異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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スオミの里防衛線

 

 コートのフードをかぶり、サイドアームのMP412REXを腰のホルスターに収めながら、俺は雪の降る村の中をカノンと2人で突っ走っていた。

 

 背中には、14.5mm弾を発射できるように改造したロケットランチャー付きのOSV-96を背負っている。メインアームはこちらで、リボルバーは接近戦の際に使用するために装備している。あとはいつものナイフと、ここにやってくる前に鍛冶屋で購入したモリガン・カンパニー製のスコップが俺の武器だった。

 

 隣を走るカノンの装備も軽装だった。メインアームのマークスマンライフルはいつものSVK-12ではなく、新しく用意した『SKSカービン』と呼ばれるセミオートマチック式のライフルである。

 

 SKSカービンは、1945年にソ連軍に採用されたライフルだ。AK-47と同じ弾薬である7.62×39mm弾を使用する銃であり、銃の上部や銃身のデザインはAK-47にそっくりである。まるでAK-47の銃身側を切り取って猟銃やボルトアクションライフルに取り付けたような外見だ。

 

 マガジンを交換するのではなく、旧来のライフルと同じくクリップを使って装填するという旧式のライフルではあるが、極めて堅牢である上に銃身の下部には折り畳み式のナイフ型銃剣が装備されているので、接近されてもそれで反撃できるという利点がある。

 

 AK-47が採用されたことによってあっさりと退役してしまったライフルだが、このSKSも優秀な銃なのだ。

 

 カノンの持つSKSには、モシン・ナガンなどのライフルに装着されるPUスコープが装着されている。倍率はやや低いものの、中距離射撃を得意とするカノンには丁度いい倍率だろう。それにスコープが小型であるため、銃身の上部にある装填用のハッチを塞いでしまう事もない。

 

 銃口にはマズルブレーキが装備されているが、そのマズルブレーキにはライフルグレネードも装着できるようになっているため、いざという時はグレネード弾での砲撃も可能となっている。

 

 彼女のサイドアームは、同じくロシア製のPL-14だ。俺とラウラもサイドアームをこれに変更するべきか検討しているハンドガンで、一般的な9mm弾を使用する。

 

 今のところ、雪は降っているが全く目の前が見えないというわけではない。さすがに1km以上の狙撃は困難かもしれないが、この程度の雪ならば800mから900mの狙撃は容易い筈だ。雪の中での狙撃は幼少の頃から経験しているし、俺はこの雪国で育ったのだから。

 

 それにしても、一体何が起きているのだろうか? 慌ただしく武器を持った男たちが入口へと向かい、女性や子供が避難しているところを見ると何かがこの村を襲撃してきたというのは想像できるが、その襲撃してきた者たちは魔物なのか? それとも盗賊団とか山賊か?

 

 情報を得るために、出来るならば村人を呼び止めたいところだ。そう思いながら走っていると、近くの家の中からちょうど弓矢を手にしたハイエルフの少年が飛び出してきた。アールネや受付のおばさんと同じく、白髪と白い肌が特徴的な少年だった。

 

「ちょっと聞きたい事があるんだが、良いか?」

 

「何だよ? リュッシャに話す事なんてないぞ!」

 

「教えてくれ。何が襲撃してきてる?」

 

「盗賊団だよ! どうせ村の金品を奪ったり、女を連れて行って奴隷にするつもりなんだろ!?」

 

 なるほどね、盗賊団か。

 

 という事は、魔物のように堅牢な外殻を持っているわけではないという事だ。中に魔術師が混じっている可能性はあるものの、彼らの防御力は魔物たちと比べて貧弱としか言いようがない。魔術を用いた防御にも、必ず弱点はある。完全に攻撃を防ぐことは不可能なのだ。

 

「ありがとう、戦士さん」

 

 俺の代わりにカノンがお礼を言ってくれている間に、俺はOSV-96の銃身の下にぶら下がっているRPG-7V2の先端部に装着されていた対戦車榴弾を取り外した。それを腰のベルトに引っ掛けてぶら下げつつ、対戦車榴弾とは違う弾頭を取り出し、そいつをランチャーの先端部に装着しておく。

 

 ロケットランチャーは強力な武器だが、人間の敵を狙うならば貫通力の高い対戦車榴弾ではなく、爆風や破片による殺傷力が凄まじい対人榴弾を使用することが望ましい。その方が攻撃範囲が広くなるし、人間の兵士の防御力はたかが知れている。

 

 丸みを帯びた形状の対人榴弾をライフルの下にぶら下げたまま、俺もそのスオミ族の少年に「ありがとな! 死ぬなよ!」と言ってから、村の平原側の入口へと向かった。

 

 出来るならば高い場所から狙いたいが、ここは平原の真っ只中にある小さな村だ。針葉樹が雪の中から突き出ているのが見えるが、こんなに重くてでっかいライフルを手にした少年が上に乗るには、枝が細過ぎる。

 

 狙撃する位置を探しながら走っていると、もう平原側の入口が目の前に広がっていた。俺たちがやってきた頃には閑散としていた寂しげな村の入口は、弓矢を構えながら門の前に立ちはだかるスオミ族の戦士たちの殺気によって、物騒な入口へと姿を変えている。

 

 真っ白なフードの付いた防寒着に身を包む純白のハイエルフたち。その中の1人が、聞き覚えのある声を発した。

 

「攻撃用意! 弓矢、構え!」

 

「アールネ………?」

 

 今の野太い声は、俺たちを案内してくれたアールネに違いない。フードをかぶっていたせいで分からなかったが、あの少年たちで構成された守備隊を指揮しているのがアールネなんだろう。

 

「アールネ!」

 

「ん? ………お前ら、どうしてここに?」

 

 いきなり背後から名前を呼ばれたアールネが、雪の付いた顔を俺たちの方へと向けてきた。彼の指揮下の少年たちも俺たちの方を振り向き、「おい、リュッシャがいるぞ」とざわめき始めるが、アールネが彼らを睨みつけるとすぐに弓矢を構え直し、ここへと迫ってくる盗賊たちへの警戒を続ける。

 

 やはり俺たちも警戒されているのだろう。彼らを虐げたことはないとはいえ、かつての怨敵と同じ人種なのだから。

 

「俺たちも手伝う」

 

「何だって? ………確かに武器は持ってるみたいだな。見たことのない武器だが………それはどんな武器だ?」

 

「飛び道具だ。あとは実際に見せてやる」

 

「ほう。………では、お前たちには側面からの狙撃を頼みたい」

 

 側面か。敵をアールネたちが正面から攻撃しているうちに、俺たちが側面から狙撃で奇襲を仕掛け、敵を攪乱させつつ数を減らせという事なんだろう。

 

 敵の数は不明だが、良い作戦だ。正面からただ攻撃するよりも、伏兵を用意しておいた方が敵に奇襲を仕掛けられるし、そうやって混乱させれば敵の指揮系統も滅茶苦茶になる。

 

 なるほどね、こうやってスオミ族の戦士たちは圧倒的な物量の敵を蹴散らしたのか。大軍は強力だが、その分小回りが利かないからな。命令を伝達する際に伝令が間違った命令を伝えたり、誤報が飛び交うのは珍しい事じゃない。

 

「了解だ。任せてくれ」

 

「おう。………おいみんな、このリュッシャの冒険者たちは味方だ! リュッシャは憎たらしいかもしれんが、こいつらは撃つな! いいな!?」

 

「了解!」

 

「ビビるなよ、リュッシャ!」

 

 任せろ。こっちは何度も実戦を経験してきてるんだから、盗賊ごときでビビるわけがないだろう。

 

 中には俺たちが仲間だという事を聞いて訝しむ者たちもいたけど、信用できないという気持ちは分かる。彼らに信用してもらうためには、この戦いで俺たちが敵ではないという事を証明しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アールネたちに手を振って彼らと別れ、盗賊たちがやってくると思われるルートの側面へと移動する。相変わらずシベリスブルク平原は平坦な地形になっていて、遮蔽物は散発的に立っている細い針葉樹のみ。高い場所がない以上、狙撃をするには伏せて雪の上からぶっ放すしかないだろう。

 

「………ちょっと服の色を変えるぞ」

 

「ええ、どうぞお兄様」

 

 メニュー画面を開き、生産済みの装備の中から今の服装をタッチする。俺の能力ではカスタマイズできるのは生産したもののみという事になっているんだが、どういうわけか服装だけは生産したものでは無いものでも身に着けているだけで勝手に生産済みの装備の中に登録され、いつでもタッチするだけで着替える事ができるようになる。だから服装にはあまりポイントはかからないというありがたい仕組みになっている。

 

 転生者ハンターのコートとカノンの制服をタッチし、表示されたメニューの中から『カスタマイズ』をタッチ。画面が切り替わって服装の画像とスキルなどが表示されるが、今からカスタマイズで変更しようと思っているのは色だけだ。黒が基調になっているテンプル騎士団の制服では、雪の上では逆に目立ってしまう。

 

 服装の色をホワイトとグレーの迷彩模様に変更し、すぐにメニュー画面を閉じる。バイボットを展開しつつ自分の服装を見てみると、いつの間にか見慣れていた真っ黒なコートはホワイトとグレーの迷彩模様に染まっていた。

 

 こっちの方が雪の上では目立たない。敵を狙撃する以上、目立ってはいけないのだ。だから狙撃手は敵を狙撃しやすい場所ばかりを探すのではなく、目立たない場所も狙撃するポイントとして選ぶのである。

 

 隣にいるカノンのドレスのような制服も、同じ迷彩模様に染まっていた。彼女のSKSはこのように伏せながらの狙撃を想定していないため、カノンは目の前に雪を集めて小さな山を作ると、その上にSKSカービンの銃身を置いて依託射撃(いたくしゃげき)の準備をする。

 

 スコープの蓋を開いてから覗き込み、索敵を行う。この村に到着した時と比べると、もうあまり雪は降っていない。見晴らしはそれなりによくなっているのはありがたかった。

 

 純白の平原の彼方に、人影が見える。村の方向とは反対側で、人数は明らかに20人以上はいる。幽霊のようにも見えてしまったが、スコープをズームして確認すると、その人影たちはちゃんと防寒着を身に着けていたし、中には防寒着の上に防具を身に着けている奴らもいた。装備を見てみるが、どの装備も産業革命以前の古めかしいものばかりだ。今でもあんなに古い武器を採用しているのは、最新の装備が行き渡らないほど辺境にある騎士団の前哨基地くらいだろう。それ以外は博物館に行くか、騎士団の武器庫で保管されている物しか残っていない筈である。

 

 装備は古いロングソードや斧など。中にはやけに重そうな盾とでっかい槍を装備した奴もいる。防寒着を着ている事を除けば、母さんが若かった頃の騎士団にも見えるだろう。

 

 カーソルを合わせると、すぐさまレンジファインダーが標的までの距離を計測する。レンジファインダーによると、目標までの距離は750m。俺はすぐにスコープへと手を伸ばしてカーソルを調整し、再び狙撃準備に入る。

 

「カノン、まだ射程距離外だろ?」

 

「ええ。でも仰角をつけて撃てば当てられますわ」

 

 さすが最強の選抜射手(マークスマン)の娘だ。狙撃はお手の物ってわけか。

 

 俺は彼女に「分かった、無茶すんなよ」と言うと、呼吸を整えてから照準を合わせ――――――戦闘の口火を切った。

 

「………ッ!!」

 

 やはり、反動は12.7mm弾とは違う。より大口径となり、獰猛な破壊力とストッピングパワーを手に入れたOSV-96の放った14.5mm弾は、降り注ぐ雪を切り裂き、銃声の残響を身に纏いながら雪原の真っ只中を疾駆していく。通常のライフル弾よりも遥かに巨大な弾丸が今から狩るのは、俺が照準を合わせていた先頭の盗賊だ。

 

 どうせスオミの里を陥落させた後の話でもしていたのだろう。野蛮な笑い方をする髭だらけの中年の男がスコープのカーソルに映っているが―――――その余命の残りには、もう小数点がついていた。

 

 ―――――目の前に、14.5mm弾が迫っていたのだから。

 

 次の瞬間、雪原の一角が真っ赤に染まった。まるでそこに紅いペンキをばら撒いたかのように、白銀の雪原が一ヵ所だけ真っ赤になっているのである。その真っ赤な領域の中に転がっているのは、ズタズタにされた防寒着の一部や、肉屋で売られている肉の切り身と見分けがつかないほど砕かれた人体の一部であった。

 

「―――――命中」

 

 銃声の残響が、やっと消える。

 

 排出された薬莢が煙を吐き出しながら雪の上に落下し、身に纏う熱で雪を溶かしながら沈んでいく。親指よりも大きな雪の穴を一瞥した俺は、すぐに次の標的に照準を合わせる。

 

 あいつらの装備は旧式のものばかりだが――――――やはり優先的にぶち殺すべきなのは、飛び道具を持っている奴らかな?

 

「おっと」

 

 いきなり仲間の1人が木端微塵にされ、慌てふためく盗賊たち。遠距離から〝何かに狙撃された”事には気付いているみたいだが、それがアンチマテリアルライフルによる狙撃だという事を知る者は存在しない筈だ。

 

 その慌てふためく無様な男たちの中に、1人だけ杖を手にした男が紛れて込んでいることにすぐ気付いた。その男はすぐに杖を構えると、狙撃から身を守るためにバリアのようなものを展開し始める。

 

 光属性のバリアか。消費する魔力はやや多めだが、防御できる範囲が広い上に物理的な攻撃やあらゆる魔術から身を守る事ができる魔術だ。ポピュラーな魔術の1つで、これを習得している魔術師は多い。ダンジョンの中でも魔物の攻撃から身を守る際に重宝するという。

 

 だが―――――魔物の攻撃力と、こいつの攻撃力は格が違うぞ。

 

 今度はその魔術師を狙う。魔術師は治療魔術を使って仲間を回復させる場合もあるし、何より魔術で攻撃されるのは一番厄介なので、敵対する場合は真っ先に狙うのが鉄則だ。逆に言えば、味方に魔術師がいる場合は真っ先に狙われるので、しっかり守らなければならないという鉄則があるのだが、敵はどうやら仲間が粉々になったことがショックらしく、その鉄則を守っている暇はないらしい。

 

 カノンも仰角をつけ、俺の隣で狙撃を開始した。しかし彼女の得意とする距離よりもやや遠いらしく、1発目の弾丸は慌てふためく盗賊の肩を掠めて雪に突き刺さり、1発目はそいつの片足に喰らい付いた。

 

「………やはり、遠いですわね」

 

「無理すんなよ」

 

 得意な距離でないのならば、無理に狙う必要はない。

 

 彼女にそう言った俺は、そろそろあの魔術師に引導を渡すことにした。

 

 幼少期に狩りに行った時の事を思い出す。森の中でいつもスナイパーライフルを構え、ラウラと一緒にどちらが大物を仕留めるかよく競争していたものだ。ラウラは銃を構えるといつも目つきが鋭くなっていたんだけど―――――俺の目つきはどうなんだろうか。

 

 そんな事を思いながら引いた引き金は、いつもより軽い感じがした。

 

 ズドン、とマークスマンライフルよりも獰猛で野太い銃声が響き渡り、再び14.5mm弾が駆け抜けていく。標的にされた哀れな魔術師は魔力を放出するために立ち止まり、必死に杖を構えて魔力の放出を続けている。

 

 その魔術師の身体が――――――バリアもろとも、弾け飛んだ。

 

 ぴきん、と光のバリアに亀裂が入ったかと思うと、その亀裂の原点となった一角が砕け散り、金色の光の破片の中を突き抜けた1発の弾丸が間髪入れずに魔術師の肉体に喰らい付いたのだ。突然自慢の魔術を打ち破られたことに驚愕したまま弾け飛んだ魔術師の頭が、小さな肉片と鮮血をまき散らしながらごろりと雪の上に転げ落ちる。

 

 続けざまに、今度は左手をRPG-7V2のグリップへと伸ばした。バックブラストを強引に廃止したため反動は増大し、射程距離も減少している得物だが、仰角をつけて撃てば十分に命中させられる距離だし、装着されている弾頭ならば正確に狙いを付ける必要はない。

 

 装着されているのは、いつもの対戦車榴弾ではなく対人榴弾。貫通力が激減しているため装甲で守られている相手に効果はないが、その分爆発や破片の範囲と破壊力は増大しているため、堅牢な敵よりも敵の歩兵の群れに叩き込む際に真価を発揮する。

 

 虎の子の魔術師を肉片にされ、すっかり混乱している盗賊たちの群れの真っ只中に、俺は無表情のままその対人榴弾を放り込むことにした。

 

 まるで彗星のように真っ白な白煙を引き連れながら、今度はより獰猛な一撃が雪の中を駆け抜けていく。数名の盗賊が辛うじて俺たちの居場所に気付いたらしいが、遅かったんじゃないか? 

 

「―――――バーカ」

 

 RPG-7V2の照準器の向こうで、対人榴弾の丸みを帯びた弾頭が膨れ上がったように見えた。その中から姿を現したのは、周囲にいる敵兵を蹂躙するために生誕した炎の剛腕と金属の破片であった。

 

 時限信管によって、ついに弾頭が炸裂したのだ。弾頭の中から膨れ上がった爆風は近くにいた男たちを飲み込むと、金属の破片で他の盗賊たちの肉体をズタズタにしてから爆風で吹き飛ばし、彼らをことごとく蹂躙していくのだった。

 

 

 

 

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