再不斬さんに拾われてから、1年が経っていた。私達も6歳になる。
今までは、ずっと再不斬さんに修行を付けて貰いつつ、再不斬さんの影に隠れていた日々だった。しかし、1年間修行し、ある程度戦えるようになってからは、賞金首狩りや悪どい依頼の手伝いをするようになっていた。
お兄ちゃんはその間にもどんどん力を付けて行った。とうとう、血継限界の氷遁にも目覚めた。戦闘能力も再不斬さんの評価で中忍レベルに達してるそうだ。
私は結局、殆ど進歩は無かった。お兄ちゃんに教えて貰った「秘術 千殺水翔」はできるようになった。お兄ちゃんに唯一勝てるのは、瞬身の術くらい。お兄ちゃん自身も並みの忍者よりも速いから、気を抜くとこの術ですら追い抜かれそうだ。
今、私達は林を駆け抜けている。木の上では再不斬さんが私達の動きを見ている。
瞬身の術で移動し、木に取り付けられた人体を模した的を千本で射抜く。
スパッ!スパッ!
20個の的を射抜くと、再不斬さんの水分身が現れる。
水分身は首切り包丁を振り下ろしてくる。私はそれを千本で受け止める。
普通の千本では、首切り包丁を受けた瞬間に折れてしまうが、風のチャクラを千本に流し、強度を上げている。
首切り包丁を受けた止めた状態で、即座に印を結ぶ。お兄ちゃん直伝のこの術は、片手で印を結ぶことができるのが利点だ。
「秘術 千殺水翔!」
水の千本が空中から、水分身を狙う。水分身は身体を伏せて、後ろに飛び退く事で回避する。そこに右手で持っていた千本を投擲する。
「風遁 烈風掌」
風遁で更に千本を加速させる。
「水遁 水陣壁」
水分身の周りを水の壁があらわれる。しかし、風のチャクラで強化し、風遁で加速している千本は水陣壁を貫通する。水分身は、屈んで千本を回避する。
その間にも瞬身の術で、水分身の背後に回り込む。
「風遁 風切りの術」
一筋のカマイタチが水分身に襲いかかる。そのまま水分身を切り裂く。バシャと音を立てて、水分身は水に還る。
更に加速。今度は水分身が2体現れる。
「水遁 水龍弾の術」
先手を取られた!
2体の水龍が襲いかかる。1体目を地面すれすれを滑空するように滑り込み避ける。2体目は足にチャクラを溜めて跳躍して回避。上空で2体の水分身に千本を投げつける。
2体の水分身は首切り包丁で千本を迎撃する。それを見て、着地と同時にすぐに次の術を発動する。
「風遁 風切りの術」
一筋のカマイタチが飛翔する。
「水遁 水陣壁」
だが、水陣壁にガードされる。そして、背後に別の水分身が迫り、首切り包丁を横薙ぎに振ってくる。
「風遁 烈風掌」
風を起こし、首切り包丁の軌道を上に逸らす。頭上を首切り包丁が通り過ぎるのを感じつつ、振り向きざまに風のチャクラを流した千本で首を切り裂く。
これで1体!
だが、私のすぐ後ろに首切り包丁を縦に一閃してくる水分身の気配を感じる。
瞬身で回避!
瞬身の術で回避しようとしたが、そこに氷の壁が現れて、私を守る。
私はすぐに離脱。そして、水分身の周りに氷の鏡が周囲を囲むように現れる。
「秘術 魔鏡氷晶」
雪一族の血継限界、氷遁。お兄ちゃんの奥義。
それを見届けた私は、勝利を確信する。
鏡の反射を利用した移動術。その速度は私には全く見えない。目で追えないのではなく、見えない。瞬身の術など霞む程の圧倒的疾さ。
氷の鏡を形成するまでの時間は多少かかるが、鏡ができればお兄ちゃんの独壇場。四方八方から飛来する千本に水分身は貫かれる。
四方八方から飛来しているように見えるが、常に高速で移動しながら、千本を投げているだけで、刹那の時間を切り取れば、鏡に映っているお兄ちゃんは1人。別に分身しているわけではない。移動速度が速すぎて、鏡に複数映っているように見えるだけだ。
千本に貫かれた水分身は水に還る。
氷の鏡も崩れる。そこからお兄ちゃんが現れて、私の元のくる。
「藍、お疲れ様。」
「お兄ちゃんもお疲れ様。流石だね!」
「藍も相変わらず速いね。僕が来たら既に1体倒してるしね。」
「ありがとう!」
そこに再不斬さんがやってくる。
「よし。これからサイレントキリングをお前達に叩き込む。」
「「はい。」」
「これから、霧隠れの術を使う。視界ゼロの状態で水分身を音だけで見つけるんだ。」
そう言うと再不斬さんは、2体の水分身を出す。
「霧隠れの術」
再不斬さんの霧隠れ術が発動する。数秒で周りは白い霧に覆われる。
本当に何も見えないな。
『心音、呼吸音、足音、血液が流れる音。様々な音を聞き取れ、神経を集中させろ。』
再不斬さんの声が響く。
指示通り、神経を集中させる。
うーん、わからない。
目を閉じて、余計な情報をシャットアウトする。
更に集中する。だんだん、自分が底のない海に沈んでいく感覚。
時間の感覚がだんだんわからなくなって来た。更に今立ってるのか、座っているのか?どのような体勢かもわからなくなってきた。
更に沈んでいく。
すると、私の世界を遮るモノを感じた。気がつくと無意識にそこまで走っていた。そして、千本で一閃。横薙ぎに振るう。
バシャ!
水分身を切り裂いた。それと同時に頭の中で直接、誰かの声が聞こえた気がした。
"おはようさん♩ようやくお目覚めかな〜♩"
この時、私が集中している時に足元の地面が凍っていたのを知る者は誰もいなかった。私自身でさえ。
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2人を拾ってから1年が経った。俺は2人が水分身と戦闘している様子を眺めていた。
白と藍の才能は凄まじい。俺の目は正しかった。
藍は瞬身の速度と繊細なチャクラコントロールを駆使した体術。
白も藍には劣るが、かなりの速度だ。更に術の才能もある。早速、血継限界にも目覚めさせた。
藍はチャクラ量の少なさと術の才能が無い為、これ以上強くなるのは難しいかもしれない。血継限界も必ずしも、その一族である者が目覚めるとは限らない。だが、白はまだまだ強くなるだろう。道具として申し分無い。
2人が水分身を倒した。それを確認した俺は、2人の元へ行く。
「よし。これからサイレントキリングをお前達に叩き込む。」
俺の真骨頂は、霧隠れの術からの首切り包丁で敵を狩る、無音暗殺術だ。だが、2人がいる時は使っていない。
だが、2人もこれが使えるようになれば、より戦力増強が望める。
まあ、取り敢えずは霧の中で俺の足手纏いにならない程度には、動けるようになるところからだな。
俺は水分身を2体作る。
「霧隠れの術」
俺はすぐに木の上に飛び移る。音を探ると、すぐに白と藍を見つけた。
どうやらまだ2人共、水分身を見つけれていないようだ。
「心音、呼吸音、足音、血液が流れる音。様々な音を聞き取れ、神経を集中させろ。」
2人にアドバイスを送る。すると、2人共目を閉じ集中しだす。
くっくっく。たった一度のアドバイスで何をすれば音が拾いやすいのか、わかったのか。
まず最初に動いたのは、白だった。
白は氷の鏡を作り出し、鏡に入る。そして、光速で水分身に迫り、切り裂いた。
藍はまだ、水分身を捉えていない様でその場に留まっている様だ。
しばらく、その様子を伺っていると奇妙な現象を目の当たりにする。
藍の音が聞こえなくなったのだ。心音、呼吸音等の生体音が一切聞こえない。終いには、藍の居場所さえわからなくなった。
この俺が音を聞き取れないだと!?
俺が藍の様子を見に行こうとした時、藍が走り出した音が聞こえた。自慢の瞬身の術で一気に距離を詰め、水分身を屠った。
一体何だったんだ、今のは?
俺は霧を消して藍の元へ寄る。
「藍、何をした?」
俺の問いかけに、藍は首を傾げた。
「えーと、音を聞こうと集中して、気配を感じたから一気に走って倒しました。」
藍は戸惑いの表情を浮かべる。
「.......そうか。なら、いい。」
......自覚無しか。
そこに白もやってくる。
「要領はわかっただろう。これを何度も繰り返して、敵を見つけるまでにかかる時間の短縮をする。」
それ以降も霧隠れの術を使い、水分身を見つける練習をさせた。
特に変わった点は無く、2人共徐々に反応速度を早めていった。
まあ、いい。どっちにしろ、そろそろ2人に経験をさせなければならない。殺しの経験を。