異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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天秤の真相とリキヤの計画

 

 

「わ、私が――――――――ヴィクター・フランケンシュタインの助手の………子孫!?」

 

「ええ、ロイの家系はフリッツ・ブラスベルグの子孫なの」

 

 メサイアの天秤を作り上げたのはヴィクター・フランケンシュタイン氏と言われているが、正確に言えば、その伝説の天秤はヴィクター・フランケンシュタイン氏だけではなく、助手のフリッツ・ブラスベルグと2人で完成させたものだという。

 

 そして、俺たちが今まで一緒に旅をしてきたナタリア(しっかり者)が――――――――そのフリッツ・ブラスベルグの子孫だと聞いた瞬間、俺たちは目を見開いてエマさんの事を見つめていた。

 

「代々、ロイの家系の錬金術師たちは祖先が生み出した天秤の完全な封印方法を模索していた。けれども、ロイの祖父や父親も封印する方法を確立することができずに、一生を終えてしまったの…………」

 

「待って、どうして天秤を封印する必要があるの? あれは願いを叶える力を持っているんでしょ?」

 

 確かに、願いを叶える力がある天秤ならば、どうしてそれを使って願いを叶えようとしなかったのだろうか。普通ならば封印するのではなく、むしろ手に入れて自分の願いを叶えるために使う筈だ。なのに、ナタリアの父親や先祖たちはその天秤を完全に封印するための手段を探してきたという。

 

 ナタリアに問いかけられて息を吐くエマさんを見守りながら、俺は覚悟を決めようと思った。

 

 自分たちが手に入れようとしていた天秤が、御伽噺通りの”神秘の天秤”ではないという事を。仲間たちと共に天秤を手に入れるための冒険が、水泡に帰してしまう事を。

 

 優秀な魔術師であり、天秤を生み出した錬金術師の子孫が必死に封印しようとしている以上、もうメサイアの天秤は俺たちが欲していた”願いを叶えてくれる神秘の天秤”ではないという事は、明らかなのだから。

 

「―――――――確かに、メサイアの天秤には願いを叶える能力があるわ」

 

「では、どうして封印を?」

 

「…………願いを叶えるために、必要なものがあるからよ」

 

「必要なもの…………?」

 

 願いを叶えるには、何かの条件があるのか?

 

 願いを叶える能力があるのであれば、伝承通りだ。けれどもナタリアの父親が必死に封印するための方法を探していたという事は、間違いなくその”必要なもの”が問題なのだろう。

 

「あまりこういう例え話はしたくないのだけど…………例えば、タクヤ君にとってラウラちゃんとナタリアがどちらも同じくらい大切な人で、ラウラちゃんが何かの事故で死んでしまったとするわ」

 

「…………」

 

 確かに、そういう例え話はしてほしくはないな…………。

 

「タクヤ君は天秤を手に入れ、ラウラちゃんを生き返らせようとする。けれどもそのためには―――――――あなたがラウラちゃんと同じくらい愛している、ナタリアを生贄として天秤に捧げなければならない」

 

「―――――――は?」

 

 ―――――――ちょっと待て、どういうことだ?

 

 ぎょっとしながら、俺はエマさんを見つめていた。

 

 もし死んでしまったラウラを生き返らせるために天秤を使うためには、ナタリアを生贄にする必要がある…………?

 

「ど、どういうことです?」

 

「タクヤ君、アレはメサイアの”天秤”なのよ」

 

 そういうことか…………!

 

 メサイアの天秤は、そういう代物だったのか…………!

 

 やっとガルちゃんや親父が、メサイアの天秤を手に入れようとしている俺たちを止めようとしていた理由を理解した。確かにこれは俺たちが幼い頃に読んだ絵本や、伝承の中に登場するような神秘の天秤なんかじゃない。これは人の抱く願望を、それと同等の大きさの絶望へと変えてしまう恐ろしい代物だ。

 

 俺たちは、こんなものを求めようとしていたのか…………。

 

「え、どういうこと…………?」

 

 まだ理解できていなかったのか、隣にいるラウラが首を傾げながら尋ねてくる。

 

 あまり説明したくはないが―――――――説明するしかないだろう。

 

「つまり、天秤を使って願いを叶えるためには―――――――”その願いと同等の何かを対価にしなければならない”ってことだ…………!」

 

「「!!」」

 

 先ほどのエマさんの例え話はかなり気に食わなかったので、もっとまともで単純な例え話にしよう。

 

 かなり小さな願いになってしまうが、天秤に『金貨が100枚欲しい』という願いを叶えてもらうとしよう。天秤にその願いを叶えてもらうためには、そのための対価に金貨を100枚払わなければならないという事だ。

 

 つまり、『100枚の金貨を手に入れるために、100枚の金貨を支払う』。手に入れるものと同等のものを差し出さない限り、決して願いは叶わない―――――――。

 

 そう、メサイアの天秤で願いを叶えたとしても、プラマイゼロになってしまうのである。

 

「な、何よそれ…………そんなの、願いを叶える意味がないじゃないッ!」

 

「ああ、だから大昔のサキュバスたちは、天秤を見つけられても願いを叶えられなかったってわけだ」

 

 ステラが封印される前に、サキュバスたちは自分たちの滅亡を防ぐため、一族の中でも優秀な戦士たちをメサイアの天秤を手に入れるために旅立たせた。しかし、生還したのは4人の優秀な戦士たちの内の1人だけ。重傷を負って帰ってきたその生き残りは、絶命する前に『天秤を見つけた』と言い残したという。

 

 天秤を見つけたが、願いを叶えることはできなかった。

 

 彼女たちの願いは『サキュバスの再興』。滅びかけていたサキュバスの再興に、いったいどれだけの対価が必要になるのだろうか。当たり前だが、旅に出た4人の戦士たちが差し出せる対価ではなかったという事だ。

 

 それゆえにサキュバスたちは種族を再興することができず、封印されていたステラを覗いて絶滅することになったのか…………。

 

「なんてことなの…………。私たちは、何のために旅を…………」

 

「悪い事は言わないわ、3人とも。もう天秤を求めるのは止めなさい。…………あんなものを使っても、何も得られないのだから」

 

「…………」

 

 つまり、人々が虐げられることのない平和な世界を作ることは不可能だという事か…………。

 

 いや、それは天秤が無くても、このままテンプル騎士団の軍拡を進めて行けば実現できるかもしれない。それが実現する頃には間違いなく俺たちの子孫の時代になっているかもしれないが、俺たちの兵力なら実現はできる筈だ。

 

 そう思いながら息を吐くが、これで旅を続ける意味がなくなってしまった…………。

 

「―――――――タクヤ、そういえばパパはこのことを知ってるんだよね?」

 

「え? ああ、あいつも天秤を求めてたし、俺たちに忠告してきたってことは――――――――」

 

 親父も、天秤を欲している。

 

 天秤を手に入れようとする俺たちを止めようとしていたという事は、親父も子の天秤がどのような代物なのかを理解していたという事だ。結局天秤を使うには、願いと全く同じ”対価”が必要になるのだから、プラマイゼロにしかならない。

 

 だというのに、親父はまだ天秤を欲しているのか?

 

 なぜだ? どんな願いでも、プラマイゼロにしかならないんだぞ…………?

 

 まさか、対価を準備しているのか?

 

「待って、ハヤカワ卿も天秤を…………!?」

 

「は、はい。でもこの対価の事は知ってたみたいですけど…………」

 

「そんな…………ダメよ、止めないと! あれを使ってはいけない!」

 

 願いを叶えるためには、同等の対価が必要なのだ。

 

 自分が望んでいたものが手に入っても、同じくらい大切な物を手放す結果になってしまう。

 

 前世の父親と違って、あの親父は優しかった。自分の子供の”中身”が転生者だと知っても俺を受け入れてくれたし、俺とラウラをしっかりと育ててくれたのだから。

 

 いつかは、親孝行をしたいと思っていた。

 

 どうやら親孝行のタイミングは――――――――今らしい。

 

「やったな、2人とも。俺たちの旅は無駄にはなってないぜ」

 

「タクヤ君、何を考えているの…………?」

 

「エマさん、俺たちはこのまま天秤を手に入れるための旅を続けます」

 

「正気なの…………? あの天秤は同等の対価が必要なのよ!?」

 

「ええ、そうです」

 

 もう、俺はあの天秤で人々が虐げられない世界を作ろうとは思っていない。俺たちが天秤を使って叶えようとしていた理想は、テンプル騎士団の同志たちと共に力ずくで掴み取ればいい。

 

 時間はかかってしまうだろうが、いつかは達成できる筈だ。俺たちの理想を受け継いだ子供たちや孫たちが、きっと平和な世界を作ってくれる筈なのだから。

 

 だから俺たちは――――――――願いをプラマイゼロにするメサイアの天秤を、消す。

 

「ですから、俺はメサイアの天秤に”天秤を完全に消滅させてください”っていう願いを叶えてもらいます」

 

「え?」

 

「―――――――あなたのおかげです、エマさん。あなたが真相を教えてくれたからこそ、この願いが思いつきました。…………俺たちの願いが叶えられないならば、もう俺にとって天秤は”不要な存在”。その不要な存在そのものを対価にして不要な存在を”消すだけ”ですから、対価なんて要りません」

 

 そう、ナタリアの父親たちが探し求めていた完全な封印方法を使わなくても、天秤に天秤そのものを消滅させることを願えば、それで天秤はこの世から消え去るのだ。

 

「分かりますよね? 0から0を引いても”0”。0に0を足しても”0”です」

 

「あなた――――――!」

 

「タクヤ、あんた…………!」

 

 顔を上げたナタリアの瞳を見つめながら、ニヤリと笑う。

 

「―――――――ロイさんたちの目的は、俺たちが達成して見せましょう」

 

「タクヤ…………!」

 

 願いを叶える代わりに、対価で願いと同等の大切な物を奪っていく危険な天秤ならば、早く消し去ってしまうべきだ。これ以上天秤の情報が冒険者たちに出回り、多くの冒険者たちが天秤を手に入れるために犠牲にならないように。

 

 それに、せっかく鍵を3つも手に入れるために旅を続けてたんだ。ここで天秤を諦めてパーティーを解散したら、仲間や同志たちにボコボコにされちまうからな。

 

「ロイの目的を、引き継いでくれるのね…………!?」

 

「ええ、任せてください。メサイアの天秤は俺たちが必ず粛清します」

 

「粛清!?」

 

 ああ、粛清だ。

 

「―――――――エマさん。私たちは天秤を手に入れるための”鍵”を持っています。けれども、肝心な天秤がどこにあるのか分からないんです。手掛かりを探しているのですが…………ご存じないですか?」

 

 隣に座っていたラウラが、いつもと比べると大人びた口調で告げる。

 

 確かに、メサイアの天秤の正体を知っていたのだから、もしかするとそれがどこに保管してあるのかも知っている可能性がある。もしエマさんが天秤の場所まで知っているのであれば、ネイリンゲンで大気流を警戒しながら危険な調査を続けなくてもいいというわけだ。

 

 正しい判断だな、ラウラ。

 

「ごめんなさい、天秤の場所は分からないの…………」

 

「そうですか…………」

 

「でも…………夫の研究室の中になら、手がかりがあるかもしれないわ。ちょっと待っててね」

 

 すると、エマさんは皿の上のクッキーを一枚だけ拾い上げて口へと運ぶと、冷めてしまったクッキーを咀嚼しながらリビングを後にした。廊下に出たエマさんはどうやら階段を上がって行ったらしく、廊下の方から階段を上がっていく足音が聞こえてくる。

 

 2階にある部屋―――――――おそらく寝室だろう―――――――から、机の引き出しを開ける音が聞こえてくる。やがて探していた何かを見つけたらしく、また階段を駆け下りる足音が聞こえてきたかと思うと、小さな箱と銀色の鍵を手にしたエマさんが、再びリビングへとやってきた。

 

 おそらくあの銀色の鍵が、地下室の鍵なんだろう。かなり昔に作られた鍵らしく、よく見ると表面には傷がついており、更にいたるところが錆び付いているのが分かる。

 

「はい、これが地下室の鍵よ」

 

「ありがとうございます、エマさん」

 

「それと…………これはナタリアの分よ」

 

「え? 私?」

 

 そう言いながら、立ち上がったナタリアに小さな箱を手渡すエマさん。恐る恐る受け取ったナタリアは、開けてもいいのかなと言わんばかりにちらりとこっちを見てくる。

 

 開けてみなよ。

 

 頷くと、ナタリアも頷いてからそっと小さな箱を開けた。

 

 手のひらよりも小さな古びた木箱の中に入っていたのは――――――――どうやら、丁寧に折り畳まれた黒い手袋らしい。防寒用の分厚い手袋ではなく、結構薄い手袋だ。しかも両手の分が入っているわけではないらしく、箱の中に入っていたのは左手の分だけである。

 

 あれ? もう片方は?

 

「ま、ママ、これ何…………?」

 

「それはね、ロイが遺した研究成果の1つなの」

 

「パパが?」

 

「ええ。”もしナタリアが立派な子に育ったら、これを預けてあげてくれ”って言ってたの」

 

「パパ…………」

 

 ナタリアの父親であるロイ・ブラスベルグ氏は、ナタリアがまだエマさんのお腹の中にいた頃に他界してしまったという。当時はまだカメラが発明される前であったため、ナタリアは自分の父親の顔を知らない。

 

 けれども、自分の娘の顔を見ることができなかった父親が、これから生まれてくる愛娘の事を思って何かを遺してくれていたことが嬉しいのか、彼女はその黒い手袋をぎゅっと抱きしめた。

 

「それは『ミダス王の左手』っていう特別な手袋なの。それを身につけて、魔力を流し込みながら何かに触れると、触れられたものは全て黄金になってしまうのよ」

 

「!?」

 

 な、なんだそりゃ!?

 

「ちなみに、再生能力を持つ吸血鬼でもこれで黄金にされれば再生はできないわ」

 

「な、なにそれ…………」

 

 え、エマさん、それを受け取ったナタリアもびっくりしてるんですけど…………。

 

 というか、なんて恐ろしいものを遺してるんですか、ロイさん。確かにこんな強力な代物があれば愛娘も自力で敵を撃退できるようになりますけど、下手したら自滅する可能性もありますからね? 

 

 再生能力を持つ敵も振れるだけで黄金にしてしまうのか…………。さ、さすが錬金術師の研究成果だな。

 

 受け取った”ミダス王の左手”をまじまじと見つめながら戸惑っているナタリアを見守っていたエマさんは、とんでもない代物を託された娘の姿を見て目を丸くしていた俺とラウラの方を振り向くと、微笑みながら言った。

 

「申し訳ないけれど、ナタリアをお願いね」

 

「はい、任せてください」

 

「私の弟はとっても強いんですっ♪」

 

 胸を張りながらラウラが言うと、何故かエマさんは自分の胸を見下ろしてから苦笑いする。

 

「お姉ちゃんだって強いでしょ?」

 

「えへへっ♪」

 

 ナタリアだけじゃなく、仲間たちは絶対に俺が守る。

 

 そして――――――――メサイアの天秤を、絶対にこの世界から消し去ってやる。

 

 何も知らない冒険者たちが、要求された対価で絶望しないように。

 

 それに、もう1人助けなければならない男がいる。

 

 この世界を救うために強制的に転生させられた”勇者”の1人で、美女を2人も妻にした幸せ者。自分の息子の正体が転生者だと知っていても、しっかりと育ててくれた最高の父親。あのバカが何を求めているのかは分からないけど、このままではあいつは大切な何かを失う羽目になるだろう。

 

 その前に、天秤を消し去る。

 

 これからの旅は、俺を育ててくれた父親への親孝行でもあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクヤ君たちは、どうやらネイリンゲンを調べているようですね」

 

「ああ、そのようだ」

 

 ジャムを塗ったスコーンを口へと運び、咀嚼しながら紅茶の入ったティーカップを口へと運ぶ。書類を片手に持ちながら側へとやってきたヘンシェルに「自信作だ」と言いながらスコーンの乗った皿を手渡し、目の前に投影されている魔法陣の中に映し出された世界地図を見据える。

 

 現時点で、メサイアの天秤の鍵を持っているのはテンプル騎士団のみ。あとは天秤が保管されている場所を突き止めるだけで、あいつらはメサイアの天秤を手にするだろう。

 

 テンプル騎士団とは同盟関係を結んでいるが、その気になればその同盟関係はいつでも破棄できる。そうすればあいつらと再び天秤の争奪戦が始まる。

 

 李風(リーフェン)の率いる殲虎公司(ジェンフーコンスー)はそもそも天秤を求めているわけではないため、彼らをこの争奪戦に巻き込むわけにはいかない。もう既に吸血鬼たちは壊滅的な大損害を被っているため、実質的にこの天秤の”争奪戦”を続けるのは不可能だろう。

 

 とはいえ、彼らが大攻勢の準備をしている可能性もある。レリエルの復活を目論む吸血鬼共が、ヴリシアで完敗した挙句鍵まで奪われたのである。プライドの高い吸血鬼たちが、彼らに屈辱を与えた上に鍵まで奪っていったテンプル騎士団に手を出さないわけがない。

 

「社長、本当によろしいのですね?」

 

「何がだ?」

 

「例の、同盟破棄の件です」

 

 とん、と机の上に一枚の書類を置きながら尋ねるヘンシェル。彼が目の前に置いた書類には、同名の破棄に関する事が書かれており、俺がサインをする場所だけが空欄になっている。

 

 あとはそこにサインするだけで、テンプル騎士団との同盟関係は一方的にだが破棄される。

 

「―――――――ああ、構わん。それより吸血鬼共の動きは?」

 

「はい、段々と活発化しているようです。ヴリシアから南方の『ディレントリア公国』に潜伏しているようですね。やはり、テンプル騎士団への攻勢準備でしょうか?」

 

「おそらくな。だが…………あれだけの大損害を出したのだから、行動開始はもう少し先だろう」

 

 吸血鬼共がテンプル騎士団への大攻勢を開始するのは――――――――おそらく、春だ。

 

「我々はどうします? 一応、ハーレム・ヘルファイターズは増援に出せますが…………」

 

「それはギュンターに一任する。それよりも、同盟を破棄するタイミングだ」

 

「そうですね」

 

 もし仮に攻勢前に天秤の保管されている場所を察知したとしても、吸血鬼たちが動き出したことを察知すれば、テンプル騎士団も動けないだろう。それに、ネイリンゲンを調べているという事は、あいつらはまだ天秤が隠されている場所を把握していないことを意味する。

 

 もう1つスコーンを口へと運びながら、俺はニヤリと笑った。

 

 まだ、鍵を奪取するチャンスはある。

 

 吸血鬼共の復讐心を利用させてもらうのだ。レリエルを殺した俺も奴らの標的に入っているだろうが、俺よりも天秤の鍵を3つも持っているテンプル騎士団が真っ先に狙われることになる。つまり、テンプル騎士団が吸血鬼のどちらかが倒れない限り、我々はどちらの勢力にも狙われない。

 

 タクヤやラウラには申し訳ないが――――――――あの子たちには、天秤を明け渡してもらおう。

 

 12年前に倒れた、俺の大切な親友のために。

 

「―――――――ヘンシェル。同盟破棄のタイミングは、吸血鬼の攻勢の真っ最中だ」

 

 

 

 

 

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