異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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塔の中を調査するとこうなる

 

 岩山の真っ只中で発見した塔は、戦車で進んでいた道の先にあるちょっとした広場の中に屹立していた。不規則的に盛り上がる岩山の中で、その塔が突き出ている周囲だけが円形に切り取られ、窪んでいるかのような地形になっている。

 

 まるで隕石が落ちたクレーターのようにも思えるけど、元々こういう地形だったのか、それともあの塔を造った人々がこのような地形に作り替えたのかは分からない。自然的なのか、人工的なのか判別できないほどに、周囲の岩山は熱風や砂嵐に晒されて削られてしまっている。

 

 結構近づいてみたんだが、塔は予想以上に大きかった。塔の壁面に埋め込まれているレンガも一般的なレンガよりはるかに大きく、一体どうやってこのレンガを運搬してきたのだろうかと思わず考察してしまう。屈強なハーフエルフやオークでも、俺たちの身の丈以上の大きさのレンガを運んでくるのは不可能だ。

 

「………巨人が建てたのかしら?」

 

「ふにゃっ!?」

 

 MP5A5を手にしながら塔を見上げるクランが、そんな仮説を立てた。

 

 突入のために武器の準備をしていたラウラが驚くが、確かに巨人が建築した建物ならばレンガのサイズがやけにでかいのも納得できる。明らかに普通の種族には大き過ぎるレンガだが、巨人たちからすれば積み木みたいなものだ。運搬するのは片手だけで十分だろう。

 

 しかし、その割には窓や入口のサイズがごく普通の家と変わらないな………。

 

「なあ、ここってダンジョンに指定されてたっけ?」

 

「いえ………この辺りにダンジョンがあるっていう話は聞いてないわ」

 

「むしろ、ここに塔があるという話も聞いてませんわね」

 

 まさか、幻を見ているわけじゃないよな?

 

 もし幻なんだったら、人生で幻を見るのはこれで2回目になるぞ。ちなみに1回目はネイリンゲンで幽霊に連れて行かれそうになった時に見た親父の幻である。あの後何度も考えていたんだけど、相変わらず仲間たちはみんな「親父(リキヤ)は来ていない」と言うし、何だか助けに来てくれた親父も若かったから幻なのかもしれない。今の親父はもっと老けてるからな。

 

 しかし、ここに塔があるという情報もないのか。ここまで調査にやってきた冒険者がいないからなのかな?

 

 塔に接近した戦車が、レンガの塔が生み出す長大な影の中で停車する。砂を孕んだ熱風に包まれながら戦車から下りた俺は、ブーツの中に入り込んだ砂のせいで顔をしかめながらメニュー画面を開き、戦車から仲間が下りてくるのを待つ間に支給する武器を用意しておく。

 

 とりあえず、あの塔の構造がどうなっているのか全く分からないため、支給する武器は室内戦を想定したオーソドックスな武器にしよう。アサルトライフルもオーソドックスな武器だが、室内戦では射程距離は無用の長物となるので考慮する必要はない。適度なストッピングパワーと銃身の短さがあればいいから、この場合はSMG(サブマシンガン)やPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)やショットガンが適任だろう。

 

 対人戦ならばSMG(サブマシンガン)でもいいが、魔物の場合は貫通力や破壊力のみを重視する必要がある。内部に人間がいる様子はないため、とりあえず魔物との戦いを想定しよう。というわけでSMG(サブマシンガン)ではなくPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)とショットガンを用意する。

 

 用意したPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)は、ベルギー製の有名な『P90』だ。

 

 極めて短い銃身を持つブル・パップ式のPDWで、従来のSMG(サブマシンガン)などに使用されるハンドガン用の弾薬ではなく、より貫通力の高い5.7mm弾を使用する。アサルトライフルのように中距離射撃まで対応できるわけではないが、これで銃身の短さと貫通力の高さを両立しており、近距離用の火器の中ではトップクラスの殺傷力と対応力を兼ね備えている。

 

 最も特徴的なのが、P90のマガジンだ。従来のライフルやSMG(サブマシンガン)は銃身の下部にマガジンを装着する方式であるのに対し、このP90はマガジンを横倒しにした状態で、銃身の上に装着するのである。

 

「ほら、銃だ」

 

「ありがとっ!」

 

「あ、これ前に使ったやつよね? 確か………P90だっけ?」

 

「久しぶりに接近戦ですわね」

 

「む………ステラの銃より小さいです」

 

 ステラ、お前の銃がでかすぎるだけだ。

 

 彼女の武器は重機関銃とサイドアームのハンドガンという事になってるんだが、極端なんだよな。せめてカービンとかPDWも装備して欲しいものである。

 

「ねえ、タクヤ」

 

「ん? ナタリア、どうした?」

 

「前から思ってたけど、SMG(サブマシンガン)とPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)って同じ武器じゃないの?」

 

「ああ、別の武器だぞ。SMG(サブマシンガン)はハンドガン用の弾丸を使うけど、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)はもっと貫通力の高い弾丸とか、アサルトライフル用の弾丸を使うんだ。だから別物だよ」

 

「へえ………。詳しいのね」

 

「幼少の頃から親父に鍛えられたからな」

 

 前世の知識だけどね。まあ、さすがに前世の知識だけで生き残るのは難しいだろうし、実際に銃を撃ったわけでもなかったから転生後に親父に鍛えられたというのは本当だけど。

 

 ちなみに、前にナタリアが使っていたマグプルPDRもPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)に分類される。

 

「それで、タクヤはPDWを使わないの?」

 

「ああ。俺はこれを使う」

 

 そう言いながら装備した銃を仲間たちに見せる。仲間たちが持つP90と比べると銃身は長く、形状も無骨に見える銃だ。

 

 俺が装備したのは、アメリカ製の『モスバーグM500』というショットガンである。1発発射する度にハンドグリップを引かなければならない『ポンプアクション式』と呼ばれるタイプのショットガンで、セミオートマチック式のものと比べると連射速度では負けてしまうが、信頼性は極めて高い。アメリカ軍でも採用されている優秀なショットガンである。

 

 レベル上げの最中に討伐したデザートハーピーからドロップしたんだよね。もちろんドロップした武器はポイントを払わずにそのまま使用できるから安上がりで済むし、カスタマイズに使うポイントは生産に使うポイントを下回るので、ほんの少しカスタムする程度ならばポイントは全く減らないのである。

 

 というわけで、銃身を切り詰めて銃床をピストルグリップに変更したソードオフ型に改造し、この塔の調査に使う事にしている。ショットガンはPDWみたいに連射は出来ないけど、至近距離での火力は絶大だから室内戦にはうってつけなのだ。

 

「で、私たちはどうするの?」

 

「俺たちが突入する。クランたちは念のため外で待機を頼む」

 

「了解。何かあったらすぐ連絡しなさいよ」

 

「了解(ヤヴォール)、お嬢さん(フロイライン)

 

 クランたちに敬礼してから、ショットガンを構えつつ塔へと近付いていく。

 

 壁になっているレンガは相変わらずでかい。なのに、入り口や窓は普通の家にあるような窓と同じサイズというアンバランスなデザインになっているが、果たしてこれを作ったのは本当に人間なんだろうか。もし巨人が作った塔だったら、手持ちの武器では火力不足になる。そうなったら外にいるクランたちに砲撃を要請することになりそうだ。

 

 巨人がいませんようにと祈りながら、俺は入口のドアを蹴破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風通しが良いのか、塔の中は思っていたよりも涼しかった。ガラスがないせいで壁に空いた穴と化している窓から入り込んでくる熱風も、この塔の中では涼しい風に感じてしまう。一緒に太陽の光も流れ込んできているが、涼しい代わりに塔の中はやはり薄暗かった。

 

 ショットガンやP90にライトを装着し、見通しの悪い場所はライトで照らしながら進む。通気がいいおかげなのか黴臭さはまったくない。でも、その代わりに砂の臭いが塔の中を支配している。

 

 岩山で見つけた塔の中は、予想以上に広かった。入口から入った先に広がっていたのはちょっとした円形の広場で、目の前にはまるで会社やホテルのロビーを思わせるレンガのカウンターのようなものが配置されていた。その周囲には低いレンガで作られた座席が規則的に並んでいるけど、塔の中の雰囲気のせいで近代的なロビーと言うよりは、まるで古い教会の中のようにも思える。何かの修道院だったんだろうか。その割には祭壇のような部分は見当たらないし、壁画もない。

 

 左手には螺旋階段があり、壁に沿って上へと上がれるようになっていた。手すりは用意されていないため、転落しないように気を付けるべきだろう。

 

「足元に気を付けろよ」

 

「はーいっ! えへへっ、タクヤの尻尾を掴んでれば平気だもんっ♪」

 

「おいおい………」

 

 後ろにいるラウラが、俺の尻尾を片手で掴みながらにこにこと笑っている。オスのサラマンダーの尻尾は外殻に覆われており、メスよりも長いという特徴が反映されているからなのか、俺の尻尾はラウラの尻尾よりも長くなっている。おかげで服の中に隠すのがちょっと大変だけど、こういう時は命綱代わりにもなるから便利だ。

 

 でもさ、何だかムズムズするんだよね。しかもラウラは俺の尻尾を掴みながら外殻と外殻の間に指を入れて撫で回したり、顔に近づけて匂いを嗅いだり頬ずりしているらしく、先ほどから「ふにゃあ………タクヤの尻尾だぁ………」という姉の幸せそうな声が聞こえてくる。

 

 あのね、もう少し警戒してくれないかなぁ………。

 

「ラウラ。魔物が襲ってくるかもしれないからもう少し警戒してよ?」

 

「はーいっ。あ、ナタリアちゃんも触る?」

 

「えっ? で、でも、調査中だし………」

 

「いいじゃん。ほらっ♪」

 

「………じゃ、じゃあ………」

 

 え、ナタリアも!?

 

「す、すごい………! 本当にドラゴンの外殻みたい………!」

 

 尻尾を撫で回していた柔らかい手が増えたかと思うと、ナタリアと思われる手も外殻と外殻の間へと指を入れ始めた。そのままラウラと一緒に尻尾の柔らかい部分を撫で回し始める。

 

 ラウラの場合は甘えたいから撫で回したりしているだけだけど、ナタリアの場合は興味本位のようだ。とりあえず、お願いだから警戒してくれ。宿屋についたらずっと触ってていいから。それに外殻と外殻の間を触られると少しだけムズムズするんだよ。

 

 2人に尻尾を触られ、フードの中で角を伸ばしながら螺旋階段を上がり終える。2階もやはり巨大なレンガや小さめのレンガで構成された場所になっているようだけど、今度は1階のような広間ではなく、廊下と思われる通路の両脇にホテルを思わせる部屋がいくつも連なっているようだ。部屋の扉は既に砂まみれになってボロボロになっているのが殆どだけど、中にはまだ健在な扉も残っている。

 

「………手分けして索敵しよう。ラウラ、念のためエコーロケーションを」

 

「はーいっ!」

 

 擬態している魔物がいる可能性はあるが、擬態していない奴がいるのならば彼女の索敵で探知することはできる筈だ。何も探知できなければ、擬態している奴がいるというつもりで警戒しなければならない。

 

 敵と戦わずに済めばいいんだが、こんな岩山のど真ん中で放置されているような無人の塔に何も入り込んでいないというのは考えにくい。盗賊や山賊がアジトにしている可能性はあるし、魔物が住みついている可能性もある。管理局からの情報がない場所ならば、なおさら警戒する必要がある。

 

 しかし、逆に言えば冒険者たちも場所を知らないという事だよな。基本的に彼らが知ることになる情報は管理局経由だし、情報屋の情報もあるが信憑性は管理局経由の情報と比べればばらつきがある。冒険者は生存率を上げるために確実な情報を好む傾向があるため、情報屋から情報を入手する冒険者はごく僅かだ。つまり、基本的に管理局の情報を元に行動する冒険者の方が多数派ということになる。

 

 つまり、この塔の存在を知っている冒険者はごく僅かということになる。それによく考えてみれば、ここは砂漠のど真ん中にある岩山の真っ只中だ。周囲は岩山で守られているし、ここまで来るための谷のような道も限られている。空からここに来ようとしても対空兵器を大量に配置すれば空中の敵を返り討ちにすることは可能だ。

 

 なによりも、殆どの冒険者に場所を知られていないというメリットは大きい。

 

 ふむ………できるなら、ここをテンプル騎士団の本部にしたいところだ。確か近くに河もあった筈だし、食料は農作物の栽培と家畜の飼育で何とかなるだろう。他にもいろいろと考えなければならない事があるが、拠点としては理想的な場所だ。

 

 そんな事を考えながらモスバーグM500を構えていると、後ろでエコーロケーションを使っていたラウラが静かに目を開けた。

 

「………何だか、変な反応があるよ」

 

「どこに?」

 

「壁の中に」

 

「壁?」

 

 ラウラが指差したのは、廊下の真ん中あたりにある何の変哲もない壁だった。人間でも持ち運べる程度の大きさのレンガで作られた壁だが、あの中から変な反応がするというのか?

 

 ちょっと待て。ただの壁だぞ………?

 

 念のため、ショットガンを壁へと向ける。他の仲間たちもP90を壁へと向け始めているのをちらりと見てから、俺は「ラウラ、どんな反応だ?」と問いかける。

 

「えっと………何だろう? 壁の隙間に何か詰まってるような………」

 

「?」

 

 壁の隙間?

 

 確かにラウラが指差している場所には、レンガとレンガのつなぎ目がある。でもそのつなぎ目はちゃんとくっついているし、何かを詰めるほどの幅もないぞ?

 

「………カノン、あの壁を撃ってみろ」

 

「分かりましたわ」

 

 一歩前に出たカノンが、ライト付きのP90を構える。普段はマークスマンライフルを使う彼女だが、ドルレアン邸で訓練をしていた頃は様々な武器の扱い方をカレンさんから学んでいたらしいし、接近戦のためにPDWをサイドアーム代わりに装備することもあったから、連射するタイプの火器の扱いもお手の物だ。

 

 照準器を覗き込むと同時に彼女の目つきが鋭くなり―――――――蒼い瞳の中で、マズルフラッシュの光が煌めいた。

 

 廊下に銃声がこだまし、いきなり響いた銃声に驚いたかのように砂埃が微かに舞い上がる。数発の5.7mm弾がレンガのつなぎ目へと飛び込み、破片を散らしてレンガを削り取る。

 

 この攻撃で、彼女の感じた変な反応の正体は姿を現すだろうか。

 

 銃声の残響と薬莢の落下する音が小さくなっていく。ショットガンを構え、何の変哲もない壁を固唾を飲んで見守っていると―――――――抉られたレンガの壁がぴくりと動いたような気がした。

 

 いや、直接レンガの壁が動いたわけではない。その裏側で蠢いていた何かがレンガの壁を動かしたのだ。

 

 息を呑んだ次の瞬間、抉られたレンガの間から、どろりと茶色い泥にも似た奇妙な粘液のようなものが溢れ出した。泥の集合体のような姿の粘液はレンガの間から零れ落ちると、ぶるぶると震えながら少しずつ盛り上がっていき、やがて徐々に俺たちの方へと向かって移動を開始する。

 

「これは――――――――」

 

「スライムの亜種です」

 

 ああ、スライムの亜種か………。そういえば、ドルレアン家の地下墓地でもスライムに追いかけ回されたよなぁ………。

 

 ため息をついた俺は、試しにショットガンをぶっ放してみることにした。前回遭遇したスライムには銃弾が全く通用しなかったが、この亜種は普通のスライムよりも個体に近いようだ。もしかしたら弾丸も効果があるかもしれない。

 

 モスバーグM500を構え、トリガーを引く。PDWの銃声を一蹴してしまうようなでかい銃声が轟き、12ゲージの散弾が泥の塊のようなスライムの亜種を包み込む。

 

 スライムはあっさりと散弾の群れの中に呑み込まれ、あっという間に風穴だらけになったが―――――――飛び散った泥の飛沫が蠢いたかと思うと、再び本体と混ざり合い、元の大きさに戻ってしまう。

 

「うわ、効果がない」

 

「気を付けてください。スライムは強酸性の液体の塊のようなものです。ずっと触れていると溶けてしまいます」

 

「そういえば、あの時スライム踏んでたよな?」

 

「………気持ち悪かったです」

 

 かなり気色悪かったのか、顔をしかめながらぷるぷると震えるステラ。あの時はラウラに氷で時間を稼いでもらいながら逃げ切ったんだが、今回はどうやらあいつだけらしい。

 

 スライムは危険な魔物だが、撃破した冒険者は多い。スライムに最も効果的なのは魔術とされているが、その中でも特に有効なのは炎属性などの魔術による高熱か、雷属性の魔術という事になっている。スライムにもあらゆる亜種が存在するが、殆どが高熱に弱く、加熱されるとたちまち蒸発してしまうという弱点があるのだ。

 

 まあ、粘液の集合体だからな。蒸発すればそれで終わりだ。一応俺は炎も雷も使えるけど、あの変異種は何だか電気を通しにくそうだ………。炎の方が無難かもしれない。

 

 モスバーグM500を背負い、右手を前に突き出しながら肘の辺りまでを外殻で覆う。硬化しなくても魔術は使えるけど、硬化した方が魔力の伝導率が上がるらしく、魔術の威力を底上げする事ができるらしい。実際に一番最初に転生者を狩りに行った時も列車の接続部分を炎で溶断したけど、硬化しないで溶断するればもっと時間がかかっていた筈だ。

 

「焼くぞ」

 

「火事にさせないでよ?」

 

「火事になったらラウラの出番だな」

 

「ふにゅ、お姉ちゃんはいつでもいいからねっ」

 

 瞬く間に手の平の前に魔法陣が浮かび上がり、通常の炎とは異なる蒼い炎が渦巻き始める。ブラックホールのように回転しながら収縮を始めた蒼い炎は、高速回転を続けながら球体状に変形していく。

 

 体内の魔力の性質なのか、それとも突然変異の塊とも言われるキメラの特徴なのか、俺の炎はどんな方法で出現させても蒼い。だから一般的な魔術も、俺が使うと全く別物に見えてしまうという。

 

 既に変換済みの魔力が体内にあるため、詠唱も必要ない。セミオートマチック式のライフルのように連射できるというわけだ。

 

「―――――――ピアーシング・フレイム!」

 

 一瞬だけ、蒼い炎の球体が歪んだように見えた。

 

 ピアーシング・フレイムは、炎属性の魔術の中でも初歩的な魔術と言われている。炎属性の魔力を魔法陣の外に放出し、それを加圧させつつ収縮させることで小型の球体に変形させる。後はその炎の球体を前方へと押し出し、相手に向けてぶっ放すのである。

 

 普通ならちょっとした詠唱が必要になるが、俺には詠唱する必要がない。

 

 蒼いエネルギー弾にも似た炎の球体が、レンガを蒼く照らし出しながら廊下の中を疾駆する。スライムは攻撃が接近しているという事を理解していないらしく、そのままカタツムリのように俺たちに向かって前進してくるだけだ。

 

 ちなみに、普通のピアーシング・フレイムはもっと炎のように見えるらしい。俺のは蒼いレーザーにしか見えないな………。確かに別物だ。

 

 その蒼い炎が、スライムの真正面に喰らい付いた。まるで着火された油のように一気に炎が燃え上がり、泥の塊に似たスライムを包み込んでいく。スライムは炎を消そうと必死に蠢き続けるけど、炎は全く弱まらない。しだいに泥の塊のような姿のスライムの身体から水分が蒸発を始め、乾いた泥の塊のような姿に変わっていく。

 

「はぁ………スライムだけは厄介だな」

 

 銃が通用しないんだからな。次からはサーメートでも放り投げてやろうか。

 

「あんたって、銃だけじゃなくて魔術も使えるのね…………」

 

「まあね」

 

 まあ、今まで銃ばかり使ってたからな。魔術が使えるとは思ってなかったのかもしれない。

 

 それにしても、潜んでいた魔物はこいつだけなんだろうか。まだ潜んでいるなら殲滅しなければならなくなるけど、こいつだけならこの塔の中をよく調べてみたいものだ。

 

 個人的には、ここをテンプル騎士団の本部にしたいと思っているからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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