異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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無人兵器を準備するとこうなる

 

 

 今までは、現代兵器で武装した人間と吸血鬼は辛うじて互角に戦うことができていた。銀の弾丸や砲弾を装填して奴らに叩き込むことで、身体能力の差を埋めることはできないが、辛うじて奴らを葬ることができたからである。

 

 しかし――――――――その吸血鬼まで現代兵器で武装しているという報告をシュタージから受けた瞬間、俺は少しばかり絶望してしまった。転生者を上回るほどの力を持つ吸血鬼が、現代兵器という強力な武器で武装しているのである。実際にシュタージが撮影した写真を確認した仲間たちも、その白黒の写真の中で銃を装備している敵兵の姿を見て、絶句していた。

 

 まるで第二次世界大戦中のドイツ兵を彷彿とさせる軍服に身を包み、おそらくG36Cを思われるアサルトライフルを装備し、M2ブラッドレーと共に行動してシュタージたちを追い詰めた吸血鬼たち。しかも奴らの中には人間の兵士も混じっていて、吸血鬼たちの味方をしているという。

 

 てっきり、今回の侵攻は楽な戦いになるんじゃないかとちょっとだけ高を括っていた。吸血鬼が接近してくる前に射殺すればいいし、魔術で遠距離戦を仕掛けてきても、魔力の反応ですぐに探知し、そこに榴弾砲でも叩き込んでやれば勝負はつくのだから。従来通りの状況なのであれば、それでよかった。

 

 しかし吸血鬼まで現代兵器で武装している以上、いくらモリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)の連合軍の物量が圧倒的とはいえ、不利な戦いになる可能性が高い。いくら転生者戦争の生き残りが銃撃戦を経験しているとはいえ、連合軍の兵士たちの大半は転生者戦争以降に入隊した若者ばかり。銃を使った戦いの経験はあっても、銃をこちらに向けられるような戦いの経験がないのだ。

 

 それはテンプル騎士団も同じである。何名かは転生者を相手にする際に銃撃戦を経験しているが、経験したのはごく少数の精鋭部隊のみ。拠点を警備する警備隊や砲兵隊などは、そういった経験がない。

 

 しかも――――――――テンプル騎士団は、モリガン・カンパニーや殲虎公司(ジェンフーコンスー)と比べると、規模が圧倒的に小さい。シュタージが旅立った後に何名も志願兵が入団してくれたおかげでそれなりに規模は大きくなり、前にナタリアが考案してくれた前哨基地の建設も始まっているとはいえ、まだ規模は小さいのだ。

 

 だからそれを補うために、俺たちは――――――――無人兵器を投入することにしていた。

 

 無人兵器は当然ながら人間が乗って操縦する必要がないため、仮に撃破されても戦死者や負傷者が出ることはない。だからそれを大量に配備できれば兵力不足を少しでも補えるのである。

 

 俺の能力を使えば、戦車やヘリなどを無人兵器に改造することが可能だ。しかし無人兵器に改造するにはその兵器を生産するのに必要なポイントを上回るポイントが必要になってしまうという欠点があり、そう簡単に大量に配備できないという欠点がある。

 

 例えば、スーパーハインドを1機生産するためには4800ポイントを消費する。AK-12を1丁生産するために710ポイントを使うので、ヘリや戦車を生産するためのポイントはかなり多めになっている。そしてもし仮にスーパーハインドを無人型に改造する場合、更に8800ポイントも消費しなければならない。

 

 そのため、最新型の兵器を無人化すればすぐにポイントが底をついてしまい、これ以上の軍拡ができなくなってしまう。そこで俺は、生産するために必要なポイントが非常に少ない旧式の兵器に目をつけた。

 

 俺の能力の特徴の1つなんだが、武器や兵器を生産する際、旧式の兵器か中国製の兵器であれば生産に必要なポイントが非常に少なくなっていくという特徴がある。特に第二次世界大戦や第一次世界大戦の戦闘機や戦車は、場合によっては最新型のアサルトライフル程度のポイントで生産できるほどポイントが安くなっているものもあるのだ。

 

 そこで、俺たちは旧式の戦車を無人化し、大量生産して最前線や拠点の警備に投入することにした。

 

「ず、随分と小さい戦車ですわね……………」

 

「ステラみたいに小さい戦車です」

 

 偵察部隊のバイクと共にゲートの向こうから戻ってきた戦車を目の当たりにしたステラとカノンが、そう言いながらその戦車を見つめている。

 

 確かにその戦車は、テンプル騎士団で正式採用となったエイブラムスや、俺たちが乗っているチーフテンと比べると非常に小ぢんまりとしている戦車だった。やたらと大きなキャタピラが小さな車体の両端に取り付けられており、その車体の上にはやはり小ぢんまりとした砲塔が搭載されていて、そこからは短い砲身が少しだけ突き出ている。がっちりした装甲と長い砲身を持つエイブラムスと比べるとあまりにも小さすぎるその戦車は、かつて第一次世界大戦で活躍した『軽戦車』と呼ばれる戦車である。

 

 無人化することにした戦車は、フランスの『ルノーFT-17』をロシアが改良した『ルスキー・レノ』と呼ばれる軽戦車だ。

 

 ちなみに、戦車という兵器が初めて実戦に投入されたのは第一次世界大戦の最中である。けれども当時の戦車の形状は今の戦車のような形状ではなく、巨大な菱形の車体の両サイドに巨大なキャタピラと主砲を搭載したような形状で、最近の戦車のように車体の上に砲塔を搭載したタイプの戦車は存在しなかったのだ。

 

 ルスキー・レノを無人化することに決めた理由は、まず第一次世界大戦中の戦車であるため生産に必要なポイントが非常に少ない事と、小型であるため大量生産しても格納庫にしっかりと格納できるからである。

 

 ルスキー・レノを生産するのに必要なポイントは、AK-12の生産に必要なポイントを下回る600ポイント。無人兵器に改造するのに必要なポイントはたったの1200ポイントだ。スーパーハインドの4分の1のポイントで無人兵器に改造できるのだから大量生産に向いているし、車体も小型だから格納し易い。場合によっては輸送機に乗せて輸送することも可能だろう。しかも重量も軽い。

 

 しかし、さすがに第一次世界大戦の戦車なので火力は貧弱だし、防御力もかなり低いという欠点がある。最新型のエンジンに改造することで機動力は辛うじて向上させられるけれど、他の部分まで改造すると更にポイントがかかってしまうので、防御力と火力はそのままにしている。

 

 そんな旧式の戦車で敵の最新型の戦車とは戦えないけれど、あくまでもこの無人型ルスキー・レノは、歩兵部隊と共に行動して進撃し、砲撃と機銃で歩兵部隊を支援させる予定だ。だから攻撃する相手は歩兵やトーチカになるから、それほど問題はない。

 

 防御力が貧弱とはいえ、アサルトライフルの弾丸で貫通されることはありえないので、場合によっては歩兵部隊の盾にもなるという利点がある。他にもロケットランチャーのカチューシャを搭載した荷台を牽引した遠距離支援型や、戦車砲の代わりに火炎放射器を搭載した近接戦闘型などのバリエーションも考えている。

 

 試しに無人化した試作型のルスキー・レノと共に帰還した偵察部隊の兵士の元へと駆け寄りつつ、手を振る。バイクから降りた兵士はヘルメットを外すと、微笑みながら俺に手を振り返してくれた。

 

「おかえり」

 

「どうも、同志」

 

「こいつはどうだった? ちゃんと仕事してたか?」

 

「ええ。正直言って、最初はこんなに小さいから頼りないと思ってたんですが、いきなり襲い掛かってきたゴーレムやゴブリンをことごとく戦車砲でぶっ飛ばしてくれたんで助かりましたよ」

 

 どうやら予想以上の戦果をあげたようだ。砲塔の装甲をコンコンと叩きながら兵士が報告すると、まるで褒められて照れてしまったかのように、無人型のルスキー・レノが砲塔を微かに旋回させた。

 

「ということは、問題はないな?」

 

「はい。こいつを大量生産してもらえれば、歩兵部隊の奴らも大助かりでしょう」

 

「分かった。他にも何か要望があったら教えてくれ。積極的に検討する」

 

「助かります。では」

 

 再びヘルメットをかぶり、バイクを走らせて格納庫へと戻っていく兵士を見送った俺は、メニュー画面を開いて早くも無人型ルスキー・レノの大量生産の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちがタンプル搭を出発する前よりも、明らかにこのテンプル騎士団の本部は発展していた。地上の設備は大差ないが、地下にある設備はより拡張されており、エレベーターに表示されている区画の数も明らかに増えている。タクヤから聞いたんだが、最下層ではいまだにドワーフたちが居住区や設備の拡張を続けているらしく、来週には第8居住区が使用可能になるという。

 

 信じがたいペースだが、これでも数十人のドワーフたちが前哨基地の建設のために本部を離れているらしく、ペースは遅い方だという。

 

 せっせと工具や資材を担いで現場へと向かうドワーフたちとすれ違いながら、目の前を進む少女のような容姿の少年の後について行く。相変わらず髪型をポニーテールにしている上にリボンまでつけているからなのか、男子だという事が信じられない。

 

「ヴリシアはヤバかったらしいな」

 

 廊下を歩きながら、いきなりタクヤが話を始めた。彼にはもう既に報告したことだけれど、彼が聞きたいのは報告書に書かれていない部分なんだろう。

 

 俺は頷いてから「ああ、ヤバかった」と言うと、地下へと降りるエレベーターのスイッチを押した。やがて下からエレベーターが上がってきて、扉が開く。エレベーターに乗ってから地下の1階のボタンを押して扉を閉めると、エレベーターを固定していた歯車とワイヤーが再び仕事を始めた。

 

「ヴリシア侵攻は、多分転生者戦争並みの激戦になるぞ」

 

「転生者戦争か…………」

 

「確か、お前の親父も参戦したんだよな?」

 

「ああ」

 

 タクヤの父親であるリキヤ・ハヤカワも、転生者戦争の生き残りの1人だ。転生者たちを率いていた”勇者”と呼ばれていた転生者に反旗を翻した男の1人であり、総大将でありながら最前線で戦ったという。

 

 テンプル騎士団やモリガン・カンパニーと関わることになってから、当時の体験談や逸話を何度も聞いた。リキヤ・ハヤカワ率いるモリガンのメンバーたちは敵の負傷兵にも容赦なく攻撃を加えたらしいし、捕虜もその場で撃ち殺していたという。そのせいなのか敵の捕虜は0人で、ファルリュー島の守備隊は全員戦死したらしい。

 

 異世界で初めての、現代兵器同士の戦争。それを上回る戦闘が、ヴリシア帝国で始まろうとしている。今度は当時の生き残りだけでなく、彼らの子供たちも銃を持って最前線で戦うことになるのだ。タクヤは怖くないのだろうか?

 

「お前は怖くないのか?」

 

「なにが?」

 

「敵と殺し合う事さ」

 

「別に怖くないぞ? もう慣れちまった」

 

「……………正直言うと、俺はちょっとビビった」

 

 逃走中に肩に被弾した瞬間、俺は殺し合いをしているんだと実感した。あれは今まで経験してきた戦いよりも生々しい戦いだった。あれが戦争なのだろうか。

 

「……………ヤバいなら、後方で待機しててもいいぞ」

 

「いや、大丈夫だ。すぐ克服した。……………それに、ウォルコットさんたちの仇も取らないと」

 

「そうか」

 

 だからビビっている場合じゃない。

 

 決意すると同時にエレベーターのベルが鳴り、地下の1階へと到着したことを告げた。

 

 扉から出て広い通路を歩いていると、段々と水の音が聞こえてきた。やがてオイルの臭いが漂い始め、通路の奥からは巨大なクレーンが稼働するような音や金属音が聞こえ始める。

 

 しばらく進んでいくと――――――――巨大な地底湖を彷彿とさせる場所に辿り着いた。分厚そうな岩盤に取り囲まれた空間の中を水が満たし、それを天井に取り付けられた照明が照らしている。もしその水の上に巨大な艦が何隻も停泊していなければ、地底湖にしか見えない場所だ。

 

 そう、ここはタンプル搭の地下にある軍港だ。俺たちが出発する前はただの地底湖のような場所だったんだが、今ではドワーフたちの活躍によって新しい設備の導入や拡張が爆発的に進み、今では軍港として機能し始めているという。

 

 そこに停泊しているのは、ソ連で開発された駆逐艦たちだった。ソヴレメンヌイ級やウダロイ級が停泊しており、少し広めのタラップの上を作業員や乗組員たちが行き来している。

 

「乗組員は?」

 

「たった26人だ。ほとんどの設備は自動化してある」

 

 確か、本来ならば300人以上は乗組員が必要なはずだ。ところどころの設備を自動化したとはいえ、かなり乗組員を削減したんだな。テンプル騎士団は人数が少ないから、自動化しない限りこのような駆逐艦はまともに運用できないとはいえ、乗組員を削減し過ぎだと思う。ちゃんと戦えるのだろうか?

 

 その隣には、やけに大きな艦が停泊している。大型の艦橋や無数に搭載されているアンテナのせいで、駆逐艦というよりは戦艦を彷彿とさせる巨体を持つ艦だ。

 

「キーロフ級か?」

 

「ああ」

 

 そこに停泊していたのは、同じくソ連で開発された『キーロフ級ミサイル巡洋艦』である。無数のミサイルを搭載した圧倒的な火力を持つ巡洋艦だが、確かこの艦は原子力で動く巡洋艦じゃなかったか?

 

 転生者はあらゆる兵器をポイントを使って生産することができる。しかし、核ミサイルや原子力空母などの”原子力”を使用するあらゆる兵器は一切生産することができない。確かに核ミサイルを転生者に使わせたら、この異世界があっという間に放射能の世界に早変わりしてしまう。この端末を作った奴はそれを阻止するために、核兵器は使用できないようにしたんだろう。

 

 しかし、あくまで使用できないのは”原子力”のみ。こういった艦は、動力源を原子力から通常の機関に変更することで、性能は下がってしまう代わりに使用可能になるのである。

 

 おそらくこのキーロフ級も、原子力から通常の機関に変更したんだろう。

 

「ほら、見てみろ」

 

「これは……………?」

 

 てっきりキーロフ級がテンプル騎士団の艦隊の旗艦になると思ってたんだが――――――――楽しそうに微笑みながらタクヤが指差した先には、キーロフ級よりもはるかに巨大な艦が停泊していて、その甲板の上では作業員たちがせっせと作業を続けていた。

 

 キーロフ級よりも艦橋は若干低いが、船体は非常にがっちりしており、装甲が分厚いことを告げている。さらに前後の甲板の上には太い砲身が3本も突き出た主砲の砲塔が搭載されており、艦橋や煙突の両サイドには、おそらく対艦ミサイルが収納されると思われるミサイルポッドがこれでもかというほどずらりと並べられている。

 

 他にも、最新型の対空ミサイルやCIWSと思われるものがいくつも搭載されていた。

 

 そこに鎮座していたのは―――――――現代では廃れてしまった、『戦艦』だった。

 

「せ、戦艦……………?」

 

「ああ、ソ連の『24号計画艦』だ」

 

 第二次世界大戦中、ソ連軍は『ソビエツキー・ソユーズ級』と呼ばれる超弩級戦艦を建造する予定だったという。圧倒的な火力と防御力を持つ戦艦だったようだが、途中でその戦艦の建造は中止されてしまい、ソビエツキー・ソユーズ級は1隻も実戦投入されなかった。

 

 実はそのソビエツキー・ソユーズ級を更に改良した発展型も計画されていた。それが『24号計画艦』である。

 

 まだ名前すら決められなかった、”生れ落ちることのなかった戦艦”が、近代化改修を受けた姿で目の前に停泊している。

 

「幸い、討伐した転生者からドロップしたんだ。こいつがドロップしなかったらキーロフ級が旗艦になる予定だった」

 

「戦艦を投入するのか?」

 

「ああ、近代化改修は済んでる。対艦ミサイルや対空ミサイルもあるぞ」

 

「ふむ。……………ところで、名前は決まってるのか?」

 

「ああ」

 

 実戦でも24号計画艦と呼ぶわけにはいかない。名前すら決めてもらえなかった艦なのだから、名前を付ける必要がある。

 

 タクヤは停泊する巨躯を見つめながら、楽しそうに言った。

 

「―――――――”ジャック・ド・モレー”だ」

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 新機能?

 

タクヤ「ルスキー・レノに新機能を搭載してみたぞ」

 

ナタリア「新機能?」

 

タクヤ「ほら、これ」

 

ルスキー・レノ『おはようございまーすっ♪』

 

ナタリア「!?」

 

タクヤ「喋れるように改造してみた。ちなみにラウラにアフレコしてもらってんだ」

 

ルスキー・レノ『よーし、偵察行ってきまーすっ♪ ……………ふにゃっ!? うぅ、擱座しちゃったぁ……………』

 

兵士1「なにぃ!? おいお前ら、戦車を守れ! 絶対破壊させるな!」

 

兵士2「こんなかわいい戦車をやらせてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

兵士3「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ! ルスキー・レノは俺が守るんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

ウラル「おい、歩兵部隊の戦果が上がってるんだが」

 

タクヤ「マジかよ」

 

 完

 

 

 

 

 

 

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