異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
『こちら、スネグーラチカ3-5。ブレスト要塞上空へと接近中の敵航空部隊の機種が判明した。戦闘機40機、攻撃機18機の模様。ステルス機の存在は確認できず』
一足先に出撃したSu-30SMから、早くも情報が送られてくる。それよりも先にもう既に何機か撃墜してしまっているのだが、ミサイルを使い果たせばドッグファイトをせざるを得なくなるのだ。相手の機種を知っておいた方が戦い方もすぐに思いつくだろう。
ちなみに、一番最初の中距離ミサイルによる攻撃で俺は2機撃墜している。他の奴らもいくらか撃墜したようだが、まだ40機も残っているようだな。全部俺が撃墜したら、祖父さんの戦果を超えられるだろうか。
ステルス機がいないから戦いやすそうだ。さすがにF-22の編隊だったら、こっちがミサイルをぶっ放すよりも先にミサイルでやられていただろう。
「アーサー1よりスネグーラチカ3-5へ。敵戦闘機と攻撃機の機種は?」
『戦闘機は”ラファールM”、攻撃機はA-10の模様。A-10はとっとと潰さんと拙いぞ。要塞が火の海になる』
『おいおい、敵のラファールとかいう戦闘機を無視してたらこっちがフライドチキンにされちまうぞ』
ラファールは、フランスで開発された戦闘機だ。ユーロファイター・タイフーンと同じくカナード翼とデルタ翼が特徴的な戦闘機で、こちらも汎用性が高い戦闘機である。対空ミサイルを搭載すれば敵の戦闘機との戦闘にも投入できるし、その気になれば対艦ミサイルを装備して敵艦への攻撃にも投入できる。
このような戦闘機は、現在では”マルチロール機”と呼ばれている。
「だったらフライドチキンにされる前に、ソーセージにして食ってやればいい。各機、ラファールはアーサー隊が始末する。他の編隊はA-10を血祭りにあげろ」
『待て、アーサー1! 相手は40機だぞ!?』
『そうですよ隊長! 5対40はいくらなんでも不利すぎます!』
「だったらとっととA-10を全滅させて加勢してくれ。それまでラファールはこっちが抑える。以上」
A-10は非常に頑丈な攻撃機だ。機関砲をこれでもかというほど叩き込んでも撃墜するのは難しい。それに敵はもう要塞に接近しているのだから、真っ先にA-10を狙うべきだろう。
けれども、A-10ばかり狙っていればラファールにやられる。せめて仲間がA-10を始末するまでラファール共を足止めしなければならない。
敵の航空機は合計で58機。タンプル搭から出撃した航空機は、アーサー隊に所属する5機を含めて60機。若干だがこっちの方が上だな。ただ、こっちの航空隊の大半はSu-27やSu-35が占めているため、ラファールを相手にするならこっちが有利か。
『こちらアーサー2、敵からのレーダー照射を受けた! ロックオンされている!』
早速狙われたか…………!
『アーサー2、ブレイク!』
「死ぬなよ!」
『隊長がアンジェラに告白するのを見るまで死ぬつもりはありません!』
じゃあ、告白するのはもっと後にしてやろう。
苦笑いしながら、ちらりとレーダーでラファールを探す。敵はどうやら俺たちがたった5機で40機の群れの中に突っ込もうとしているのを知って、少しばかり驚いているらしい。普通なら40機の敵戦闘機の群れに、たった5機で戦いを挑もうとはしないだろう。
油断してくれれば戦いやすい。こっちは8倍も戦闘機がいるんだと高を括ってくれれば、いくらでも意表をつけるのだから。
今回は対空ミサイルを13発も積んできた。そのうちの5発は中距離型で、残りの8発は近距離型となっている。もう既に一番最初の攻撃で中距離型を2発使っているから、残りは11発だ。
まず、このまま真正面から突っ込んで行くふりをして、味方機の後ろに回り込もうとしている奴を狙おう。味方の背後に回り込もうとしているという事は、俺たちの事は眼中にはないという事だ。つまり、こっちは一方的に不意打ちができるという事である。
いきなり予想外の場所からロックオンされたら、敵のパイロットは慌てふためくに違いない。
ふふふっ、面白そうだ。
というわけで、ミサイルを発射するふりをしておく。操縦桿を引きながらラファールの背後に回り込み、ロックオンを開始。自分が背後にいるユーロファイター・タイフーンにロックオンされていることを知ったラファールが急旋回を開始するけど、俺はそいつを追いかけ回すふりをしてすぐに進路を変えた。
標的はお前じゃない。
あのA-10の群れさえ始末すれば、60機の戦闘機が40機のラファールを食い尽くすのだから。
ちらりとブレスト要塞へと向かうA-10の編隊の方を見ると、もう既に何機かのA-10が対空ミサイルを3発ほど叩き込まれて炎の塊と化して落ちていき、頭上から急降下してきたSu-35の機関砲にコクピットを食い破られ、ぐらつきながら墜落していくところだった。10機ほどのラファールが攻撃機を守るために奮戦しているが、A-10へと襲い掛かっていく戦闘機の数が予想以上らしく、対処しきれていないようだ。
「おっと」
そのうちの1機をロックオンしてそろそろ撃墜マークを増やそうかと思ったその時、コクピットの中を忌々しい電子音が満たす。
どうやら先ほどからかわれたラファールが後ろに回り込み、俺の機体をロックオンしているらしい。進路を変更して振り切るべきだろうかと思って操縦桿を倒しかけようとした直後、そのラファールが唐突に急旋回を始めた。
逃げ出したラファールの後を追いかけ回すのは、垂直尾翼と主翼の先端部のみが深紅に塗装された、漆黒のユーロファイター・タイフーン。機首の脇には撃墜マークが描かれており、その傍らには”04”と紅い塗料で描かれているのが見える。
アーサー4の操るユーロファイター・タイフーンは旋回中のラファールの主翼にリボルバーカノンで風穴を開けると、一気にふらつき始めたラファールのエンジン部に7発か8発ほど砲弾を叩き込み、ラファールが黒煙を吐き出しながら墜落していったのを確認してから離脱した。
「Danke(ありがとよ)」
『どういたしまして。後で食堂のカレー奢ってくださいね』
「はいはい」
いくらでも奢ってやるから、死ぬなよ…………。
別のラファールに襲い掛かっていく味方の戦闘機を見守りつつ、俺も敵機を探す。味方の戦闘機は予想以上に頑丈なA-10の撃墜に手間取っているらしい。先ほどから何発も機関砲を撃ち込んだり、ミサイルを放ってA-10を撃墜しようとしている味方機がいるが、早く落とさないとラファール共に叩き落されるぞ?
「ッ!」
その時、1機のSu-27が火達磨になった。先ほどから機関砲を撃ち続けていた機体だ。A-10に攻撃している間にラファールに回り込まれ、ミサイルを喰らう羽目になったらしい。
燃え上がる主翼の残骸が降り注いでいくのを見つめながら、唇を噛み締める。
標的は、仲間を落としやがったあいつだ…………!
離脱しようとするラファールに機首を向け、機体を加速させる。右に旋回し始めたラファールを追いかけるためにこっちも右に旋回しつつ、ロックオンを開始。もう少しでロックオンが終了する寸前に狙われていることを察知したらしく、ラファールの動きが一気に激しくなる。
相手のパイロットは吸血鬼だ。防御力そのものは人間と変わらないとはいえ、身体能力では常人を遥かに上回る。つまり、普通のパイロットよりもさらに強いGにも耐えられるという事だ。機体も奴らの身体能力に合わせて改造されているに違いない。
右に旋回し続けると思いきや、急に失速して急降下。そしてある程度降下したところで今度は再び右に旋回しつつ、徐々に高度を上げていく。
滅茶苦茶な動きだが――――――――その程度で、エースパイロットの孫から逃げられると思ったか?
甘すぎる。多分、現役だった頃の爺さんだったらとっくに撃墜しているだろう。
「――――――フォックス2」
発射スイッチを押した瞬間、主翼にぶら下がっていたミサイルが外れ、エンジンノズルから炎と白煙を吐き出しながらユーロファイター・タイフーンを置き去りにしていく。ラファールは更に旋回を続けるが、発射された距離が予想以上に近かったため、あっさりとミサイルの餌食となった。
ドン、と一瞬だけキャノピーの外から襲い掛かってきた衝撃波のせいで、俺の機体まで揺れる。小さな破片が主翼やキャノピーにぶつかって奇妙な音を奏で、左側の主翼とエンジンを失い、火達磨と化したラファールの残骸が、ぐるぐると回転しながら墜落していく。
パイロットが脱出した気配はない。けれども、どうせ墜落してミンチになっても再生するのだろう。あいつらは弱点で攻撃しない限り死なない種族なのだから。
続けて一旦減速しつつ旋回。A-10の背後に回り込んでいる友軍を探し、そいつらを狙う敵機がいないか確認する。
「…………またか」
忌々しい電子音を聞きながら、方向転換して急旋回。俺をロックオンしている奴を探そうと思ったが、目の前に味方機を狙っている無防備なラファールがいたので、そいつにとりあえずリボルバーカノンをお見舞いしておいた。
エンジンに当たったらしく、片方のエンジンから黒煙を吐き出したそのラファールは、ふらふらしながら離脱していく。追撃したいところだが、こっちは敵機に狙われている真っ最中だ。
敵のラファールは40機もいるのだから、5機で相手にするのは無謀だったかな…………?
『隊長、ミサイル!』
「分かってる」
ちらりと後方を見た瞬間、敵が放ったミサイルが見えた。回避は間に合わないだろうと判断し、すぐさまフレアをばら撒く。機体の後方に無数の火の玉が放出されたかと思うと、俺の機体へと向かっていたミサイルがいきなりぐらつき、そのままふらふらしながら地上へと落ちていった。
さて、反撃するか。
急旋回し、ミサイルをぶっ放して離脱したバカを探す。
どうやら俺がミサイルから逃げている間に他のSu-27を狙うつもりらしく、辛うじてA-10を撃墜したばかりのSu-27の後方へと回り込んでいる。狙われたSu-27は大慌てで逃げようとするが、吸血鬼の乗るラファールは逃げ回るSu-27から全く離れない。
加勢するべきだろうかと思いながら操縦桿を倒したその時、追われていたSu-27が唐突に機首を上へと向けて失速し始めたのである。
「あれは…………!」
何度か目にしたことがあるし、タンプル搭の訓練でもタクヤの奴が何度もやっていた。
それは、『コブラ』と呼ばれる飛び方だった。
さすがに追いかけていた獲物と激突してバラバラになりたくなかったらしく、ラファールは減速して接近してきたSu-27を大慌てで躱す。左へと回避してから体勢を立て直した頃には、後ろに回り込んだSu-27の機種に搭載された機関砲が、火を噴いていた。
至近距離で放たれた機関砲の砲弾たちは瞬く間にラファールの大きな主翼を食い破り、垂直尾翼までへし折る。
ぐるぐると回転しながら高度を落とし始めたラファールから離脱していくSu-27が、そのまま次のラファールへと狙いを定める。
「はははっ…………!」
感激したよ。優秀なパイロットじゃないか! しかも、コブラで敵を撃墜するなんて!
操縦桿を引き、そのまま宙返りする。キャノピーの上を埋め尽くす砂の大地を見上げながら、レーダーと目を有効活用して敵機を探す。
『――――――こちら”カワウ1-1”。これより援護します』
『こちら”カワウ1-2。俺たちも参加させてくれ』
カワウ?
確かそのコールサインを使っているのは、スオミ支部の航空部隊だったような気がする。
スオミ支部はテンプル騎士団の支部の中でも規模が小さいが、防衛線を最も得意とするハイエルフだけで構成された”防衛戦闘のプロ”たちであるという。今回の春季攻勢の迎撃にも参加しているらしく、スオミ支部からはエースパイロットが2名も派遣されている。
今しがた聞こえてきたコールサインは、その2人のコールサインだった。
前世の世界でも活躍したエースパイロットと同じ名前のエースたちが、駆けつけてくれたのだ。
スオミ支部に所属する”無傷の撃墜王”と、”ついてないカタヤイネン”の2人が…………!
飛来した1発のAPFSDSが、正面装甲と比べると遥かに脆い側面の装甲を食い破る。
レオパルトやマウスたちが、これでもかというほど撃ち込まれたAPFSDSでも貫通できなかったシャール2Cの正面装甲は、可能な限り分厚くされた複合装甲である。テンプル騎士団がヴリシアで遭遇したマウスの160mm滑腔砲から放たれるAPFSDSで砲撃されることを想定されたその分厚過ぎる装甲のおかげで、シャール2Cは吸血鬼たちの集中砲火を浴びても反撃を続けることができた。
しかし、それ以外の部位の装甲は、極めて脆いと言わざるを得ない。
正面からの攻撃を防ぐことに特化し過ぎており、側面の装甲は複合装甲ではなくなっているのだ。そのため、正面装甲以外にAPFSDSを叩き込まれると、そのまま擱座してしまう可能性があるという欠点がある。
今しがた直撃した一撃は、車体の側面から突き出ていた37mm戦車砲が搭載されている砲塔もろとも車体の装甲を食い破ると、内部の機器を蹂躙していく。幸い車体中央部のエンジンは損傷しなかったが、車体の側面に大穴を開けられたシャール2Cの動きが、段々と鈍くなり始める。
しかし、まだ機能は停止していなかった。152mm滑腔砲を2門も搭載した巨大な砲塔を右側へと旋回させ、たった今自分の車体に大穴を開けたレオパルト2に、大口径の主砲から放たれる猛烈なAPFSDSをお見舞いする。外殻から解き放たれた銛を思わせる砲弾は、複合装甲で覆われているレオパルトの正面装甲に大穴を開けると、そのまま車内の乗組員を瞬く間にミンチにし、後部のエンジンにも大穴を開けてしまう。
その直後、今度は反対側から放たれたマウスの160mm滑腔砲が、
車内の配線がスパークし、青白い電撃が装甲の隙間から覗く。風穴から黒煙とオイルを吐き出しながらも、無人型のシャール2Cは必死に砲塔を旋回させ、力尽きる前にマウスに一矢報いようと足掻き続けたが――――――――そのマウスの影から顔を出したレオパルトのAPFSDSが、奮戦したピカルディーについに止めを刺した。
マウスが開けた大穴に飛び込んだAPFSDSが、エンジンの後部を貫通したのである。
エンジンに被弾したせいで、砲塔を旋回させていたピカルディーの動きが、ぴたりと止まった。
「て、敵超重戦車、機能停止! 撃破しました!」
「よし、そのまま前進だ! 要塞に突っ込むぞ!」
黒煙を吹き上げてスパークを吐き出すシャール2Cの傍らを、マウスとレオパルトの群れが進軍していく。
ピカルディーが撃破されたことを確認したテンプル騎士団の戦車たちが、負傷兵たちを乗せて要塞の方へと後退していく。ピカルディーが奮戦してくれていたおかげで戦車の進撃を食い止めることができていたのだが、虎の子のピカルディーが撃破されてしまったため、もう戦車部隊を食い止めるのは不可能だろう。
味方の戦車部隊に置き去りにされた挙句、進撃していく敵の戦車たちにも置き去りにされたピカルディーは、味方を蹂躙していく敵の戦車たちを食い止められなかったことを悔しがるかのように、砂漠の真っ只中で黒煙を吐き出し続けるのだった。