異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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第12章
転生者救出作戦


 

 

 レンガで作られた建物の群れの間を、金属の防具と制服に身を包んだ男たちが走っていく。腰には産業革命の恩恵で切れ味が劇的に向上したロングソードを下げ、左手には防御用のガントレットを身に着けた男たちの右肩には、ライオンに跨った槍を持つ戦士のエンブレムが描かれている。

 

 カルガニスタンを植民地としている、フランセン共和国騎士団のエンブレムである。

 

 軍事力ではこの世界で最強の国と言われているオルトバルカ王国やヴリシア帝国にはまだ及ばないものの、最新の動力機関であるフィオナ機関の本格的な導入によって急激な技術の近代化に成功しており、少しずつ大国との差を縮めつつある国だ。

 

 路地裏を駆け抜け、昼間は露店が並んでいた筈の大通りに飛び出す騎士たち。彼らの任務は植民地の治安維持や魔物の撃滅などが主な任務であり、犯罪者や反逆者を発見した場合の取り締まりも一任されている。それゆえに、こうして夜中に逃走する犯罪者とちょっとした鬼ごっこを繰り広げるのも珍しい話ではない。

 

 しかし今回の相手は――――――――普通の犯罪者とは別格であった。

 

「隊長、あそこです!」

 

「くそ……………逃がすなッ!」

 

 部下が指差したのは、大通りの真っ只中にある鍛冶屋の屋根の上であった。大きな斧の形をした看板が特徴的な鍛冶屋で、昼間ならばがっちりした体格のドワーフの職人とオークの助手が切り盛りしている姿を見受けられる、この国の冒険者には馴染み深い鍛冶屋である。

 

 その鍛冶屋の屋根の上に――――――――その人影がいた。

 

 短いマントのついた黒いコートと、特徴的な大きなフード。そのフードにはハーピーから取れる深紅の羽根が2枚ほど飾られており、まるで暗闇の中を必死に照らそうとする炎のようにも見えた。

 

 背丈はそれほど大きくないという事は、屋根の上まで伸びた看板と比べればすぐに分かる。身長はおそらく170cmほどだろう。黒服の中から伸びる手足も、鍛え上げられた騎士や冒険者たちと比べればずいぶんと華奢だ。もしかするとあの人影の正体は少女なのではないかと遭遇した騎士たちは考えたが、少女があんなことをするとは信じたくないとすぐに思う事だろう。

 

 この街の中心にある屋敷に住む少年が、内部で切り刻まれて惨殺されていたのだから。

 

 四肢だけではなく、骨や内臓まで切断されていたのである。現場へと急行した新入りの騎士たちが嘔吐する姿を目にするのは珍しい話ではないが、今回のこの事件はベテランの隊長でさえも、夕食のローストビーフを吐き出してしまいそうなほど凄惨なものであった。

 

 内臓や骨まで取り出され、人体のあらゆる部位をバラバラにされたただの肉の残骸。そしてその残骸が転がっていた部屋の壁には、見たこともない言語でメッセージのようなものが描かれていたのである。それを目にした騎士たちは古代文字ではないかと思ったが、考古学者を呼び出して訳してもらう余裕はなかったし、それにこのようなメッセージを残して惨殺を繰り返す殺人鬼に心当たりがあった。

 

 今では世界中で話題になっている存在。人々を虐げて搾取する者たちの元に現れ、彼らを殺してメッセージを残していく正体不明の殺人鬼。

 

 自分たちが追っているのはまさにその殺人鬼なのだと、隊長は理解していた。

 

「おのれ、ついにカルガニスタンに姿を現したか…………!」

 

 標的だけを殺し、追撃してくる騎士たちには決して手を出さない。そして標的だけは徹底的に切り刻んでいくことから、その殺人鬼はこう呼ばれていた。

 

「――――――――切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ブオォォォォォォォォォォォッ!』

 

「……………」

 

 遠くから聞こえてきた法螺貝の音を聞き、俺は自室の壁にかけてある愛用のAK-12を拾い上げた。間違って暴発させたり仲間を撃ち抜くような真似はしたくないので、安全装置(セーフティ)をかけてからマガジンを取り外し、薬室に残っている1発をコッキングレバーを引いて排出。飛び出して宙を舞う7.62mm弾を素早くキャッチし、ポケットに突っ込んでから部屋から飛び出す。

 

 他の部屋からも、同じようにAK-12を手にしたメンバーたちが飛び出してきた。彼らに「おはよう、同志」と簡単な挨拶を済ませ、第一居住区から地上へと続く階段を駆け上がる。

 

 今の時刻は午前8時。夜間の警備などを担当していたメンバーは免除されるが、それ以外の団員たちは一部を除いて訓練が始まる時間である。

 

 それにしても、俺はラッパかホイッスルで合図をしろと前に言ったはずなんだが、何で法螺貝なんだろうか? 誰が吹いたのかはもう明らかだが、前に俺がノリツッコミをぶちかましたせいなのか、部屋を飛び出したメンバーのうち数名が「合戦じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と叫びながら走っていくのを見て、思わず笑ってしまう。

 

「流行ってますね、同志」

 

「何でだよ」

 

 ここは日本じゃねえよ。カルガニスタンだよ。

 

 ちょっと呆れながら階段を駆け上がると、商人から購入したという法螺貝がすっかりお気に入りの装備となったのか、問題の法螺貝を片手に持ったイリナが眠そうな顔で手を振っているのが見えた。

 

 眠そうなのも無理はない。吸血鬼には個体差があるが、イリナやウラルは日光を浴びるとかなり体調を崩してしまうので極力昼間には外に出さないように配慮している。だから彼女たちには夜間の警備やダンジョンの調査を担当してもらい、明け方になったら自室で休む前にこうして合図をするようにしてもらっている。

 

 ウラルは真面目な奴だからちゃんとラッパかホイッスルで合図してくれるが、イリナは…………あの法螺貝を手放してくれない。

 

「はーい、みんな訓練がんばれー」

 

「ちょっと待て」

 

「にゃ?」

 

 あくびをしながら踵を返そうとしたイリナの肩をつかむと、彼女は首を傾げながら俺の顔を見上げた。

 

「あのさ、なんで法螺貝なの?」

 

「燃えるでしょ?」

 

「法螺貝じゃなきゃダメ?」

 

「うんっ!」

 

 おいおい。

 

 というか、ウラルは注意しないのか? 妹だろ?

 

「というわけで、訓練がんばってね! じゃあ僕は部屋で寝――――――――」

 

「ああ、そうだ。ついてこい」

 

「にゃ?」

 

 ちょっと訓練に遅れるかもしれないけど、その前にイリナに問いただしたうえで解決しなければならないことがある。近くを通った奴に「ごめん、ちょっと遅れる」と伝えてから、俺はイリナの手を引いて地下へと逆戻りする。階段を駆け下りて廊下を突き進み、数分前にAK-12を手にして飛び出したばかりのドアの前へと到達した。

 

 そう、ここは俺の部屋である。正確に言えば俺とラウラの部屋なんだが、ラウラはレナの一件で現在は親父の元で編成された懲罰部隊で反省中。だから実質的に、この部屋は俺の1人部屋と化している。

 

 よく仲間たちが来て一緒にご飯を食べたりすることはあるんだが、基本的にはここで寝泊まりしているのは俺だけである筈だ。

 

「ねえ、どうするの? あ、まさか…………僕を部屋に連れ込んで押し倒すつもり?」

 

「アホか」

 

 確かにイリナも綺麗だけど……………そ、そんなことをするつもりはないよ? 第一、そんなことをしたらウラルに殺されそうである。あいつにはシスコン疑惑があるからな。

 

 そう思って必死に否定する俺だけど、無意識のうちに隣にいるイリナの胸を見てしまう。ナタリアよりもやや大きいけれど、ラウラと比べればやや小さめ。巡洋艦と超弩級戦艦の中間くらいだな。巡洋戦艦ってところか。

 

 ハヤカワ家の男は女に襲われやすいというちょっとした呪いのような体質があるし、どちらかというと俺は押し倒すのではなく押し倒される方だろう。実際にラウラには何度も押し倒されたし、そのまま搾り取られた回数は少なくない。

 

 とりあえず、部屋のドアを開ける。簡単なキッチンの脇を横切ってベッドの方へと向かうと、隣にいるイリナがニヤニヤしながら顔を赤くし、俺の左手にしがみついてきた。

 

「ほら、やっぱり押し倒す気なんでしょ?」

 

「違うっつーの」

 

「だってベッドの前まで連れてきちゃったじゃん」

 

「ベッドじゃなくてこっちを見ろ」

 

「にゃ?」

 

 俺が指差したのは、いつも寝るのに使っている1人用のベッドではなく、その隣に横たわっている木製の棺だった。

 

 真っ黒に塗られ、蓋にはカルガニスタン語が書かれたベッドと同じくらいのサイズの棺が、俺のベッドと平行に並んでいるのである。

 

「これ何?」

 

「棺だよ?」

 

「知ってるわ。で、誰の?」

 

「僕のだよ?」

 

 ……………なんで俺の部屋に置いてるの。しかも棺の蓋に書いてあるカルガニスタン語は、よく見てみると「イリナ」って名前が書いてあるし。

 

「ここ俺の部屋だよ?」

 

「知ってるよ?」

 

「何で置いてあるの?」

 

「1人で寂しそうだったからお邪魔したんだ♪」

 

 た、確かに1人で寂しいけどさ、何で棺持ってきたの? というかこの棺、明らかに部屋の入り口よりも幅があると思うんだけど、どうやって部屋の中に入れたんだ?

 

 呆れながら棺を見下ろしていると、イリナが楽しそうに鼻歌を口ずさみながら棺の蓋を開けた。彼女が持ち込んだ棺はごく普通の棺なんだけど、中にはちゃんとベッドのようにシーツが敷いてあるし、可愛らしいハートマークが描かれたピンク色の枕と毛布もセットになっている。脇にある小さな穴は空気を出し入れするための穴だろうか。

 

 なにこれ? 棺型ベッド? ちょっと快適そうだと思ってしまった俺は、棺の中をまじまじと見つめてしまう。

 

「これベッド?」

 

「そうだよ? 吸血鬼たちの中ではこうやって寝るのが当たり前なんだ♪」

 

「そ、そうなんだ……………」

 

 まあ、寝てる間に日光が当たらないようにする工夫の1つなんだろうな。カーテンを閉めた方が手っ取り早いと思うけど。

 

「というわけで、ラウラが戻ってくるまでは僕がいるから寂しくないよっ♪」

 

「せめて何か言ってからにしろよ!?」

 

「びっくりした?」

 

「当たり前だ! 朝起きたらいきなり右隣に棺が置いてあるんだからな! いつから俺の部屋は墓地になったんだって思ったわぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「あははははははっ! やっぱりタクヤって面白いねー♪」

 

 笑いながら背伸びして俺の頭を撫で始めるイリナ。何か言い返そうと思ったけれど、頭を撫でられているうちに言い返そうと思っていた言葉が萎んでいった。

 

 そういえば、彼女も出会ったばかりの頃と比べるとかなり変わった。フランセンの騎士たちに虐げられていた彼女は、最初のうちは俺たちに警戒心を向けていたんだけど、今ではもうこんな感じだ。俺以外のメンバーにもこうして接する元気な子なので、落ち込んでいる仲間を元気づけることも多いという。

 

「とりあえず、早めに寝ろよ。ここにいてもいいから」

 

「やった。タクヤから許可貰っちゃった♪」

 

「なんだ? 嬉しいのか?」

 

「うんっ。これでナタリアちゃんに咎められても撃退できるしね♪」

 

 おい、俺からの許可をナタリアを撃退する口実にするんじゃねえ。

 

「えへへっ、嘘だよ。……………本当はね、僕…………君のことが気になってるんだ」

 

「え?」

 

 先ほどまで笑っていたイリナが顔を赤くし始めたかと思うと、下を向いてしまう。ちらりと時折俺の顔を見上げてくる紅い瞳と目が合った瞬間、俺までドキリとしてしまった。

 

「最初は女の子みたいだって思ってたけど、優しいし、男らしいところもあるから……………」

 

 今まで散々女子に間違えられてきたけれど、男らしいところもあると言ってもらえたのはかなり嬉しい事である。仲間にまで女だと間違えられてたレベルだったし、初対面の人には女だと思われるのが当たり前だったからな。

 

 そうか、俺も男らしくなったか…………!

 

「ねえ、知ってる?」

 

「ん?」

 

 すると、下を向いていたイリナが顔を上げた。微笑みながら静かに両手を伸ばして俺の首の後ろと背中に絡みつかせると、そのまま俺を引き寄せ――――――――唇を奪う。

 

 びっくりして逃げようとしてしまったけど、思っていたよりも彼女は両腕に力を入れていたらしく、咄嗟に入れた程度の力では全然離れる気配がなかった。やがて俺の中からも逃げようとする気持ちが薄れていき、最終的には俺まで彼女の身体を抱きしめてしまう。

 

 キスをしていたのは10秒くらいだっただろうか。少ししてからイリナが唇を離し、顔を赤くしながら微笑んだ。

 

「――――――吸血鬼って、とっても独占欲が強いんだよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「うん。気に入ったものは、何でも自分だけのものにしようとする。綺麗な宝石も、立派な屋敷も」

 

 説明しながら白い指で俺の頬を撫でつつ、そっとその指で口元に触れた。

 

「そして――――――――男も」

 

「…………っ!」

 

「ふふふっ……………。やっぱり、タクヤって可愛いねぇ。……………なんだか、僕だけのものにしたくなっちゃう……………!」

 

「―――――――す、すっ、すまん、イリナ! そろそろ訓練行かないと!」

 

「あっ……………!」

 

 いかん、下手したら本当にイリナのことをベッドに押し倒してしまいそうだ!

 

 訓練もあることを咄嗟に思い出した俺は、俺の口元を指先で撫でていた彼女から謝りながら離れると、大慌てで部屋のドアの方へと走っていった。

 

 素早く振り返ってから物足りなさそうにこっちを見つめるイリナに手を振り、踵を返して部屋から飛び出す。部屋の中から「本当に可愛いなぁ…………」とイリナがうっとりしたように言う声が聞こえてきて、俺は廊下を突っ走りながらまたしてもドキリとしてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銃剣突撃の訓練と射撃訓練を終え、売店でアイスティーとスコーンを購入してから自室へと戻った俺は、いつの間にか部屋の入口の所に置いてあった最新の新聞を拾い上げ、部屋の中にあるソファへと腰を下ろした。

 

 いつもなら静かな部屋の筈なんだけど、ベッドの隣に置かれた吸血鬼用の棺の中からは、可愛らしい少女の寝息が聞こえてくる。訓練に行く前に彼女に誘惑されたことを思い出して思わず顔を赤くしてしまったけれど、慌てて頭から伸びてしまった角を片手で押さえつつ新聞を読むことにした。

 

 袋の中からスコーンを取り出して口へと運んで咀嚼する。バターの香りを楽しみながら口を動かしていると、早くも昨日の夜の事件が記事になっていることに気付いた。

 

≪切り裂きジャック、ついにカルガニスタンに出現!≫

 

「……………」

 

 昨日の夜、俺は1人の転生者を消した。

 

 いつものようにナイフで切り刻み、メッセージも残した。新聞の生地の隣には白黒の写真も掲載されており、現場の写真と壁に描かれた日本語のメッセージもちゃんと写っているのが分かる。

 

 この世界での公用語はオルトバルカ語。他国の言語も話されることはあるが、基本的にはオルトバルカ語が使用されるのが主流である。そのためなのか、この世界にやってくる転生者たちもこの世界の言語の読み書きが十分にできる状態に調整されてからこの世界に放り出されているらしい。

 

 それゆえに、この世界の言語ではない日本語は彼らへのメッセージとなる。

 

 これ以上蛮行を繰り返すならば、お前たちも狩るというメッセージ。これが転生者たちへの抑止力となることを期待して、俺はわざと日本語でメッセージを書くようにしている。

 

 それにこうやって新聞で広めてもらえれば、よりこのメッセージが知れ渡る。転生者が惨殺されたという事実に怯えて蛮行をやめてくれる奴がいるならばいいけれど、それでも続けるような奴は徹底的に狩るしかない。

 

 親父が絶滅寸前まで追い詰めたように。いや、いっそのこと俺が絶滅させてやる。

 

 アイスティーを飲もうと思っていたその時、部屋のドアがノックされた。

 

「いいぞ」

 

「失礼しますわ」

 

「カノンか」

 

 部屋の中へと入ってきたのは、実用性と華やかさを融合させたようなデザインの黒いドレスのような制服に身を包んだカノンだった。訓練を終えたまますぐここへとやってきたのか、背中にはマークスマンライフルのSVK-12を背負ったままである。

 

「どうした?」

 

「緊急事態ですわ、お兄様」

 

「緊急事態?」

 

「はい」

 

 いつもはふざけていることが多いカノンにしては珍しく真面目で冷静な口調だったので、ほんの少しびっくりしながらも聞き返す。

 

 緊急事態? 近くの村が転生者に襲われてるのか?

 

 そういう状況が多かったから、俺はてっきりそう思って壁のAK-12に手を伸ばしかけながら彼女の返事を聞くことにした。しかしカノンの返事は、俺の予想とは全然違うものだった。

 

「―――――――外部から救援要請を受信したと、中央指令室から報告ですわ」

 

「救援要請?」

 

 しかも外部から?

 

 偵察部隊からの救援要請ならばまだわかる。しかし、外部からの救援要請というのはどういう事なんだろうか。少なくともテンプル騎士団以外で救援要請ができるような装備を持っているのはモリガン・カンパニーか、李風さんが率いるPMCくらいの筈だ。だがそれ以外だった場合は、あまり考えられないが―――――――そういった装備の扱い方に精通した、転生者からの救援要請を傍受してしまったことになる。

 

「所属は?」

 

「モリガン・カンパニーではないようですわね。無線を担当することになった研修中の新兵が偶然傍受したものだそうですわ」

 

「場所は分かるか?」

 

「ここから南西に15km先ですわ。魔物に包囲されているという内容のようですわね。…………お兄様、どうなさいますの?」

 

 モリガン・カンパニーではないということは、李風さんのPMCなのだろうか? でも李風さんのPMCの拠点はここから離れたジャングオ民国だし、そのジャングオ民国も今はフランセンとの戦争で大忙しだから、こんな植民地に部隊を展開する余裕はない筈だ。現代兵器を駆使する李風さんたちのおかげで、何とか戦争を継続していられるような状態なのだから。

 

 ということは、その新兵が偶然傍受した救援要請は外部の転生者が発したものだと考えられる。

 

 基本的に転生者の強さは、その転生者のレベルとステータスの高さが大きく影響する。よほど強力な魔物が相手でない限り、魔物に包囲されて救援要請を発する羽目になるような状況には陥らない筈だ。

 

 おそらく、こっちの世界に転生したばかりでまだレベルの低い転生者なのだろう。いくら転生者でも、レベルが低いうちに魔物に取り囲まれればそのまま食い殺されることもあるという。

 

「…………カノン、俺たちの理念は?」

 

「虐げられている人々を救う、ですわね」

 

「その通りだ、同志」

 

 AK-12をつかみ、ソファの上から立ち上がる。

 

「虐げられているのが転生者ならば、その転生者も救う。それがテンプル騎士団のやり方だ」

 

「ふふっ。お兄様らしいですわ」

 

「それはどうも。…………よし、直ちに救出部隊を編成する。歩兵の選抜は任せるぞ」

 

了解ですわ(ダー)!」

 

 転生者の救出作戦か。最近は能力を悪用する転生者ばかり相手にしていたから奇妙な感じがするが、転生者がすべて悪いというわけではない。

 

 それに―――――――未知の異世界に放り出された転生者たちの保護も、テンプル騎士団の目的の1つなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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