好きなキャラに好きなキャラを駆けたので100倍になると思います。
ええ、私は詳しいから分かるんです。
ISの側もアニメ制作が決まったそうで、クロスオーバアー的にもポイント倍点ですね!
~「アポカリプス・インサイド・テインティッド・ソイル」×「ルームメイトはブロンド貴公子」~
「ラグナロック・インサイド・テインティッド・ソイル」
(シーケンスあらすじ)暗号「タヌキ」の謎を解明する過程で、フリージャーナリスト「シャルロット・リー」は巨大な陰謀を捉えていた。サラシキサン製薬が開発したバイオ・マッポをネオサイタマ市警が大量導入しようとしている。シャルロットはアイエスレイヤーの協力を仰ぐ。→
→バイオ・マッポが導入されれば、ネオサイタマの治安機構すらもIS学園とソウカイ・シンジケートの手中に収められてしまうだろう。アイエスレイヤーはシャルロットとともに、オカシ工場に偽装されたサラシキサン製薬のバイオプラントに潜入する。
「行くぞ」背後から声をかけられ、シャルロットは驚愕する。アイエスレイヤーの声だった。「きゅ、急に声をかけないでよ。びっくりするなあ、もう」少し頬を膨らませる彼女に、「……地図があると聞いた」アイエスレイヤーは無感情な声で答える。シャルロットは色あせた紙を取り出した。「かなり前のデータみたい。不正確かもしれないね」
アイエスレイヤーは十数枚に及ぶパンチ紙を数秒で確認し、「バイオプラント上にチャガシ工場か」眼を細めて遠見の姿勢をし、眼下の工場を見下ろした。入り口のノレンと煙突には「T・サラシキ・オカシ工場」「タノシイ」「オイシイ」などという文字がコミカル・フォントで欺瞞的に表示されている。
「バイオ・プラントがあるってことは本当だよ。信じられないけど」「いや、分かる。あの警備員を見れば」アイエスレイヤーはシャルロットを制し、工場入り口をうろつく姿を差した。「デュノア・インダストリのアンタイニンジャライフル《ヴェント》で武装している。それに格好だ」
警備兵の格好は、全く同じ無骨なライフルを構え、全く同じ姿勢で、全く同じ女の顔をし、全く同じ形状の電気ネズミ・キグルミを着ていた。「クローン・ホンネ?」「そうだ。キグルミの形状から見てN-12型、最新鋭タイプだ。ただのオカシ工場に重武装の警備兵。ありえん」
入口、裏口、バルコニーにツーマンセルが三組。全く同じ姿勢、全員同じ体格で辺りを警戒していた。アイエスレイヤーにとっては見慣れた格好だ。彼のジュー・ジツを持ってすれば彼女が十倍いたところで苦にならぬ。
しかし、シャルロットも言ったとおり工場内は不可知である。力押しで行けば何があるかわからない。アイエスレイヤーは岩肌にクサビを打ち付けザイルを垂らした。「ISで降りれば?」シャルロットが提案する。「展開光が目を引く。ザイルは?」彼の問いにシャルロットは無言で首を縦に振った。
崖下にシャルロットが降りるのを確認し、彼は手元を僅かに引く。すると岩肌に食い込んだフックははずれ、ロープはするするとアイエスレイヤーの手に収まった。クラモチ・テクノロジ社のフックロープは、ネオサイタマ以前の失われた技術さえ継承しているのだ。
「まず見張りを片付ける。待っていろ」言うなり、アイエスレイヤーは音もなく工場へ走った。「チャガシ」「安全もたまに重点」とペイントされたコンテナの合間を移動し、入口の2体に近づく。そして他のセルの視線が外れた瞬間を狙い、斜め後方から(イヤーッ!)(ぐわ~)(イヤーッ!)(ぐわ~)
タツジン! ニンジャでもなければ探知できぬスピードで出たアイエスレイヤーは、たて続けにブレードとキックで2体を昏倒させる。さらに流れるようなジュー・ジツで一体の腰に腕を回して、もう一体には両脚を首に回して投げ飛ばした。2体は側面には「オカタヅケ」と印字されたコンテナに放り込まれた。
さらにアイエスレイヤーはバルコニーに飛びつき、ドーナツをぱくつく狙撃ホンネの下に肉薄する。縁にしがみつき、コンコンと欄干を叩いた。「なになに~?」「音がした~?」「何だろ~?」「見てくる~?」「見てくる~」狙撃ホンネの片方が下をのぞき込もうとした時、彼はその首根っこを掴んだ!
(イヤーッ!)(ぐわ~)のぞき込んだ狙撃ホンネは後方に投げ飛ばされる! 間を置かず投げられたスリケンが空中で命中し、そのままコンテナの中へホールインした。アイエスレイヤーは残り一体が反応する間を与えずバルコニーに侵入し、ブレードで一撃! クローンホンネが昏倒し投げ込まれる。
さらにアイエスレイヤーは屋根伝いに裏口の二人の頭上へ移動した。遺伝子を分けた同僚がやられたとはつゆ知らぬ2体は所在なげに手持ちのアサルト突撃銃《ホカゴ・バトルフィールド》をもてあそんでいる。アイエスレイヤーは彼らに向かって飛び降りた。(イヤアアアーッ!)(ぐわ~)(ぐわ~)
飛び降りながら空中2度蹴りを繰り出し、一撃のみで裏口ホンネの2体を撃破した。動かなくなった電気ネズミキグルミ2体を引きずって運び、アイエスレイヤーはまたコンテナの中に放り込んだ。
「か、片付いたんだね……」シャルロットが物陰から姿を見せる。修羅めいた彼の戦闘に、実際彼女は引き気味であった。中性的な美貌が若干青ざめている。ニンジャスレイヤーは真顔で頷く。「裏口から侵入するぞ。ハイパーセンサーで確認したが、中に生体反応はない。自動工場のようだな」
二人は建屋に入り、殺風景な廊下から「生徒会室」とショドーで書かれた部屋の前で立ち止まった。「……生徒会?」アイエスレイヤーが首を傾げる。「サラシキサン製薬はセートカイと呼ばれる特殊な組織形態で運営されるんだ」シャルロットは簡単に説明する。
頂点に立つ者は社長ではなく会長とされ、それ以外の呼称で呼ぶことは許されない。肉声はもちろんIRC会話でもだ。もし違反した者がいたならば、神話のイカめいて全身の骨がなくなるまで囲んで警棒で叩かれ、バイオスモトリの闊歩するキルゾーンに放流されるという恐るべき制裁が行われるのである。
ネオサイタマの暗黒メガコーポではよく見られる陰惨な因習の一つであった。もちろん表社会ではサラシキサン製薬は優良企業として知られている。シキホーによると3年以内離職率は0パーセントである。実際その情報は正しい。3年後、新入社員の99.9パーセントは死亡しているからだ。
「イヤーッ!」ドアは施錠されていたが、アイエスレイヤーがニンジャ握力で破壊し、中に侵入した。そこは標準的な執務室めいた部屋であった。壁には「家族愛重点」という毛筆の掛け軸が飾られている。アイエスレイヤーは一瞥するとカタナ・ブレードを取り出し、一刀のもとに斬り捨てた。
掛け軸の後ろからは「楯は無い」と刻印されたダイヤルロックが現れる。「情報通りだね。なら、ダイヤルは右に3、6、4。左に9、3」シャルロットの指示通りアイエスレイヤーが操作すると、部屋全体が回転し、ゆっくりと降下し始めた。
長い降下の中、アイエスレイヤーがつぶやく「サラシキサンで、6がラで9がキと言うのは無理がないか」「僕に言わないでよ……」シャルロットが困惑したような顔で諸手を挙げ、しばらくしたところで、エレベーターは金属音とともに停止する。部屋は巨大な金属のシャッターに面していた。
「生体反応、多数だ」アイエスレイヤーが告げる。シャルロットは自身のアンタイニンジャライフル《ヴェント》を構える。「開きます、ドアに手を挟まないようご注意重点ドスエ」合成マイコ音声が欺瞞的に注意を促した直後、重々しい圧搾空気の音とともにシャッターが開いた。
おお、なんたる光景か! オカシ工場の地下には、巨大な工場設備が隠されていたのだ。二人の眼下には、巨大な地下バイオプラントが張り巡らされていた。工場は今も稼働中で、バイオ液を満たした水槽の中を、コンベアの上を、妖しげな物体が行き来している。
そして……ナムアミダブツ! シャルロットが震える指先で示すところには、裸の少女の姿が並んでいる。あの水槽は培養装置であり、今彼らがいる場所は、クローン・ホンネの製造工場なのだ!
「こんな……信じられないよ」「生体反応が多くなるわけだな」アイエスレイヤーは周囲を見回す。広大なプラントに人影はない。設備を完全に無人化しているのか。警戒しつつ降りる二人を咎める者はいなかった。二人は地図に記された別区画に向けて移動を始める。
アイエスレイヤー達がいる区画は地図上では「ホンネ」と記されている。二人が目指すのはさらに奥に存在するはずの「ウツホ」の区画だ。二人は小走りに移動し、やがてエリアの区切りに当たる場所に達した。
おそらくこの区画にバイオマッポの製造設備があるはず。シャルロットの目的は、その管理UNIXにウイルスをインストールして破壊し、さらに『タヌキ』の情報を掴む。この暗号の奥に潜む巨大な陰謀を解き明かすのが、フリージャーナリストとしての彼女の使命なのだ。
武力さえも手中に持つ暗黒メガコーポを相手どるにあたり、シャルロットは無策では無かった。ニンジャがと対立しているアイエスレイヤーに協力を求めたのだ。見返りはアンタイニンジャウイルスの解毒薬。ドラゴン・リューインの命を救いたいという彼の気持ちを、シャルロットは汲んだのである。
「この先のエリアの地図はなかった。そうだな?」鋼鉄製の扉の前に立ち、重い鋼を叩きながらアイエスレイヤーはつぶやく。シャルロットはしばし瞑想めいて黙り、「うん。そうだね」と答える。サイバネIRCから情報を確認していたのだ。
一角はさらに巨大な扉に遮られており、電子錠で閉じられていた。「パスは36493、893。ん? さらに四字熟語を1分以内に5個入力しろ? 変なロックだね」「学がない者を弾くためかもしれない。作った者はカチグミ階級の四字熟語マニアだろう」
「いわゆるマケグミには、開けられないように、か。岡山縦断クイズじゃないんだから」シャルロットは愚痴りながら、「不良債権」「奉仕残業」「俺知高分」「直結循環」「起承忍殺」と手早く古事記に記されている四字熟語を論理タイプしていく。入力は一ミリ秒で終わり、扉はすぐに開いた。
ゲートの中は円柱状の空間である。そして、中央には虫の卵めいての細いシリンダ状の水槽がびっしりと積み重なっている。恐るべき数、恐るべき規模! そしてその中には、一つ残らずクローンホンネとは異なる眼鏡をかけた女が収まっていた。ナムサン! クローン・ウツホだ!
「もうここまで計画が進んでいたなんて」シャルロットが震える声で言いながら、シリンダーの一つに手をあてる。「これが全部バイオ・マッポなの!?」彼女が呆然とするのも無理からぬ。このバイオマッポが市警に配備されれば、ヤクザはクローン・ホンネ、マッポは全てクローン・ウツホとなる。
「シャルロット=サン。管理室はあそこだ。おそらくUNIXも」ふらつく彼女に向け、アイエスレイヤーが示す。シャルロットは扉を開き、コンソールを操作する。数秒して、焦りをにじませながら口を開いた。「ヤバイ級の電子ロックだ……。ハッキングで破るしかないや」
「周囲は俺が警戒する」「お願いね」アイエスレイヤーと簡単に役割を確認すると、彼女は頷いた。シャルロットは着用しているスーツの懐から、メディシンケースを取り出し、てのひら一杯のズバリ・タブレット錠をまとめて飲み込む。
途端、彼女は糸の切れたジョルリめいてくずおれる。アイエスレイヤーはさっとその背に手を当てて支えた。生体LANから精神をIRCコトダマ空間にダイヴさせたのだ。床に横たえられた彼女の胸は標準的であった。
その時である。「イヤーッ!」ほの暗い空間をシャウトが響く! アイエスレイヤーがニンジャセンチネルめいて周囲を警戒しようとした刹那のことだった。四本の細い影が彼らに伸びる。ワイヤーブレード! 「イヤーッ!」アイエスレイヤーはカタナ・ブレードだけを抜き二本を切断!
しかし背後にシャルロットをかばう彼には、残りを回避する余裕がない。二本の鋼線は手足に絡みつき、彼を空中に投げ上げた。「グワーッ!」硬化テクタイト製の水槽に叩きつけられ、アイエスレイヤーはウケミも取れぬ! 空中を糸の切れたカイトめいて舞うことを強いられ、最後に廊下に叩きつけられた。
「グワーッ!」「イヤーッ!」高くバウンドした彼の身体に向け、小柄な影が飛びかかり横抱きに抱きかかえる。ワイヤーブレードは、身長4フィートあまりの小柄な姿形の背から伸びている。異様な存在は、子供めいた身体で軽々とアイエスレイヤーを支えていた。
「ハジメマシテ。フォレスト・ラウラ・サワタリです」ラウラと名乗る女が挨拶した。迷彩色のニンジャ装束、アジアめいた円錐形の編笠と、そこから伸びる銀の長い髪。そして片目のアイパッチと、漆黒のドイツ軍人めいたIS! 謎の存在はアイエスレイヤーを抱いたままくるくると地上に着地した。
「イヤーッ!」アイエスレイヤーはもんどりを打って彼女を振りほどくと、バク宙を3回打ってそのままオジギ姿勢を取る。「ドーモ、フォレスト・ラウラ・サワタリ=サン。アイエスレイヤーです」先手は取られたものの、今の彼は無防備なシャルロットを背後にかばう位置取りにつけていた。
「内部が手薄だったのはオヌシに……ニンジャに守らせていたためか。だが、俺にとっては幸運だ。ニンジャ殺すべし」アイエスレイヤーは敵の装備を見て、カタナ・ブレード《カケラスノウ改善》と自身のISを脚部・シールドのみ部分展開する。
「貴様がアイエスレイヤー=サンか。噂は聞いている」ラウラ・サワタリは威圧的に笑いながら言った。「フン、勘違いをするな。私はサラシキサンを退職したよ。それもついさっきな。セキュリティどもは全て掃除しておいた」「何だと」
「このバイオ身体能力にニンジャソウル、そしてIS。三つの力が合わさればカラテにカラテにカラテをかけて1000倍だ! 分かるか、この算数が! これならば武装サラリマン生活からも自由だ!」ラウラは歓喜の声を上げつつ、右手で3メートルはある竹槍を構える。
彼女は右手を後ろに回して竹槍を構え、左手を広げて突き出す、カブキめいたカラテを構える。アイエスレイヤーは油断無く切っ先を彼女に固定していた。この異様な風体のニンジャにつけいる隙は見当たらない。「私はソウカイヤにも興味はない。だが、貴様とは戦ってやろう」
アイエスレイヤーは答えなかった。相手の狙いが何処にあるのか、その眼は休み無く推し量っていたのだ。ラウラはそんな彼の洞察などお構いなしに、頭上に竹槍をかざし、両手でくるくると回転させつつ歩み寄る。「フフフ……」その顔は不敵な薄笑いを浮かべていた。
そして、彼我の距離がタタミ3畳分となった瞬間! 「イヤーッ!」ラウラ・サワタリがニンジャ瞬発力で加速! 少女めいて短い腕が鞭のようにしなり、アイエスレイヤーの頬を打ち据えた! 「グワーッ!」
さらに彼の頬を両手で掴み、顔を間近に寄せる! そして彼女の手は「愛」「殺」と禍々しい書体で刻まれたメンポに伸び、それを外そうとする! 一体何を狙っているのか! 「い、イヤーッ!」アイエスレイヤーは両脚で地面を蹴り、バック転するようにしてラウラにケリ・キックを見舞いながら回避!
「やるな! 口づけは貴様を打ち倒してからにしてやろう」高らかに宣言する。接吻! 「私は貴様を倒す。そして貴様は連れ帰って、私のヨメにする! 決定事項だ!」「……!!!???」情を動かさないアイエスレイヤーもさすがに驚いたようで、身を強ばらせる。「ああ。私はお前が気に入ったのだ」
「ニンジャの結婚式を挙げてやるぞ、ん? そのISは白無垢の代わりとしてやろう!」アイエスレイヤーは呆気にとられていたが、すぐに気を取り直し、今度はカタナを構えた。「ニンジャが結婚などと、笑わせる。ナコウドに地獄のブッダ堕天使でも連れてきてからにするがいい。IS……破壊すべし!」
「お前も戦いたいと見えるな、イヤーッ!」ラウラ・サワタリが先手を取った。バイオ・バンブーの竹槍を両手で構え、アイエスレイヤーを切っ先で打ち据えるそぶりも見せながら、肩口を狙ってくる。恐るべき速度、正確性! アイエスレイヤーは間一髪のところを、カタナで穂先をそらした。
しかしIS装甲をも切り裂く《カケラスノウ改善》のエッジはバンブーの茎で弾かれるのみ。武器破壊には至らない。「アイエスレイヤー=サン、バイオバンブーの強度は鋼の四倍だ! その程度のカラテでは切れんぞ! イヤーッ!」
フォレスト・ラウラはさらにアイエスレイヤーに向け槍の穂先を回し、踊るようにステップを踏みつつ連続攻撃。アイエスレイヤーはカタナと手刀でこれをいなしつつ後退する。背後には壁が迫っていた。このままではジリー・プアー(徐々に不利)なのは明かだ。
しかし、アイエスレイヤーは決して考えなしに攻撃を凌いでいるわけではない。見よ! 猛攻を受けつつ、シャルロットが横たわる位置からは既にタタミ10畳ぶん離れている。彼の狙いはここにあった。
シャルロット・リーは非ニンジャ、すなわちモータルだ。彼女の至近距離で戦えば、その身は無事では済まない。付け加えるなら、IRCコトダマ空間にログイン中の彼女は今、白目をむき口元からは唾液を垂らした無防備状態で床に転がっている。逃げることも避けることも不可能なのだ。
もちろん、その狙いは同じく優れたニンジャ洞察力を持つラウラ・サワタリにも気づかれていた。「……そのモータルをかばっているな? ヨメになって早々に浮気とは妬かせる! イヤーッ!」「イヤーッ!」アイエスレイヤーは壁にぎりぎりまで近づいたところで床を蹴って反転、そこから三角飛びで回避!
さらに頭上を飛び越しつつ4連続でスリケンを投擲した。「イヤーッ!」だがそのとき、眼を疑う光景が現れる。4枚投げたスリケンのうち2枚は外れたが、残り2枚はカスミ網に絡まった鳥めいて止まったのだ。「ヌゥーッ!」さらにアイエスレイヤー自身も、空中でスリケン同様に動きを停止させられた!
ジツではない。アイエスレイヤーは一瞬でこれをテクノロジーの一種とニンジャ理解した。フドウカナシバリ・ジツの類なら肉体は縛れても、空中の物体を止めるように物理法則を妨げることはできぬ。ラウラは勝ち誇って笑っている。「気づいたか。そうだ。これは我がIS《アメクロイ》の特殊兵器!」
「第3世代兵装、停止結界だ! これが科学だ! ドイツの技術力は世界一いイイィィィィィ――イヤーッ!」さらに流れるように竹槍を構え、近距離からのイグニッション・シュクチ! ナムサン! このままではアイエスレイヤーはキリタンポめいて串刺しになる他ない!
だがラウラの穂先がアイエスレイヤーに向こうとした瞬間、「チィーッ!」ラウラは突撃の軌道を変える。彼女の至近をアイエスレイヤーが投擲したスリケンが通過! 停止結界で止めなかったスリケンが、壁面で跳弾したのだ。さらに、注意が乱れたためかわずかにアイエスレイヤーの身体に自由が戻った。
「イヤーッ!」アイエスレイヤーは《カケラスノウ改善》を量子格納領域に収納すると、比較的自由な左手に再度現出させる。「ヒサツ……ワザ!」そして何を思ったか、刃を自らの身体に向け一気に引いた! 飛び散る禍々しい赤黒の血液! 「何を!?」ハラキリめいた自刃にラウラは怪訝な表情を取った。
「イヤーッ!」その答えは、アイエスレイヤーのカラテシャウトによって返された。自分の身体に纏わりつく「何か」を切ったアイエスレイヤーは完全な自由を取り戻し、手刀で竹槍を打ち払う! 「停止結界をヒサツ・ワザで切り裂いたか! カラテ無効化攻撃《オチルビャクヤ》、噂には聞いていたが!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」左手のカタナと竹槍が衝突する! その勢いで互いに後方へバック転し、ラウラとアイエスレイヤーは再び距離を置いて対峙した。「やるなアイエスレイヤー。私のヨメにはふさわしいぞ」歓喜に満ちたラウラの声が響く。
アイエスレイヤーは応じない。「スゥーッ、ハァーッ!」一瞬のチャドー呼吸で自らつけた傷を回復し、空いた方のてのひらを上に向けて挑発する。ラウラの眼に狂気めいた闘志が燃え上がる。「ははっ、いいワザマエだ――いいだろう!」
ラウラ・サワタリは竹槍を投げ捨てると、量子格納領域から二刀のマチェーテを取り出し舞めいて振り回す。マチェーテの白刃はISの制御下に入ると直ちに青白い光を放ち始めた。プラズマ・マチェーテだ! 「貴様にベトコンゲルマンニンジャの力を――ナムとスターリングラードの地獄を見せてやる!」
彼女の発言は実際狂気めいていた。本人の記憶や知識、あるいはニンジャソウル由来のそれらが混ざり合っているのか? 原因は本人にさえ知りようもないが、彼女は自らを、ベトナムを戦いぬきスターリングラードで戦死した、ベトコンゲルマンニンジャ戦士・ラウラ・サワタリであると思い込んでいたのだ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」マチェーテとカタナの応酬! 二刀、ISの性能を加味しても互角というあたり、カラテのワザマエはわずかにアイエスレイヤーが上。しかし、停止結界を警戒してアイエスレイヤーは決定打に踏み込めずにいる。スリケンもカタナもあの兵器の前には実際無力だ。
「それほど停止結界が怖いか、アイエスレイヤー=サン!」勝ち誇ったラウラ・サワタリの声と顔! 「俺が恐れるのは復讐を果たせぬことだけだ」ジゴクめいたアイエスレイヤーの声が返される。「ならば貴様を家庭に入れ、そのメンポはエプロンの刺繍にでもしてやろう! イヤーッ!」
ラウラ・サワタリは消極的なアイエスレイヤーを傘にかかって攻めかかる! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」アイエスレイヤーは距離を置きながら、スリケンを立て続けに4枚投擲した! だが狙いが甘い。「こんなもの!」ラウラは軽く身を捻ってこれを回避!
ラウラ・サワタリは消極的なアイエスレイヤーを傘にかかって攻めかかる! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」アイエスレイヤーは距離を置きながら、スリケンを立て続けに4枚投擲した! だが狙いが甘い。「こんなもの!」ラウラは軽く身を捻ってこれを回避!
ラウラ・サワタリは消極的なアイエスレイヤーを傘にかかって攻めかかる! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」アイエスレイヤーは距離を置きながら、スリケンを立て続けに4枚投擲した! だが狙いが甘い。「こんなもの!」ラウラは軽く身を捻ってこれを回避!
ラウラ・サワタリは消極的なアイエスレイヤーを傘にかかって攻めかかる! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」アイエスレイヤーは距離を置きながら、スリケンを立て続けに4枚投擲した! だが狙いが甘い。「こんなもの!」ラウラは軽く身を捻ってこれを回避!
「どうした、ヨメよ! 逃げ腰のスリケンだけでは私に勝てんぞ!」「そのようだな。イヤーッ!」アイエスレイヤーはタタミ20畳分の距離を置き、そこからイグニッション・シュクチ! カタナを正眼に据え、シノノノ・スタイルの構えを取る。
「なんだそれは!」再びラウラは威圧的な笑いを浮かべる。近距離ならミリ秒でワン・インチ距離に付けるイグニッション・シュクチでも、かような間合いからではニンジャ反射神経で対応可能だ。
アイエスレイヤーの所行はミヤモト・マサシのコトワザそのまま、モスキート・ダイビング・トゥ・ベイルファイアに等しい。悠々と彼を停止結界で止めようとしたとき、ラウラ・サワタリの目が驚愕に見開かれる! 「サイゴン!」彼女の元に、スリケンがどこからか飛来したのだ!
しかも一発ではない。先にアイエスレイヤーが放ったスリケン16枚、その全てが壁面で跳弾し、16方向からラウラ・サワタリに襲いかかった。「て、停止結か――」ラウラは歯噛みをし、手を回すようにしてスリケンを――止められない!
「――ええい、数が!」停止結界で2枚、編み笠を投げてなんとか2枚を受け止め、残りはマチェーテで打ち払う。「その兵器、多方向からの攻撃に弱いのだろう!」「チィーッ!」ALAS! その間にアイエスレイヤーはワン・インチ距離まで接近している!
「跳弾をかわすとき、結界が緩んだ! そうでなければ《オチルビャクヤ》さえ使えなかっただろう」ゴウランガ! 先の跳弾スリケンをかわす一瞬の所作で、アイエスレイヤーはニンジャ洞察していた。そのうえでさらに、狭い空間を利用して跳弾でラウラ・サワタリを包囲攻撃したのだ!
これはまさしくドラゴン・リューイン=センセイのインストラクション、「百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。一千発のスリケンを投げるのだ!」そして地形の特性を利用して戦う「フーリンカザン」そのものである。病床の師の教えが彼を活路に導いたのだ。
「イヤーッ!」「グワーッ!」シノノノ・スタイルの斬撃が袈裟懸けに炸裂する。「イヤーッ!」「グワーッ!」右からラウラの小手に一撃! 左から一撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」マチェーテはプラズマ機構が大破ししめやかに爆発四散! さらに速度を上げて連撃!
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
最後の一撃の後、アイエスレイヤーは前方にムーンサルトめいて半回転し、ラウラの背後に組み付く。そして地面を蹴って空中へ飛び上がった。ラウラは意識を失い、抵抗できない! さらにタタミ20畳分ほどの跳躍の頂点で、頭上を下にして反転し、ISのブーストを加えて落下する!
ナムサン! これはジュー・ジツの禁じ手、アラバマオトシ・インフィニット・ストラトス・アレンジメントだ! 「イイイヤアアアアーッ!」アイエスレイヤーは無慈悲にさらなる加速をかけた。この威力ならカラテに加え絶対防御すら貫通し、ラウラ・サワタリは爆発四散する!
ラウラが地面にたたきつけられようとしたそのとき、「イヤーッ!」横合いからカラテシャウトとともに何者ががエントリーした。新たな影はカタナをかざしながら、アイエスレイヤーに切りかかる! 「イヤーッ、イヤーッ、イヤーッ、イヤーッ!」「イヤーッ!」
アイエスレイヤーはラウラを手放し、《カケラスノウ改善》で応戦せざるを得ない。空中では一瞬で4回の剣戟があり、侵入者はラウラを蹴るようにして落下の勢いを逸らす。ラウラは斜めに吹っ飛ぶことで衝撃が軽減され、爆発四散は免れた。
空中で交錯したアイエスレイヤーは、倒立するように手を付き、腕のスプリングで反転する。そのまま流れるようにオジギの姿勢を取った。「ドーモ、ハジメマシテ。アイエスレイヤーです」侵入者もタイドー・バックフリップで距離を置き、アイサツに入った。
「ドーモ、アイエスレイヤー=サン。シュヴァルツェア・ノトーリアスです」そのニンジャは奇妙な風体であった。左右二本の腕に加え、もう一対の腕が肩口から生えており、それぞれ鋭いカタナを構えている。4連続斬撃はこれによる。さらに闖入者は彼女一人ではない。
別の気配が地に伏したラウラ・サワタリのそばでした。「情けない隊長もあったものです。まあ、それも魅力なんですが」そこには体長数メートルはあるカエルに跨がり、ドイツめいた軍服をきた緑髪の女ニンジャがいた。彼女は気絶したラウラを抱きかかえている。「ドーモ、クラリッサ・フロッグマンです」
さらに、カエルの足下には銀色の液体が蠢いている。それはやがて人型を、さらに表面にはメンポと装束の姿を現出させ、水銀色のニンジャの姿をとっていた。「ドーモ、シュヴァルツェア・ディスターブドです」
ナムアミダブツ! なんたる悪魔的な姿形か。このバイオプラントや研究設備と関係あろうことは見れば分かる。そのうちの一人、クラリッサ・フロッグマンと名乗るニンジャが進み出て口を開いた。「アイエスレイヤー=サン。とりあえず、今日のところはここまで、休戦としないか。どうだろう」
「うちの隊長はこんな有様だし、一方、このままやれば貴様は三対一。そのモータルも気になるようだし、見たところ戦いとは別の目的があって来たんだろう?」アイエスレイヤーは問いには答えない。代わりに、ケンドーの構えのまま、「オヌシらは……サラシキサンのニンジャか?」とだけ返す。
「そうだった。正確には、ついさっきまではと言うべきだろう。私たちはここの実験体だったが……今日からクロウサギ・ドージョーだ。大将と共にこの施設からオサラバする 」クラリッサ・フロッグマンは巻物を取り出した。そこには威圧的な字体で「クロウサギ達がドージョー」とショドーされている。
「我々は自由になる」「自由」「自由!」ノトーリアスとディスターブドがその言葉をチャントめいて唱和する。「まあ、そういうわけだ。どうだい?」アイエスレイヤーは答えない。殺忍衝動と、相手の戦力を天秤にかけ状況判断をせねばならない……何より、シャルロットやアンタイニンジャウイルスのこともあるのだ。
「沈黙、か。消極的な肯定と受け取っておこう。では、気が変わらないうちに!」フロッグマンはラウラのものとよく似たドイツめいたISを展開し、煙幕弾を放つ。ハイパーセンサー妨害効果も併せ持つそれが一面に立ちこめ、煙が晴れるころにはバイオニンジャ達の姿は消えていた。
「ううん……」UNIXの近くで、シャルロットが起き上がる。アイエスレイヤーは彼女に近寄り、手をさしのべた。ズバリの副作用で、目の下には短時間で隈ができている。「あのニンジャたちは?」「気づいていたのか?」「最後の方だけね。ごめん、意識はあったけど副作用で動けなくて」「そうか」
「製造プラントの情報は全て破壊できたよ。遺伝子設計図はめちゃくちゃだ。それに、目当ての情報も手に入れた。君のも、僕のもね」シャルロットは達成感のためか、力なく笑っている。
「ならば、アンタイニンジャウイルスの情報をよこして貰おう」アイエスレイヤーは仕草は気遣わしげに彼女を支えつつ、声は平坦に言った。「慌てないでよ。情報を抜いただけなんだから、解析しなきゃ使えない。安心して、ちゃんと使えるようにして渡すから、さ」
「……わかった。背中に乗れ」「アイエッ、ちょっと!?」「その方が早い」アイエスレイヤーは強引に彼女を背負うと、ゲートに向けて歩き始める。「ありがと、やさしいね」シャルロットは少し苦笑して、彼に背負われるまま二人で脱出するのだった。
(第一部「IS学園炎上」より:「ラグナロク・インサイド・テインティッド・ソイル」おわり)
~本編終わり。ここからはおまけになります。おまけは3つあります~
【おまけ1】クローン・ホンネ・イン・ザ・ワークス【暴力描写注意な】
某時刻、ネオサイタマ、トコロザワ・ピラー。ソウカイヤの根拠地にて、ニンジャのマヤ・ヤマダは困惑していた。彼女のボス、ダークニンジャから呼び出されたはいいものの、眼前に暗黒非合法組織にはおよそ似つかわしくない光景が広がっていたからだ。ちなみにマヤの胸はとても豊満である。
「ざっけんなこら~」「すっぞこら~」「さまっしゃってこら~」目の前を埋め尽くしているのは一面黄色の電気ネズミ・キグルミを着た、全く同じ顔をした少女たちだ。「たべる~?」「おかし~! たべるよ~」「うまうま~」「ありがと~」彼女たちは無邪気に笑い、会話を交わしている。
「あのう、ダークニンジャ=サン?」マヤは、彼女の上司であるオブシディアン色の装束を纏ったニンジャにおずおずと話しかける。「なんだ」「これはなんでしょうか」「新型クローンヤクザだ」「ワッザ!?」「ヤクザだ」ダークニンジャは繰り返した。マヤはその“ヤクザ”とボスの顔を交互に見比べる。
「サラシキサン製薬が新しく開発したらしい。従来型に比べ3倍の性能を持つ、とのことだ」「いえそこではなく。これってヤクザじゃなくてバイオ女子高生では」「ヤクザだ。ヤクザなのだ。そもそも女子高生にバイオもオーガニックもあるか、エッ?」「アッハイ」マヤは是非もなく、頷くしかない。
「ではヒュージティッツ=サン、早速仕事をしてもらうぞ。もちろんこの新型を使ってだ」「……」「タマ・リバー沿いの再開発地区に木っ端リアルヤクザの事務所がある。邪魔で工事が進まないから、掃除してこい」「承知しました。ですが、申し上げたいことがあります」マヤは挙手して発言する。
「なんだ?」ダークニンジャはうるさげな視線を向けマヤを促す。マヤは毅然として言い返した。「私はヒュージティッツじゃなくてヒュージシュリケンですっ! ほら、背中にでかいスリケン!」彼女は自分の背を指す。ゴウランガ! そこには胸の豊満さに匹敵するほど巨大なスリケンがあるではないか!
「ん? そうか、悪いなヒュージ……」ダークニンジャの目がマヤの背後の巨大スリケンとマヤの胸のあたりをさまよう。言葉を探すように言いよどんだ後、「……なんとか=サン」と付け加えた。マヤの胸は規格外であった。
「もう、いいです……」「そうか。では、はげめよ」マヤがため息とともに諦めると、ダークニンジャは妖刀《カケラスノウ》を抱え、暗闇の中へと消えていった。後にはクローン・ホンネたちとマヤだけが残される。
「おしごと~?」「めいれいして~」「ざっけんなこら~?」「すっぞこら~?」マヤを取り囲み、首を傾げながら指示待ち体勢に入るホンネたち。「従来型クローンヤクザの3倍の性能……確かにかわいさは3倍どころではありませんが」「えへへ~」マヤに撫でられて、照れたように笑っている。カワイイ!
「実際役に立つんですかね。まあ、ダメだったらサラシキサンの営業がまた人食いズワイガニのエサになるだけですね」マヤは嘆息し、ホンネ達を見回した。「じゃあ行きましょうか。皆、屋形装甲車に分乗して!」「「「すっぞこら~!」」」ホンネたちはだぶだぶのキグルミ袖を持ち上げ、唱和した。
果たしてマヤの心配はキユウ・アングザイエティであった。「突撃!」「「「「ざっけんなこら~!」」」」「「「グワーッ!」」マヤの号令でヤクザ事務所にホンネたちが突撃! 最初の彼女たちの一斉射撃で、警備についていた旧式クローンヤクザYー11は一瞬でネギトロめいた死体と化す。ツキジ!
そのままマヤが事務所の中に突入すると、面食らった若いリアルヤクザがチャカ・ガンを向けた。「ダッテメコラー! ここがミタライ・クランのヤクザ事務所だってわかってんのかコラー!」一般人ならひるむところだが、そこは彼女もニンジャだ。「知っています。だから来たんです」平然と答える。
「何しろ私はソウカイヤのニンジャですから。ドーモ、ミタライ=サン。ヒュージシュリケンです」「ヒュージティッツだとォ!? ふざけた名前しやがって」またも間違えられる彼女の名前! 一瞬でマヤのカンニンブクロが沸騰した。「バカハドッチダー!」コワイ! ブッダも眼を背けるような罵倒!
マヤは背中の巨大なスリケンを投擲する! 「「「「グワーッ!!」」」」大して広くない事務所の中を暴風のようにスリケンが通り抜け、ミタライの取り巻きヤクザたちが絶命する。「アイエエエエエ!」いかにヤクザとはいえニンジャの暴虐を前にして、ミタライはしめやかに失禁して椅子から転げ落ちた。
「さあ、この一帯の権利書を渡してください」彼に対して、マヤは傲然と言い放つ。「へへっ、そう簡単に渡すもんか。あんたのティッツを揉ませてくれるっつうなら別だがナァ」下卑た笑いである。マヤは眉をぴくりと動かし、「ホンネ=チャン!」周囲のクローン・ホンネに下知を飛ばした。
「な、何をする気だ」クローン・ホンネは即座にミタライを包囲する。電気ネズミキグルミに包囲された彼は、さすがにおののいた様子だ。「おい、俺にはキョートのニンジャ組織の後ろ盾が……」「やっておしまいなさい!」何か言おうとした彼を気にもかけず、マヤは冷徹に命令する!
「だってめこら~!」「すっぞこら~」クローン・ホンネがにこやかに笑いながらアサルトライフルの銃床で激しくミタライを殴りつける! 「アイエエエエエ!」ヤクザの右足の骨が粉砕!
「ざっけんなこら~」「なまっこら~!」クローン・ホンネはにこやかに笑いながらアサルトライフルの銃床で激しくミタライを殴りつける! 「アイエエエエエ!」ヤクザの左足の骨が粉砕!
「あっこら~!」「てめっこら~!」クローン・ホンネはにこやかに笑いながらアサルトライフルの銃床で激しくミタライを殴りつける! 「アイエエエエエ!」ヤクザの右腕の骨が粉砕!
「ちぇらっこら~!!」「しゃっこら~!!」クローン・ホンネはにこやかに笑いながらアサルトライフルの銃床で激しくミタライを殴りつける! 「アイエエエエエ!」ヤクザの左腕の骨が粉砕!
「ヤメロー! ヤメロー!」ミタライが泣きながら叫ぶ! だがホンネは構わず、手に手に持ったアサルトライフルを振りかざす!「わどるなっけんぐら~!」「すっぞすっぞすっぞこら~!!」クローンホンネたちは相当な興奮状態にあるようだ。ひょっとすると、主を侮辱されて怒っているのかもしれない。
「アー……もういいです、下がって」マヤは彼女たちを制す。ホンネ達は大人しく命令に従って包囲を解いた。「どうです、ミタライ=サン。権利書を渡す気になりましたか?」「アイエエ……」ヤクザは息絶え絶えで返事も出来ない。「返事が聞こえませんねえ」
「ホンネ=チャン!」「ちぇらっこら~!!」「アイエエエエエ! 止めてくれ! 白状する、白状するよ! そこの金庫の中だよお!」マヤはホンネの一人に眼で合図をした。さらに続けて暗証番号を吐かせ(番号はなんと3182であった)中身のマキモノを確認する。
「なるほど、確かに権利書です」「だろお、だからタスケテ……」ミタライは絶息しそうになりながら懇願する。「ええ。ホンネちゃん。この方を運んで上げてください」マヤはにっこりと笑いながらホンネに指示を出す。
「タマ・リバーの橋の上まで。後は欄干から投げこんであげなさい」「アイエエエエエエエ!?」ミタライが自身の運命に悲鳴を上げる! マヤは幼げでもある顔に邪悪な笑顔を浮かべながら、ミタライに宣告した。「貴男、ソウカイヤに逆らったんですよ。それがどういうことか理解してなかったんですか?」
ナムサン! 非道! だが彼女もまたソウカイヤのニンジャなのだ。刃向かったモータルの運命はみなこんなもの。マッポーの世の倣いだった。「アイエエエエ……」「すっぞ♪」「すっぞ♪」「すっぞこら~♪」楽しげにも聞こえるホンネたちの声が河川の方へ遠ざかる。
やがて、水音が一つして、その夜のマヤの仕事は終わった。
「何とか、うまくいきましたねえ」「すっぞこら~♪」屋形装甲車に乗りながら、マヤは呟いた。彼女は仕事を終え、トコロザワ・ピラーに戻る途上だった。クローン・ホンネの力はなかなかだ。これが配備されれば、彼女の仕事もやりやすくなるはず。
「これからもよろしくお願いしますね」「すっぞ~♪」運転席のホンネの頭を撫でながら、マヤはほくそ笑む。このホンネで数をそろえて襲撃すれば、彼女の当面の仕事――あの目障りなドラゴン・ドージョーを倒すことも可能だと考えていたのだ。
そしてこの後しばらくして、マヤは正式配備されたクローン・ホンネ3個小隊をつれ、ドラゴン・リューインと弟子達のドージョーを襲撃することになるのだが……それは、この段階では語るべきではない。別の物語である。
(おまけ1 クローン・ホンネ・イン・ザ・ワークス おわり)
【おまけ2】アイ・ウッド・ギヴ・ユー・エニシング【翼をください】
~物理書籍版4巻までの読者は、ニンジャスレイヤー原作第2部に相当するネタがあるため注意な~
~クラリッサ=サンたちが自由になったらやりたいこと~
「我々は自由になる!」クラリッサ・フロッグマンは嬉しそうにその言葉を口にする。「自由……か」アイエスレイヤーは低い声で言い返した。「ニンジャが自由など得てどうする?」皮肉を込めて問うたつもりであったが、クラリッサの反応は決然としていた。「決まっている!」
「アリアケ・ウスイウキヨエマツリに行くのだ!」「何だと」放たれた言葉に、彼は意表を突かれる。ナムサン! ウキヨエマツリとは、アマプロ様々な者が集まり、健全なのから青少年の何かが危ないものまで種々のウキヨエを取引するという、古事記にも記された暗黒非合法ビズ・フェスタである!
「ウスイウキヨエマツリを破壊しようというわけか?」アイエスレイヤーは相手の真意を測りかねたように訊ねる。「バカハドッチダー!」「アイエッ!?」クラリッサはなぜか激昂し、慈悲深きブッダでさえも目を背けるほどの口汚い罵声で叫ぶ! 勢いにたじろぎ、アイエスレイヤーも半歩後退した。
「ウキヨエマツリを脅かすなど……! 私がいればそんなヨタモノはネオサイタマ市警にかわり退治てやったところだッ!」個人的ななんかがあるのか、クラリッサは相当な興奮状態にあった。ディスターブドとノトーリアスが「次回からは大丈夫ですから」「俺のコピーボンジツは無敵だ!」となだめている。
「それに私は次回こそ参加して! フジ×ガン本や、フジエリ、カタオキ受けのウスイタカイホンを買わねばならんのだ!」「あ、今年のニンジャ文化祭は行けませんでしたからねえ」「アイエエエエエ……」ディスターブドのセリフがさらになんかを刺激したらしく、クラリッサは血涙を流して悔しがる。
「お前がウスイタカイホンに並々ならぬ熱情を抱いていることは理解した」アイエスレイヤーは完全に毒気を抜かれ、引き気味になりながら言う。「分かってくれたか。我々が自由になってやりたいのはそれだ!」クラリッサは理解者を得て、輝くような笑顔を浮かべた。
「だが、その格好で会場に行くつもりか?」アイエスレイヤーが指摘する。「当然だ。何の問題がある?」意外な質問だったようで、クラリッサはきょとんとした表情になった。「お前達、自分の姿を見てみろ」
「お前達はあからさまにニンジャなのだ。会場はニンジャ・リアリティ・ショックで阿鼻叫喚だ」「アイエッ!?」「期せずしてウキヨエマツリは破壊される」「アイエエエエエ!?」クラリッサは叫んだ。これは珍しい、自分がニンジャであることに気づいてのリアリティショック症状である。
「ALAS……そんな……」ラウラを抱えたまま、NRSを発症したモータルめいてクラリッサがふらつく。彼女はそのまま、バイオプラントの奥の暗闇へと消えていった。「副隊長!!」「俺のバイオ・ウリコジツは無敵だ!」バイオニンジャ達がクラリッサを励ましながら後に続いた。
彼女らが去り、後には床で白目を剥いているシャルロットとアイエスレイヤーが残される。彼はカラテの構えを解くのも忘れ、暗闇を見つめていた。「ニンジャの……腐女子!」アイエスレイヤーは呟き、その邪悪な響きに身震いした。
そのとき、ザザ……とシャルロットの前のUNIXコンソールが音を立て、何者かのメッセージが表示される。《これはミラーシェード=サンのケジメ案件では?》「それが言いたかっただけのネタか! イヤーッ!」アイエスレイヤーはスリケンを投げつけ、コンソールを破壊! 爆発四散!
(おまけ2 アイ・ウッド・ギヴ・ユー・エニシング おわれ)
【おまけ3】フー・ゴット・マリッド・アイエスレイヤー【下品かつ原作ネタバレあり】
~ニンジャスレイヤー2部・3部のネタバレに相当するネタが含まれています。物理書籍版4巻までの読者は厳重注意な~
「私は貴様を倒す。そして貴様は連れ帰って、私のヨメにする! 決定事項だ!」「……!?!?」アイエスレイヤーもさすがに驚いたようで、身を強ばらせる。その時である! 「ダメえええええ!」精神をIRCコトダマ空間にログインさせているはずのシャルロットが飛び起きて叫んだ。
「しゃ、シャルロット=サン、ハッキングは?」アイエスレイヤーがシャルロットに問う。シャルロットは首を横に振った。「そんなの後回しだよ!」「アイエッ?」「後回しなの!」「アッハイ」アイエスレイヤーはシャルロットの剣幕におされ、その場で思わず正座!
「いい、ラウラ=サン。アイエスレイヤーはニンジャを殺すんだよ! だから、ニンジャと結婚なんてしないんだ!」「なん……だと……。それは本当か、アイエスレイヤー=サン!」ラウラは衝撃を受け、愕然と彼に向き直る。「アッハイ。ニンジャは殺します。慈悲はありません」彼は正座したまま答えた。
「ナンデ……ニンジャダメナンデ……!?」ラウラはふらふらとよろめき、近くの床に座りこむ。ナムサン! 自分がニンジャであることについて、リアリティ・ショックを起こしているのだ!
「ね、アイエスレイヤー。結婚するならモータルだよね?」代わりに、アイエスレイヤーの近くに座りシャルロットが腕に縋るようにして問いかける。「嫁にするなら、ハッキングが得意で、ロードキル・デトネイターを乗りこなす金髪美女とかがいいよね!」「いや、それは」アイエスレイヤーはたじろぐ。
そのとき、彼の脳裏にジゴクめいた声が響く。(((ククク、ずいぶんモテるではないか)))(((黙れナラク! てか出て最初の台詞がそれか!))(((うるさいうるさい、メナス・オブ・ダーク・なんとかがカットされた故、ここじゃないと出られぬのだ!)))(((出たかったのかよ!)))
(((それよりも)))彼の中に宿る邪悪なソウルは、咳払いを一つして言った。(((お前は誰がいいのだ)))(((何のことだ)))(((決まっておる、女よ。お前の周りには女がたくさんいるだろう。誰を選ぶのだ)))(((俺はニンジャを殺す。そんな惰弱なことはしておれん)))
アイエスレイヤーは決断的に言ったが、帰ってきたのは激しい罵倒であった(((バカ! バカ! なんたるセンチメント! そんなことで強くなれるものか! 一生童貞のまま死ぬぞ!)))(((アイエエエエエ!? どどどどど童貞は関係ないやろ!)))アイエスレイヤーは童貞であった。
(((関係ある。いいか、よく聞け孺子めが。ニンジャスレイヤー世界では、“童貞は非童貞に勝る”というようなカルイノベルやカトゥーンであるオヤクソクは存在せぬ)))(((アイエエッ!?)))ゴウランガ! 読者諸賢におかれては是非気をしっかり持っていただきたい! なんたる童貞真実!
(((主人公のフジキドからして子がいたし、フジオはどう見てもパコってるし、ラオモトに至っては子供が何人いるか。ニンジャで童貞臭がするのは唯一シャドウウィーヴだけだが、あいつは三対一でフジキドに負けるうえ、何時までたっても気が利かない)))(((おいシャドウ君バカにすんな)))
(((とにかく分かったであろう。女を知らないニンジャは弱いのだ……心せよ!!)))邪悪なニンジャソウルはそれだけ告げると、言いたいことを言い尽くしたらしく、奥に引っ込んでいった。「ナンデ……童貞ナンデ……?」アイエスレイヤーの精神には、深い童貞リアリティショックが残される。
「おい、アイエスレイヤー」「アイエスレイヤーってば!」「アイエッ?」左右から揺さぶられ、アイエスレイヤーはローカルコトダマ空間から意識を帰還させた。腕には、ラウラとシャルロットが縋っているが、もちろん彼にはそれをあしらう余裕はなかった。
(……童貞……復讐を果たせない……)脳裏をあの邪悪なニンジャソウルが言った言葉が巡る(だからって何者かもよく知らないような娘と……というか片方ニンジャじゃん……)彼の思考はソーマト・リコールめいて行き場もないまま回る!
(((あ、忘れてたけどファック&サヨナラなら、相手がニンジャでもワシ的にはノーカンだと思うよ)))アイエスレイヤーの中の声が、思い出したように付け加える。(((最低だ! ていうか軽いわ!)))アイエスレイヤーは憤慨するが、(だがこう言うことを頼める友人は……俺には……)
「結局」「誰を……」左右からは少女二人が迫る! 「俺は……俺は……!」アイエスレイヤーはニンジャ聴覚力を持つゆえにナンチョウ・ジツで逃げることもできぬ! このままではアイエスレイヤーの青少年としてのなんかは破壊されかねない! 二人はさらに左右から問いかける! 「……選ぶんだ!」
その時である! 「……俺だ!」暗闇の中から、二者いずれでもない女の声が響き渡った!
「ヨッ、一夏! ピンチっぽいから助けにきてやったぜーっ!」エントリーしたのは、小柄なボブカットの女ニンジャだ。首に「地獄お(Hell-O)」と書かれたマフラーをまいている。アイエスレイヤーは彼女には見覚えがなかったが、口調には聞き覚えがあった。「お前はまさか、弾なのか!?」
「そ。ドーモ、エーリアス・ディクタス。ダン・ゴタンダだ! お前がピンチな気がしてよっ。ユメミル・ジツでこのニンジャにログインして来てみたんだ。今やってるのは……あー、よくわからんが、一夏の相棒選びか何かかい?」「アー……。まあそんなところだ」「なら俺もエントリーするぜ!」
「何しろお前と俺はユウジョウ、だからな!」「おお……ユウジョウ!」アイエスレイヤーはしげしげとエーリアスを頭頂からつま先まで見、最後に顔に視線を合わせる。そして無言で力強くガッツポーズを決めた。これは一体彼のいかなる感情を意味するのか! ブッダと彼本人以外には知りようもない!
アイエスレイヤーはシャルロットとラウラから離れると、エーリアス・ダンに歩み寄り、その手を取る。「弾、お前に頼みたいことがある」「早速か。いいぜいいぜ、Win-Winってやつだな」「ああ。歩きながら話すか」二人はそのまま、建物の入り口の方へと消えていった。
彼らが去った後、辺りにはウシミツ・アワーめいた静寂が戻り、そこには呆然と事態を見守らざるを得なかったラウラ・サワタリとシャルロット・リーがいた。「ラウラ=サン」シャルロットがジゴクめいた声で隣の少女に語りかける。「何だ、シャルロット=サン」ラウラも似たような声音で答えた。
「バンザイ・ニューク持ってる?」「ベトコンゲルマンニンジャなら当然のたしなみだ。どんな施設でもディエンビエンフーめいて破壊できよう」「じゃあ彼らを追おう。泊まった先を爆破するから」「モッチャム!」会話を終えると、二人は無言でISを展開し、アイエスレイヤーを追い始める!
果たしてアイエスレイヤーは童貞を卒業できるのか? 走れ! アイエスレイヤー、走れ!
(おまけ3 フー・ゴット・マリッド・アイエスレイヤー おわり)
【愛】ドーモ、Y-12クローン作者こと温玉屋です。【殺】
【注意】おまけ3の「忍殺では非童貞が強い」というのはあくまで強いニンジャに非童貞が多いという相関関係があるだけであり、因果関係は無い。原作では、実際サンシタニンジャもオイランを抱いている。おまけのネタはあくまでネタなのでごあんしんください。【重点】
【注意2】もちろんレイジ・ナブナガが童貞であるというネタについても、原作には一切そのような描写がない。なので、案外パープルタコにオネショタめいたなんかをされているという可能性は十分にある。【願望】
【通知】また、今回のアイエスレイヤーにも猥褻は一切ないが、今回の話を書いたライターは前回今回と「ちょっとやめないか」重点のネタを連発し、さらに更新直後「エリちゃんと前後したい」などと妄言を吐いていたため、アイエスレイヤー制作チームは彼に自我の研修が必要と判断した。【報告】
【研修】彼は直ちにエジプトに送られ、ファラオのニンジャ真実に触れながらブーブスバンドを毎日朗読するという実際ちのうしすうによいトレーニングを受ける。最終的には理性を再インストールされる予定ですので、ごあんしんください。【内容】
【愛】しかしながら研修には長い時間がかかる。制作チームはできれば平坦(IS)に平坦(忍殺)をかける平坦算数をやりたいと考えているが、今のところ着手のめどは立っていない。物理書籍版第二部が出ればやるかも知れないので、期待せずに備えていただけると嬉しいです【殺】
【ありがとう】以上です【ございました】