異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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機銃掃射

 

 目の前で生じた小さな火柱が、太い尻尾を振り回して毒液を噴射しようとしていたデッドアンタレスの外殻を容易く叩き割った。毒々しい赤と紫の迷彩模様を思わせる外殻が砕け散り、桜色の肉と体液が四散する。

 

 背中を叩き割られ、痙攣すらしなくなったデッドアンタレスの死体を盾にして銃撃を叩き込む兵士たち。俺も今しがたデッドアンタレスに止めを刺したグレネードランチャーから空の薬莢を取り出し、砲口から新しい40mmグレネード弾を装填する。

 

 ブレスト要塞へと到達する直前で拮抗していた戦いは、段々と変わりつつあった。

 

 もちろん有利になりつつあるのは、テンプル騎士団の方である。

 

 セレクターレバーを3点バーストに切り替え、デッドアンタレスの死体の影から別のデッドアンタレスを狙撃する。隣ではステラが死体の影から身を乗り出しつつ、ドラムマガジンを装備したRPK-12で弾幕を張っているところだった。

 

 巨大化したサソリの顔面に、巨大な人間の髑髏を取り付けたかのような不気味な魔物の外殻に亀裂が入る。3発の7.62mm弾が被弾したデッドアンタレスは咆哮を上げ、尻尾の先端部から伸びる太いレイピアのような針から毒液を噴射しようとしたが―――――――それが針の先端部から吐き出されるよりも先に、何の前触れもなくデッドアンタレスの胴体が消失することになった。

 

 正確に言うならば、”粉砕された”。

 

 そう、堅牢な外殻を身につけているにも拘らず、それもろとも肉体を粉砕できるほどの運動エネルギーを持つ1発の弾丸によって、粉々にされてしまったのである。

 

 ちらりと後方を見てみると、やけに太い銃身を持つライフルを装備し、バイボットとモノポッドを展開して砂の上に伏せている狙撃手が見えた。装備しているのはアンチマテリアルライフルだが、もっと近くで目にすれば明らかにそれが普通のアンチマテリアルライフルではないという事が分かるだろう。

 

 12.7mm弾ではなく、対空機関砲などが使用する23mm弾を発射できるように改良されたゲパードM1だ。その射程距離と破壊力は、既存のアンチマテリアルライフルを大きく凌ぐ。

 

 そしてそれを持つのは―――――――テンプル騎士団が誇る最強の狙撃手(ラウラ)である。

 

 グリップを左へと捻ってから引き、内部に残っている巨大な薬莢を排出するラウラ。銃身の脇に装着されたホルダーの中から予備のでっかい弾丸を引き抜き、それを装填。グリップを押し戻し、今度は右に捻ってから装填を終える。

 

 ゲパードM1は、他のアンチマテリアルライフルと違ってマガジンを持たない。そのため1発発射したらあのように再装填(リロード)が必要になるため、連射速度は他のアンチマテリアルライフルと比較すると劣ってしまう。

 

 しかし、”連射速度”が劣る代わりに命中精度は東側のアンチマテリアルライフルの中では最高峰と言っても過言ではない。

 

 12.7mm弾から23mm弾に変更した際に、命中精度に影響が出ないように銃身も延長しているため、彼女の得物の銃身は2mにまで伸びてしまっている。もちろん重量も増加しており、普通の兵士ではそれを装備して走り回るのは難しいほどの重量を持つ得物と化してしまっているが、キメラであるラウラは”その程度”の重量で音をあげることはない。

 

 ちなみに、以前までであれば銃と一緒に”再装填(リロード)3回分”の弾薬やマガジンが支給される仕組みになっていた。そのためゲパードM1のような単発型のライフルでは、最初に装填されている分も含めてたった4発しか弾丸が支給されていなかったのである。スキルで再装填(リロード)5回分まで増やすことはできたものの、そのスキルを使ったとしても発射できる弾丸はたった6発しかなかった。

 

 だが、一ヵ月前に行われたこの能力のアップデートにより、単発型のライフルでも20発の弾薬が一緒に支給されるようになった。その代わりこの弾数はスキルで増やすことはできないらしいが、弾数が増えてくれたのは非常にありがたい。

 

 彼女とは別の位置から、今回の作戦に数名だけ同行してくれた狙撃手部隊の兵士たちが狙撃を開始する。動き回るデッドアンタレスの尻尾を狙撃して毒液攻撃を封じたり、要塞へと肉薄しようとしている敵を最優先で狙撃してくれているため、そちらまで気を配りながら戦わなくて済みそうだ。

 

 優秀な教え子たちだな。

 

「タクヤ、無事!?」

 

「当たり前だ!」

 

 AK-12のフルオート射撃で応戦する俺の隣へと隠れて聞いてきたのは、同じくAK-12を手にしたナタリアだ。最近の彼女は戦車に乗っている事の方が多かったからなのか、こうして制服をしっかりと身に纏ってAK-12を手にしている彼女を久しぶりに見たような気がする。

 

 ナタリアのAK-12は、フォアグリップやホロサイトなどの扱い易い装備が搭載されている。俺のグレネードランチャー付きのAK-12やカノンのSVK-12のように狙撃に特化しているわけではないものの、中距離の敵にも対処できるし、銃身もやや短くなっているため、そのまま室内戦へと投入できそうだ。

 

 彼女が好むのはこういうオーソドックスな得物らしい。

 

「カノン、聞こえるか? 現在位置は?」

 

『お兄様から見て4時方向。ゴーレムの死体の後ろですわ』

 

 応戦しつつそちらをちらりと見てみると、死体の上でバイボットを展開してスコープを覗き込み、セミオートマチック式のマークスマンライフルとは思えないほどの速度で敵を狙撃しているカノンの姿が見える。

 

 いくら連射の利くセミオートマチック式とはいえ、当たり前だが狙いを定める必要がある。しかしカノンは全く狙いを定めずにぶっ放しているようにも思えるほどの速さで、正確に魔物たちを狙撃していた。

 

 彼女の母親であるカレンさんは、モリガンの傭兵の1人だ。若い頃から中距離からの狙撃や砲撃が得意だったらしく、あの親父に『カレンはまるで早撃ちしながら狙撃しているようだ』と言われるほど、素早さと精密さを兼ね備えた射撃で彼らを支援したという。

 

 カノンの中距離狙撃は、母親の才能を立派に受け継いでいると言えた。

 

 マズルフラッシュが消えたと思いきや、すぐに次のマズルフラッシュが産声を上げているほどの素早さである。傍から見れば本当に当たっているのか不安になってしまうかもしれないが、彼女の覗き込むスコープのレティクルの向こうでは頭や心臓を正確に撃ち抜かれたゴブリンやゴーレムが次々に崩れ落ちており、砂漠の砂が死体で覆われてしまっている。

 

 あっという間に空になったマガジンを取り外すカノン。次のマガジンを装着し、コッキングレバーを引く。

 

 彼女の後ろでは、イリナが迫撃砲の準備をしているところだった。一見すると通常の迫撃砲よりも小型の代物にも見えるが、よく見ると迫撃砲の下部にある底盤がスコップの先端部になっているのが分かる。

 

 そう、あれは元々スコップだったのだ。

 

 第二次世界大戦の勃発前に、ロシアで迫撃砲を内蔵したかなり変わったスコップが開発されており、正式採用されている。イリナが持っているのはそれを改良した代物なのだ。

 

 爆発する武器ばかりを好んで使う彼女の接近戦用の得物も、ちゃんと爆発する得物だったのである。

 

 何であの子はあんなに爆発にこだわるんだろうね? あとでウラルに聞いてみるとしよう。

 

『迫撃砲、準備完了!』

 

「よーし…………」

 

 フルオート射撃でゴブリンの群れを薙ぎ倒すナタリアの隣で、俺は双眼鏡を覗き込む。

 

 もう既に、要塞へと押し寄せた魔物の群れは総崩れとなりつつあった。中にはこのまま戦いを続ければ全滅するという事を悟ったのか、突撃していく仲間や他の魔物とは逆方向へと向かって逃げ出していくゴブリンや、背を向けた直後にラウラに狙撃され、上半身が四散するゴーレムが見える。

 

 勝負は決まったな。消耗戦になるのを恐れていたんだが、このまま続けているだけで勝てそうだ。

 

 とはいえ、魔物共を逃がすつもりはない。殲滅できるならばここで殲滅してしまった方が理想的だし、フランセンにも貸しを作れる。

 

 味方の守備隊も奮戦している。じりじりと前進を始めたT-90やT-72B3の群れが立て続けに多目的対戦車榴弾(HEAT-MP)を放ち、ゴーレムの上半身を捥ぎ取っていく。

 

「イリナ、逃げていく魔物共の退路を塞げ。砲撃開始(アゴーニ)」

 

『了解(ダー)、発射(アゴーニ)!』

 

 魔物共は、逃がさない。

 

 ここで殲滅する。

 

 イリナの迫撃砲で魔物たちの退路を塞ぎ、歩兵部隊と戦車部隊の攻撃で一気に決める。もし相手が人間の兵士たちだったらとっくに銃剣突撃で白兵戦を始めているところだが、接近戦になれば他の兵士たちが一気に不利になる。それゆえに、このまま銃撃で仕留めるのが理想的だ。

 

「ステラ、いい事を教えてやろうか」

 

「なんですか?」

 

 AK-12のマガジンを交換しつつ、俺はステラの頭を優しく撫でた。

 

 彼女の髪って、なんだかふわふわしてるなぁ…………。

 

「ゴブリンとかゴーレムの肉は不味いが、デッドアンタレスの肉は絶品だぞ?」

 

「…………ほっ、本当ですかっ!?」

 

「え? あれって毒あるんじゃないの?」

 

 顔をしかめながら聞いてくるナタリアに向かってニヤリと笑うと、彼女はさっさと教えなさいよと言わんばかりにそのまま首を傾げる。

 

 ふっふっふ、幼少の頃から魔物の図鑑を読んで育ったからな。魔物の習性とか生態には詳しいのさ!

 

「実はな、デッドアンタレスの毒って熱に弱いんだ」

 

「砂漠に住んでるのに?」

 

「そう。100℃以上の熱で加熱すると毒は分解されちまうんだよ。あの外殻は熱を遮断するために発達したんだ。元々は寒冷地に住んでた魔物だったんだが、別の魔物に追いやられて砂漠に住みつき、あんな姿に進化したってわけだ」

 

「へぇ…………アンタっていつもふざけてるけど、色々と知ってるのね」

 

「勉強しましたからね」

 

「つ、つ、つまり、あのサソリのお肉は焼いたら美味しい上に無害ということですかっ!?」

 

「そういうこと。だからこの戦いが終わったらお肉食べ放題だぞぉ?」

 

 射撃を続けつつ目を輝かせるステラ。調理されたデッドアンタレスの肉が目の前に並んでいる光景を想像したのか、いつも俺やラウラから魔力を吸収していく小さな可愛らしい唇から、段々とよだれが溢れ始める。

 

 あ、そういえばゴーレムの腸をソーセージの皮に使うと歯応えがあるってケーターが言ってたな。ゴーレムもいるみたいだし、せっかくだから試してみるか。

 

 ステラとナタリアにそういう話をしている間に、イリナの砲撃が逃げていく魔物たちの頭上へと降り注ぎ始めた。いきなり目の前に生じた火柱に怯える魔物たちが立ち止まり、そのまま混乱を始めてしまう。

 

「あっ、あまりサソリを吹っ飛ばさないでください! せっかくのお肉が…………!!」

 

「し、心配し過ぎだろ…………」

 

 あくまで目的はこいつらの殲滅だからな?

 

 肉が美味しいって言わなきゃよかったかも…………。

 

 セレクターレバーをセミオートに切り替え、ブースターとホロサイトを覗き込む。敵との距離も遠くなりつつあるので、3点バーストやフルオートではなく、セミオートでの狙撃の方が効率がいい。

 

 これ以上距離が遠くなるのであれば、俺たちも距離を詰めよう。

 

 そう思いながらデッドアンタレスの死体の影から身を乗り出したその時だった。

 

「…………?」

 

 そういえば、空がやけに静かだ。先ほどまでは砂塵が舞う空の向こうで航空機のエンジン音とドラゴンたちの方向が轟き、時折蜂の巣にされたドラゴンたちの無残な死体が砂漠へと落下してきたというのに、今ではもう死体が落ちてくる気配はない。

 

 どうやら空での戦いは決着がついたようだ。戦闘機の残骸が1機も落ちてこないということは、こちらの勝利か。

 

「ブレスト要塞指令室、聞こえるか?」

 

『はい、聞こえます。どうぞ』

 

「航空部隊に、余裕があったら機銃掃射でも構わんから支援を頼むと伝えてくれ」

 

『…………航空部隊? 同志、航空部隊は出撃してませんよ?』

 

「…………なに?」

 

 じゃあ、あのドラゴン共は一体誰が仕留めた…………?

 

 ラウラの狙撃かと思ったが、彼女の狙撃ならばあんなに蜂の巣にはならないだろう。ラウラの場合は”蜂の巣にする”というよりは、弱点を大口径の弾丸で正確に撃ち抜き、”木っ端微塵にする”ような戦い方をする。

 

 それに、確かブレスト要塞にはまだ対空砲は装備されておらず、レーダーサイトも稼働していない。あのようにドラゴンを蜂の巣にして殺すことは不可能だ。

 

 では、誰がやったのか。

 

 本当に誰も出撃していないのかと問い詰めようとしたその時、まるで要塞のオペレーターの代わりに答えようとしたかのように、エンジンの音が段々と地上へと近づき始めた。

 

 やはり航空機だったらしい。しかし、そのエンジン音には違和感を感じる。

 

 明らかにジェット機の豪快で甲高いエンジン音ではないのだ。まるで第二次世界大戦で活躍したような、古めかしいプロペラ機のようなエンジン音なのである。

 

 待て、ブレスト要塞に配備していたのはSu-27やSu-35じゃなかったか? プロペラ機なんて配備した覚えがないぞ?

 

「タクヤ、あれ―――――――」

 

「―――――――!」

 

 やがてドラゴンたちを殲滅し、空を支配した存在が、空を覆ってしまおうとする貪欲な砂塵を豪快に突き破って地上へと君臨する。

 

 すらりとした胴体と主翼。機体の後端にジェットエンジンらしき部位は見当たらず、その代わりに機体の先端部では、巨大なプロペラが凄まじい勢いで回転を続けている。そのプロペラの軸は銃口のように穴が開いており、軸が砲身となっている”モーターカノン”であることが分かる。

 

 ロシアの『ラヴォーチキンLaGG-3』かと思ったが、キャノピーの形状や胴体に描かれている鉄十字で、すぐにその機体の正体を見破った。

 

 あれは第二次世界大戦でドイツが使用した、『メッサーシュミットBf109』だ。凄まじい速度を誇る戦闘機で、連合国の戦闘機を苦しめたと言われている。

 

 さすがに現代の戦闘機には歯が立たないだろうが、ドラゴンが相手ならば勝負は決まっている。ドラゴンの機動性は第二次世界大戦中の戦闘機と同等で、加速力などでは大きく劣る。だからドッグファイトではなく一撃離脱戦法になった時点で、ドラゴンに勝ち目はないのである。

 

「なんでメッサーシュミットが…………?」

 

 当たり前だが、ブレスト要塞にメッサーシュミットBf109を配備した覚えはない。もしかしてクランがこっそりと配備していたのか? だが、前に視察に来た時にはメッサーシュミットは1機もなかったぞ…………?

 

 ということは、転生者が…………!?

 

 こちらに機銃掃射しに来たら叩き落すつもりだったが―――――――砂塵の舞う空から舞い降りた鋼鉄の猛禽が矛先を向けたのは、魔物を迎え撃つ兵士たちではなく、逃げようとする魔物の群れだった。

 

 高度を落としつつ減速し、機首を逃げていく魔物の群れの先頭へと向ける。そして機種に搭載された2門の7.92mm機銃とモーターカノンの掃射をプレゼントし、すぐに高度を上げて上空へと退避していった。

 

 もちろん、そんな大口径の機銃で掃射された魔物の群れがただで済むわけがない。7.92mm機銃で風穴を開けられたやつらはまだ原形を留めているものの、運悪くモーターカノンに被弾してしまった魔物は、まるで肉屋で売られているミンチのように木っ端微塵にされてしまっている。

 

「ああ、お肉が!」

 

「ステラ、あれは諦めろ…………」

 

 あんなにぐちゃぐちゃになったら食えないよ…………。

 

 減速しつつ旋回し、再び機首を魔物へと向けるメッサーシュミット。どうやらまだ機銃の弾丸は残っているらしく、弾切れになるまで機銃掃射で支援してくれるらしい。

 

 支援してくれるのはありがたいが、本当に味方なのだろうか。どさくさに紛れてこっちに牙を剥いたりしないだろうな。

 

 再び高度を落とし、魔物の群れへと機銃掃射。機銃やモーターカノンの弾丸を喰らった魔物たちが血飛沫を上げ、バラバラになっていく。

 

「ああっ…………お肉ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!」

 

 俺たちから見たら勝利へと近づいている光景だが、食いしん坊のステラから見ればご馳走を奪われているにも等しい光景に違いない。

 

 終わったら、まだ調理できそうな肉を探して食べさせてあげよう…………。

 

 今のうちに調理できそうなデッドアンタレスの死体を探しながら、俺たちは魔物たちが全滅するまで、その豪快な機銃掃射を眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 ご先祖様はなにをやってたの?

 

クラン「そういえば、ドラゴン(ドラッヘ)のご先祖様って何かやってたの? 私のご先祖様は第一次世界大戦で戦車に乗ってたけど」

 

タクヤ「あー、確か日露戦争の頃に―――――――」

 

クラン「日露戦争…………あー、日本海海戦のあった戦争ね!? まさか、あの海戦で活躍したとか!?」

 

タクヤ「―――――――いや、田舎で酪農やってたってさ」

 

ケーター「戦争行ってないのかよ!?」

 

タクヤ「牛舎で牛と戦争してたみたい」

 

木村「なるほど、酪農家の子孫は異世界で牛ではなくおっぱいの大きな姉の―――――――」

 

タクヤ「あぁ…………ッ!?」

 

 完

 

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