異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
メッサーシュミットBf109は、俺の祖父が乗っていた機体と同じだ。かつて祖父はこのメッサーシュミットBf109の”F型”と呼ばれるタイプの機体を操り、イギリスのスピットファイアたちと死闘を繰り広げていたという。
憧れの祖父がかつて操った機体と同じ戦闘機のコクピットに乗り込んでいることに感激しつつ、燃料計や操縦桿を素早くチェックする。
武装は機首に搭載されている2門の7.92mm機銃と、機首のプロペラの軸に搭載されている20mm機関砲が1門。プロペラの軸が機関砲の砲身になっている、モーターカノンと呼ばれる機関砲だ。
武装はそれほど搭載しておらず、飛行可能な距離も他国の戦闘機と比べると短いと言わざるを得ないものの、当時の戦闘機の中では非常に優れた加速力を持っており、一撃離脱戦法で連合国の戦闘機を苦しめたと言われている。
滑走路へと躍り出た俺の機体を見つけた整備兵がこっちに向かって叫んでいるのが見えるが、もう既に回転を始めたプロペラの音のせいで何を言っているのかは聞こえない。
安心しろ。さすがにこの武装で化け物共まで殲滅するのは無理だが、少なくとも空を舞うドラゴンくらいは落としてやるさ。
もう既に、外では地上部隊が戦闘を始めているらしい。建造途中と思われる防壁の向こうからは、銃のマズルフラッシュらしき光が見える。
「…………行くか」
この機体を飛ばしたことはないが、操縦方法は分かる。
戦時中に祖父と一緒に戦ったという戦友が、このメッサーシュミットBf109から武装を全て取り外した物を保管していたのである。祖父がその戦友と思い出話をしている間に俺はその保管されていた機体のコクピットに潜り込み、よく”パイロットごっこ”をして遊んでいたものだ。
その際に祖父の戦友が面白半分で操縦を教えてくれたのである。
奇妙な端末で作り出した機体が、ゆっくりと滑走路を進み始める。やがて速度が段々と速くなっていき、滑走路の両脇で眠っているSu-27たちが置き去りにされていく。
第二次世界大戦で活躍した機体が、ついに空へと舞い上がるのだ。
やがて、俺の足元から地上が消え去る。
「うお…………」
眠り続ける戦闘機の群れと滑走路を置き去りにし、速度を上げた機体がついに滑走路から飛び立つ。
プロペラとエンジンの音がキャノピーの中にまで入り込んでくる。幼少の頃によく乗り込んでいた戦闘機が、本当に空を飛んでいるのだ。
機体を旋回させ、地上を見下ろす。このまま砂漠を空から見渡すのも悪くはないが、今は戦闘中だ。アサルトライフルを手にした兵士たちが、まるで神話や御伽噺の中に登場するような魔物の群れと死闘を繰り広げているのである。
砂が舞うキャノピーの向こうでは、やはりマズルフラッシュの光が煌いていた。砂で覆いつくされた大地の上で隊列を組み、アサルトライフルを構える黒服の兵士たちの姿がよく見える。
彼らが銃を向ける敵の姿を目の当たりにした瞬間、俺はコクピットの中で息を呑んだ。
「あれが…………」
一見すると、要塞へと近づいていく砂嵐にも見えたかもしれない。しかしそれは普通の砂嵐よりもはるかに獰猛で、さらに破壊力を秘めた恐ろしい”嵐”と言える。
正確に言えば、その嵐を生み出している奴らだ。
まるで巨大な岩を人の形に削って作り出したかのような岩の巨人や、砂漠に生息するサソリを戦車よりも大きくしたようなグロテスクな怪物。そいつらの足元を、まるで戦車を護衛する随伴歩兵のように駆け回るのは、おそらく成人男性の半分程度の伸長を持つ、人間に似た化け物。あれはゴブリンなのだろうか。
信じられん。あんな化け物が実在するだと…………?
操縦桿を倒して高度を下げつつ、あいつらの上から機銃を掃射してやろうかと思ったが―――――――操縦桿を倒しかけた瞬間、赤黒い鱗と外殻で覆われた巨大な飛行物体が、キャノピーの真上を通過していった。
『ゴォォォォォォォォォッ!』
「ッ!」
エンジンとプロペラの音が聞こえる中でも、その化け物が発した野太い咆哮ははっきりと聞こえた。あんな咆哮を間近で聞く羽目になったら、ちっぽけな人間の鼓膜はあっさりと粉砕されてしまうに違いない。
息を呑みながら機体の後方を見据える。今しがたメッサーシュミットBf109の真上を通過していったのは、やはり部屋の窓の外を通過していったドラゴンらしい。
自分たちが舞う空を見慣れない物体が飛んでいることが許せないのか、旋回しながらこの機体を睨みつけてくるドラゴン。やがて他のドラゴンたちもそいつの周りに集まり始めたかと思うと、鋭い牙の生えた大きな口から火の粉や炎を覗かせながら、立ち去れと言わんばかりに次々に咆哮し始める。
どうやら縄張りに入り込んだ”外敵”に威嚇しているつもりらしい。
外敵か…………。
「面白い」
実際に戦闘機を飛ばせて感激している俺は、キャノピーの中でニヤリと笑った。
せっかく武装を積んだ戦闘機で滑走路から飛び立ったのだから、このまま遊覧飛行を楽しむよりも刺激的な空戦を経験するべきだろう。それに―――――――はっきり言うと、あのドラゴン共が気に食わない。
空を統べるのはドラゴンなどではない。科学力が生み出した戦闘機であるべきなのだ。
どっちが強いのか、ここで試してみるのも面白いだろう。
そう思いながら俺は操縦桿を倒し、機体を減速させながら旋回を始めた。片手の指を機銃の発射スイッチに近づけながらドラゴンを睨みつけ、呼吸を整える。
確実に撃墜するならばモーターカノンを使うべきだろうが、相手がどの程度の防御力を持っているのかも試してみたいし、20mm弾は弾数が少ない。ここぞという時にぶっ放すためにも、まずは最初に小口径の―――――――とはいえ歩兵のライフルから見れば十分大口径である―――――――機銃からぶっ放し、それで撃墜可能であるかどうかを調べるべきだ。
威嚇で逃げるつもりはないと思ったのか、リーダーと思われるやけにがっちりした外殻を持つドラゴンが、口から炎を吐き出しながら咆哮した。多分、「これ以上接近すれば排除する」という最後通告のつもりなのだろう。
馬鹿馬鹿しい。
俺だって、第一次世界大戦と第二次世界大戦で活躍したエースパイロットの遺伝子を受け継いでいるんだ。その程度の威嚇で逃げ出してたまるか。
機銃の照準器を覗き込み、機首をそのボスと思われるドラゴンへと向ける。向こうももう威嚇は無意味だと悟ったのか、咆哮をぴたりと止め―――――――こっちに突っ込んできた!
すれ違いざまに叩き込むか。
きっと祖父も、こうやってスピットファイアの群れと戦ったに違いない。
かつて連合国の空軍と死闘を繰り広げた祖父たちの事を考えながら、7.92mm機銃の発射スイッチを押した。
機首に搭載された2門の機銃が、ついに砂漠の上空で火を噴く。黄金のマズルフラッシュがキャノピーのすぐ前で煌き、前方へと弾丸を解き放っていく。
これが通用しなければモーターカノンの出番だ。こっちは弾数が少ないから、しっかりと狙って叩き込む必要がある。
機銃が放たれているにも拘らず、真正面から突っ込んでくるドラゴン。ちょっとした爆撃機に匹敵する巨躯へと機銃の弾丸が次々に命中していくが、ダメージを与えられているのかは分からない。
これ以上撃ち続けていたら、ドラゴンと真正面から激突する羽目になりそうだ。そろそろ回避するべきだろう。
「ふんっ!」
操縦桿を倒し、減速しつつ右上へと回避。空気をズタズタにする凄まじい轟音と咆哮を響かせながら、巨大なドラゴンがメッサーシュミットBf109の胴体の下を通過していった。
今の攻撃が通用したのか気になるが、今は旋回してもう一度攻撃を仕掛ける準備をする必要がある。メッサーシュミットBf109が真価を発揮するのはドッグファイトではなく、あくまでも一撃離脱戦法なのだ。
旋回しながらキャノピーの外を見渡し、さっきのドラゴンを探す。
赤黒い鱗と外殻を持つドラゴンは、すぐに発見できた。今しがたこの戦闘機にこれでもかというほど機銃をお見舞いされたドラゴンのボスは―――――――まるで被弾した戦闘機が黒煙を吐きながら高度を落としていくかのように、首や胴体から黒煙のように鮮血を噴き上げて、高度を落としているところだった。
必死に高度を上げようとするが、被弾したダメージはかなり大きかったらしく、やがてそのドラゴンはぐるぐると回転しながら墜落し、地上を進軍する魔物たちが生み出した砂塵の中へと消えていった。
「げ―――――――撃墜…………ッ!」
よし、7.92mm機銃でもいける!
ボスを殺せば逃げ出すだろうと思ったのだが、ドラゴンたちはむしろ奮い立っているようだった。ボスの仇討ちだと言わんばかりに咆哮しながら翼を広げ、旋回するメッサーシュミットBf109へと突進してくる。
だが、どうやらあのドラゴンたちにはメッサーシュミットBf109に追いつけるほどのスピードはないらしい。旋回速度では同等くらいだろうか。
ならば、こっちは一撃離脱戦法を使ってひたすら攻撃していればいい。口から吐き出す炎と不意打ちにだけ気を付けていれば、あいつらを殲滅するのは難しくないだろう。
面白い。
撃墜したドラゴンはまだ1体。だが、あそこで咆哮している奴らを殲滅すれば、俺もエースパイロットになれる。
「…………やってやるッ」
俺も、祖父みたいなエースパイロットになるんだ………ッ!
そう思いながら機銃の照準器を覗き込んだ俺は、機銃の発射スイッチを押すのだった。
ブレスト要塞へと出撃したのは、3機のスーパーハインドと4機のカサートカ。どちらもしっかりとロケットポッドや機関砲で武装しており、兵員室の中には武装した兵士たちを乗せて、ブレスト要塞へと向かって飛行を続けている。
他の兵士たちと同じように、自分の得物を点検しながらブレスト要塞の守備隊の規模を思い出す。
現時点ではまだ建造途中の要塞であり、要塞砲の準備はできているものの、肝心な砲手の育成がまだ終わっていないため運用できるのはまだ先だ。守備隊の方は一般的な魔物の襲撃から要塞を守り切れるだけの規模の部隊が駐留しているものの、今回の規模は流石に想定外としか言いようがない。
歩兵部隊80人とT-72B3が8両。更にT-90も6両ほど配備していた。もちろん航空戦力も配備しており、最優先で建設した飛行場にはSu-27やSu-30などの航空機が30機ほど配備されている。それほどの戦力と対転生者戦闘の訓練を受けた兵士たちならば、魔物どころか転生者の襲撃からも要塞を守り抜くことはできただろう。
しかし今回の襲撃は想定外である。フランセンの騎士たちが相当する筈だった魔物たちが、あいつらの進撃速度が遅かったせいで逃げ出したのだ。しかもその魔物たちの逃走ルートには、まだ建設中のブレスト要塞があった。
「…………あとでフランセンに抗議しよう」
「そうした方がいいわね」
隣で得物の点検をしながら、いつもとは口調が違うラウラがそう言った。普段は大人びた容姿とは裏腹に性格は幼く、いつも俺に抱き着いてくる甘えん坊なのだが、戦闘になると一気に性格まで大人びる。
母であるエリスさんにそっくりだ。
彼女が装備する得物は、ハンガリー製アンチマテリアルライフルの”ゲパードM1”。1発しか装填できない単発型の銃だが、その命中精度はアンチマテリアルライフルの中でトップクラスと言っても過言ではなく、射程距離も長い。旅を始めた頃に使っていたものを改造しており、本来ならば12.7mm弾を使用するこのライフルを、ラウラからの要望でさらに大口径の23mm弾を使用できるように改造している。
もはやライフルと言うよりは”キャノン”と言うべきではないのだろうか。ちなみに23mm弾は、ソ連製の対空機関砲で使用されるような代物であり、航空機を容易く撃墜することが可能である。
通常の弾薬に加え、対装甲車用に徹甲弾も彼女に支給している。さすがに戦車の破壊は不可能ではあるものの、少なくとも装甲車の破壊は可能だろう。
もちろんスコープは搭載しておらず、代わりに古めかしいタンジェントサイトを装備している。
サイドアームはPP-2000とPL-14で、ナイフは刀身とグリップを延長したスペツナズ・ナイフを2本装備している。
もちろん俺も同じナイフを装備している。グリップの中にあるスプリングをより強力なものに換装しているため、刀身を射出した際の殺傷力もより向上しているのだ。さらに巨躯解体(ブッチャー・タイム)と併用した場合、射出した刀身の切れ味まで強化されるので、ちょっとしたフレシェット弾として機能する。
俺のメインアームはいつものAK-12。グレネードランチャーとアメリカ製のホロサイトを装備し、その後方には中距離戦闘用にブースターも搭載している。サイドアームはお気に入りのウィンチェスターM1895のソードオフ・モデルが2丁。モシン・ナガンと同じ弾薬を使う強力なレバーアクションライフルだ。
「えへへへ…………楽しみだなぁ…………早く吹っ飛ばしたいなぁ♪」
「こ、怖い…………」
向かいの席でニヤニヤと笑いながらグレネードランチャーを撫でているイリナを見ながら、俺たちは苦笑いしてしまう。爆発が好きだからという理由で基礎的な魔術の習得よりも先に難易度の高い爆発系の魔術を真っ先に習得し、得物も爆発する弾丸や砲弾を放つもので統一しているイリナの装備は強力なものばかりだ。
彼女が撫でるグレネードランチャーも凶悪な代物の1つである。
傍から見れば、銃身とチューブマガジンをそのまま太くしたショットガンのように見えるかもしれないが、こんなにでっかいショットガンは存在しない。
イリナが装備しているのは、『GM-94』と呼ばれるロシア製の”ポンプアクション式グレネードランチャー”である。ショットガンにも採用されているポンプアクション式を採用している一風変わったグレネードランチャーで、次々に強力なグレネード弾をぶっ放せるという代物だ。
使用するのも、一般的な40mmグレネード弾ではなく、より大口径の43mmグレネード弾。そのため破壊力は他のグレネードランチャーよりも上なのだ。
砲身の上に搭載されているチューブマガジンと砲身をさらに延長したため、6発も強力なグレネード弾が連射できるようにカスタマイズされている。あとは折り畳み式の銃床をAN-94の銃床に変更した事くらいだろうか。それ以外は一切カスタマイズはしていない。
『まもなくブレスト要塞です』
操縦士からの報告を聞き、すぐに兵員室のハッチを開けて降下する準備を始める。他のスーパーハインドやカサートカのハッチも開き、兵員室に乗り込んでいる兵士たちがこっちに向かって手を振り始めた。
俺も手を振りつつ、ブレスト要塞の状況を確認する。
どうやら守備隊は善戦しているらしい。魔物たちは要塞へと接近しているものの、守備隊の奮戦のせいでなかなか前に進む事ができず、砂漠の真っ只中に釘付けにされている状態だ。
そして空では―――――――砂塵のせいでよく見えないが、出撃したと思われる航空部隊がドラゴンたちを血祭りにあげているところだった。
「早く行かないと、俺たちの出番がなくなっちまうな」
「それは嫌ですわね」
せっかく出撃したんだから、暴れてから帰ろう。
やがてヘリが要塞の防壁の内側でホバリングを始める。他のヘリへと合図を送った俺は、降下する準備を終えた兵士たちに命令を下す。
「降下開始!」
「
さて、暴れようか。
戦果をあげないまま帰るのは嫌だからな。