異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
そこからは、未開拓の森がよく見えた。
倭国という島国からほんの少しだけ離れた位置に浮かぶ、エゾと名付けられた巨大な島。まだ倭国人がこの島を開拓し始めてからあまり時は経っていないのだろう。所々に小さな集落や村が見えるけど、基本的には森ばかりだ。木々は西洋の森よりも小さいけれど、森の規模ははるかに大きい。まるで草原の上を覆う二層目の草原だ。
ここも開拓されれば、この風景は見れなくなるのだろうかと思いつつ、俺はハンドガンをホルスターの中に戻した。ラウラが敵兵を片っ端から狙撃し、ヘッドショットしてくれたおかげで天守閣には予想以上に早く到着する事ができたが………休んでいる場合ではない。早くここから鍵を見つけ、逃げ出さなければならないのだから。
「くそったれ、鍵はどこだ?」
天守閣の中にある部屋は整理整頓されており、旧幕府軍の大将がしっかり者であるという事を証明している。本棚には倭国語で書かれた分厚い本がずらりと並び、西洋式の机の上には書類がどっさりと積み上げられている。部屋の壁際には幕府が健在だった頃に貰った物なのか、黄金の刀身を持つ日本刀がこれ見よがしに飾られている。
天秤の鍵はここにある筈だが………引き出しの中とか棚の中にはないんだろうか? もしそれが宝物だと気付いていたら、厳重に管理していてもおかしくない。黄金の刀が飾られている棚をちらりと見てみたけど、そこに飾られているのはその日本刀と鞘だけだ。
『マイホームよりヘンゼルへ』
引き出しの中を物色していると、耳に装着していた小型無線機からナタリアの声が聞こえてきた。相変わらず冷静な声だったけど、少しだけ焦っているのだろうか。いつもと若干声音が違うことに気付いた俺は、彼女からの報告の内容を予想しつつ応答する。
「どうした?」
『緊急事態よ。フタマタグチの守備隊が戻ってきたみたい』
「マジかよ………」
天守閣の窓から外を見てみると――――――森の中から、馬に乗った旧幕府軍の兵士たちが九稜城へ向けて全力疾走していた。猛烈な土埃を舞い上げて戻ってくるサムライたち。人数は2000人くらいだろうか。
「騎士団と新政府軍は?」
『そっちも………到着したみたいよ』
「おいおい………!」
拙いぞ。騎士団が到着したって事は、親父も到着したって事だろ!?
親父のレベルはどれくらいかは不明だが、俺が幼少期の時点で既にレベルは995だった。ステータスがどれほど高かったのかは想像に難くないが、あの時からレベルが全く上がっていない筈はない。もうとっくの昔に1000を突破していてもおかしくはないのだ。
それに対し、俺のレベルはまだたったの51。ステータスもやっと3000代後半くらいである。しかも向こうは、俺とラウラが生まれる前から実戦を経験しているベテランだ。ステータスやレベルだけでなく、経験でも完全に負けている。
しかも模擬戦の時は手を抜いていたらしいが――――――鍵を手に入れようとしているのならば、本気で俺たちに襲い掛かって来る筈だ。手を抜かれていても攻撃を1発当てるのがやっとだったのだから、本気を出されれば本当に勝ち目はない。
くそったれ! 鍵はどこだ!?
焦りながら俺は引き出しを閉め、棚を開けてその中を探り始めた。まさか大将が身に着けているわけじゃないだろうな? もしそうだったら、大将を見つけて鍵を奪わなければならない。集中しながら天守閣までやってきたのが全部水の泡になっちまうぞ。ふざけんな。
棚を閉めてからその下にある棚を開ける。やけに軽い棚だが、中身が入っていないわけではないらしい。
大慌てでその棚の中に手を突っ込むと―――――――金属製の小さな何かが、その中に入っていた。
「ん?」
それを掴み、棚の外へと引きずり出す。中に入っていたのは小さな金属の物体だ。ひんやりとしていて、先端部と思われる部分にはギザギザしている。
それを握って引きずり出し、手の平の中にあるそれを見下ろした俺は――――――胸の中に絡み付いていた不安が、全て発破されたかのように粉々になる感覚を覚えつつ、それを素早くポケットの中に突っ込んだ。
「こちらヘンゼル、鍵を回収した」
『ふにゃっ!? 見つけたの!?』
「ああ。これより撤退する。マイホーム、合流ポイントは打ち合わせ通りだな?」
『ええ』
「了解(ダー)。では、離脱する。支援砲撃を頼む」
『了解(ダー)。カノンちゃん、出番よ!』
『やっとわたくしの出番ですわね!』
俺からの要請があるまで待機し続けていたカノンが、嬉しそうにそう言うのが聞こえてきた。悪かったな、カノン。今からやっとお前の出番だ。
ホルスターからハンドガンを引き抜きつつ、俺は天守閣の小部屋を後にした。後はここから逃げるだけだ。幸い親父と遭遇する前に鍵を見つける事ができたが―――――帰りも遭遇せずに逃げ切れれば、まさに大勝利である。
「副長、側面に敵です!」
「分かっている!」
部下からの報告を聞いた土方は、その部下に怒鳴り返しつつ馬の上で刀を引き抜いた。もう既に九稜城の堀と城壁は目と鼻の先だ。ここで戦闘を始めたとしても、肝心な城から離れ過ぎているという事にはならないだろう。
フタマタグチの守備隊は2000人。どの兵士も幕府に所属していた猛者や、旧幕府軍を指示している大名の元から派遣されてきた精鋭ばかりである。
彼らの奮戦のおかげで、フタマタグチは死守できた。土方の指揮と作戦も連勝に貢献しているのだが、彼はそれを手柄だとは思っていない。あの連勝はあくまで部下たちの奮戦のおかげで、自分は彼らを支えただけなのだから。
しかし、今度はあの時のように連勝できるとは思えない。胸中に封じ込めていたが、土方はこの戦いに勝ち目はないと考え始めていた。
相手の兵力は総勢で10000人。オルトバルカ王国騎士団や、騎士団と共に参戦してきたモリガン・カンパニーの精鋭部隊だけで5000人に達する。彼らの方が新政府軍よりも手強いというのは言うまでもない。
しっかりと補給を受けられる彼らと、連勝しているとはいえ物資が乏く、疲弊している旧幕府軍の兵士たち。更に兵力も桁が違う。士気は高いが、勝ち目はない。
(これが………俺の最後の戦いなのかもしれん)
刀を振り上げつつ、土方はそう思った。
だが、それでもいい。幕府が崩壊していく中で新選組の仲間たちが次々に命を落としていったが、やっと土方も彼らの所に還れるのだから。
しかし―――――――死を認めるのはただの腑抜けと同じだ。ここで死ぬとしても、最後まで刀を振るい続け、敵を葬る。散って行った新選組の仲間たちの元に逝く前に、彼はもう少し〝戦果”を欲していた。
「ここが我らの死に場所だ! 撤退は許さん、突撃ぃッ!!」
部下たちの雄叫びを聞きながら、土方は馬を加速させた。
側面から姿を現したのは、真紅の制服に身を包み、頭には熊の毛皮で作られた大きな帽子をかぶったオルトバルカ王国騎士団の部隊であった。刀を構え、馬に乗りながら急接近しているというのに、彼らは全く怯まない。
退かないというのならば、このまま接近して斬るまで。そう思いながら突撃していく土方達であったが――――――戦いの経験を積んだ土方は、その騎士団の装備に違和感を感じていた。
以前まで、騎士団の装備は一般的な剣だった。どのような素材を使っているのかは不明だが、やけに頑丈で、騎士と斬り合った部下の刀がへし折られたという話を何度か聞いたことがある。
だから鍔迫り合いは避けろと言った事があるのだが―――――その厄介な剣が、見当たらないのである。
その代わりに騎士たちが持っているのは、クロスボウに似た奇妙な装備であった。背中には圧力計や小さなケーブルが何本も取り付けられたガスボンベのようなタンクを背負い、そこから伸びたやけに太い1本のケーブルが、彼らの構えるそのクロスボウのような武器に接続されている。
構え方もクロスボウと同じであることから、土方はその装備が飛び道具であるという事を見抜いていた。
(あれは………何だ?)
「構え!」
指揮官の怒声を聞いた騎士たちが、一斉にそのクロスボウのような武器を持ち上げ、発射口を突進していくサムライたちへと向けた。
その瞬間、土方はぞっとした。その感覚は今まで何度も味わっていた感覚である。敵の奇襲を受けそうになる度に、その直前に何度も感じた感覚。それが再び、土方の脳裏で芽吹こうとしている。
嫌な予感を感じた土方は、咄嗟に馬を右へと走らせた。
「―――――撃てぇッ!!」
土方の乗る馬が右へと逸れた直後――――――騎士たちの持つ武器から白煙にも似た蒸気が噴き上がったかと思うと、まるで空気が噴き出すような音と共に、凄まじい速度で何かが射出された。
辛うじて回避した土方だったが、彼の後続の兵士たちは、その飛び道具の餌食となっていた。猛スピードで放たれた何かに貫かれた兵士たちが、次々に雄叫びを途切れさせつつ馬の上から転落していく。
傍らを走っていた部下もその何かに撃ち抜かれ、馬から転落していった。
(あれは………!)
その部下の死体に、土方は矢が突き刺さっていたことに気付いた。
従来の弓矢の矢と比べると短く、しかも全て漆黒の金属で作られている。おそらくあの飛び道具は、何かを動力源としてあの短い矢を凄まじい速度で発射しているのだろう。
射程距離は弓矢よりも長く、しかも弾速はクロスボウを遥かに上回る。命中精度も両者を凌駕しているため、それを装備した兵士を何人も配置するだけで敵に接近される前に殲滅することが可能なのである。
あの武器の登場で――――――接近戦という戦い方が、廃れる。
進化していく西洋の技術が生み出した新しい武器。そしてそれを用いた、新しい戦法。それによって従来の白兵戦はやがて駆逐され、廃れていく。
(なんと恐ろしい武器を………!)
しかし、隙がない遠距離攻撃というわけでもないようだ。
今しがた一斉射撃を仕掛けてきた敵の隊列を睨みつけた土方は、今の攻撃に部下たちが圧倒されて慄いている中で、早くも隙を見つけていた。
今の攻撃を放った兵たちが、その武器に取り付けられているバルブを閉め、蒸気の排出によって生じた水滴を排出し、銃口から矢を装填しているのである。
(なるほど、再装填に時間がかかるというわけか………)
だが――――――その隙を補うための策を、敵は考えている。
「スチーム・ライフル隊第二陣、前へ!」
「!!」
一斉射撃を終えた部隊の後方から、同じ武器を背負った隊列が前へと躍り出たのである。その騎士たちも同じように発射口を土方達へと向け―――――スチーム・ライフルの照準を土方達へと向けた。
「ま、また来るぞぉっ!!」
「なんじゃあの威力は!?」
「おのれ、西洋の騎士共めぇ………!!」
「怯むな! 一斉射撃の後には隙がある!!」
慄く部下たちを一喝した土方は、再び馬を走らせた。いくら第一陣の後方に第二陣を配置し、更に第三陣を用意していたとしても、ガトリング砲のように次々に連発できるわけではない。次の隊列に後退する際に必ずタイムラグが生じる。
その間に距離を詰め、接近戦へと持ち込めばいいのだ。
歯を食いしばりながら、土方は騎士たちの隊列へと突撃していった。
「第二陣、再装填急げ! 第三陣前へ!」
指揮官の怒号を聞きながら、エミリアはフィオナが造り出した新兵器の性能に驚愕していた。
リキヤの率いるギルドのメンバーとなり、共に異世界の兵器を使って敵を蹂躙してきた経験があるため、彼が造り出す現代兵器と比べれば、このスチーム・ライフルの性能に驚くことはない。
しかし、彼女が驚愕しているのは――――――その現代兵器を参考にしたとはいえ、この世界で銃に似た兵器が誕生したという事である。
銃を装備するというメリットは極めて多い。剣や槍よりも射程距離が長く、破壊力も大きい。更に魔術のように詠唱をする必要がないし、魔力の量で優劣が生まれるわけでもない。兵器として極めて強力で、扱う兵士にも魔術ほど大きな負担をかけるわけでもないのだ。まさに理想の武器である。
それの原型となるであろう兵器が、この九稜城攻防戦で産声を上げたのである。
生産したのは、やはり天才技術者と呼ばれるフィオナだ。前々から銃をこの世界の技術で再現できないかと試行錯誤を繰り返していたフィオナが、ついに銃を完成させたのだ。
火薬ではなく蒸気を使って矢を発射するこの『スチーム・ライフル』は、クロスボウを強化したような兵器に思える。しかし高圧の蒸気によって放たれる屋の弾速と貫通力は凄まじく、ゴーレムや飛竜の外殻を貫通できるほどの威力がある。
高圧の蒸気を充填したタンクを背負い、そこから太めのケーブルをマスケットを思わせる形状のライフルに連結することによって、ライフル内部の薬室に高圧の蒸気を供給する。発射した後はケーブルに装着されている安全弁を閉鎖し、内部の水滴を排出してから矢を装填し、安全弁を再び開放すれば射撃可能となる。
ただし、この画期的な遠距離武器を使用するためには動力源となる高圧の蒸気が必須であるため、射手は常に10kgの蒸気のタンクを背負わなければならない。しかも射程距離は100m程度しかないため、モリガンの傭兵たちが使用していたライフルのように長距離からの狙撃は不可能である。
命中精度と貫通力は優秀な装備なのだが、やはりタンクが重いというのが一番の欠点だろう。ちなみに、ライフル本体の重量は4kgである。
「撃てぇッ!!」
指揮官が号令を発し、騎士たちがスチーム・ライフルのトリガーを引く度に、突進してくるサムライたちは次々に倒れていく。中には凄まじい貫通力のせいで胸を貫かれたり、刀を握る腕が千切れ飛ぶサムライも見受けられる。
しかし――――――1人だけ、そのスチーム・ライフルの一斉射撃を潜り抜けつつ突進してくるサムライがいた。刀を1本だけ手にし、西洋風の黒いコートに身を包みながら急迫してくる1人のサムライ。
それは、あの時ブリストルの甲板の上で、エミリアに決闘を挑んで来た土方であった。
「ヒジカタ………!?」
スチーム・ライフルの一斉射撃に圧倒され、サムライたちが次々に倒れていくが、あの男だけはそれを躱して急迫してくる。射撃を終えた第三陣の代わりに第一陣が再び一斉射撃をするが――――――土方はその矢を刀で叩き落とし、矢で撃ち抜かれた馬から飛び降りて突進を続けている。
(なるほど………やはり、あの男は強い)
だからこそ、また戦いたい。
東洋のサムライと――――――決着を付けたい。
再び燃え上がったエミリアは、背負っている大剣の柄に右手を近づけていた。
外から聞こえるサムライや騎士たちの雄叫びと――――――九稜城に直撃する、粘着榴弾の爆音。カノンの支援はもう始まっており、先ほどから砲弾は城に残っている守備隊や大型のバリスタを正確に吹き飛ばしているらしい。
階段を駆け下り、転がっている死体を飛び越えて通路を駆け抜ける。城内にはもう兵士は残っていないのか、聞こえてくるのは〝外からの音”だけだ。城の中から聞こえてくる音は、粘着榴弾の爆発によって落ちてくる瓦礫の絶叫だけである。
「ヘンゼルよりグレーテルへ。もう支援は良いから、脱出を!」
『了解………待って、誰か城の中に入って行ったよ』
「なに? 敵の増援か?」
『これは―――――――』
階段を駆け下り、またしてもあの鎧やでかい薙刀が飾られていた広間に辿り着いたところで――――――今しがたラウラが報告してきた侵入者と、俺は遭遇する羽目になった。
おそらく粘着榴弾の着弾によって開いた大穴から入ってきたのだろう。
その侵入者は、明らかに旧幕府軍の守備隊や、新政府軍の兵士ではなかった。身に着けているのは両軍の制服ではなく、夜間の隠密行動を重視しているかのような漆黒のコートである。拘束具を思わせるベルトに似た装飾と、アイテムを入れておくためのホルダーが備え付けられており、短いマントがついている。
しかもそのコートにはフードがついていて――――――フードには、2枚の真紅の羽根が取り付けられていた。
2枚の真紅の羽根は、転生者ハンターの象徴である。そしてその黒いフードの下から微かに覗くのは、見覚えのある炎のような赤毛だ。
「鍵を手に入れたようだな、同志タクヤチョフ」
「親父………!?」
広間で待ち構えていたのは―――――俺たちの親父である、リキヤ・ハヤカワだった。普段のスーツではなく転生者ハンターのコートに身を包み、しかも武器まで装備している。俺と交渉に来たわけではないのは火を見るよりも明らかだ。
装備している武器は、アメリカ製ショットガンのウィンチェスターM1897だろう。しかも銃身を切り詰めてバレルジャケットを装着し、長い銃剣と散弾用のホルダーを装備した『トレンチガン』と呼ばれる近距離特化型のタイプである。
アメリカ軍が第一次世界大戦で投入した、強力なショットガンだ。
腰にはなぜかスコップが収まったホルダーを装備しているし、反対側にはハンドガンの収まったホルスターも下げている。
おいおい、今から塹壕の中に突撃しに行くつもりなのか?
「ここに敵の塹壕はねえよ、同志リキノフ」
「ふん。………タクヤ、お前の持っているその鍵を渡せ」
「おいおい、俺はわざわざ階段を全部駆けあがって、天守閣から取ってきたんだぜ? 最強の転生者が階段を上がるのを怠けんのかよ?」
俺はそう言ったが、親父は一瞬だけにやりと笑うだけだった。見逃してくれる気配はない。
「天秤を手に入れるつもりか?」
「ああ。それで俺たちは、願いを叶える」
「―――――止めておけ。あれは絵本に出てくるような神秘の天秤などではない」
「………知ってるのか?」
「ああ」
親父は、天秤の正体を知っているだと………?
おそらくガルゴニスから教えてもらったんだろう。ガルゴニスは最強のエンシェントドラゴンで、最も古い竜と言われている。だから天秤がどのような代物なのか知っていてもおかしくはない。
それにしても、天秤は危険なものなのか?
「早く鍵をよこせ」
「待て、天秤の正体を知ってるんだろ? 親父、教えてくれ。天秤はどんな代物なんだ?」
「………知らない方が良い。求めても……解き明かしても、絶望するだけだ」
くそったれ、教えてくれねえのかよ………!?
「さあ、早く」
「――――――お断りだ」
「何だと?」
腰のホルダーから2丁のソードオフ・ショットガンを引き抜き、撃鉄(ハンマー)を全て元の位置に戻して発砲の準備を終える。
相手は遥かに格上の転生者だが――――――逃げ切るしかない。
「俺たちも、願いを叶えなければならないんだ。この世界で虐げられている人々を救うために………!!」
「………馬鹿野郎」
親父も同じく、トレンチガンを構えた。説得して鍵を渡さないのならば、力ずくで奪っていくつもりなんだろう。
この親父に戦いを挑んでも勝ち目はない。倒すのは不可能だ。ステータスとレベルに差があり過ぎるし、実戦の経験も向こうの方が上である。
だが、倒す必要はない。もう俺たちは鍵を手に入れたのだから、逃げ切るだけでいいのだ。
「――――――なら、叩きのめす。ついでにどれだけ成長したのか見せてもらおう」
ああ。―――――親子喧嘩の始まりだ。