Angel Beats! ~永遠の日々に終止符を~ 作:ぼっち
ひっさびさの更新となりました~!
申し訳ないです・・・。
今回は結構長いお話となっております!
原作で言うと第三話にあたります!
尾形は岩沢の"消滅"を回避することが出来るのか・・・!
そして第二話に出てきた例のあの人も登場しちゃいます^w^
やっともうすぐ第一章完結です!
結構熱い展開かな~と我ながら思いますので、ご期待ください。
ではでは!
第七話、お楽しみくださいませ~~!
眩い光を見た。
そんな気がした。
それはあまりにも一瞬で。
見逃してしまいそうだった。
この感覚はなんだろう。
おぞましく。
そして、潔い。
俺は前にも・・・コレを味わった―――?
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「きろ・・・!起きろ!尾形!」
遠くで声が聞えた気がした。
重い瞼をゆっくり開ける。
一気に現実に引き戻される感覚に陥った。
俺は・・・夢を見ていたのか?
いや、夢のようには思えない。
夢にしては、何か現実味を帯びていた・・・そんな気がしてならない。
正夢にならないといいが。
「何でこんなところで寝てるんだよ、お前」
目の前にいたのは、音無。
死んだ世界戦線の仲間だ。
彼は不思議そうな瞳で俺を見つめていた。
確かに、俺は校舎全体の下にある駐車場の端で寝ていたからだ。
こんなところで寝るやつなど、頭がおかしいと思われても仕方ない。
「・・・見て分かるだろ。睡眠をとってた」
「こんなところで?」
「そうだよ」
「ふーん・・・」
ますます不思議そうな顔をする音無。
俺もここまでの経緯よく覚えていない。
岩沢と別れた後、悪夢に魘され、いつの間にか外に出ていた。
そこまでは・・・覚えてる。
最近環境の変化に体がついていっていないのか?
「んで、幹部がなんでこんなところに居るんだ?」
「いや、幹部っても俺はまだ新人だからな。この学園を色々見て回っていたんだ」
「へぇ」
「そこでお前が寝ているのを発見して、声を掛けてみたってところさ」
「・・・飯でも食うか?」
提案してみる。
とりあえずこの空気をどうにかしたい。
音無は首を縦に振ると、共に大食堂へと向かった。
「・・・俺の奢りなんだな」
音無が何か呟いている。
そう、死んだ世界戦線に入ったのはあくまで音無の方が先であるわけで、俺は後輩だ。
奢ってもらうことに何も躊躇などしない。
そんなことより、ガルデモメンバーに会いたい・・・。
何か嫌な予感がする・・・。
肉うどんを受け取ると、音無とテーブルの席に着く。
彼はA定食を頼んでいた。
生姜焼きがとても旨そうだ。
「お!音無じゃん!・・・隣に居るのは・・・またまた新人くん!」
そこに青髪青年がやってくる。
名は確か・・・日向だっけか?
「日向!尾形と飯を食ってるんだ!お前も良ければ来いよ」
「そうさせてもらおうっかな~」
日向は軽く微笑むと、俺の隣に座る。
「この戦線には慣れてきたか?尾形!」
日向はオムライスを食べながら問い掛けてくる。
「なにせ俺はこの世界に何十年と住んでるんだ。慣れるのは容易いよ」
「まぁ普段授業出てたのをやめればいいんだからな~」
「そう、楽になっただけだ」
「お前、ガルデモの連中と仲良いみたいじゃん?」
ふと放たれる日向の一言。
別に間違ってはいないので否定はしない。
「ああ」
「今日、"天使エリア侵入ミッション・リベンジ"を実行するから、陽動班は備えとけよ!」
トルネード・・・。
あぁ、この前の学食のやつか。
「俺は陽動班なのか?」
「らしいぜ。ゆりっぺが言ってた気がする」
「気がするって・・・」
「音無!今回は俺と一緒だし、何より陽動に天使が向うから戦う心配はないぜ」
「おう」
天使―――。
その存在・・・何者だ?
まだ俺は天使というものに会ったことがない。
一体・・・何者だってんだ・・・?
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音無と日向と飯を食い、別れを告げる。
それから学習棟をふらつくことにした。
いや、ガルデモに会いに行こうとしたのだ。
今はお昼時で生徒も賑わいかえっていた。
そんな中、1人の少女の姿が目に入る。
何やらポスターを貼っている・・・。
「ガールズ・・・デッド・・・モンスター・・・告知ライブか?」
「うわっ!」
ピンク色の髪色をした少女は驚いた表情でこちらを見た。
手には大量のポスターがある。
そして、彼女もまた死んだ世界戦線の服を着ていた。
だから・・・声をかけたのだ。
「あぁ、ごめん。尾形だ、尾形相馬。」
「新人の方でしたか!あたしはユイって言います。よろしくです。」
「よろしく」
「あたしはまだ陽動班の下っ端ですが・・・でもそれだけで満足です!あのガルデモのお役に立てるなら・・・!」
「大好きなんだな」
はいっ!と言わんばかりの笑顔をこちらに向けてくる。
無邪気な奴だな・・・。
「それで・・・これは告知ライブか?」
「はい!今回はそれまでして人を集める必要があるって聞きました!」
天使エリア侵入ミッション、か。
天使エリアってのは・・・何か詳しくは分からないが、ゆりの事だ。
何か秘策があるのだろう。
天使が今回の陽動に向かうということは―――。
俺は天使と対峙することになるってのか。
神のことも知っているかもしれない。
「体育館占拠って・・・大丈夫なのか・・・?」
何十年も暮らす俺が言うのだ。
間違いないはずだ。
「そりゃあ、ヤバいですよ!!前代未聞ですよ!流石に先生達だって放っておかないし、どんな邪魔が入るか分かりません!」
「だよな」
「だからこそ天使を陽動で食い止める必要があるんです!」
「天使がいない間にエリアに侵入しようってことか・・・なるほどな」
「じゃ、あたしは作業に戻りますので!これにて!」
「おう、邪魔したな」
ユイは再び作業に戻る。
本当にガルデモが好きなんだな。
・・・気持ちは分かるよ。
俺もあいつらの力になってあげたいからさ。
「このくらい見逃せよ!生徒会長!!」
「そうよそうよ!」
何やら一般生徒の声が騒がしい。
ふと後ろに目をやる。
そこには生徒会長、立華奏が先ほどユイが貼ったであろうポスターを剥がす姿があった。
それをファンの一般生徒が止める。
「・・・あれ?」
ふと眼を離した隙に立華の姿はなくなっていた。
一般生徒はそれに困惑している。
・・・俺も見えなかった。
一体いつ消えたってんだ・・・。
「まるで悪役ね―――」
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ガルデモの準備教室に向かう。
そこには入江と関根、そしてひさ子がいた。
「おう」
「お、尾形か!」
ひさ子が出向いてくれる。
入江と関根はひさ子に続いてこちらに気付いてくれた。
岩沢の姿がないのが気になる。
「あれ、岩沢は?」
「もうライブ会場へ向かったよ。あたしらはこれからってとこ」
「楽器はもうあっちか?」
「そうだ。陽動班が運んでくれる」
「俺も陽動班なんじゃ・・・」
「お前はマネージャーみてーなもんだからいいよ」
「いつから俺はそんなんになったんだ・・・」
笑い合う。
やはり俺の居場所はここなのだろう。
大事な場所と再認識させられる。
「おがっち」
その名で呼ぶな・・・と言おうとしたがやめといた。
「おがっち」
む・・・。
関根の声じゃない。
これは―――入江・・・!?
「あたし達のライブ、よーーく見ておくんだよ」
「一番前で応援お願いね!」
「分かったよ・・・」
二人は微笑むと、ひさ子に続き教室を後にする。
教室にただ一人立ち尽くす。
この胸騒ぎはなんだ―――。
今日、音無に起こされてからずっとだ。
何か気になって仕方ない。
俺は・・・。
このライブを快く楽しみになる気分になれなかった―――。
「久しぶりだな」
「―――?」
背後から掛けられる声。
男の声だ。
・・・待て。
この教室に他に人なんか居る筈がない。
明らかにおかしい。
誰だ―――。
振り返ってみる。
目の前に立つ青年。
もちろん見覚えなどない。
死んだ世界戦線の服を着ている。
ということは・・・一応仲間か。
「誰だ?なぜ俺の名を知ってる?」
しばらく沈黙が流れる。
相手は答えない。
「ハッ・・・本当に何も覚えてねぇんだな」
男は自嘲する。
何故かは分からない。
何も覚えていない・・・。
どういうことだ。
もしかしたら俺の過去を知っていたりするのか―――?
「俺のことを知っているのか・・・?」
「黙れ」
「なにっ・・・?」
男の目は憎悪に溢れていた。
伝わる生気。
こいつも人間だ―――。
「"悪魔の末裔"が・・・自分の罪深さを思い知れ・・・」
そこでパッと男は消える。
「!?」
居なくなるという表現は不適切だ。
目の前から消滅した。
ど、どういうことだ・・・!?
マジック、超現象でも起きたのか!?
そういえば生徒会長である立華も先程同じようなことを・・・。
「どうなってるんだ・・・この世界は―――!!!」
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(SIDE:音無)
「おいおい・・・本当に女子寮なんかに入っていいのかよ・・・校則違反だろ」
心なく伝える。
・・・がこんなことを言ったとしても、ゆりが聞く耳を持たないのは知っている・・・。
日向が肩に手を回し、まぁまぁと言ってくる。
「なぁ松下五段・・・アンタなんか女子に見つかっただけでアウトだろ」
「何を失礼な!俺を変態とでも言うつもりか!」
「竹山の方が変態そうだろ・・・」
「何でですか!!あと、僕の事はクライストとお呼び下さい!」
「メガネとパソコンとか変態は大概持ってるだろう!」
「偏見ですよ!!」
「ガタガタ喚くな!!!テメェら!!!!」
しーーん。
ゆりの一喝が男共を一発で黙らせる。
悪魔のようなやつだ・・・。
ゆりは怒らせると本当に怖い。
嘘など一発で見抜かれる。
「ねぇ、今男子の声聞こえなかった?」
「やだー、校則違反じゃない!」
聞こえてくる一般生徒の声。
これは・・・まずいんじゃないか?
「一般生徒が結構いる・・・ガルデモ・・・生温い演奏してるんじゃないでしょうね・・・」
「だから告知ライブしていたのか!」
「これで見つかったら一発アウトよ・・・急ぎましょう」
全員が一致団結し、無言で階段を掛け上げる。
この時ほど、身軽になったと思う事があったであろうか。
女子に見つかったら一発アウトというものは体の俊敏性を上げる。
ある扉の前でゆりが止まる。
それに合わせ、俺達も止まる。
幸い、このフロアには誰もいない。
「よし」
日向が鍵穴に針金を差し込む。
本当にこの先に天使エリアなんてものがあるのか・・・。
無駄に緊張してくる。
扉が開く。
全員が一気に部屋へと忍びこみ、中から"クリア!"と聞こえてくる。
・・・何がクリアなんだ?
「よし・・・とりあえず侵入成功ね・・・ちょっとドア閉めなさいよ!」
最後に入る俺を急かすゆり。
その言葉から緊張の念が伝わってくる。
だが・・・ここただの女子寮の部屋と何も変わらないように見える。
これ・・・天使エリアなのか?
とりあえず電気を点けてみる。
「これただの女子の部屋荒らしじゃねーか!犯罪だろ!!」
「音無!女子寮だぞ!電気を消せ!」
「何がコンピューターで制御だぁ!?パソコン一つあるだけじゃねーかよ!」
すぐに電機は消され、俺は松下五段にホールディングされる。
はい、動けません。
「んだよ・・・!お前らのこと見直してきたところなのによ!」
そんなこともお構いなしにゆりと竹山が作業を続ける。
「パスワード・・・?」
「そうよ。それが前は誰も分からなかったの・・・」
「なるほど。それは僕の腕の見せ所だ。解析に入ります」
「ほーう。一応使い物になるみたいだな・・・」
野田、お前本当に友達いないだろ・・・。
しばらくしてピーと音が聞こえてくる。
恐らくパスワードを突破できたのだろう。
ゆりの歓声が聞えて来た。
・・・がすぐにそれは収まり、うねり声を上げる。
「Angel Player・・・こんなソフトが・・・」
「なに?えんじぇるぷれーやー?」
「何これ・・・分からないわ・・・もう少し調べてみましょ」
そこで聞こえるインカムからの遊佐の声。
「天使、出現します」
*************************************
(SIDE:尾形)
体育館の中へと入る。
既に多くの一般生徒がざわついていた。
みんな大好きガルデモがゲリラじゃなくて、今この瞬間からライブをすると言っているのだ。
そりゃテンションも高まるか・・・。
実際俺も高まっている。
死んだ世界戦線の皆が天使エリア侵入うんちゃらと言っていたが、俺にとっては正直どうでもいいことだ。
実際俺はゆり達がやっていることに興味などない。
俺は、ただ・・・。
俺は、ただ・・・ガルデモを応援し続けていられればそれでいいのだから―――。
ふと目の前にユイがいるのが見えた。
「よう」
歓声と悲鳴が入り混じる空間。
そんな中で彼女に話し掛ける。
「おがっち先輩!」
「おがっちって・・・関根入江じゃねーんだから・・・」
「仲良いの聞きましたよ~!羨ましいのこと山の如しです!」
「は?」
こいつは何を言っているんだ・・・。
「いよいよですね!告知ライブ!!」
「だな。楽しみだ」
「あれれ、ひょっとして先輩ガルデモファンですかー?」
「・・・まぁな」
間違ってはいない。
俺はガルデモが・・・好きだ。
彼女達が奏でる音が好きだ。
「でも・・・少ない・・・」
「なにが?」
いつの間にかユイの顔が曇っていた。
少ない・・・?
この人数で?
既に体育館の半分くらいは埋まってきている。
この作戦は更に人数を集める必要があるってことか。
その為の告知ライブだったんだ。
・・・くそ。
過る不安。
言葉に表す事の出来ない・・・『恐怖』。
俺に・・・どうしろってんだ・・・。
刹那。
体育館の照明が落ち、ステージの幕が上がり始める。
次第に露わになる四人の姿。
先ほどの恐怖など、笑い飛ばせるくらい胸が高鳴る。
周りの同調するかのように叫ぶ。
こうして、彼女らが創り出す世界が始まる―――。
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数曲を歌い上げる。
歓声が響き渡る。
既に三分の二程度、体育館は人で埋まっていた。
だが、まだ足りないと言わんばかり岩沢達は加速していく。
すると、ギターの歪み音が体育館に木霊し始めた。
それだけで歓声が上がる。
ファンにはこれだけ聞けば何の曲か分かるようだ。
「Alchemy!?こんな序盤で?!」
ユイが叫ぶ。
・・・君が言うんだ。
あれ、何言ってるんだ俺・・・。
「いいぞーーー!!!!!」
一気に会場のボルテージが高まっていく。
もう最高潮に近いのではないか。
俺は観客の渦の中で、彼女らの奏でる音楽に取り込まれていった。
凄い。
本当に凄い。
この感動を表現する語彙力など、俺にはない。
そのくらい凄かった―――。
―――でも。
そんな都合良いことばかり続く訳など、無かった。
そんな都合の良い世界などでは、無かった。
そんな事は知ってたさ。
「コラッッッ!!!!お前達何をしている!!!今すぐ中止して寮に戻れ!!!」
何十人という教師達が一斉に体育館へと押し寄せてくる。
俺はこの大轟音の中、教師の声だけやけに確かに聞きとる事が出来た。
会場の最後列の方の生徒は教師の存在に気付いたようだが、最前列は未だに気付かない。
勿論、ユイも。
くそ・・・。
俺がなんとかしなければ・・・!
一瞬岩沢の表情が歪んだのが見える。
彼女らも戦ってるんだ・・・!
俺も戦ってやる!
自然と足は動き出した。
渦の中を掻い潜り、どうにか最後列へと辿り着く。
そこで俺は衝撃なモノを目にする事となった。
「い・・・今泉・・・!!!」
忘れもしない顔。
昔、生徒指導にやってきた熱血教師だ。
この学校の悪と徹底的に戦ってきた過去最強の男。
こいつをどうにかするのは骨が折れるぜ・・・。
何故こいつが今ここにいる・・・!!
くそ、考えるのは後だ。
「嫌だよ!ぜってぇ見てーもん!」
「そうだ!お前らこそ帰れ!!」
一般生徒が何やら叫んでいるが、所詮は吠えるだけ。
何かをする訳でもない。
「今泉!この先を行きたければ俺とタイマンを張れ!」
とりあえず一番厄介な奴の目の前に立つ。
こいつをまずどうにかしなければ。
「君は確か・・・尾形相馬か。随分と久しぶりじゃないか。」
今泉は不敵に笑う。
その笑顔は俺を嘲笑っているものだった。
あの時の笑みと、全く一緒だ。
「やはり君は悪い子だな―――」
今泉は俺の胸倉を一気に掴みあげる。
190センチもあるその巨体に掴みあげられては自然と俺の体も浮く。
く、苦しい・・・!
日頃体を動かしていればいれば・・・!
俺は右拳をとりあえず今泉の顔面へとヒットさせることに成功させる。
一旦、地に足が着き、呼吸が可能になる。
彼を殴ってしまえば、俺はもう停学くらいの処分は受けるだろう。
・・・構わない。
ガルデモが歌い続けるなら・・・俺はそれでも構わない!!
あの虚無の日々に戻るくらいなら―――――!!
「さぁ・・・とことんやり合おうぜ・・・。この程度か・・・?」
彼は無言で立ち上がる。
唇の右側から血が滲み出ているのが分かる。
完全に彼を怒らせてしまったようだ。
少しでも時間が稼げれば・・・。
「秩序を保てぬ者には罰を下すまでだ」
俺に言う訳でもなく。
自分に言い聞かせるように。
それだけ告げて、俺の懐へと頭から飛び込んでくる。
こんな馬鹿力で来られたら、俺もどうしようもない。
流されるままに背中から地面に強打する。
肺から息を吸い出されるような感覚。
とても気持ち悪い。
俺に馬乗りになったところで、顔面に平手打ち。
一瞬にして意識が吹き飛んでしまうところだった。
それくらいの衝撃が俺を襲う。
「グ・・・ガァ・・・」
唸る事しか出来ない。
何やら体育館がざわつき始める。
そして・・・遂にガルデモの演奏が中断される。
彼女らの世界が・・・終わっていく・・・。
俺は何も出来ない・・・。
何も―――。
「離してあげろーー!!くそーー!」
「彼女達の音楽が支えになってるの!お願い!!!」
「なんなんだよ!!」
「やめろーー!」
怒号の嵐。
こいつら・・・何も出来ないくせに。
何も・・・しようとしないくせに・・・。
一丁前に抗う振りだけはしやがって―――。
今泉はいつの間にか俺の上からは消えており、ステージ上から声を荒げていた。
一瞬にして意識が戻っていく。
このままじゃ本当にまずい・・・!!
「ここに居る全員・・・処分がある事は当然・・・分かっているだろうな?」
鋭い眼光で叫ぶ。
一般生徒はそれだけで怯む。
くそが・・・!
お前らにとってのガルデモはそんなもんなのか!!
「今までは大目に見てやっていただけだ・・・。図に乗るなッ!!」
岩沢、ひさ子、遊佐、入江、関根の五人は教師陣に取り押さえられていた。
無論、楽器など彼女らから引き剥がされている。
「学園祭でも無しだ・・・二度とこんな下らん事させるかッ!!!」
やめろ・・・やめてくれ・・・。
これ以上俺から大切なものを奪わないでくれ・・・!
もうこれ以上―――――。
俺の中で。
何かが弾けた気がした。
何かが切れた。
そんな音がした。
「うわああぁあああああぁあぁぁあぁああぁああぁあぁぁああッッッ」
その声を上げたのは俺ではない。
NPC。
今まで大人しくしていた一般生徒だ。
狂ったように一斉に教師陣の中へと突っ込んでいく。
だが、体育会系教師の前では捩じ伏せられていく。
所詮は非力の集いか。
いつも普通に生徒をやっているだけだからか。
でもいきなりどうしたんだ・・・。
生徒が壊れたロボットのようにガクガクと動き続けている。
ステージに上がる訳でもない。
ガルデモを助けてあげるわけでもない。
ただ一方的に教師を攻撃している。
捩じ伏せられてはいるが・・・。
「なんなんだ・・・こいつら・・・」
さすがの今泉も困惑しているようだ。
今だ・・・!このチャンスをモノにしなければ!
体育館の脇を走り抜け、ステージへと駆ける。
「・・・コイツは捨てても構わんな?」
今泉はぶっきらぼうに岩沢のギターを掴みあげる。
岩沢は殺す、といわんばかりの表情で今泉を睨みつける。
あのギターは岩沢に取って、ものすごく大事なギターだったはずだ。
音楽との架け橋を作ってくれたギターだったはずだ。
「それに・・・」
小さな声で呟く。
そして。
それは怒号へと変わる。
「それに・・・触るなぁああぁぁぁあああぁ!!!!!」
岩沢は教師の顔面を頭突きし、隙をついて腕を振りほどく。
一気にギターの元へと駆け寄り、今泉の手から奪う。
よこせ!!、と今泉は叫ぶが岩沢は怯まない。
そして―――。
「新曲・・・」
ギターソロの歌を弾き語りし始めた。
聞いたことのない曲・・・。
いや、前々から岩沢が口ずさんでいた曲だ。
覚えてる。
あいつのことが・・・好きだったから。
だから覚えてる。
でも・・・。
なんだ―――この違和感―――
これを歌ってはいけない気がした。
何故かは分からない。
吐き気と寒気がした。
どうして―――?
そして。
何かが吹っ切れ、心のダムが崩壊した。
頬を伝うものを触って確かめる。
・・・不覚にもそれは涙だ。
なんで・・・涙なんか・・・。
引き裂かれたくない―――。
俺はまだ―――。
・・・・・。
引き裂かれるのなら、いっそ俺の身を引き裂いて欲しかった。
己の身を引き裂かれた方が、遥かにマシだと思えた。
涙は止まらない。
心のダムは決壊したかのように。
涙は溢れ出る。
自然と足は止まる。
眩い光が、俺を包み込んだ気がした。
つまり、そういうことだった。
次回予告
「どうしてだろうな。」
「それを繋ぎとめてくれたのは岩沢だ―――。」
「あたしがそんな弱い人間に見えるか?」
「入江・・・お前は優しいな。」
「単純に、音痴なんだよ」
「尾形。アンタ、あたしを"正常"だと思うなよ―――?」
「あたしは明日から平然と毅然と暮らしていくよ。」
「誰もあたしがおかしくなっただなんて、気付かないだろうな。」
「今も・・・岩沢の背後には・・・斬崎の亡霊が立ってんだよ・・・。"ここで歌うのは俺だ"って言わんばかりにな―――。」
#8 《Last Night》