異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
灰色の砂漠の向こうから前進してくる軍勢の先頭を進むのは、分厚い装甲に覆われた巨躯の隊列だった。歩兵どころか装甲車や戦車まで踏み潰すことができるのではないかと思ってしまうほど巨大なキャタピラが搭載された車体の上には、従来の戦車よりも巨大な砲塔が鎮座しており、その正面からは太い砲身が伸びているのが分かる。
巨大な砲塔の上に乗っているのは、対戦車ミサイルを迎撃するために搭載されたアクティブ防御システムのターレット。分厚い装甲を搭載しているというのに、ミサイルを迎撃できる装備まで搭載しているため、対戦車ミサイルの攻撃だけで撃破するのは至難の業だろう。
反撃で大損害を何度も被り、テンプル騎士団の兵力の7分の1まで減ってしまったとはいえ、敵の本隊には未だに30両ほどの近代化改修型マウスと、40両のレオパルト2が残っていたようだ。
砂漠にキャタピラの跡をこれでもかというほど刻みつけながら進軍してくる戦車たちを双眼鏡で眺めながら舌打ちをし、後続の強襲殲滅兵に合図を送って進撃を止めさせる。
いくら対戦車兵器を装備しているとはいえ、味方の砲撃とパンジャンドラムの突撃で攪乱された状態の敵へと突っ込んだからこそ、強襲殲滅兵はたった50名で敵部隊に大打撃を与え、浸透戦術を頓挫させることができたのだ。しかし砂漠の向こうからやってくる敵の本隊は、防衛戦の突破に失敗した挙句、虎の子の突撃歩兵を何名も失ってしまったことを知って警戒している。テンプル騎士団の守備隊よりも数は少ないものの、たった50名の強襲殲滅兵で突撃してもキャニスター弾や
『同志団長、聞こえますか? ターニャです』
「ああ、聞こえる。こっちは進撃を中止した」
無線機の向こうから聞こえてきた声は、ナタリアとイリナが乗っているチョールヌイ・オリョールの操縦士を担当しているハイエルフの少女だ。ヴリシアの戦いにも参加して生還してきたベテランの操縦士である。
ちなみに彼女が乗っていたエイブラムスは今でも訓練用に使用されており、よく要塞砲の間を爆走している。
『了解です。同志ナタリアも進撃を中止するべきだと言っておりましたので』
「安心しろ。俺らは戦車砲に向かって突っ込むバカじゃないさ」
『では、安心させていただきますね』
「はいよ」
苦笑いしながら、双眼鏡でもう一度マウスの群れを確認する。
相手は30両のマウスと40両のレオパルト2の群れだ。しかも強襲殲滅兵から逃げ切った突撃歩兵たちも合流しているらしく、ボロボロの突撃歩兵たちも戦車の砲塔に乗って一緒に進撃してくる。
それに対し、こっちは合計で43名の強襲殲滅兵のみ。後方から進撃してくる守備隊と合流することができればこっちも突撃できるんだが、さすがに合流せずに突撃すれば全滅してしまうだろうな。
「ステラ」
「了解(ダー)」
あくまでも、俺たちの目的は最終防衛ラインを守る事だ。朝になればモリガン・カンパニーと殲虎公司(ジェンフーコンスー)の連合軍が合流するため、確実に勝利することができるだろう。けれどもその連合軍が合流する前に、最終防衛ラインの突破を許してしまったら俺たちの敗北だ。タンプル搭の守備隊まで出撃させて最終防衛ラインを構築したため、タンプル搭には少数の警備隊しか残っていないのである。
戦車にはほとんど効果がないが、ここで少しばかり足止めするとしよう。
がっちりしたバイポッドを展開してから伏せたステラが、進撃してくる敵の戦車の群れへとKord重機関銃のでっかいマズルブレーキを向けながら、対空照準器を向ける。俺もAK-12を腰の後ろにあるホルダーに突っ込んで左手を突き出し、生産済みの銃の中から愛用のOSV-96を選択する。背中にあるRPG-7を近くにいた兵士に手渡してから画面をタッチした直後、ロケットランチャーがなくなったおかげで軽くなったばかりの背中が再び重くなる。
背中へと手を伸ばしてグリップを掴み、折り畳まれていた長大な銃身を展開。安全装置(セーフティ)を解除してからバイポッドを展開し、スコープの蓋を開ける。念のためT字型マズルブレーキの下に折り畳まれているスパイク型銃剣も準備しておくことにしよう。
銃床の下部に折り畳まれているモノポッドも展開してから、スコープを覗き込んで射撃準備に入る。レンジファインダーで距離を確認した俺は、舌打ちをしながらかぶっていたガスマスクを取り外した。
敵との距離は約5km。使用する弾薬を12.7mm弾から14.5mm弾に変更し、銃身を伸ばして射程距離を底上げしたとはいえ、この改造したOSV-96の有効射程は2.2kmだ。標的に攻撃をお見舞いするのは難しいだろう。
ため息をついてから、マガジンを取り外す。コッキングレバーを引いて既に装填されていた1発もエジェクション・ポートから取り出してから、ポーチの中にあるOSV-96の別のマガジンを取り出す。
中に入っているのは、銀で作られた14.5mm強装弾。通常の弾薬よりも炸薬の量を増やしているため、少しくらいは射程距離が延びるだろう。とはいえ、さすがに5km先にいる標的を撃ち抜くことは不可能だろう。当たり前だが、戦車の装甲に命中しても確実に弾かれてしまう。
あくまでも狙撃するのはタンクデサントしている敵兵や、戦車の砲塔に搭載されているアクティブ防御システムのターレットだ。
対戦車ライフルの弾丸が戦車の装甲を貫通できる時代は、とっくに終わっているのである。
「弾薬が足りなくなったら行ってください。ステラがたっぷり持ってます」
「助かるよ」
彼女のKord重機関銃と俺のOSV-96が使用する弾薬は同じなので、いざとなったら分け合う事ができるのである。背中に背負っていたでっかい箱を傍らに置いたステラは、その箱の蓋を開け、中にこれでもかというほど詰まっていた14.5mm弾のベルトを小さな手で叩いた。
改造されたステラの得物は、第二次世界大戦中に対戦車ライフルの弾薬として運用されていた弾薬を連射できるのだ。さすがに現代の戦車や装甲車には効果がないものの、ヘリや装甲すら纏っていない歩兵たちには確実に猛威を振るう。歩兵よりもはるかに堅牢な装甲を撃ち抜くことを想定した大型の弾薬なのだから、歩兵の肉体に命中すれば木っ端微塵になってしまう。
進撃を止めた強襲殲滅兵たちは、砂の上に伏せて敵部隊を迎撃する準備を始めていた。腰に下げていた迫撃砲を内蔵したスコップを引き抜き、傍らに予備の砲弾を置いて砲撃準備を始める兵士もいるし、ステラと同じように重機関銃のバイポッドを展開して砂の上に伏せる兵士もいる。
彼らの奥にいるハーフエルフの兵士は、背負っていたでっかいトライポッドの上にオークの兵士が担いでいたソ連製無反動砲のSPG-9を搭載し、照準器のチェックをしているようだった。
敵の砲撃が命中しませんようにと祈った直後、俺たちの頭の上をマウスが放った
立て続けに戦闘のマウスたちが砲撃を始めたが、砲弾は次々に俺たちの頭の上を掠めていくと、後方に屹立している砂の山へとめり込んで立て続けに爆炎を生み出し始めた。
「ははははっ。外れてるぞ、吸血鬼(ヴァンパイア)共」
多分、強襲殲滅兵に支給したこの深紅と漆黒の迷彩模様の防護服のおかげだろう。
強襲殲滅兵が身に纏っている防護服は、深紅と漆黒の二色の迷彩模様である。非常に目立つ模様であるため、そのまま敵部隊に向かって突撃すれば集中攻撃を受けて大損害を被るのが関の山だが―――――――味方の砲撃によって爆炎が支配する戦場の真っ只中では、この迷彩模様は保護色となる。
いたるところが燃え上がり、業火と焦げた残骸で彩られる焼け野原と、この迷彩服の模様がそっくりなのである。しかも黒煙を吹き上げながら燃え上がる業火の色にも似ているため、味方の砲撃の直後や焼け野原での戦闘では、逆に全く目立たないのだ。
つまりこの禍々しい模様の防護服は、最前線で死闘を繰り広げることを想定した強襲殲滅兵にうってつけなのである。
俺たちの後方には、未だに黒煙を吹き上げながら燃え上がる戦車の残骸がこれでもかというほど転がっている。しかもタンプル砲や36cm要塞砲が放ったMOAB弾頭が着弾したおかげで、俺たちの後方の砂漠は火種と黒焦げの残骸に彩られた焼け野原と化していた。
そのおかげで、敵の戦車部隊は俺たちに正確な砲撃をお見舞いできないというわけである。
「同志、砲撃準備ができました!」
「よし、一発ぶっ放したらすぐ逃げろ!」
「了解(ダー)!」
「
「発射(アゴーニ)!!」
猛烈なバックブラストが躍り出たかと思うと、爆炎を纏った1発の水銀榴弾が砲口から飛び出した。敵のマウスが放った遥かに巨大な
直撃したレオパルト2は全く損傷していなかったが、その水銀榴弾の中から産声を上げた爆風と水銀の斬撃たちは、戦車ではなくその砲塔の上に乗っていた吸血鬼の歩兵たちを蹂躙する。
圧倒的な衝撃波に押し出されて斬撃と化した水銀が兵士たちの手足を容易く両断し、身体を引き裂いてしまう。砲弾の破片と共に飛翔した水銀の雫によって胸板を貫かれ、胸骨もろとも心臓を撃ち抜かれた兵士が、鮮血を噴き出しながら戦車の上から転がり落ちていった。
砲弾の命中を確認したハーフエルフの砲手は歓声を上げずにニヤリと笑いつつ、素早く無反動砲をトライポッドから取り外す。装填手を担当したオークの兵士もニヤニヤと笑いながら弾薬の入った箱とトライポッドを担ぎ、姿勢を低くしながら別の場所へと移動していった。
彼らが砲撃した場所に敵の戦車が放った
「やるなぁ…………!」
砲撃が命中した…………!
戦車にダメージは与えられなかったが、タンクデサントしていた吸血鬼共は今の砲撃で木っ端微塵だ。
別の場所で再び砲撃の準備を始めた兵士たちを見つめてから、もう一度レンジファインダーで標的との距離を確認する。”焼け野原”の前で待ち伏せをしている俺たちをとっとと始末するために増速したらしく、敵の本隊との距離はすでに2.4kmとなっていた。
そろそろカスタマイズしたOSV-96の有効射程に入る。強装弾ならば発射しても大丈夫だろうか。
呼吸を整えながら、ちらりと周囲の強襲殲滅兵たちの様子を確認する。兵士たちはすでに攻撃の準備を終えており、敵の本隊が自分たちの装備している武器の有効射程に入るのを待っている状態のようだった。
左手を銃床から離し、そっと上へと伸ばす。
兵士たちが素早く照準器を覗き込み、トリガーへと指を近づけていく。
レンジファインダーをもう一度確認し、距離が2.3kmになっていることを確認した俺は――――――――上へと伸ばした左手を、思い切り前方へと振り下ろしていた。
その瞬間、構えていた兵士たちの重機関銃が立て続けに火を噴いた。砂の上に伏せて照準器を覗き込んでいた兵士の重機関銃が12.7mm弾や14.5mm弾を凄まじい勢いで連射し、戦車の周囲を走っていた歩兵やタンクデサントしていた兵士たちを薙ぎ払っていく。
戦車の装甲の表面で何度も火花が産声を上げ、跳弾した弾丸が戦車の周囲にいる随伴歩兵に牙を剥いた。
スコープを覗き込み、先頭を進むマウスに照準を合わせる。もちろん14.5mm弾の強装弾とはいえ、戦車の装甲を貫通することはできない。なので、こいつであの戦車を撃破するわけではない。
標的は、砲塔の上に居座っている、対戦車ミサイルを片っ端から迎撃してしまう忌々しいアクティブ防御システムだ。
傍らでステラがKord重機関銃を連射する音を聞きながら、トリガーを引いた。
エジェクション・ポートが凄まじい速さで開き、火薬の臭いと煙を纏った大きな薬莢が躍り出る。T字型の大きなマズルブレーキから躍り出た14.5mm強装弾は、炎を纏いながら冷たい風と砂塵を切り裂いて飛翔し、巨大な戦車の砲塔へと直進していく。
レティクルの向こうにあるアクティブ防御システムのターレットが、唐突に火花を吐き出した。ターレットの隙間から黒煙がうっすらと姿を現し、ターレットが動かなくなってしまう。
今の一撃で破壊することができたらしい。
ニヤリと笑いながら次の戦車のターレットへと狙いを定めるけれど、強装弾のマガジンはこれだけだ。後は徹甲弾のマガジンが1つと、通常の銀の弾丸が入ったマガジンが6つある。あとは最初にエジェクション・ポートから排出した1発の弾丸だろう。
次の標的を狙おうとしたその時、後方の焼け野原の方から爆音が轟いた。敵の砲撃が着弾したのかと思った俺はぎょっとしてスコープから目を離してしまったが――――――――その爆音は、敵の恐るべき超重戦車を蹂躙するために生み出された、虎の子の超重戦車たちの咆哮であった。
夜空と灰色の砂漠の間に2本の白煙を刻み付けながら、2発の巨大な対戦車ミサイルが飛翔していく。俺は「あの戦車を狙え」と指示を出した覚えは全くなかったんだが、その戦車は今しがたアクティブ防御システムを潰されたマウスへと直進すると、巨大な主砲の砲身の付け根へと喰らい付いた。
砲塔に巨大な対戦車ミサイルがめり込んだ瞬間、爆炎と衝撃波がマウスの巨体を包み込んだ。複合装甲で覆われた戦車も容易く撃破してしまう破壊力を誇る主砲の砲身がへし折れたかと思うと、砲塔の上に装備されていたハッチやアクティブ防御システムのターレットが爆炎に押し上げられ、鋼鉄の残骸の混じった火柱が砂漠の戦場を彩る。
苦笑いしながら、俺はゆっくりと後ろを振り向いた。
「すげえ破壊力だな…………」
「火力を増強したのは正解でしたね、タクヤ」
ステラはもう既に今の対戦車ミサイルを放った味方の正体を察していたらしく、誇らしげにそう言いながらKordで敵を掃射しながらそう言った。
やがて、俺たちの後方から装甲に覆われた巨大な怪物が姿を現す。
装甲に覆われた巨大な車体に搭載されているのは、通常の戦車を容易く踏みつぶしてしまうほどがっちりとしたキャタピラと、側面から突き出た37mm戦車砲の砲塔。車体の上には巨大な2本の砲身が突き出た大型の砲塔が居座っており、敵の戦車へと狙いを定めている。
車体の後部には100mm低圧砲と30mm機関砲を搭載した砲塔まで装備しており、後方に回り込まれたとしても圧倒的な火力で敵を即座に叩き潰すことが可能であった。
砂漠の向こうから次々に姿を現したのは――――――――テンプル騎士団が運用している、虎の子のシャール2Cたちであった。
本来ならば様々な重要拠点に配備されている”切り札”であるため、車体に施されている塗装は異なる。中には蒼と黒のスプリット迷彩や、白と黒のダズル迷彩が施された車両も見受けられる。
塗装は全く違うものの、吸血鬼たちが運用している超重戦車を叩き潰し、敵の戦車部隊を”蹂躙”するために生み出された12両の兄弟たちであった。
先陣を切ったのは、満身創痍の状態で敵の戦車部隊を蹂躙し、ブレスト要塞から生還した2号車『ピカルディー』。その斜め後ろを、主砲同軸に搭載された14.5mm機関銃を連射しながら前進しているのは、1号車『プロヴァンス』だった。
マウスから飛来したAPFSDSが、先陣を切っていたピカルディーの正面装甲に牙を剥く。砂漠にキャタピラの跡を刻み付けながら前進していた巨体に、巨大なAPFSDSが3発ほど立て続けに命中したが――――――――分厚い正面装甲を搭載しているピカルディーは、複合装甲を貫通するほどの威力を誇る砲弾が命中したにもかかわらず前進を続けていた。
他の車両にもAPFSDSが命中するが、シャール2Cに搭載された分厚い正面装甲が少しばかりへこむ程度である。
そしてシャール2Cの152mm連装滑腔砲が火を噴く度に、マウスやレオパルトたちが爆炎を吹き上げて動かなくなっていく。
『タクヤ、お待たせ!』
「もう突っ込んでもいいだろ!?」
『ええ、大暴れしなさい!』
「了解(ダー)! ―――――――よし、突っ込むぞ!」
バイボットとモノポッドを再び折り畳み、アンチマテリアルライフルのキャリングハンドルを左手で掴む。他の強襲殲滅兵たちも射撃を止めて突撃の準備を済ませたのを確認した俺は、仲間たちと共に敵の本隊へと向けて突っ走り始めた。
虎の子のシャール2Cたちと共に、吸血鬼共を蹂躙してやる………!