異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ちなみに、女になった時のタクヤの大きさはDくらry(粛清)


タクヤVSアリーシャ

 

「はぁっ、はぁっ…………」

 

 背中に突き刺さったレンガの破片を強引に引き抜く度に、彼女の肉が裂けていく。

 

 自分の背中の肉が裂けていく音を聞きながら歯を食いしばり、真っ赤に染まったレンガの破片をどこかへと放り投げた彼女は、呼吸を整えるよりも先に走り出した。

 

 鮮血の魔女は、アリーシャがあの鍛冶屋の中へと逃げ込むことを予測していたのだ。だからカウンターの中にC4爆弾を仕掛けておき、彼女がそれに気づいた瞬間に起爆させたのである。魔女の想定通りどころかシナリオ通りになっていることを理解した彼女の心の中で、魔女に対する怒りが産声を上げようとしたが、その怒りをすぐに困惑が飲み込む。

 

 トラップがいくつも仕掛けられているようだが、今しがた起爆したC4爆弾は起爆装置を使わなければ爆発させることはできない。つまり、魔女はあの狭いカウンターの裏にアリーシャが逃げ込んだことを知っていたのだ。

 

(見られていた…………!? それとも魔力…………!?)

 

 ライフルのスコープで見られていたとしても、店内までは見れない筈だ。それゆえに、アリーシャがC4爆弾の仕掛けられているカウンターの裏へと逃げ込んだことを知っているわけがない。

 

 魔力で探知しているのであれば、その標的がどこにいるのかもすぐに探知できるが、廃村に入る前からアリーシャは魔力を探知されないように細心の注意を払い続けている。魔力は全く漏れていないのだから、熟練の魔術師でも探知することは不可能だ。

 

 あの鮮血の魔女は、一体何でアリーシャの居場所を探知しているのだろうか。

 

「仕方ないわね…………」

 

 魔力を放出する羽目になるが、このまま罠に引っかかって醜態を晒すよりははるかにマシである。

 

 一旦遮蔽物の陰に隠れたアリーシャは、左手をチェイ・タックM200からそっと離すと、体内にある闇属性の魔力を加圧しながら左手へと集中させ始めた。やがて彼女の手のひらにブラックホールを思わせる小さな渦が形成されたかと思うと、その渦の中から漆黒の蝙蝠の翼が伸び始めた。

 

 彼女の手のひらから姿を現したのは、1羽の蝙蝠だった。

 

 アリーシャの使い魔である。使い魔の中にはドラゴンに匹敵する戦闘力を誇る者も存在するが、そのような強力な使い魔は召喚に時間がかかる上に、償還に使用する魔力の量が膨大であるため、最悪の場合は召喚と同時に魔力を使い果たして死亡する恐れもあるのだ。

 

 使い魔を召喚するために死んでしまっては元も子もない。それに、今のような状況では戦闘力の高い使い魔よりも、消費する魔力が最低限で済み、索敵に特化した小型の使い魔の方が望ましい。

 

 アリーシャが今しがた召喚した蝙蝠は、戦うことができない代わりに敵の魔力を探知し、居場所を召喚したアリーシャに教えてくれる索敵に特化した使い魔である。もし仮に魔力で探知ができなくても、空から魔女を探すことができるため、身を隠すために飛び込んだ建物の中でトラップに引っかかるリスクは一気に低下するだろう。

 

「魔女を探しなさい」

 

『ピィッ!』

 

 アリーシャに命令された使い魔が、彼女の手のひらから飛び立っていく。

 

 召喚の際に闇属性の魔力を放出してしまったため、今の魔力で探知される可能性もある。そのため、アリーシャはライフルを抱えて踵を返し、すぐに移動しようとした。

 

 だが――――――――廃村のどこかで銃声が轟いたと思った直後、ぼとん、とアリーシャの背後から何かが落下する音が聞こえてきて、彼女はぎょっとしてしまう。

 

 まるで小さな肉の塊を、それなりに高い場所から地面へと放り投げたような音だったからだ。自分の身体が討たれたわけではなかったため、その落ちてきたものが何だったのか、すぐに理解する。

 

 素早く振り向いた彼女の目の前に転がっていたのは――――――――小さな肉片たちと、蝙蝠の翼の残骸だった。

 

「…………ッ!?」

 

 間違いなく、彼女の背後に落下してきた肉片たちは、十数秒前にアリーシャが召喚した使い魔の肉片である。魔女の索敵を命じて飛び立ったばかりの使い魔が、超遠距離から大口径の弾丸を叩き込まれて四散してしまったのだ。

 

 しかし、彼女が使い魔を召喚したのを見ていたのであれば、使い魔を射殺して自分が狙っているという事を標的に知らせるよりも、隙を晒している標的を撃ち抜いて始末した方がはるかに合理的である。

 

 敢えてアリーシャではなく使い魔を狙撃し、彼女に自分が狙っているという事を知らせたという事は、魔女はアリーシャとの戦いを楽しんでいるという事を意味している。

 

 鍛え上げた騎士が、優秀な剣士との一騎討ちをするような正々堂々とした”楽しみ”ではなく、それとは真逆としか言いようがないほど悪趣味で、どす黒い”楽しみ”。

 

 魔女は、アリーシャが罠に引っかかって嬲り殺しにされていくのを見て楽しんでいるに違いない。

 

 ぞっとしながらアリーシャはチェイ・タックM200を構え、スコープを覗き込む。すぐに建物の影や建物の中に飛び込もうとしたが、飛び込めば先ほどのように罠に引っかかる羽目になるのが関の山だ。あの魔女は、アリーシャがこの廃村にやってくる前に無数の罠を仕掛け、この村を彼女の”狩り場”へと変貌させてしまったのだから。

 

「!」

 

 先に撃たれてしまうかもしれないと思いながら索敵を続けていたアリーシャのスコープの向こうに、人影が見えた。

 

 ライフルに搭載したレンジファインダーで距離を確認すると、その人影は約500m先にいるようだった。古びた白いレンガの建物―――――――おそらくアイテムの売店だったのだろう――――――――の屋根の上に立ち、ライフルを肩に担いだまま、レティクルを合わせようとするアリーシャを真っ赤な瞳で見つめている。

 

 身に纏っているのは漆黒のコート。フードもついているらしいがそのフードはかぶっておらず、鮮血を思わせる長い赤毛があらわになっている。”鮮血の魔女”と呼ばれるようになったのは、あの赤毛が由来なのではないだろうか。

 

 その赤毛の中から伸びているのは、ダガーを思わせる鋭い角。根元は漆黒に染まっているが、先端部へと向かうにつれてまるでサファイアのように蒼く変色している。

 

 コートの胸の部分は膨らんでおり、その人影が女性であることが分かる。手足もすらりとしているようだが、幼少の頃から本格的な訓練を受けて鍛えていたのか、しっかりと筋肉もついているようだった。

 

 腰の後ろから伸びているのは、鱗に覆われたドラゴンのような尻尾。彼女の腰についているホルダーの中からマガジンを引き抜いたその尻尾が、アンチマテリアルライフルにその新しいマガジンを装着してから、再び元の位置へと戻っていく。

 

 その建物の上に立っていたのは、間違いなくキメラの女性であった。

 

 手にしているのは大口径の対物(アンチマテリアル)ライフル。腰の後ろにはブルパップ式のアサルトライフル―――――――フランス製アサルトライフルのFA-MASだ――――――――を下げているのが分かる。

 

 ブレスト要塞で戦った時はカーキ色の服を身に纏っていたが、今は夜戦を想定して漆黒のコートを身に纏っているのだろう。

 

「鮮血の…………魔女…………ッ!」

 

 屋根の上に佇んでいたその女性は、アリーシャの標的であった。ブラドに今度こそ始末するように命令された、鮮血の魔女である。

 

 だが――――――――ブレスト要塞での戦闘で失った筈の、左腕と左足がある。大口径の弾丸で撃ち抜いて捥ぎ取ってやったにもかかわらず、失った筈の左腕でヘカートⅡを担ぎ、失った筈の左足を使って屋根の上に立っているのだ。

 

 魔物の義手と義足を移植したのではないかと思ったが、コートの袖の中から覗く左手の白い指は、間違いなく人間の指である。ズボンと黒いブーツのせいでよく見えないが、おそらく左足も同じく人間の足なのだろう。

 

 彼女の手足は木っ端微塵になった筈なのだから、再生できる筈がない。誰かの手足を移植したのだろうか。

 

「ッ!」

 

 姿を現したのならば、姿を消す前に撃つべきだ。

 

 そう思ったアリーシャはすぐにトリガーを引いた。チェイ・タックM200はボルトアクション式スナイパーライフルの中でもトップクラスの命中精度を誇る代物であり、射程距離は大口径のアンチマテリアルライフルにも匹敵する。500m先にいる敵兵を狙い撃つのは朝飯前である。

 

 レティクルの向こうにいる鮮血の魔女へと、.408チェイ・タック弾が飛んで行く。

 

 .408チェイ・タック弾は、通常のスナイパーライフル用の弾丸よりも口径が大きい。いくらキメラの外殻でも、これが命中すれば大ダメージを負う羽目になるのは火を見るよりも明らかだ。

 

 だが――――――――何の前触れもなく、レティクルの向こうから魔女の頭が消えていた。

 

 弾丸が彼女の頭を叩き割ったわけではない。もし仮に鮮血の魔女の頭を弾丸が叩き割っていたのであれば、今頃あの建物の屋根の上は彼女の鮮血や脳味噌の破片で覆われている筈である。なのに、レティクルの向こうに見えるのは真っ白な屋根と、そこに刻まれた弾痕だけである。

 

 ぎょっとしながらスコープから目を離すと、赤毛の女性が屋根の上からジャンプしているのが見えた。

 

 隣にある建物の屋根の上に飛び移るつもりなのだろう。追撃するためにボルトハンドルを引き、空の薬莢を排出して狙おうとしたが、それよりも先にジャンプ中の赤毛の女性がヘカートⅡをアリーシャへと向け、トリガーを引いた。

 

「いっ………!」

 

 ジャンプ中に放たれた狙撃だというのに、大型のマズルブレーキから飛び出した12.7mm弾は回転しながら直進すると、スコープを覗き込んでいたアリーシャの左側の頬を抉り、彼女の後方にある瓦礫の山を直撃する。

 

「あああああああああッ!!」

 

 鮮血が吹き上がる頬を押さえながら、アリーシャは片手でトリガーを引いた。

 

 吸血鬼の腕力ならば、スナイパーライフルを片手で撃つことも可能である。しかし、当たり前だが命中精度は一気に下がってしまう。

 

 案の定、絶叫しながら放ったアリーシャの一撃は鮮血の魔女に命中することはなく、そのまま星空の中へと飛んで行ってしまった。

 

 弾丸が掠めたせいで抉れてしまった皮膚が再生を終え、あらわになっていた血まみれの奥歯をすぐに書くしてしまう。激痛も感じなくなったが、再生を終えたアリーシャはまたしても違和感を感じた。

 

 銀の弾丸で傷を負わされたにしては、再生が早く済んでしまったのである。

 

 銀の弾丸で撃たれた場合、普通の吸血鬼ならば弾丸で撃たれた人間のように呆気なく死んでしまう。弱点に耐性がある吸血鬼でも、通常の傷を負った場合よりも再生速度が低下してしまうのだ。アリーシャは定期的にブラドから血を与えられていたため、弱点の銀や聖水には耐性がある。それゆえに銀の弾丸を撃ち込まれれば、それなりに再生に時間がかかる筈であった。

 

 しかし、今の再生はやけに早かった。抉れた頬の肉が反対側の肉と結びつき合い、その表面を皮膚が覆い終えたのはたった2秒である。

 

(まさか………銀の弾丸ではない………?)

 

 銀の弾丸でなければ、傷口は素早く再生させることができる。

 

 おそらくあの魔女がライフルに装填しているのは、銀の弾丸ではなく通常の弾丸なのだろう。吸血鬼に向けて放ったとしてもすぐに傷口が再生してしまうため、それで討伐するのはかなり困難だ。

 

 だが―――――――吸血鬼にも痛覚はある。傷口を瞬時に再生させることができるため、大昔から恐れられているが、吸血鬼たちも剣で斬りつけられる度に激痛を感じていたのだ。

 

(私を苦しめるために………………敢えて通常の弾丸をッ!?)

 

 先ほど彼女ではなく使い魔を真っ先に狙撃したのも、彼女を苦しめるためなのだろう。

 

 歯を食いしばりながら、アリーシャは拳を握り締めた。

 

「悪趣味な女………ッ! いいわ。私も今度こそ貴女を苦しめて殺してあげる………ッ!」

 

 屋根の上を睨みつけながら、アリーシャはチェイ・タックM200を背負い、魔女を追い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多分、さっきのジャンプ中の狙撃は、ラウラだったら命中させていたに違いない。

 

 ヘカートⅡのボルトハンドルを右手で引き、12.7mm弾のでっかい薬莢を排出しつつ、一旦フランス製のアンチマテリアルライフルを背中に背負ったまま近くの建物の中へと飛び込む。壁に印がつけてあることを確認してから階段を駆け上がり、2階にあるベッドの上を目指す。

 

 あの憎たらしいメイドがこの廃村へとおびき出される前に、色々と罠や物資を用意しておいたのだ。できるならばタンプル搭が攻撃を受ける前にあのクソ野郎を始末して戻りたいところだけど、その気になればこの廃村の中で持久戦を始めることもできるのだ。

 

 ベッドの上に置いてある12.7mm弾が連なるでっかいクリップを掴み取り、ポーチの中にある空のマガジンの中へと一気にぶち込む。マガジンを再びポーチの中へと放り込んでから部屋を後にし、窓からジャンプして隣の建物の壁をよじ登る。

 

 本来の姿の時でも身軽に動けるのだが、やっぱり性別を変更することで爆発的に向上したスピードのステータスのおかげなのか、男の姿の時よりもはるかに身軽になっているような感じがする。とはいえ走ったりする度に揺れ続けるこのでかい胸ははっきり言うと邪魔だ。しかもブラジャーは身につけてません。

 

 ラウラの胸はこの胸よりも一回りでかいのである。

 

 手首から先を外殻で覆い、鋭くなった指先をレンガの壁に食い込ませながらよじ登る。もう少しで屋根の上までたどり着くと思った次の瞬間、バチンッ、と頬のすぐ脇にライフル弾が着弾する。

 

 くそったれ、.408チェイ・タック弾だ。通常のライフル弾よりも大口径だから、命中すれば木っ端微塵になっちまう。しかも女の状態では、攻撃力とスピードが劇的に向上する代わりに、防御力が初期ステータス以下になっちまう。

 

 しかもメスのキメラ―――――――正確に言うとメスのサラマンダーのキメラだ――――――――は外殻を使って硬化するのが苦手である。外殻を瞬時に生成できることができない上に、防御力もオスのキメラと比べると大きく劣っているため、下手をすれば.408チェイ・タック弾が貫通する恐れがあるのだ。

 

 あ、危ねぇっ!

 

 大慌てで屋根の上へと昇り、外殻で体を覆いつつ反対側から飛び降りる。地面に着地するよりも先に腰の後ろからグレネードランチャー付きのFA-MASを取り出し、安全装置(セーフティ)を解除してから着地する。

 

 背後から着弾したということは、あのメイドは俺の後ろから狙撃していたという事だ。あのメイドの匂いも後方からする。

 

 ラウラの服の胸倉についていた匂いと、同じ匂いなのだ。

 

 あいつがラウラの手足を奪ったに違いない…………ッ!

 

「見つけたぁ…………………ッ!!」

 

 やっと見つけた。

 

 お前に会いたかったんだよ、クソ野郎。

 

 FA-MASを抱えたままUターンし、今度は逆方向へと向けて突っ走る。あのメイドは俺が屋根の上から狙撃してくると思っているのか、さっき俺が昇っていた建物に向かって狙撃を続けているようだった。銃声とボルトハンドルを引く音が聞こえてくる。

 

 吸血鬼は聴覚が発達しているが、あんなにライフルをぶっ放し続けていればこっちが走る足音も察知できないだろう。銃声の残響や薬莢がレンガに当たる音に阻害されている筈だ。

 

 というわけで、俺は全力で突っ走る。男の時よりも速度が上がっているおかげで、あっという間にその銃声が聞こえてくる建物の裏口までたどり着くことができた。

 

 手榴弾を投げ込んでやろうかと思ったが、そんなことをすれば建物の外に逃げられてしまう恐れがある。

 

 こっそりと裏口のドアを開け、建物の中へと入っていく。確かここにはトラップは仕掛けていなかった筈だ。ほぼ全ての建物にはクレイモア地雷やC4爆弾をこれでもかというほど設置しておいたから、あのメイドの匂いで居場所を確認しながら起爆スイッチを押すだけでいいのである。

 

 ちなみに、クレイモア地雷のワイヤーを躱されても起爆できるように、そのクレイモア地雷の後ろには強制的に起爆させるためのC4爆弾を張り付けておいたのだ。一番最初にあのメイドが喰らう羽目になった理由は、俺がそのクレイモア地雷を強制的に起爆したからである。

 

 そっと建物の中を進んでいくと、やっぱりメイド服に身を包んだ銀髪の美少女が、チェイ・タックM200を使って狙撃しているところだった。

 

 FA-MASのフルオート射撃をお見舞いする前に、挨拶をしておくべきかもしれない。母さんには「紳士的な男になれ」と言われて育ったからな。今は女だけど。

 

 そっとそのメイドの肩を手でたたき、俺はニヤリと笑いながら挨拶する。

 

「やあ、メイドさん」

 

 

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