異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ネイリンゲン突入

 

 ヘリの兵員室にある窓の外に広がる筈の草原は、降り注いだ大量の砂塵によって黄土色に染め上げられており、まるでカルガニスタンの砂漠へ逆戻りしてしまったのではないかと思ってしまうような光景となって、久しぶりに生まれ故郷へと飛ぶ俺たちを待ち受けていた。

 

 かつては魔物もそれほど生息しておらず、しばらくは開放的な草原が広がっていた筈の大地は、気候の変化で大幅に変わり果てており、草原というよりは”荒地”のようになってしまっている。

 

 大地を覆いつくしていた緑色の草や花たちの大半は砂塵に埋まってしまったが、それでも比較的背丈の高かった花や草たちは、粉塵を突き破って花弁や葉を外へと突き出し、必死に光合成を続けている。

 

『ここまでです。降下します』

 

「了解」

 

 操縦を担当するステラの声を聴きながら、窓からヘリの進行方向を見据える。

 

 荒れていたのは、大地だけではない。大量の砂塵を巻き上げ、戦車並みの重量を誇るトロールですら呆気なく吹っ飛ばしてしまうほどの猛烈な気流は、青空すら黄土色に染め上げていた。まるでネイリンゲンへと入り込もうとする冒険者たちを拒もうとしているかのように、巨大な竜巻のような気流が大地と大空に鎮座して、砂塵を巻き上げ続けている。

 

 あの猛烈な気流を、テンプル騎士団では”大気流”と呼称することにしている。

 

 大気流がどうしてこのネイリンゲンを襲っているかは不明だが、南方のラトーニウス上空から吹いてくる気流に他の気流が合流したことで、このような猛烈な気流を形成してしまったのではないだろうか。

 

 もしくは、あそこに眠っている筈のメサイアの天秤が、3つの鍵を手に入れた者が現れたことを”察知”し、目を覚ましかけているのかもしれない。

 

 後者の仮説はあまり考えられないかもしれないが、向こうは大昔の錬金術師が神秘の力を使って生み出した伝説の天秤である。

 

「シュタージ、レーダーに反応は?」

 

『今のところは反応なし』

 

「了解(ダー)、何か発見したら、すぐに連絡をくれ」

 

『了解(ダー)』

 

 幸い、現時点ではモリガン・カンパニーと吸血鬼共に動きはないようだ。

 

 これは天秤の争奪戦。吸血鬼たちも”レリエル・クロフォードを復活させる”という願いのために天秤を欲しているし、親父も何らかの願いを叶えるために天秤を手に入れようとしている。今のところ天秤を手に入れられる確率が一番高いのは間違いなくテンプル騎士団だが、鍵を他人に奪われれば一気に優位性は消え失せる。

 

 吸血鬼はあのヴリシアの戦いで大きな損害を被っている。今すぐに鍵を奪い返すために攻勢に出るのはほぼ不可能だろう。一番警戒するべきなのは、やはりあの戦いで損害を被っても、すぐに部隊の再編成ができるほどの規模を誇るモリガン・カンパニーだ。

 

 世界中に拠点を持つ上に、数多くの実力者が所属する超巨大企業。しかも上層部にいるのはあのモリガンの傭兵たち。”物量”と”質”を兼ね備えた、とんでもない連中だ。

 

 モリガン・カンパニーとは同盟関係にあるが、あくまでも向こうは天秤を手に入れようとする”競争相手”に過ぎない。いつ同盟が破棄されるか分からないため、もう敵と判断するべきだろう。

 

 俺たちを乗せたカサートカが、ゆっくりと荒地に降り立つ。兵員室のハッチを開けると同時に、猛烈なメインローターの音が兵員室の中を満たし、砂塵を含んだ風が中へと入り込んでくる。ネイリンゲンを襲っている大気流が原因だが、砂漠の砂嵐と殆ど変わらない。

 

 ちなみに今の時刻は午後2時。吸血鬼のイリナは、普段ならば棺桶の中で変な寝言を発しながら爆睡している時間である。

 

 けれども、幸運なことに舞い上がる砂塵のおかげで太陽は隠れており、空を見上げてみても太陽はいつものようにはっきりとは見えない。全く見えないわけではないが、分厚い雲に隠れている状態に近いだろうか。

 

 これくらいなら、吸血鬼も影響は受けないだろう。

 

「イリナ、体調は?」

 

「絶好調♪ もう毎日こんな天気でいいと思うなっ♪」

 

 いや、そんなことになったら農家の皆さんが困るだろ。

 

 ニコニコしながら背伸びをする彼女を見て苦笑いしつつ、ヘリから全員降りたか確認し、着陸したカサートカを装備している兵器の中から解除する。砂塵の中でも目立つ漆黒の汎用ヘリが唐突に消失し、着陸した痕跡をすぐに暴風と砂塵が消し去ってしまう。

 

 一応ここは、まだあのトロールを吹っ飛ばしてしまう大気流の範囲外。屋敷に例えると”塀の外”だ。なのにこの風の強さは、カルガニスタンでも頻繁に遭遇する中規模の砂嵐にも匹敵する。

 

 左手を目の前に突き出し、いつもの蒼白いメニュー画面を開く。生産した兵器の中からまず戦車を選択し、あの大気流に耐えるために生産したオブイェークト279をタッチする。

 

 すると荒れ果てた草原の真っ只中に、何の前触れもなく4列のキャタピラと楕円形の車体を持つ重戦車が姿を現した。アメリカやロシアが配備する最新の戦車とは明らかに違う、古めかしい上に特異な形状の車体。テンプル騎士団で採用しているチョールヌイ・オリョールと同じように、生れ落ちることなく消えていったソ連の重戦車が、ついに異世界の大地を突き進むのだ。

 

 操縦士を担当するのはステラ。砲手を担当するのはカノンで、装填手は自動装填装置を搭載しているため不要である。車長はイリナが担当し、実際にネイリンゲンで戦車から降りて調査するのは俺、ラウラ、ナタリアの3人となる。

 

 意気揚々と戦車に乗り込み、操縦士の座席に腰を下ろすステラ。出発前にほんの少しだけ試運転をしたので、操縦方法を説明する必要はないだろう。

 

 ちなみに試運転の際、タンプル搭へと帰還したT-72B3と訓練を兼ねてレースをした。もちろんT-72B3には完敗してしまったものの、このオブイェークト279も重戦車とは思えない優秀な機動性を発揮していた。

 

 さすがに防御力は複合装甲を装備した新型戦車と比べれば劣ってしまうだろう。もちろん、APFSDSのような砲弾を叩き込まれればひとたまりもない。だが、少なくともトロールに踏みつぶされない限り、魔物の攻撃で撃破されたり擱座することはない筈だ。

 

 カノンが砲手の座席に座り、照準器のチェックを開始する。イリナが車長の席に座る前に、俺とナタリアとラウラの3人が砲塔の中へと乗り込み、最後にイリナが乗り込んでからハッチを閉める。

 

 とりあえず全員乗り込んだのだが…………こいつは装甲車ではなく”戦車”。兵士を乗せて移動する装甲車とは違い、分厚い装甲と強力な戦車砲を搭載する戦車である。そのため歩兵も乗り込むことが可能で、戦車砲のようなでっかい武装を搭載する必要のない装甲車と比べると、より攻撃力と防御力に特化した戦車が狭くなるのは当たり前だ。

 

 しかし―――――――ソ連製の戦車の中は、西側の戦車と比べると更に狭い。乗組員だけが乗り込んだ状態でも狭いというのに、そこに調査に向かう3名の兵士が乗り込めば、とんでもないことになる。

 

「せ、狭…………っ!」

 

「お、おい、ラウラ、もうちょっとそっちに行けない?」

 

「えへへへっ、タクヤと密着だねっ♪」

 

 イリナの座る座席のすぐ近くに乗り込んだんだが、やっぱり砲塔の中は狭い。俺の左肩にはナタリアの肩と髪が当たっており、右側に座るラウラは微笑みながらしがみついてくる。

 

 ねえ、お願いだからもう少しそっちに行ってくれないかな?

 

「ラウラ、そっち空いてるでしょ? くっついてていいからさ」

 

「はーい」

 

 まったく、甘えん坊だなぁ。

 

 壁の方へとラウラが移動してくれたおかげで少しはマシになった。相変わらず狭いけどね。

 

 というわけで、俺も壁の方に移動する。さっきまでぶつかっていたナタリアの肩が離れた瞬間、ナタリアはどういうわけかこっちを見ながら寂しそうな顔をした。

 

 ん? なんで寂しそうな顔してるの?

 

「ナタリア?」

 

「な、なによ」

 

「こっちに来いよ。狭いだろ?」

 

「…………い、いいの?」

 

「当たり前だろ?」

 

 寂しそうな顔をしていたナタリアはちょっとだけ微笑むと、砲塔の天井に頭をぶつけないように気を付けながら、俺のすぐ隣までやってきた。

 

 なんだか、顔が赤くなってるぞ…………?

 

「な、ナタリア?」

 

「何?」

 

「いや…………すまん、何でもない」

 

 何なんだ?

 

 困惑しながら肩をすくめると、隣にやってきたナタリアはわざとらしく頭にかぶっている規格帽をかぶり直してから―――――――まるでラウラが甘えてくるかのように、左腕にしがみついてきた!

 

「ふぁんとむっ!?」

 

「な、何よ!? 嫌なの!?」

 

「い、いえ、是非そのままでお願いします!」

 

 な、何が起きた!? いつものナタリアだったら、2人きりの時以外はあまり甘えてこないよな!?

 

「え、ええと…………出発してもいいよね?」

 

「あ、ああ、頼むわ」

 

 どうしたんだろうか…………。

 

 またしても困惑しながら砲塔の壁に背中を押し付けて息を吐くと、車体の後部からエンジンが動き出す大きな音が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『HQ(ヘッドクォーター)より”ゴライアス”へ』

 

「こちらゴライアス、どうぞ」

 

 車長の席に腰を下ろし、時折ペリスコープやキューポラから外の様子を確認していたイリナが、傍らの無線機へと返事を返す。今しがた通信を送ってきたのはシュタージのメンバーだろうか。

 

 この作戦では、シュタージがネイリンゲンの東西南北に無人型のドローンを展開し、大気流の様子を常に観測している。どうやらこの大気流は常に吹き荒れているわけではなく、トロールたちを吹き飛ばすほどの勢いになったり、砂漠の小規模な砂嵐程度の風に変化しているらしい。

 

 そこで、東西南北に展開したドローンで大気流の動きを観測し、気流の勢いが弱まるタイミングで調査を担当する3人が降車。ネイリンゲンに眠っていると思われる天秤を手に入れるという作戦である。

 

『まもなく、大気流が”レベル5”に達する。風圧に注意を』

 

「了解(ダー)」

 

 大気流の強さには、1から5までレベルを付けた。

 

 レベル1が砂漠の小規模な砂嵐程度。レベル2で中規模な砂嵐となり、レベル3で大規模な砂嵐となる。レベル4は大型の竜巻と同程度となり、レベル5になると核爆発によって生じる衝撃波や、猛烈な爆風に匹敵するというわけだ。

 

 いきなりレベル5か…………。

 

『予測では、このレベル5通過後に急激に勢いが弱まり、しばらくは1から2程度の風圧が維持されると予測される』

 

「歓迎されてるねぇ」

 

「ネイリンゲン出身が3人もいるからな。…………無線機を」

 

「はいはーい」

 

 イリナから無線機のマイクを受け取り、HQ(ヘッドクォーター)へと連絡する。

 

「HQ(ヘッドクォーター)、モリガン・カンパニー側に動きは?」

 

『現時点では確認できず―――――――いや、たったいま情報が入った』

 

「なに………………?」

 

 動きがあった…………!?

 

 くそ、向こうの諜報部隊も優秀だな。こっちがネイリンゲンに向かったことを嗅ぎつけたか…………!

 

『…………くそ、ラトーニウス海に展開していたモリガンカンパニーの空母と強襲揚陸艦が動いた。空母から艦載機が飛び立つ気配はないが、いつ飛び立つか分からん。警戒せよ』

 

 空母ってことは、キエフ級かアドミラル・クズネツォフ級だな…………。テンプル騎士団でも少数だけだが運用している艦だ。しかし、モリガン・カンパニーは数えきれないほどの数の空母を運用している。あのヴリシアの戦いで海を埋め尽くした大艦隊も、あくまでも”氷山の一角”でしかないのだ。

 

 おそらく強襲揚陸艦の方は、フランス製のミストラル級に違いない。

 

 くそったれ、いつ同盟破棄を通告してくるか分からんな。

 

「了解だ。動きがあったら連絡を」

 

『了解(ダー)、幸運を祈る』

 

「…………お兄様、何かありましたの?」

 

「―――――――モリガン・カンパニーが、動いた」

 

「…………!」

 

 どうやらもう察知されてしまったらしいな。いつ同盟関係を破棄されてもおかしくはない。

 

 強襲揚陸艦があるという事は、上陸部隊を乗せている可能性が高いな。幸いオルトバルカは内陸国だから海から上陸したとしても、上陸部隊が到達するには1時間か2時間はかかる。

 

 空母から艦載機が飛び立ったのならば話は別だが、今のところ艦載機が発進した様子はないという。

 

 冷静に考えている間に、装甲の向こうから聞こえてくる風の音が一気に大きくなった気がした。楕円形の装甲の表面を掠め、次々に後方へと受け流されていく砂塵たちの勢いが一気に増し、4列のキャタピラで支えられた車体が大きく揺れる。

 

「―――――――レベル5のお出迎えね」

 

 大人びた口調になったラウラが、俺の肩にしがみつきながら呟いた。

 

 大気流の中へと、ついに突入したのだ。このレベル5の暴風はそれほど長続きはしない筈だが、それまでにネイリンゲンの市街地に辿り着けるだろうか。

 

「ステラ、今の速度は?」

 

「最大です」

 

「了解(ダー)。カノン、何か見えるか?」

 

「ええと…………あれは…………馬小屋ですわね」

 

「馬小屋…………?」

 

 狭い砲塔の中で立ち上がり、車長の席にあるペリスコープを覗き込む。

 

 一時的とはいえ、核爆発に匹敵する暴風で舞い上がった砂塵はやはり凄まじい。いや、もう砂塵というよりは、舞い上がった土や木片で構成される壁が常に目の前に立ちはだかっているようにしか見えない。稀にこの暴風に耐えられなかったゴブリンの変異種らしき魔物やトロールが、悲鳴のような咆哮を上げながら吹っ飛ばされていくのが見える。

 

 ゴン、と、吹っ飛ばされてきたゴブリンが砲塔に激突していった。砲弾を跳ね返すためにこれでもかというほど分厚くされた装甲に頭を叩き割られたらしく、後頭部から鮮血を吹き出し、割れた頭蓋骨を覗かせながら、血まみれのゴブリンが後方へと吹っ飛ばされていく。

 

 イリナに見せなくて正解だったな…………。

 

 すると、確かに馬小屋らしき建物も見えた。これほどの暴風の中でよく原形を留めていられるなと思いつつ、今どこを走っているのか確認するために周囲を見渡して―――――――懐かしい建物を発見する。

 

 今から15年前に起こった惨劇の時から、ずっとその状態で取り残された屋敷。半壊した後もこの大気流で少しずつ削られ続け、今ではすっかり残骸の一部と化しつつあるが―――――――最強の傭兵たちのかつての拠点は、ずっとそこで待っていた。

 

 かつての主人たちが、再び戻ってくる日を。

 

 誰かがこの荒れ果てた街を、訪れる日を。

 

「……………………旧モリガン本部前、通過」

 

 21年前にタイムスリップした時と比べると、当たり前だが無残な姿になっている。

 

 キッチンがあった辺りは完全に倒壊し、いたるところのレンガが剥がれ落ちている。暴風の中にさらけ出された廊下や寝室は砂塵まみれになっており、かつて親父たちが寝室に使っていた部屋も滅茶苦茶になっていた。

 

 モリガン本部があった場所はネイリンゲンの郊外。とはいえ、ここを少し進んで丘を越えれば、もうネイリンゲン市街地に到着する。

 

『風圧レベル低下中…………現在3』

 

「了解」

 

 レベル3なら降りて調査もできそうだな。

 

 今のうちに市街地を目指そう。

 

 ペリスコープから目を離し、さっきまで座ってたところに戻ろうとする。すると後ろに座っていたイリナが、顔を赤くしながらニヤニヤと笑っていた。

 

「どうした?」

 

「ふふっ、タクヤっていい匂いするよね♪」

 

「は?」

 

「さっきまで近かったから」

 

 あ、ペリスコープ覗いてた時か…………。

 

「それにね、そ、その…………僕の胸、触ったよね?」

 

「え?」

 

「肘で」

 

 ご、ごめんなさい。確かに右の肘で柔らかい何かをつついてしまった覚えはあります。てっきりイリナのお腹だと思ってたんです。ええと、わざとではないんですよイリナさん。

 

 恐る恐る後ろを見てみると、「積極的なのねぇ♪」と言いながら微笑むラウラの隣で、ナタリアがこっちを睨みつけていた…………。

 

 ヤバい、制裁される。

 

「すいませんでした」

 

「へへへっ。もっと触ってもいいのに」

 

「マジで?」

 

「部屋に戻ったらね♪」

 

「ちょ、ちょっとイリナちゃん!?」

 

 おいおい、調査前だぞぉ…………?

 

 苦笑いしながら腰を下ろし、腰のホルスターに入っているPP-2000をチェックし始める。ナタリアは俺の事を問い詰めるつもりだったらしいが、得物の点検を始めたのを見た彼女もそれを後回しにしようと思ったらしく、同じように点検を始めた。

 

 今回の武装はメインアームがPP-2000。搭載してあるのはオープンタイプのドットサイト、ライト、サプレッサーの3つ。サイドアームはPL-14で、こちらも同じくドットサイト、ライト、サプレッサーの3つだ。

 

 それと、もしトロールと鉢合わせになってしまっても対処できるように、1人につき2つずつC4爆弾と対戦車手榴弾を支給してある。

 

「よし、準備完了」

 

「こっちもよ、変態団長」

 

「ナタリア!?」

 

「ふんっ」

 

 ああ、怒っちゃった…………?

 

 ナタリアは得物をチェックするふりをしながら、ちらりと自分の胸を見下ろした。イリナとくらべるとやや小さいけれど、ナタリアの胸もなかなか大きいし…………美しいです。

 

 そしてイリナの胸をちらりと見てから顔を赤くした彼女と、ナタリアの胸を見てから顔を上げた俺の目が合ってしまう。

 

「「あっ」」

 

 ごめんなさい、ナタリアさん。数秒前まであなたの胸を見てました。

 

「…………ば、バカ」

 

「ごめんなさい」

 

「い、いいわよ別に………」

 

 許してくれたのかな?

 

「タクヤ、そろそろ市街地です」

 

「よし、そのまま市街地に突入。魔物に注意しろよ」

 

 いよいよ調査開始だな。

 

 この変わり果てた故郷のどこかに天秤が眠っている筈だ。なんとしてもその天秤は、俺たちが手に入れて願いを叶える。

 

 誰も虐げることのない、平穏な世界のために。

 

 

 




※F-4ファントムは、アメリカの戦闘機です。
※オブイェークト279のコールサイン『ゴライアス』の元ネタは、イギリス海軍が保有していた『カノーパス級戦艦』のうちの1隻『ゴライアス』より。有名なガリポリの戦いで、魚雷攻撃により撃沈されています。
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