならないなと思った。

 

だがその後の状況証拠の数々、ダンゾウやサスケにまつわる話。無視できない事実に頭を抱えた。しかし、状況証拠だけで、実際の証拠はない。当然だ。この状況で証拠は出ないだろう。

 

真面目に取り合うべきではない。だが、無視ではできないから、戦後に調査する必要がある。

 

事実でなければ、ただの暁の虚言だった訳だが、事実だった場合は木ノ葉がこの状況の遠因である可能性が出てくる。やはり、全く無視はできない。

 

それでも、この暁が……ペインが……先代が築き上げてきた里を破壊尽くした。

 

その時の怒りもあった為に、大人気なくその事を突いた。別に目の前の小娘がやった訳ではないのだが……

 

するとなんと土下座しだしたのだ。しかも私が簡単に踏み潰せるように私の足元で頭を差し出して。

 

何をそんなに必死なのか理解できなかった。

 

しかも、奴隷でも殺しても構わないなどと叫び出す始末。

 

そういえば、こいつはカカシが言っていたかなり危険な暁ではなかったか?水分身で三尾と渡り合ったと聞いている。

 

なら試してみるか?

 

足を振り上げた。

 

気配を感じているだろが微動だにしない。本当にやらないとたかを括ってるのか?

 

振り下ろして、顔面の横の地面を砕いても反応しない。やはり、寸止めすると読まれていたか?

 

その微動だにしない姿と破壊された里を見た時の見下すペインの傲慢な視線が混じる。暁共はどいつもこいつも舐めた真似をする。

 

全力で顔面を殴った。

 

私の力は忍界でも屈指だ。脳が揺さぶられ、首の骨にヒビが入ったのがわかった。

 

視線で追っている事がわかった。避けようと思えば避けれる訳だ。それでも受けてきた。

 

頭に血が登った私はそのまま腹を蹴った。血を吐き出す小娘。

 

こちらも視線で追っている事はわかった。

 

そして、死にかけている事も。それでも避けようとしない姿勢に私も少し冷静になった。

 

掴んでいた手を離せば、そのまま地面に倒れる小娘。その衝撃で更に血を吐き出していた。

 

猿飛先生に真偽を確かめると言えば、掠れた声で感謝を告げる暁。殴られて感謝の言葉を吐くこの少女の正気を疑った。

 

どうも何かがおかしい事に今更ながら感じ始めた。

 

そもそも、この暁がイタチの名誉回復を願う事が意味がわからない。他人な上に他里なのだ。

 

それに額当てが木ノ葉なのだ。だが、こんな忍を私が知らない。こんな水色の髪にオレンジの瞳の外見。珍しくはないが、それなりに派手なナリの顔。一度見ればわかる筈なのだ。

 

仮に変化の術だとしても、これだけ殴れば術が解けてるはず。

 

何故そこまで必死なのか聞いてみた。

 

死にかけの身体をブルブル震える腕で持ち上げる様を私は固唾を飲んで見守っていた。

 

『愛する人の為に戦うことの何が不思議なのか?』

 

焦点の合っていない瞳が私を射抜いた。

 

血と砂と青痣で汚れた顔がこちらを見つめていた。凄まじい意志の力に思わず後ずさってしまった。

 

虫の息の小娘相手に私は畏怖の感情を抱いた。

 

後に知った事だが、彼女は肉親と親友と恋人を失っていた。どれも木ノ葉が関わっていた。つまり、彼女にとって私は仇だった訳だ。きっと殺したい程に憎い相手だったに違いない。その相手に攻撃するでも罵声を浴びせるでも無く、一方的にボコボコに殺されかける。その心境は一体どんなものなのか。

 

そして、彼女は私と境遇が似ていた。私も弟と恋人を失った過去があった。

 

その時のショックで私は賭博ばかりのアテのない放浪の旅に出ていた。

 

荒みに荒みまくった私は再会した自来也にも「火影なんてクソだ」なんて吐き捨てた程だ。ナルトに出会い根性を叩き直されて今に至る。

 

だが、この少女は誰に慰めてもらうでもなく、己の意志だけで愛する人の為に戦っていた。

 

私よりも遥かに強い、心が。

 

私にはこの少女が眩し過ぎた。

 

気付けば、私はこの少女を治療していた。損傷した内臓と肋骨。腫れ上がった顔と首の骨を治す。

 

カツユの治療もスムーズに進み、五影達を出しても良かったが、あえてそのままにしていた。

 

今出せば、さっき私がやったように五影全員でこの少女を半殺しか、或いは殺すような事になると思ったからだ。

 

少女を完全に治して、我々から逃すように前線へ行かせた。

 

色々と思う所のある少女だった。

 

だが、今は感傷に浸ってる場合じゃない。戦争は続いてるんだ。

 

私はカツユから前線の状況を五影達と共有し、戦場へ向かった。

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