異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
「
Strv.103の105mm砲から放たれたAPFSDSが、
まさに、スオミの里の守護者だ。
その守護者が、俺たちの生まれ育った里から遠く離れた島国で、仲間の命を狙う敵へと牙を剥く。
砲手が放ったAPFSDSは外殻を脱ぎ捨てると、戦車の装甲を貫通するほどの威力を誇る獰猛な姿をあらわにし、そのまま凄まじい速度でレオパルトの砲塔の側面に突っ込んだ。コルッカが奇襲に使った装甲車の残骸を砲撃し終えた瞬間に攻撃を喰らった敵の戦車はこっちに反撃しようとしているようだが、戦車砲を搭載した砲塔の回転速度がやけに遅い。
「ハッハッハッ、今ので砲塔がいかれたか」
「兄貴、追撃するか!?」
「いや…………欲張るな」
今の被弾で砲塔が故障したと思われるレオパルトに、止めを刺すべきだと主張する砲手。しかし俺は砲撃命令を出そうとは思わなかった。
確かに、今ここで追い討ちを仕掛ければ”あのレオパルトだけは”討ち取れる。ああ、戦車を1両撃破したっていうでっかい戦果をあげられる。でもな、その戦果を誇れるのは戦いから生還してからだ。戦闘中に死んだら、せっかくの戦果を誇れない。
敵の戦車はあのレオパルトだけじゃねえ。後続にも何両かいる筈だ。しかも歩兵の中にはロケットランチャーを持ってる面倒な輩まで混じってやがる。いくら装甲を増加し、アクティブ防御システムで防御力を底上げしたとはいえ、弱点に命中すればこっちはやられる。もし大破しなかったとしても、擱座して動けなくなったら袋叩きにされるのは明白だ。
「忘れたか? 防衛戦の鉄則は集団で袋叩きにすることだぜ?」
「あ、ああ、そうだな。忘れてたぜ」
「気持ちは分かるが、あまり夢中になり過ぎるなよ。…………というわけで、2号車と3号車。あのレオパルトに止めを刺せ」
『はいはーい』
「俺たちは一旦後退。位置を変えて再び攻撃に参加する」
「了解!」
操縦手が俺たちの乗るStrv.103を後退させ、次の砲撃地点へと移動を開始する。その間に別の場所に潜んでいた味方のStrv.103が前に出たかと思うと、砲塔が故障したレオパルトをAPFSDSで袋叩きにし始めた。側面の装甲に穴が開き、立て続けに被弾したレオパルトが動きを止める。やがて砲塔の上のハッチが開き、悲鳴を上げながら乗組員たちが這い出てくる。
そこに、瓦礫の陰に隠れていたスオミの里の戦士たちが、装備しているRk-95のセミオート射撃をぶっ放し始める。敵兵が逃走する乗組員たちを掩護するために必死に弾幕を張るが、狩猟で狙撃に慣れている戦士たちはその程度の弾幕をものともせずに、正確に逃走する敵兵の背中を撃ち抜いていった。
敵兵の背中に風穴が開き、鮮血で瓦礫と雪を真っ赤に染めながら敵が崩れ落ちていく。やがてその容赦のない狙撃は弾幕を張り続ける敵兵にも牙を剥き始めた。モニターの向こうに映る敵兵のヘルメットにでっかい穴が開き、脳味噌の破片と鮮血を雪の上にぶちまけながら後ろに倒れていく。
スオミの戦士たちは、幼少の頃から弓矢の使い方を親から習い始める。銃とは全く使い勝手の違う武器だが、銃での射撃にも応用できるノウハウは多い。大昔に
「ついたぞ、アールネ」
「よーし、それじゃ俺たちもぶっ放すか。砲撃用意! 砲弾はAPFSDS!」
「了解!」
自動装填装置が次の砲弾を装填する音が聞こえてきたかと思うと、今度は立て続けに、かつん、と装甲の表面に何かが激突するような音が何度も聞こえてくる。
顔をしかめながらモニターを見てみると、倒壊したアパートを盾にしている敵兵が、LMGをこっちに向けてひたすらフルオート射撃をぶっ放しているようだった。
「おいおい、見つかってんじゃねえか!」
「大丈夫だ、戦車は気付いてない!」
「歩兵は気付いてるぞ!?」
「歩兵は眼中に無えッ!」
7.62mm弾じゃ戦車の装甲は貫通できねえからな!
でも、さすがに鬱陶しいな。ハッチから身を乗り出して、備え付けてある機銃で蜂の巣にしてやろうか。そう思って敵の射手が再装填(リロード)するのを待っていると、敵兵が潜んでいたアパートの残骸を爆風と衝撃波が飲み込み、俺たちの戦車に少しでも損傷を与えようとしていた兵士たちの努力を水の泡にしてしまった。
火柱が上がった廃墟の上を旋回していくのは、スオミの里の象徴である蒼い十字架と翼のエンブレムが描かれた2機のコマンチ。俺たちがテンプル騎士団に協力することになってから、外敵の侵入を一度も許すことのなかった空の守護者たちが、大地を走り回る敵兵に牙を剥いたのである。
イッルやニパたちが操る獰猛なコマンチたちは旋回しながらすれ違うと、そのまま反転して敵兵の群れへと高度を落としながら接近していく。敵兵が大慌てで5.56mm弾の弾幕を叩き込むが、いくら華奢なステルス機とはいえその程度で撃墜できるわけがない。まるで凶暴な猛禽類が子ウサギに襲い掛かるかのように、敵兵の群れをコマンチの機関砲が木っ端微塵にしていく。
『兄さん、これで静かになったよ』
「ありがとよ、イッル!」
片方のコマンチを操るイッルに礼を言ってから、掴んでいたハッチからそっと手を離す。俺たちの敵は歩兵ではなく、進撃してくる戦車だ。奴らを袋叩きにするためのStrv.103で、歩兵なんかを相手にするわけにはいかない。
早くも3機のヘリを撃墜された敵は、最早空を舞う2機のコマンチに蹂躙されるだけだった。せめてヘリが残っていればあのコマンチの相手をしてくれたかもしれないが、そいつらはもう既にミサイルと、
「
「発射(トゥータ)!!」
砲手がぶっ放したAPFSDSが、歩兵を下ろす途中だった敵の装甲車を直撃する。砲弾はあっさりと装甲を撃ち抜き、ライフルを抱えて降りる途中だった敵兵を何人も串刺しにすると、凄まじい衝撃波でその肉片を引き千切り、乗組員もろとも装甲車を撃破した。
装甲車の仇を取るためにレオパルトが砲撃してくるが、俺が命令するよりも先に操縦士が車体をバックさせてくれていたおかげで、敵の放ったAPFSDSは雪の積もった瓦礫だらけの大地を抉り、その破片を増加された装甲に叩きつけるだけで済んだ。
生まれ育ったころから使っている弓矢などの武器と比べると、この戦車や銃などの異世界の兵器はあまり使い慣れていないと言わざるを得ない。はっきり言うと
それにしても、この異世界の兵器は凄まじい性能だな。こんな兵器を製造できるほどの科学力を持った世界と戦争になっちまったら、俺たちに勝ち目はねえぞ…………。
『4号車、前に出る!』
「了解。こっちは次の砲撃地点に移動する!」
練度不足かもしれないが、こういう防衛戦闘がスオミの里のお家芸だ。大昔に
”守る戦い方”なら得意なのさ。
そう簡単に突破できると思うなよ、吸血鬼(ヴァンパイア)共…………!
AK-12のフルオート射撃を敵兵に叩き込みつつ、図書館の中へと転がり込む。口の中に入った砂入りの雪を吐き出しながら階段を駆け上がり、一気に3階のベランダまで全力疾走。幼少の頃から経験している訓練や屋根の上でやった鬼ごっこで鍛え上げた瞬発力と脚力をフル活用し、あっという間に3階までたどり着いた俺は、アサルトライフルを腰の右側に用意したホルダーに引っ掛けると、真っ先にベランダにあるMG3へと向かった。
もう既に脅威となるヘリは排除したし、戦車もスオミの里が誇るStrv.103の集中砲火で着実に撃破されつつある。そしてロケットランチャーや迫撃砲を装備している敵を上空のコマンチたちが最優先で排除してくれるので、こっちは運悪く狙撃されない限り脅威は全くない。
そう、LMGの射手たちの独壇場なのだ。しかもこっちは見通しの良い3階のベランダに設置されているから、広場に踏み込んだ敵を一方的に蜂の巣にできる。
「ああ、くそ! 団長に先を越されちまった!」
「ハハハハハハッ。このベルト撃ち終わったら後退してやるから、弾薬の箱持ってきてくれ!」
「了解(ダー)!」
仲間にそう言いながら、MG3のフルオート射撃で広場にいる敵兵を薙ぎ払う。次々に敵兵が蜂の巣になり、雪の上を真っ赤に染めながら倒れていく。
普段は敵に突撃したり、アンチマテリアルライフルで狙撃することが多いけど、こうやってLMGで撃ちまくるのも悪くないな。
そう思いながら連射していると、特徴的なバレルジャケットの中で弾丸を送り出し続けていたMG3の銃身が真っ赤になり始めた。この銃は空気を使って銃身を冷却する『空冷式』と呼ばれる方式の機関銃だが、いくら空冷式でもフルオート射撃を続けていれば銃身が真っ赤になる。このまま銃撃を続けるわけにはいかないため、銃身を交換しなければならない。
余談だが、昔の機関銃はこのような空冷式ではなく、銃身を水で冷やす『水冷式』と呼ばれる方式が一般的だった。でもこの方式は冷却用の水のせいで重量が増加するし、水がなければ銃身が冷却できないという問題点があったから今ではすっかり廃れてしまっている。
側面にあるハッチを開き、グリップから離した右手をキメラの外殻で覆う。サラマンダーの外殻はマグマに触れても殆ど熱を通さないほど耐熱性に優れているから、真っ赤になった銃身を掴んでも問題はないのだ。
そのまま銃身を引き抜き、MG3と一緒に鹵獲した耐熱シートの上に放り投げる。真冬だからすぐに銃身は冷めるだろう。
予備の銃身をハッチの中へと放り込んでハッチを閉じ、射撃を再開。瞬く間に敵兵を蜂の巣にし、次の標的に狙いをつける。
しかし――――――マズルフラッシュの向こうで蜂の巣にされた筈の敵兵がゆっくりと起き上がったのを目の当たりにした瞬間、俺はぎょっとして連射を止めてしまう。
しまった…………。俺たちの武器は対吸血鬼用に銀の弾丸を発射できるようになっているが、鹵獲したこの銃の分まで銀の弾丸は用意していない。普通の兵士には効果的だけど、敵兵の中にもし吸血鬼が混じっていたら―――――――この鹵獲した得物では、絶対に殺せない。
「チッ!」
舌打ちしながら腰の後ろのホルスターに手を伸ばし、ソードオフ型に改造したウィンチェスターM1895へと手を伸ばす。大型化したピープサイトで素早く照準を合わせてトリガーを引くが、先ほどの傷を再生していたその吸血鬼の兵士は、信じがたいことにその弾丸を右へとジャンプして躱すと、転生者に匹敵するほどの瞬発力で走り出し、そのまま3階のベランダまでジャンプしやがった!
くそ、転生者並みの身体能力か! 厄介だな、吸血鬼は!
素早くスピンコックしてトリガーを引く。ジャンプ中の吸血鬼の脇腹に、銀の7.62×54R弾がめり込んだが―――――――そいつは血を吐きながらその一撃を耐えると、右手に持っていたG36Kの銃床を俺の顔面へと振り上げてくる。
今の一撃で仕留められると思っていた俺は、その一撃を硬化で防ぐことができず、アサルトライフルの銃床で顎をぶん殴られる羽目になった。
「あぱっち!?」
「ど、同志ッ!?」
こ、この野郎………!
今度は頭を硬化してガードしようとするが―――――――この吸血鬼はキメラには外殻があるという事を知っていたのか、今度は頭を狙うと見せかけて、俺の腹を銃床でぶん殴りやがった。
「こまんち!?」
「どっ、同志ぃッ!? 大丈夫ッスか!?」
「お、俺に構うなぁッ!」
くそったれ、こいつを早く片付けないと………!
振り払われた重傷を受け流し、こっちもウィンチェスターM1895で吸血鬼の顔面をぶん殴った。吸血鬼が体勢を崩している隙にレバーアクションライフルを手放し、腰の鞘の中からテルミットナイフを引き抜く。刃は吸血鬼用の銀に変更していないためこいつで斬りつけても殺せないけど、対吸血鬼用に灼熱の粉末ではなく聖水を噴射できるようになっているため、こいつをお見舞いすれば吸血鬼は終わりだ。
立ち上がりかけている吸血鬼を蹴り飛ばし、起き上がる前にそいつの上からナイフを振り下ろす。けれどもその吸血鬼は俺の両手を掴むと、そのまま握り潰せるのではないかと思えるほどの尋常じゃない握力で、俺の両手を止めやがった。
くそ、やっぱり吸血鬼は手強い………!
「ぐっ………!」
「この………キメラ風情がぁッ!」
腕力で強引にナイフを振り下ろそうとするが、この吸血鬼はこのまま力比べをすればすぐに泥沼化すると判断したのか、力比べには乗ってくれなかった。がら空きになっている俺の腹に蹴りを入れ、怯んだ隙に自分のヘルメットを外し、それを握りながらまたしても俺の顔面をぶん殴ってくる。
「ぱぱらっち!?」
「ど、同志!? 本当に大丈夫ッスか!?」
「か、構うな! こいつは俺が始末する!」
慌てて起き上がるけど、今しがたぶん殴られたせいで得物から手を放してしまったのか、いつの間にか俺が持っていた筈のテルミットナイフが消えていた。ちらりと後ろを見てみると、よりにもよって本棚の下まで吹っ飛ばされていたらしく、マチェットのようにも見える分厚い刀身がラノベの並ぶ本棚の下から覗いている。
ヤバいな…………。アサルトライフルで反撃するか…………?
いや、さすがにアサルトライフルでも近過ぎる。トリガーを引く前にまたぶん殴られるかもしれない。
俺の息の根を止めるつもりなのか、目の前にいる吸血鬼はアサルトライフルを放り投げると、腰のホルダーの中に納まっていたスコップを引き抜いた。通常のスコップとは違って戦闘用に作られた代物なのか、まるでサバイバルナイフを思わせるセレーションがついている。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
くそったれ…………!
歯を食いしばりながら、走ってくる吸血鬼を睨みつけ―――――――首にぶら下げていた拳銃型のネックレスを握り締める。一見すると拳銃の形をしたネックレスにしか見えないが、実はこれも非常用に準備しておいた得物の1つなのだ。
引き千切ったそれを握り、まるで本当に銃を撃つかのように銃口を吸血鬼へと向ける。
「そんな小さい得物で、俺を殺せるわけがねえだろうがッ!」
「――――――そう思う?」
――――――侮るな。
あまりにも小さすぎる拳銃型のネックレスの銃口を吸血鬼へと向け、トリガーを引く。
その瞬間、まるで本物のハンドガンのように――――――拳銃型のネックレスが、火を噴いた。
とはいえ普通のハンドガンと比べると、微かに飛び散る火花程度にしか見えない弱々しいマズルフラッシュだった。けれども銃口から飛び出したのは、その弱々しいマズルフラッシュだけではない。
「――――――ギャアアアアアアアアアア!?」
次の瞬間、スコップを振り上げていた吸血鬼の左目に、かなり小さな穴が開いたように見えた。その穴から溢れ出した鮮血が吸血鬼の眼球を侵食し、激痛と共に彼の左目を覆っていく。
本当に―――――――この拳銃型のネックレスから、弾丸が飛び出したのだ。というか、そもそもこれはネックレスなどではない。オーストリア・ハンガリー帝国で開発された『コリブリ』という、れっきとした超小型拳銃なのである。
使用する弾薬は一般的な9mm弾よりもはるかに小さな2.7mm弾。もちろん貫通力や殺傷力はかなり低いため、下手をすれば人間の頭に命中させたとしても頭蓋骨を貫通させるのは難しいだろう。しかも命中精度も低いため、至近距離でなければ命中させるのは難しい。
非常用の武器として前から生産し、ネックレス代わりにずっと首に下げていた得物が、ついに初めて実戦で火を噴いた。
「がっ、あぁぁぁぁぁッ!? そ、それっ、本当に銃――――――」
「銃だよ!」
そのまま接近し、銃口を反対側の目に押し付けながらマガジンが空になるまで撃ちまくる。いくら超小型のハンドガンとはいえ、こんな至近距離で眼球に全弾叩き込まれればただでは済まないだろう。
もちろん、使用する2.7mm弾は銀の弾丸に変えてあるから再生はできない。
紛失しないように弾切れになったコリブリをポケットの中に突っ込み、床に転がっていた辞典らしき分厚い本で吸血鬼の頭をひたすらぶん殴る。そして蹴り飛ばしてから床に転がっていたレバーアクションライフルを拾い上げ―――――――両目を失った吸血鬼の頭に、銀の7.62mm弾を叩き込んだ。
拳銃用の弾薬を遥かに上回る破壊力のライフル弾が、容易く吸血鬼の頭蓋骨を食い破る。がくん、と頭を揺らしながら即死した吸血鬼はベランダの縁へと寄りかかると、そのままずるりとベランダから落下していった。
「はぁっ、はぁっ…………コリブリのおかげで助かった…………」
呼吸を整えながらエリクサーの瓶を取り出し、回復してからMG3の方をちらりと見る。先ほど弾薬を取りに行かせた兵士がいつの間にか俺のMG3を占領していたのを見て苦笑いしてから、俺はアサルトライフルをホルダーから取り出し、反撃に参加するのだった。
橋頭保となった図書館は、12月23日の23時40分まで吸血鬼たちの波状攻撃を受け続けた。テンプル騎士団の兵士たちは敵から鹵獲した装備を有効活用し、23時51分に第二防衛ラインを打ち破った本隊と合流するまでその波状攻撃を防ぎ切り、橋頭保を死守したのである。
こうして、連合軍は橋頭保を確保し――――――吸血鬼たちの本拠へと攻め込むのだった。
※アパッチはアメリカ軍などで採用されている攻撃ヘリです。
※コマンチはアメリカ製の試作型ステルスヘリです。
※パパラッチは兵器とは一切無関係です。