異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
フランセン共和国や植民地のカルガニスタンのすぐ近くに広がるウィルバー海峡の向こうには、吸血鬼たちが拠点にしていたヴリシア帝国がある。巨大な島国であり、強力な騎士団を持つ列強国の1つだが、産業革命によって”工業”という新しい力を身につけたオルトバルカ王国にあっさりと引き離されてしまっているため、もし仮にオルトバルカ王国と戦争になれば敗北するだろうと言われている。
そのヴリシア帝国とフランセン共和国の間に広がるウィルバー海峡をひたすら東へと進んでいくと――――――――小さな島国がある。
かつては周辺の海域に凶悪な魔物が生息するダンジョンがあったため、各国の船が近づくことができなかった島国である。しかし、産業革命によって従来の帆船が続々と退役し、その代わりに鋼鉄の装甲で守られた装甲艦や戦艦が騎士団の運用する軍艦として航海をするようになってからは、装甲艦に搭載されたスチーム・カノン砲によって容易く魔物を討伐することができるようになったため、多くの列強国の軍艦が、が魔物たちによって強制的に”鎖国”させられていた島国へとたどり着くようになった。
今では旧幕府軍との戦いに勝利した新政府軍が政府を作り上げ、オルトバルカ王国の技術を積極的に取り入れて国を成長させている。
その
現時点で、各国の騎士団が運用している戦艦の中で”最強の戦艦”と言われているのは、オルトバルカ王国のクイーン・シャルロット級一番艦『クイーン・シャルロット』と言われている。連装型の20cmスチーム・カノン砲を前部甲板と後部甲板に1基ずつ搭載した戦艦であり、分厚い装甲と強力なフィオナ機関を搭載しているため、機動力と防御力も異世界の戦艦の中では最高クラスである。
オルトバルカ王国では、もう既にクイーン・シャルロット級二番艦『ブリストル』を運用しており、各地で魔物の掃討や上陸した騎士たちの支援を行っている。「投入するだけで絶対に勝利できる」と言われるほど強力な戦艦であるものの、最強のクイーン・シャルロット級ですら全長はたった56mだ。
エゾから旅立った3隻の艦の大きさはバラバラだったが、その3隻の大きさはクイーン・シャルロット級を遥かに上回っていた。
単縦陣の最後尾を航行するのは、一見すると空母のように見える艦である。3隻の中では最も船体が大きく、その船体の右側に巨大な艦橋が鎮座しており、甲板の上にはずらりとヘリが並んでいるのが見える。しかし戦闘機は甲板の上には1機も並んでおらず、艦尾にはウェルドックのハッチもあるため、空母ではなく”強襲揚陸艦”であることが分かる。
その強襲揚陸艦は、『ワスプ級』と呼ばれるアメリカの艦であった。
テンプル騎士団ではフランスのミストラル級を運用しているが、倭国支部ではアメリカのワスプ級を運用しているのである。甲板の上には対戦車ミサイルを搭載した『AH-1Wスーパーコブラ』の群れがずらりと並んでおり、整備兵やパイロットたちが点検を続けていた。
ワスプ級の前を航行するのは、巨大な船体の上に巨大な砲塔を搭載した戦艦であった。前部甲板と後部甲板に巨大な36cm連装砲を2基ずつ搭載しており、その連装砲の間にはがっちりした艦橋と煙突が鎮座している。一見すると第二次世界大戦の際に活躍した戦艦のようにも見えるが、搭載されていた筈の副砲は撤去されており、第二砲塔と第三砲塔の両脇には、イージス艦に搭載されている速射砲が1基ずつ装備されている。艦橋の両脇にはずらりと対艦ミサイルが装填されたキャニスターが並んでおり、対空用のミサイルが搭載されたキャニスターやCIWSも煙突の脇に並んでいた。
単縦陣で航行する3隻の真ん中を航行しているのは、太平洋戦争で日本海軍が運用していた戦艦『金剛』であった。日本軍が運用した超弩級戦艦の中では最も火力が低いものの、戦艦の中では最高クラスの速度を誇っており、太平洋戦争では他の3隻の同型艦と共に大きな戦果をあげている。
優秀な戦艦のうちの1隻であるものの、これからその3隻の艦隊が戦うことになる敵艦隊はイージス艦や近代化改修を受けた超弩級戦艦の群れである。いくら優秀な速度を誇る金剛でも遠距離から対艦ミサイルを叩き込まれればあっという間に撃沈されてしまうため、テンプル騎士団倭国支部が保有する金剛は近代化改修を受けていた。
少なくとも、遠距離から発射されたミサイルであっさりと撃沈されることはないだろう。
そして単縦陣の先頭を進むのは――――――――テンプル騎士団が保有する、”唯一のイージス艦”であった。
前部甲板にはミサイルを発射するためのVLSと速射砲を搭載しており、艦橋には接近してくるミサイルや敵の航空機を迎撃するためのCIWSが装備されている。がっちりした艦橋の後方にある後部甲板にも、ミサイルを発射するためのVLSが搭載されている。
艦隊の先頭を航行するのは、日本の海上自衛隊で運用されているイージス艦の『こんごう』であった。
アメリカ軍に配備されているアーレイ・バーク級をベースにした日本のイージス艦であり、接近してくるミサイルを凄まじい命中精度のミサイルや砲撃で迎撃できるだけでなく、高性能なソナーと対潜装備も兼ね備えているため、海中から襲い掛かってくる潜水艦もすぐに攻撃する事が可能なのだ。
艦隊の中央を航行する戦艦『金剛』から名前を受け継いだ『こんごう』が、現時点では倭国支部艦隊の旗艦ということになっていた。
「倭国領海を離脱。ウィルバー海峡まで4時間」
「了解した」
艦橋にいる乗組員の報告を聞いた柊は、首に下げていた双眼鏡を覗きこんで海の向こうを眺めた。敵を発見したというわけではなく、ただ単に双眼鏡を覗き込んだだけである。第一、イージス艦には高性能なレーダーが搭載されているため、双眼鏡で敵を確認するよりもはるかに早く敵を察知する事が可能なのである。
テンプル騎士団倭国支部の支部長となった柊は、双眼鏡から目を離してから目を瞑った。
三大勢力の中で最も規模が小さい上に練度も低いとはいえ、本部の兵士たちの錬度は倭国支部の兵士と比べると遥かに高い。倭国支部の兵士たちが盗賊団の討伐や魔物の掃討しか経験していないのに対し、テンプル騎士団本部の兵士たちは”第二次転生者戦争”を経験しており、少しずつ成長しているのである。
間違いなく今回の吸血鬼たちの春季攻勢(カイザーシュラハト)も、転生者戦争に匹敵するほどの激戦となるだろう。倭国支部が設立されたばかりの頃と比べると、艦隊―――――――とはいえたった3隻だけである―――――――を運用できるほどの規模に成長したとはいえ、倭国支部の錬度はまだ低い。下手をすれば奮戦している本部の部隊の足手まといになってしまう可能性もあるのではないかと思った柊は、攻撃を受けている本部に部隊を派遣する手続きをしながら、本部に断られてしまうのではないかと考えていた。
しかし、襲撃を受けている本部は柊の申し出を断らなかった。
(これが初陣だ…………!)
魔物との戦いならば何度も経験しているが、現代兵器で武装した転生者との戦闘は未だに経験したことがない。この作戦に参加する倭国支部の兵士たちにとっては、この戦いこそが本当の”初陣”となる。
艦橋の中で息を呑みながら、本部との通信で確認した状況を思い出す。
今のところ、一番不利なのは海軍だという。飽和攻撃を実施して数隻のアーレイ・バーク級の撃沈に成功するものの、未だに7隻のアーレイ・バーク級が残っており、丁字戦法で旗艦ジャック・ド・モレーへの集中砲火を始めた3隻のビスマルク級戦艦と共に、テンプル騎士団艦隊へと猛攻を続けているという。
しかもその後方には、圧倒的な射程距離と、ソビエツキー・ソユーズ級戦艦を一撃で轟沈させるほどの破壊力を秘めた謎の兵器を搭載したビスマルク級や空母も待ち構えているため、このままではテンプル騎士団艦隊は敵艦隊の丁字戦法で戦力を削り取られ、後方のビスマルク級の攻撃で狙い撃ちにされてしまう。
テンプル騎士団艦隊を圧倒している吸血鬼たちの艦隊の陣形は隙が無いが、柊は敵艦隊の陣形の弱点を既に発見していた。
―――――――戦艦やイージス艦を始めとする艦を、前方に配置し過ぎているのである。
敵艦隊の切り札は、間違いなく後方に鎮座するビスマルク級に搭載された”謎の兵器”であることは火を見るよりも明らかだ。イージス艦を丁字戦法を敢行している3隻の戦艦の後方に配置することでテンプル騎士団艦隊のミサイル攻撃を封じているため、後方にいるビスマルク級や空母は堂々とテンプル騎士団艦隊を攻撃することができるというわけだ。
つまりテンプル騎士団艦隊が敵艦隊に勝利するためには、まず目の前にいる3隻のビスマルク級を撃破し、7隻のイージス艦を突破してから、後方の艦隊の攻撃を回避しつつ射程距離まで接近しなければならないのである。
敵艦隊の旗艦へと攻撃を仕掛ける頃には、ミサイルを使い果たしている上にテンプル騎士団艦隊が満身創痍になっているのは想像に難くない。
だが―――――――敵艦隊の陣形は、”正面から攻撃してくる敵艦隊を攻撃することに特化”した陣形であるため、側面や後方から攻撃を受けることを全く想定していないのである。旗艦を護衛するためなのか、2隻の近代化改修型の重巡洋艦もいるものの、たった2隻の巡洋艦では後方から飽和攻撃をお見舞いされた際に旗艦を守り切ることは難しいだろう。
そこで、柊は地上部隊を乗せたワスプ級を本部の部隊の支援に向かわせ、こんごうと金剛の2隻で敵艦隊の後方に鎮座する艦隊の旗艦と空母へと奇襲を実施することにした。
たった2隻で5隻の敵艦隊に攻撃を仕掛けるのは正気の沙汰とは思えない作戦だが、上手くいけば敵艦隊の旗艦を”謎の兵器”もろとも撃沈することができるだろう。撃沈する事が出来なくても、その”謎の兵器”を破壊すれば味方艦隊の損害を防ぐことができる。仮にどちらも失敗したとしても、後方からいきなり攻撃を受けた敵艦隊は慌てふためく筈だ。
モリガン・カンパニーと殲虎公司の二大勢力が参戦するのだから、上手くいけば敵艦隊は奇襲を敢行するこんごうと金剛の攻撃を、モリガン・カンパニー艦隊の攻撃と勘違いして混乱してくれるだろう。
海戦に勝利することができれば、河へと戻って敵の地上部隊へ艦砲射撃をお見舞いできる筈だ。敵の航空部隊が攻撃してきても、テンプル騎士団が保有する唯一のイージス艦であるこんごうならば、容易く撃墜することができるのである。
「よし、俺はCICに行ってくる」
「了解です、支部長」
艦橋にいた乗組員に告げてから、彼は艦橋を後にする。
テンプル騎士団本部の団員たちは様々な種族で構成されているのが特徴である。人間やエルフだけでなく、数が少ない吸血鬼や、サキュバスの唯一の生き残りの団員まで所属しているのだ。
しかし、倭国支部は人間の団員たちばかりで構成されている。他の種族の団員たちも数人だけ所属しているものの、彼ら以外の兵士たちは全員人間なのだ。ちなみに先ほど艦橋にいた乗組員たちは、ボシン戦争で敗北した旧幕府軍の敗残兵たちである。倭国を支配した新政府軍に抵抗を続けるために攻撃の準備をしようとしていたところを柊が説得し、テンプル騎士団へと引き入れたのだ。
通路の中で息を吐きながら帽子をかぶり直した彼は、CICへと向かって歩いて行くのだった。
「
「発射(アゴーニ)!」
砲手の座席に座るイリナが復唱した直後、チョールヌイ・オリョールに搭載された152mm滑腔砲が火を噴いた。彼女が覗き込んでいる照準器の向こうへと炎を纏った砲弾が飛翔していき、外殻を脱ぎ捨ててから近代化改修型のマウスの側面へと突き刺さる。
ヴリシアの戦いまでは、テンプル騎士団の運用する
そこでテンプル騎士団は、恐るべき近代化改修型の超重戦車を撃破するために、主砲を大口径の152mm滑腔砲に換装したチョールヌイ・オリョールを運用することにしたのである。さすがに近代化改修型マウスの砲撃を防ぐことは不可能だが、マウスと比べると小回りが利く上に、主砲は側面の装甲であれば貫通することができたため、航空部隊による攻撃や艦砲射撃を要請しなくても戦車部隊のみでマウスを撃破できるようになったのだ。
とはいえ、団員たちの生存率を底上げするために全ての車両にアクティブ防御システムを標準装備している上に、チョールヌイ・オリョールはコストの高い戦車であるため、チョールヌイ・オリョールは一部の部隊にしか配備されていない。
ナタリアが指揮を執る”ドレッドノート”から放たれたAPFSDSが、タンプル砲と36cm要塞砲の砲撃から生き延びた幸運なマウスの砲塔の側面に容赦なく突き刺さる。マウスを撃破する事を想定した152mm滑腔砲の砲弾は分厚い装甲を易々と貫通すると、装甲もろとも砲手の肉体を食い破って自動装填装置を直撃し、砲身へと装填される予定だった
160mm滑腔砲から解き放たれる筈だった
「命中!」
「さすがイリナちゃん! もう1発お見舞いしてちょうだい!」
「はーいっ!」
指示を出しながら、ナタリアはタンプル砲の砲弾が着弾したのを目の当たりにしたイリナが、幸せすぎて気を失っていた事を思い出してしまう。
どういうわけか爆発を好む彼女は、自分の使う銃を全て爆発する砲弾や炸裂弾を発射できる武装のみで統一している。しかも魔術まで爆発する魔術だけ習得しており、初歩的なファイアーボールは使えないという。
MOAB弾頭を搭載した砲弾の爆発を目の当たりにしたイリナは、その爆炎を照準器で覗き込んでから、「にゃー…………♪」と言いながら気絶してしまったのである。
自動装填装置が巨大なAPFSDSを砲身へと装填していくが、砲撃準備が整うよりも先に、後方から飛来した数発の対戦車ミサイルが手負いのマウスの正面装甲に立て続けに喰らい付き、そのままマウスを擱座させてしまう。先ほどイリナの砲撃が食い破った風穴や主砲の砲身の付け根から黒煙が吹き上がり、ハッチから火達磨になった乗組員たちが躍り出る。
後続のT-90やチョールヌイ・オリョールたちが、一斉に対戦車ミサイルを放ったのだ。いくら分厚い装甲を装備しているとはいえ、対戦車ミサイルをこれでもかというほど叩き込まれれば防ぎ切るのは不可能である。
しかもタンプル砲や”副砲”による砲撃の爆風でアクティブ防御システムが機能していなかったらしく、ミサイルは全て正面装甲へと命中していた。
「あ、獲物を横取りされちゃった…………!」
「落ち着いてください、同志イリナ。獲物はまだまだいますよ」
「ふふふっ…………じゃあ、僕が全部吹っ飛ばしてやる♪」
強襲殲滅兵の1人として最前線で戦っているステラの代わりに操縦士を担当しているのは、ハイエルフの少女の『ターニャ』という少女だった。年齢はナタリアと同い年であり、ヴリシアの戦いの前にテンプル騎士団によって保護された奴隷のうちの1人である。
訓練を受けてテンプル騎士団の一員となったターニャは戦車の操縦士としてヴリシアの戦いにも参加し、仲間と共に傷だらけのエイブラムスを操縦してヴリシアの戦いから生還した数少ないベテランなのだ。
長い金髪の中から突き出た自分の白い耳を指で撫でた彼女は、モニターを覗き込みつつ重装備の戦車を前進させていく。先ほど撃破されたマウスの脇を通過した瞬間、戦車部隊の先頭を進んでいたシャール2Cの1号車『プロヴァンス』の放った2発のAPFSDSが、後退しながら砲撃し続けていたレオパルトの砲塔を抉り取った。
複合装甲やターレットもろとも砲塔を捥ぎ取られたレオパルトの車体は、黒煙と火花を吹き上げながら停止してしまう。
マウスを撃破する事を想定した武装であるため、通常の戦車とは威力が桁違いなのだ。しかもチョールヌイ・オリョールと搭載している主砲は同じだが、向こうは”連装砲”である。
巨大なシャール2Cの周囲を走りながら逃げていく歩兵たちを37mm戦車砲で吹き飛ばしているのは、同じく無人戦車であるルスキー・レノの群れだった。装甲が薄い上に武装の火力も低いが、あくまでも歩兵の集団を攻撃するための兵器である。敵の戦車と戦う場合は後退させ、代わりにテンプル騎士団の戦車部隊が前進することになっているのだ。
撤退していく突撃歩兵たちをモニターで見つめていたナタリアは、その突撃歩兵たちの向こうに巨大な戦車の群れが鎮座していることに気付いた。
通常の戦車よりも巨大なキャタピラが搭載された車体の上に鎮座しているのは、従来の戦車をあっさりと吹っ飛ばしてしまうことができるほどの破壊力を誇る戦車砲が搭載された砲塔である。
「マウス…………!」
「あははっ、獲物だねぇ♪」
「同志ナタリア、敵の本隊です」
「ええ…………!」
突撃歩兵による攻撃が失敗したため、彼らが防衛戦を突破した後に突撃する予定だった本隊が前進してきたのだろう。
戦力はテンプル騎士団の7分の1だが、練度はテンプル騎士団よりも上だろう。
「強襲殲滅兵を一旦後退させて」
「了解(ダー)」
いくら屈強な強襲殲滅兵でも、敵の戦車砲で砲撃されればあっという間に壊滅してしまうのは想像に難くない。
モニターの向こうに姿を現したマウスの隊列を睨みつけながら、ナタリアは唇を噛み締めた。
おまけ
料理が上手いのは誰?
タクヤ「そういえば、この中で料理が上手い人って誰? 母さんかな?」
ラウラ「ふにゅー………私はあまり自信ないなぁ…………」
エミリア「いや、私よりもフィオナの方が上手いぞ?」
フィオナ『ありがとうございますっ♪ …………でも、モリガンの関係者の中で一番上手いのは李風(リーフェン)さんだと思いますよ?』
タクヤ&ラウラ「え?」
リキヤ「1人ですぐに満漢全席作れるんだぞ、あいつ。殲虎公司の本部に行く度に作ってくれるんだよな」
タクヤ(まっ、ま、満漢全席ぃ!?)
完