異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
M40無反動砲から放たれた105mm弾は、先ほどまで俺たちが撃ち続けていた対戦車榴弾とは訳が違う。ロケットランチャーのように簡単には持ち運べず、ジープなどの車両に搭載するか、三脚を使って砲台のように固定して撃たなければならないという事は、それほど巨大で強力な砲弾を使用するという事であり、威力も桁が違うという事になる。
スポット・ライフルの命中によって着弾が確定した105mm対戦車榴弾は、ロケットランチャーや普通の無反動砲を遥かに上回る猛烈なバックブラストで海水を噴き上げ、長い砲身から業火と共に躍り出た。
幼少の頃から何度も狩りを経験した。だが、今の俺は狩人(ハンター)ではない。獲物を狩るための銃は優秀な射手(カノン)に託している。だから今の俺は狩人(ハンター)ではなく、狩りを手助けする猟犬(ハウンド)でしかない。
シーヒドラを無視し、宝物を狙うと見せかけた俺の作戦に、シーヒドラはまんまと引っかかった。C4爆弾がどのような武器なのかは分からない筈だが、どうやら俺が宝物が保管されている部屋の扉に向かったことで、俺が何かしらの武器で扉を破壊するつもりだと判断してくれたらしい。
そうやって見せかけることにより生じた危機感が、シーヒドラの矛先を俺へと誘った。
全ての首が俺だけを睨みつけ、ラウラとナタリアを無視してこっちを狙ってきたシーヒドラ。俺だけを狙っていたため、ナタリアとラウラどころか、一番最初から広間の入口で無反動砲の狙いを定めていたカノンとステラにすら気付いていなかったシーヒドラは、背後から放たれた照準用のスポット・ライフルを避ける事が出来ず、無反動砲が命中するという保証を2人に明け渡す羽目になった。
潮の香りの中に火薬の臭いを生じさせつつ飛来した対戦車榴弾が、炸薬が生み出した爆炎の残滓を纏ったままシーヒドラの背中に喰らい付く。着弾した部位は、中央の首の付け根の部分だ。人間で例えるならばうなじの部分だろうか。
ナタリアの84mm対戦車榴弾の時点で、メタルジェットによるダメージを与えられるという事は分かっている。それよりもサイズの大きな砲弾が着弾すればどうなるのかは、火を見るよりも明らかだ。
外殻の破片をまき散らしながら、うなじから火柱が噴き上がる。ダークブルーの美しい外殻が黒焦げになって四散し、その爆風の真っ只中で生じたメタルジェットの槍が外殻もろとも筋肉繊維を貫き、分厚い筋肉の下に延びる首の骨を掠める。
がくん、と中央の首が垂れ下がる。無反動砲の餌食になった頭の瞳が虚ろになり、砲弾がもたらした凄まじい運動エネルギーの残滓が、シーヒドラの全高15mの巨体を前方へと突き飛ばす。
さすがM40無反動砲だ。戦車砲並みのサイズならば、いくらシーヒドラが堅牢な外殻に守られていても関係はない。
フェイントのために持っていたC4爆弾を大急ぎでポケットの中に突っ込み、腰の両脇にぶら下げていた金属の塊を取り出した俺は、こっちに向かって倒れてくるシーヒドラに向かって突っ走った。
背後から突き飛ばされたシーヒドラは、まるでビルのように見える。そんな巨体が持ち合わせている重量は、たかが170cmの身長の俺を押し潰すには十分だ。
しかし、その重量がこちらの攻撃手段となる。
腰にぶら下げていた正方形の金属の塊を2つ手にし、それを重ねてからシーヒドラが倒れてくると思われる地点に投擲する。まるでホットプレートのような形状のその金属の塊は、アメリカで開発されたM19対戦車地雷である。
対戦車地雷とは、戦車を破壊するために設計された対戦車用の地雷だ。一般的な地雷とは違い、車両や戦車などの重い物が地雷の上に乗らない限り爆発することはないため、生身の人間が乗っても軽すぎて爆発することはない。
だから俺が乗っても爆発することはない。しかし、明らかに戦車よりも遥かに重いシーヒドラがこいつの上に乗れば、確実に地雷は爆発することになるだろう。戦車を吹き飛ばすほどの威力があるのだから、いくらエンシェントドラゴンでもひとたまりもない。
2つ重ねた地雷を投擲し終えた俺は、すぐさま腰に下げていたソ連製対戦車手榴弾を取り出し、安全ピンも引き抜かずに手持ちの手榴弾を全てそのまま投擲した。小さなドラム缶にグリップを取り付けたような古めかしい外見の対戦車手榴弾は、海水の中に沈んだ対戦車地雷の傍らに転がり落ちた。
「いらっしゃいませ」
ありったけの対戦車用の爆発物をシーヒドラの落下地点にスタンバイし、俺は大慌てで踵を返して走り出した。シーヒドラの転倒と対戦車手榴弾や地雷の爆発に巻き込まれる可能性があったからだ。
俺が何かを仕掛けていたのを見ていたシーヒドラが目を見開く。目が虚ろになって沈黙している真ん中の頭以外が一斉に目を見開いて絶叫していたが、俺は無視してそのままダッシュし――――――思い切りジャンプした。
その直後、俺の背後が緋色に煌めいた。
シーヒドラの巨体に押し潰された地雷が起爆し、傍らの3つの対戦車地雷を巻き込んだのだ。2つに対戦車地雷の爆発に巻き込まれた3つの対戦車手榴弾まで一斉に爆発を起こし、無反動砲の砲撃によって転倒したシーヒドラの巨躯を、容赦なく押し上げる。
水飛沫が徐々に紅いくなり、爆発に押し上げられたシーヒドラが絶叫した。胸板の外殻を叩き割られ5つの対戦車用の爆発物に胸の筋肉を焼かれたのだ。黒煙の中からちらりと見えたシーヒドラの胸元は無茶苦茶になっており、流線型の美しい外殻は叩き割られているようだった。胸元は焦げ、外殻の下にある肉も赤黒くなっている。無数の破片が突き刺さった胸元の大きな傷からは焦げた破片を含んだ赤黒い血が滴り落ち、水面を紅くしていく。
『き、貴様らぁ………ッ!』
『おのれぇ………!』
『下等生物の分際でッ!!』
『許さぬッ!!』
喋ったのは4つの頭のみ。うなじに対戦車榴弾を叩き込まれた真ん中の頭は沈黙したままで、俺たちを罵る気配もない。
すると、沈黙した真ん中の頭を連れたまま、シーヒドラが広間の外周へと向かって走り出した。最初に俺たちと戦った時のように海中へと飛び込み、攪拌された白い水柱を突き立てる。
またしても海中から攻撃してくるつもりなのだ。潜水艦のように浮上して水の激流で砲撃してくるつもりか? それとも最初に攻撃してきたように、足場を粉砕して真下から体当たりしてくるつもりなのか?
目視で索敵する事が出来ないのならば――――――ソナーを使うまでだ。
「ラウラ」
「うん」
2丁のグローザを既に腰のホルダーに戻していたラウラが、瞳を瞑りながら早くもエコーロケーションを開始する。彼女は生まれつき頭の中にイルカと同じくメロン体を持っているため、潜水艦のソナーのように超音波を発し、それで敵を索敵する事が出来るのだ。索敵する範囲を広げれば精度は落ちるが、現時点で彼女の索敵可能範囲は半径2km。この広間も十分広いが、どう見ても半径2kmはないだろう。彼女のエコーロケーションは、十分な精度を維持したまま確実にシーヒドラを探し当てることが可能なのだ。
まるで駆逐艦の船員みたいだな。第一次世界大戦や第二次世界大戦では、ソナーで敵のUボートを探し当て、駆逐艦や巡洋艦が魚雷や爆雷を投下して仕留めていた。そうやって潜水艦を撃破したように、俺たちもシーヒドラを探し当てて追撃しなければならない。
『お兄様、どうですの!?』
「ああ、お前の砲撃で頭の1つが死んだらしい。それに、俺の追撃で今のあいつの胸元にはでっかい傷ができてる。肉が丸見えだから、もう銃弾でも通用するぞ」
外殻がないのならば、銃弾が弾かれることはない。背負っていたMG42を取り出した俺は、その長い銃身を肩に担ぎながら無線で仲間たちに連絡する。
「ステラ、次の装填を急げ。カノンは奴が浮上した直後に叩き込めるように準備を頼む」
『了解(ダー)』
『了解ですわ!』
「ナタリアは引き続き攪乱しつつ、対戦車榴弾かスラグ弾で胸元を狙え。例のコンパウンドボウを使ってもいい」
『任せなさい!』
ナタリアの持つコンパウンドボウは、簡単に言えば遠距離用のワスプナイフのようなものだ。発射する前に矢に超高圧の魔力を充填し、標的に突き刺さった瞬間にその魔力を元の密度に戻すことによって擬似的な爆発を引き起こし、標的を確実に撃破する。逆に言えば、その矢がちゃんと標的に刺さらなかった場合は、この爆発は起こらない。
貫通力とストッピングパワーは7.62mm弾と同等であるため、ゴーレム程度の貫通は朝飯前だが、さすがにシーヒドラは貫通できない。だからこの戦いでは決定打にはならなかったのである。
すると、俺の傍らで索敵をしていたラウラが目を開きつつ対戦車手榴弾を手に取った。エコーロケーションで海中のシーヒドラを発見したのだろう。彼女は安全ピンを右手で引き抜くと、対戦車手榴弾のRKG-3を俺から見て3時の方向に広がる海面へと放り込んだ。
藍色の海面に呑み込まれた手榴弾が、数秒で見えなくなってしまう。小さなドラム缶とグリップを組み合わせたようなシルエットが藍色の中に溶け込んでしまったと思った直後、緋色の煌めきが一瞬だけ海中を照らし出し、灰色の気泡をいくつも生み出した。
その煌めきに映し出されたのは、5つの頭を持つ異形のエンシェントドラゴン。そのうち1つの頭は沈黙してしまっているが、まだ4つの頭は健在である。
まるで潜水艦を撃沈するために投下された爆雷のように、安全ピンを彼女に抜かれた対戦車手榴弾が海中で起爆したのだ。しかも、よりにもよって起爆した位置はカノンの無反動砲によって抉られた傷口の真上だったらしく、海中でシーヒドラの頭たちが一斉に咆哮したのが聞こえた。
灰色の気泡に細かい肉片と鮮血が混じり、海面が少しだけ紅くなる。
「―――――浮上してくる」
「カノン」
『準備完了ですわ、お兄様!』
5つの頭のうち1つは沈黙し、堅牢な外殻も胸元にはない。うなじにもダメージを与えられるような傷口ができている。狙うべきなのは、その2つの部位だ。
うなじと胸板。ここに集中攻撃すれば、シーヒドラを撃破できる。
もう少しで、伝説の竜を打ち倒せるのだ。
MG42の照準器を覗き込み、俺はラウラに「どこから浮上してくる?」と問いかける。するとラウラはヘカートⅡを構えながら言った。
「―――――1時方向」
「よし」
今の手榴弾の攻撃で、海中からの攻撃を断念したのだろうか。浮上しつつ水の激流や魔術で砲撃してくる可能性はあるが、こちらも反撃しなければならない。
通路の入口では、カノンが照準器を覗き込みつつスポット・ライフルのトリガーに指を近づけているし、彼女の傍らではステラが次の砲弾を抱えて待機している。
俺と彼女たちの中間にいるナタリアは、カールグスタフM4の対戦車榴弾を節約するためなのか、一番使い慣れているコンパウンドボウを構えている。矢筒の中から矢を取り出して番え、弓に取り付けられているバルブを捻って魔力の重点を開始しているようだ。
もう対戦車手榴弾は使い切った。アンチマテリアルライフル用の12.7mm弾もラウラに全て託しているため、俺の手元に残っているのはMG42と2丁のソードオフ・ショットガンしかない。
ならば、出て来た瞬間に
幼少期の狩りを思い出せ。こうやって照準器を覗き込んで、獲物に狙いを定めただろう?
もう、決着をつけるべきだ。
決着をつけて、天秤を手に入れるんだ。
クソ野郎共に、何度も奴隷や弱い人々が蹂躙されているところを目にしてきた。ナギアラントで魔女狩りに苦しむ人々や、大昔からその地下で1人だけで眠り続けていたステラ。オルトバルカ国内でも、奴隷を買って苦しめている転生者もまだ残っている。
そんな奴らから、人々を救済するために俺たちは天秤を使う。誰も虐げることのない、平和な世界。それが俺たちの理想だ。
だからこそ天秤を求める。願いを叶えてくれる神秘の天秤ならば、この理想を叶えてくれるに違いない。
さあ、乗り越えよう。
シーヒドラという試練を乗り越えて。
天秤を、手に入れよう―――――――!
照準器の向こうに広がっていた海面が、水柱へと変貌した。純白の泡に覆われた巨大な水柱には薄い紅色が混ざっていて、その中から現れた怪物も同じく紅く染まっていた。
胸板の外殻は砕け、その下の筋肉も引き裂かれている。胴体から生えている5本の首のうち真ん中の1本は力尽きたらしく、ぐったりとしていた。その首のうなじの部分の外殻も裂けており、表面には対戦車手榴弾の破片が突き刺さっている。
サメのヒレにも似た巨大な翼を広げ、まるで天空へと舞い上がろうとしているかのように海面から飛び上がったシーヒドラ。生き残った4本の首が俺たちを睨みつけ、同時に蒼い魔法陣を展開する。
向こうも決着をつけようとしているのだろう。大昔からこの神殿を守り続けた古い竜として、使命を果たすために。
俺たちは願いを叶えるために、こいつと戦っている。シーヒドラは使命のために、俺たちを迎え撃った。
〝願い”と〝使命”を、最後にぶつけ合う時が来たのだ。
『終わりだ、下等生物共ッ!!』
『激流に呑まれて消えるがいいッ!!』
「決着をつけるぞ、みんなッ!」
MG42で照準を合わせる俺の隣で、ラウラがヘカートⅡのアイアンサイトを覗き込む。ナタリアはコンパウンドボウを構え、カノンとステラは虎の子の105mm対戦車榴弾をお見舞いするべく、砲口をシーヒドラへと向けている。
俺たちの一斉射撃で仕留められなければ、あの激流攻撃の餌食だ。4つの首の魔法陣が睨みつけているのは、俺とラウラとナタリアだけでなく、無反動砲による砲撃を担当するカノンとステラだ。全ての敵を同時に薙ぎ払うつもりなんだろう。
逃げるべきか? 強大な敵の強力な一撃の予兆を目の当たりにし、俺はそう思った。
一旦この攻撃を回避すれば、また隙を探せるだろう。だからこの攻撃を回避して確実に倒せばいい。
しかし、俺たちの弾薬も減ってきている。対戦車地雷はもうないし、対戦車手榴弾を持っているのは俺以外の4人。俺はもう使い切ってしまった。それに、あの激流で頼みの無反動砲が破壊されてしまう恐れがある。
M40無反動砲が破壊さればチェック・メイトだ。破壊される前に砲弾をお見舞いしなければならない。
仲間たちは逃げ出さなかった。巨大な魔法陣に睨まれながらも、自分の得物を構えて照準を合わせ、この巨大な竜を倒そうとしている。
―――――ああ、俺だけ逃げるわけにはいかねえな。
回避するべきだと考えた自分を嘲笑した俺は、改めて照準器を睨みつけた。MG42の照準器の向こうには、シーヒドラの砕けた胸板が広がっていた。
「――――――――発射(アゴーニ)ッ!!」
噴き上がる海水の音を押し返すように、俺は叫んだ。
MG42の銃口が獰猛なマズルフラッシュを放ち、傍らのラウラのアンチマテリアルライフルが12.7mm弾を放つ。シーヒドラの向こう側ではナタリアのコンパウンドボウの矢が蒸気にも似た魔力の噴流を纏いながら疾駆し、カノンとナタリアの担当する無反動砲からは、緋色の礫が放たれる。
俺たちの攻撃と同時に―――――――シーヒドラの魔法陣が、膨れ上がった。
蒼い魔法陣が肥大化し、まるでダムを決壊させて突き出てきたかのような激流が、太い高圧の水柱となって広間の中を駆け抜ける。まるで殺意を伴った大瀑布だ。
それに肉体が砕かれてしまうと思ったが――――――シーヒドラが放った激流は、少しずつ上へとずれ始めたかと思うと、俺の頭上を突き抜けて後方の壁へと叩き付けられた。運よくシーヒドラが狙いを外してくれたのかと思ったが、今の攻撃の失敗の原因は、俺たちの仲間の1人が咄嗟に放った1発のグレネード弾だったらしい。
「―――――――壊れたグラシャラボラスの仇です」
無反動砲の傍らで砲弾を抱えていた筈のステラが、グレネードランチャー付きのLMGを構え、激流が放たれる寸前にうなじの傷口へとグレネード弾を正確に叩き込んでいたのだ。メタルジェットに貫かれた傷口を更に抉られたシーヒドラは、その激痛に耐えられずに巨体をまたしても揺らし、決着をつけるために魔力を込めた本気の一撃を外す羽目になった。
被害は――――――ない。俺のポニーテールとフードが風圧で揺れただけだ。
激流の残した水飛沫の彼方で、俺の放った7.92mm弾が立て続けにシーヒドラの胸板に突き刺さる。その中を突き抜けていくラウラの12.7mm弾も外殻の裂け目から焦げた筋肉に喰らい付き、またしても胸骨を打ち据える。
ナタリアの放ったコンパウンドボウの一撃も、ステラのグレネード弾と同じくシーヒドラのうなじへと飛び込んだらしい。外殻ではなく筋肉に突き刺さった蒸気の矢は設定された通りに纏っていた魔力を元の密度へと戻すと、ロケットランチャーの爆発のように弾け飛び、ぐらついていた外殻の破片を更に吹き飛ばした。
そして――――――スポット・ライフルの曳光弾が命中した部位に、ついにカノンの一撃が突き刺さる。
バックブラストで海水を噴き上げ、派手に旅立ったその1発の砲弾は、炎の残滓を纏いながら海水の飛沫を立て続けに蒸発させ、潮の匂いを突き破ると、今度は胴体の脇腹の部分に喰らい付いた。
みし、と外殻に亀裂が入った直後、早くも弾け飛んだ外殻の小さな破片を緋色の光が飲み込んでしまう。爆炎と爆風は外殻の亀裂からシーヒドラの体内に侵入すると、既に生じていたメタルジェットと共に巨大な竜の肉と骨を焼いた。
肋骨がメタルジェットに貫かれ、内臓が爆炎に蹂躙される。
『『『『――――――グォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』』』』
生き残った4つの首が同時に咆哮し――――――巨大な口から血を吐きながら、海面から舞い上がっていたシーヒドラは再び海中へと戻っていく。
もう、浮上してくるとは思えない。あのドラゴンは対戦車榴弾のメタルジェットに貫かれ、肉と内臓を焼かれたのだから。
「や、やった………!」
血の混じった海面を見つめていたラウラが、ヘカートⅡを静かに下ろしながら言った。
「………よくやった、カノン!」
『やりましたわ!』
『さすがカノンちゃん!』
『今後も砲撃はカノンにお願いしましょう』
無線機の向こうから、仲間たちがはしゃぐ声が聞こえてくる。俺もMG42を肩に担いで息を吐くと、傍らではしゃいでいたラウラに向かってにっこりと笑い、「やったな、お姉ちゃん」と言ってから手を伸ばす。
俺とラウラのハイタッチの音が、シーヒドラの沈んだ広間の中に響き渡った。