異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ナタリアにライフルを撃たせるとこうなる

 

「ここが宿泊施設だ。お前らの街のと比べると小さいかもしれんけどな」

 

 アールネに案内してもらった建物には、確かに冒険者管理局の看板がぶら下っていた。雪に覆われているその小さな看板は冷たい風で何度も揺れ、今にも壁から剥がれ落ちそうになっている。

 

 その看板がある建物は、確かに俺たちが今までお世話になってきた宿泊施設と比べると随分と小さな木製の建物だった。2階建ての建物なんだけど、このスオミの里を訪れる冒険者が少ないせいでそれほど大勢の人々を宿泊させることを想定していないのか、それとも元からこの大きさの建物だったのか、窓の数と建物の面積を見る限り部屋の数はそれほど多いとは思えなかった。

 

 雪に覆われた屋根からはヨーロッパ風の鉄製の煙突が、まるで潜水艦の潜望鏡のように突き出ている。そこから姿を現す黒煙は、〝噴き上がる”というよりは〝流れ出る”という弱々しい表現が最も似合うだろう。飢えて痩せ細ってしまったかのように細い煙が流れ出て、雪を孕んだ風に流されていく。

 

 活発なのは、その風の中でひたすらぐるぐると回り続ける風見鶏くらいだろうか。

 

「あら、アルじゃないの」

 

「おう、おばさん。客だぜ」

 

 忙しそうな風見鶏を見上げていると、俺たちをここまで案内してくれたアールネがいつの間にか宿屋の入口のドアを開け、中にあるロビーの床を掃除していた女性に声をかけていた。彼は〝アル”って呼ばれてるのか。

 

 暖かそうな毛皮の服に身を包み、ロビーの床をデッキブラシで磨いていたその女性も、アールネと同じくやけに肌の白いハイエルフの女性だった。短めの頭髪も真っ白だが、年老いて白髪になったというよりは生まれつき白かったかのようだ。

 

 そういえば、アールネと一緒にいた他のハイエルフの人々も同じように真っ白だったな。この村の人々はみんなアルビノなんだろうか?

 

 確か、家にあった本にも大昔のスオミ族との戦いについて記載されていたんだけど、彼らは生まれつき身体が白かったため、雪の降る雪原ではその皮膚の色が保護色となり、発見するのが困難だったという。しかも彼らは弓矢を使用して狩猟をしながら生活している部族だから、弓矢の命中精度は極めて高かったらしい。

 

 つまり、迷彩服やギリースーツを身に着けたスナイパーが何人も待ち構えているようなものだ。少数でありながら騎士団を圧倒できたのは、その生まれつきの体質と鍛え上げた射撃の腕が理由だったのかもしれない。

 

「あらあら、冒険者の方? バッジを見せてくれるかしら?」

 

「は、はい」

 

 あれ? 俺たちはオルトバルカ人なんだけど、警戒しないのか? てっきりまた〝リュッシャ”って呼ばれて警戒されるのではないかと思って説得の準備をしてたんだが、杞憂だったようだ。

 

 まあ、スオミの里とはいえここは冒険者管理局の宿泊施設なんだから、いくらオルトバルカ人が憎くてもいちいち喧嘩を売っていたら仕事にならないよな。当たり前だろう。

 

 初老の女性に銀のバッジを提示すると、女性は近くにあったタイプライターのような機械の上にそのバッジを乗せ、カタカタとボタンを指で何度もタッチし始めた。あれは冒険者のバッジを識別するための機械だが、少し旧式の機械だな。王都で採用されているような新型の機械がここまで届いていないのだろうか。

 

 渡したバッジを返してもらい、仲間たちがバッジの識別をしてもらうのを待つ。冒険者の資格を取った際に交付されるこの銀のバッジは、冒険者の証であるのだが、同時に身分証明の際に使用するので、紛失するとかなり面倒なことになる。宿泊施設では利用する際にバッジを提示する必要があるので、紛失したら管理局の施設に宿泊することは出来なくなってしまうのだ。

 

「はい、チェックが終わりましたよ。えっと、鍵は………ああ、あったわ。どうぞ」

 

 カウンターの後ろにある棚をあさっていた女性が、そこから取り出した鍵をどういうわけか2つ俺たちに渡してきた。渡された鍵はやけに錆びついていて、鍵穴に差し込んだ瞬間に折れてしまわないか不安になったが、どうして鍵を2つも渡したんだろうか?

 

「あれ? 2つですか?」

 

「ごめんなさいね、ここは狭い部屋しかないから5人部屋はないのよ」

 

「そ、そうなんですか………」

 

 た、確かに狭いところだからなぁ………。2人部屋か3人部屋しかないのか。

 

 まあ、贅沢を言うわけにはいかないな。

 

「5人部屋はないんだって」

 

「私は良いわよ?」

 

「うん、私も♪」

 

 ラウラはむしろこっちの方が良いだろうな。2人部屋になったら、ほぼ確実に俺と2人きりになるんだから。ブラコンでヤンデレの彼女からすれば、俺を独占できる絶好のチャンスというわけだ。

 

 ま、また搾り取られたりしないよね………?

 

「じゃあ、ゆっくり休んでね」

 

「はい、ありがとうございます。アールネもありがとな」

 

「おう、気にすんな」

 

 ここまで案内してくれたアールネに礼を言ってから、俺たちはさっそく部屋へと向かって歩きだした。

 

 彼らはオルトバルカ人を憎んでいるみたいだけど、俺たちが全く敵意を持っていなかったことを理解した瞬間からかなり親切になったな。敵意を向けられるよりははるかにマシなんだけど、何だか彼らの〝敵意の向け方”に違和感を感じてしまう。

 

 あの時俺たちに向かって弓矢を向けていたのは、人間で言うと15歳から20歳くらいの男性ばかりだった。ハイエルフの寿命は人間よりも遥かに長いから、容姿で俺たちと同い年くらいだと判断することは出来ないんだが、彼らは間違いなくハイエルフの中でも若い部類なんだろう。ということは、大昔のオルトバルカ人との戦争を経験したわけではないという事だ。

 

 やはり実際に経験した場合と、他人から聞いた場合では抱く憎しみの濃度が違う。実際に敵に虐げられた事がある人ならば、その虐げた敵への憎悪で心まで真っ黒になってしまうのは想像に難くないが、どれだけ怨敵の話を聞いて育った子供でも、自分が経験していない以上はわずかに〝白い部分”が残るものなのだ。彼らからは、その〝純粋な敵意”を感じることは出来なかった。

 

 それに――――――あの時の彼らは、オルトバルカ人を憎んでいるというよりはまるで〝警戒している”ようだった。憎たらしいオルトバルカ人を憎んでいたのならば、俺たちに敵意がないという事が分かっても武器を下ろして通すような真似はしないだろう。

 

 何だか、変だ。

 

 違和感を感じながら、俺は仲間たちと共に階段を上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪の結晶を思わせる蒼白い六角形の床と、その結晶がいくつも浮遊する蒼い世界。その結晶の群れに覆い尽くされた光景が、どこまでも広がっている。

 

 遮蔽物が存在しないため解放感はあるが、どこまで突っ走っても壁や崖のようなものは存在しないため、単調過ぎる光景だ。確かに閉鎖的な場所はあまり好きではないけど、同じ光景を繋ぎ合わせてどれだけ広くしても解放感を感じる場所になるわけではない。殺風景すぎるにもほどがある。

 

 しかし、どれだけ抗議しようとしても無駄なことだ。これは俺が生まれつき持っていた能力の一部なのだから。

 

 目の前にメニュー画面を出現させ、生産済みの武器をタッチして装備する。メニュー画面を閉じると同時に出現した猛烈な重さの何かが俺の背中にのしかかってくるが、その感覚は久しぶりだ。最近はアサルトライフルばかり使っていたし、狙撃はラウラに任せっきりだったからな。

 

「久しぶりだな、相棒」

 

 背中にいつの間にか折り畳まれた状態で装備されていたそれを持ち上げ、銃身を展開する。

 

 俺が装備していたのは――――――ロシア製アンチマテリアルライフルのOSV-96だ。連射が利くセミオートマチック式のアンチマテリアルライフルで、2つに折り畳む事ができるため、小回りが利かない傾向があるアンチマテリアルライフルの中では扱いやすい部類に入る。射程距離も約2kmであるため、スナイパーライフルを上回る遠距離からの狙撃も可能という優秀なライフルだ。

 

 遠距離からの狙撃で真価を発揮する筈のそのライフルの下部には、荒々しい対戦車用のロケット弾を先端に装着したロケットランチャーが装備されている。こちらはロシア製ロケットランチャーのRPG-7V2と呼ばれる代物で、扱いやすい上に破壊力も高く、最新型の戦車にも命中すれば十分に通用する威力を秘めている。

 

 普通ならば別々に使うべきなんだが、俺のアンチマテリアルライフルにはロケットランチャーまで取り付けてあるという、ありえない上に奇抜な改造が施されている。ライフル本体でも10kgを超える重さだというのに、それに更に重いロケットランチャーを取り付けて併用するなど正気の沙汰とは言えないだろう。

 

 しかし、強靭な身体能力を持つキメラならば、このあまりにも重過ぎる得物を使いこなす事ができる。実際に若き日の親父は、こんなありえないカスタマイズがされた銃を携え、あらゆる戦場を後の妻となるエミリア・ハヤカワと共に駆け抜けていたのだ。

 

「………やっぱり、重くなったかな」

 

 更にカスタマイズしたOSV-96のキャリングハンドルを握って持ちながら、俺は首を傾げた。

 

 このライフルは12.7mm弾を使用するアンチマテリアルライフルである。俺は久しぶりに装備したこいつの弾薬を、カスタマイズによって別の弾薬に変更していた。

 

 その弾薬は――――――更に大口径で、かつては対戦車ライフルの弾薬としても採用されていた14.5mm弾である。

 

 対戦車ライフルとは、その名の通り戦車を撃破するために開発された極めて大型のライフルである。初めて対戦車ライフルが姿を現したといわれているのは、第一次世界大戦の頃だ。

 

 第一次世界大戦では戦車が実戦に投入され、その戦車の相手をする羽目になったドイツ兵たちを震え上がらせていた。堅牢な装甲で機関銃やライフル弾をことごとく弾き返し、強力な武装をぶっ放しながらキャタピラで前進してくる甲鉄の怪物は故障する事が多かったものの、彼らの進撃を食い止めるにはもっと破壊力の大きな武装が必要であるという事に気付いたドイツ軍は、当時正式採用していたライフルを更に強力にした対戦車ライフルを実戦に投入することとなる。それが、『マウザーM1918』である。

 

 単発型のボルトアクション式の代物ではあったが、当時の戦車の装甲を貫通するには十分すぎる破壊力で、戦車に蹂躙されるだけだったドイツ軍の兵士たちは辛うじて反撃することに成功する。こうして戦車の装甲を貫通するほどの威力を誇る〝対戦車ライフル”という新しい武器が生まれ、第二次世界大戦の中盤頃まで使用されていくことになる。

 

 しかし、その第二次世界大戦で対戦車ライフルは姿を消す事になる。強力なエンジンや堅牢な装甲を搭載した戦車が次々に投入されたのだが、ついに対戦車ライフルの貫通力が、戦車の防御力に追いつけなくなってしまったのである。結局戦車を破壊するための対戦車兵器の主役はロケットランチャーとなり、対戦車ライフルは衰退していくのだ。

 

 だが――――――戦車を相手にするのではなく、遠距離からの狙撃などの用途ならば、大口径の狙撃銃も無用の長物というわけではない。その事が第二次世界大戦後の戦いで証明され、対戦車ライフルの遺伝子を受け継ぐアンチマテリアルライフルが開発されていくことになる。

 

 俺が使用することにした弾薬は、その対戦車ライフルでも採用されたことのある14.5mm弾である。どちらもソ連軍の対戦車ライフルで採用された事があり、強力なドイツ軍の戦車との戦いで活躍している。

 

 もう戦車の装甲を貫通することは出来ないが、狙撃に使うならば問題はない。口径が更に大きくなったことで攻撃力は向上し、射程距離も若干伸びて2.1kmとなった。反動は若干大きくなり、重量も増えてしまったが、より大口径の弾薬を選んだのは間違いではない筈だ。

 

 試し撃ちでもしてみようかと思ってバイボットを展開し、既に超遠距離に設定されている的を狙撃しているラウラの隣に寝そべる。いつもならば甘えてくる彼女だが、狙撃に集中しているからなのか、銃から手を離して抱き付いてくる気配はない。

 

 重くなった相棒を地面に立て掛け、スコープのレンズを覆っていたカバーを開ける。スコープのカーソルを調整し、レンジファインダーが計算してくれる距離を参考に調節していく。

 

「お待たせ」

 

「おう、ナタリア」

 

 そろそろ進化した得物をぶっ放そうかとしていると、後ろの方から元気そうなナタリアの声が聞こえてきた。彼女も俺のトレーニングモード用の空間へとやってきたらしい。

 

 このモードは元々俺1人しか訓練できない仕組みだったんだが、今では誰かが実施してくれたアップデートのおかげで、仲間を連れて行くことができるようになっている。仲間になっているメンバーを招待するだけで、仲間と共に訓練をすることが可能なのだ。

 

 この空間の中では死ぬことはないし、現実で銃をぶっ放しているわけではないので周囲の状況を気にする必要がないというメリットがある。しかし、俺たちの身体は眠っている状態で放置されているので、安全な場所でやらなければならないという欠点もある。だから今回は全員でトレーニングを行うのではなく、カノンとステラには見張りをお願いしている。

 

 今回はOSV-96の調整も兼ねて、仲間たちと狙撃の訓練をすることにしていたのだ。俺たちのパーティーのメンバーの得意分野はバラバラであるため、常に連携しながら戦うようになっているんだが、やはりこういった他の分野の訓練は必要だろう。

 

「あ、命中!」

 

 その時、俺の顔を覗き込もうとしていたナタリアが、遥か遠くで結晶の的が砕け散ったことに気付いて顔を上げた。ラウラの得物から放たれた弾丸が、1.7km先の標的を粉砕したのだ。

 

 彼女が使っている銃は、いつものスナイパーライフルではない。俺のアンチマテリアルライフルの改造に合わせて、彼女も使用する得物を新しいものに変えている。

 

 ラウラが使っているのは―――――南アフリカで開発された『ダネルNTW-20』と呼ばれるアンチマテリアルライフルだ。

 

 ラウラが得意とするボルトアクション式のアンチマテリアルライフルであり、14.5mm弾と20mm弾を使用する複数のモデルが存在する。彼女が手にしているのは、14.5mm弾よりも更に大口径の20mm弾を使用するモデルであった。

 

 その破壊力はまさに破格で、攻撃力はあらゆるアンチマテリアルライフルの中でも間違いなくトップクラスだろう。反動も他のライフルとはケタ違いだが、それは銃の内部に搭載されているショックアブソーバーと呼ばれる機能によってかなり軽減されている。

 

 他の銃とは異なり、マガジンを銃の左側に装着する方式となっている。ラウラは左利きであるため、銃の構造は左右で逆にしておくというオリジナルの改造も忘れずに実施している。

 

 それと、20mm弾を使用した場合の射程距離は約1.5kmとなっている。十分に狙撃できる射程距離だが、ラウラが「せめて1.8kmくらいの射程距離が欲しいな」と言っていたので、銃身を延長し、20mm弾の炸薬の量を増やした強装弾にすることで、辛うじて射程距離を1.8kmまで強引に伸ばしておいた。これで満足してくれるだろうか。

 

「ねえ、タクヤ」

 

「ん?」

 

「前から思ってるんだけど………そのライフルの先についてる部品って、本当に反動を軽減してるの?」

 

 俺の得物を見下ろしながら、ナタリアがそう質問してきた。

 

「じゃあ、ちょっと俺の銃を撃ってみろ」

 

「え、この重いやつを?」

 

「ああ」

 

 立ち上がってナタリアに場所を譲ると、彼女はゆっくりと寝そべって俺の顔を見上げてから、何故か不安そうにOSV-96のグリップへと手を伸ばした。スコープを覗き込もうとしている彼女に「もう調整は住んでるからな」と教えながら、彼女の狙撃を見守ることにする。

 

 ナタリアの得意とする武器は、ショットガンやPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)だ。だからこんなに大きな得物を使うことはあまりない。

 

「う、撃つわよ」

 

「ああ、撃て。発射(アゴーニ)」

 

 俺がそう言った直後、ナタリアが息を呑んでからトリガーを引いた。

 

 隣で20mm弾を矢継ぎ早に連発するラウラの銃声ほどではないが、14.5mm弾の銃声も普通の銃声と比べればはるかに豪快である。反動もそれなりに増加しているだろう。

 

 ナタリアはびっくりしていたようだったけど――――――銃声が残響へと変わり始めた頃にそっとスコープから目を離し、息を吐いてから俺の顔を見上げた。

 

「す、凄い音………」

 

「ちなみに今の狙撃は外れだな」

 

「えっ? ………う、うるさいわね、バカ!」

 

 彼女の放った弾丸は、俺が撃つために準備していた的の右側を通過していった。風はない状態で設定しているんだが、もう少しカーソルを左にずらすべきだったな。それとも、俺の調整が不完全だったのか?

 

「じゃあ、次はこっちをぶっ放してみな」

 

「何それ?」

 

「対戦車ライフルのマウザーM1918。今お前が撃ったライフルは反動を軽減する装備がついてるけど、こっちにはついてない」

 

 念のため作っておいたそのマウザーM1918をナタリアに渡した俺は、「え、ついてないって事は………」と不安そうに言いながら青ざめる彼女の顔を見てニヤニヤ笑いながらOSV-96を受け取った。

 

 マウザーM1918は、一般的なボルトアクションライフルより遥かに大型だが、形状はあまり変わっていない。ピストルグリップが装着されていることくらいだろうか。

 

 それを受け取ったナタリアは恐る恐る床の上に伏せると、バイボットを展開して銃床を肩に当て、アイアンサイトを覗き込んだ。当時の対戦車ライフルは射程距離が短いものが多かったため、スコープではなくアイアンサイトで狙撃することが多かったという。

 

「――――――い、いいの?」

 

「おう」

 

 俺がそう言うと――――――ナタリアがついに、マウザーM1918のトリガーを引いた。

 

 銃口から迸る猛烈なマズルフラッシュと白煙。かつて第一次世界大戦で、進撃してくる戦車部隊を迎え撃ったドイツ軍の矛が、トレーニングモード用の蒼い空間の真っ只中で荒れ狂う。

 

 だが――――――荒れ狂ったのは銃弾ではなく、猛烈な反動(リコイル)のほうだった。

 

「――――――痛ぁッ!?」

 

 バイボットを展開しているにもかかわらず、太い銃身はあっさりと荒々しい反動に敗北した。重い銃身を投げ飛ばしたその反動が矛先を向けたのは、どうやら銃をしっかりと構えていたナタリアの右肩だったらしい。

 

 こんなに強烈な反動の銃を何発もぶっ放さなければならないのだから、兵士たちはこの反動のせいで次々と肩を痛めていったため、ドイツ軍の兵士たちはこの銃を『ツーショット・ライフル』と呼んでいたという。

 

 軍人が肩を痛めてしまうほどの強烈な反動を味わったナタリアは、左手で右肩を押さえながら立ち上がる。ここで負傷することがないとはいえ、彼女にこいつをぶっ放させるべきではなかったかもしれない。

 

「どうだった?」

 

「――――――このバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 ああ、怒ってた………。

 

 謝るべきだったと後悔した頃には、もう既にナタリアの鉄拳が俺の顎に向かって突き上げられていた。

 

「―――――らぷたー!?」

 

 乙女のアッパーカットを喰らう羽目になった俺は、激痛と共に蒼い空間を舞う羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 




※ラプターはアメリカのステルス戦闘機です。
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