異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
星空の中を舞う巨大な鯨のような超大型輸送機の後部のハッチが開いたかと思うと、格納庫の中から立て続けに灰色の迷彩服に身を包んだ兵士たちが躍り出る。やがて夜空の中で無数の灰色のパラシュートが膨れ上がり、兵士たちをゆっくりと地上へ送り届け始めた。
2機のAn-225が兵士たちを降下させている間に、1機のAn-225が急激に高度を落とし始めた。そのまま砂漠に着陸するつもりなのではないかと思ってしまうほど高度を下げた超大型輸送機は、兵士たちを夜空へと解き放つ同型機たちのように後部のハッチを開くと、武装した兵士たちよりもはるかに巨大で獰猛な怪物を解き放つ準備を始める。
ちなみに、An-225のハッチは機首のハッチしか存在しないのだが、モリガン・カンパニーやテンプル騎士団で運用されているAn-225は改造を施されており、後部のハッチも追加されていた。そのため歩兵たちをこのようにパラシュートで降下させる任務にも投入できるのである。
高度を落としたAn-225の後部のハッチの中から、何の前触れもなく歩兵用にしては大きなパラシュートが飛び出す。あっという間に猛烈な空気抵抗に晒された巨大なパラシュートが、格納庫の中で眠っている怪物を冷たい風が支配する砂漠へと引きずり出そうとする。
やがて、格納庫に積み込まれていた怪物が、パレットと共に躍り出た。
車体にはキャタピラが装着されており、大口径の主砲が搭載された砲塔が車体の上に搭載されている。しかし車体の形状は装甲車のようなデザインになっており、砲塔から突き出ている主砲の砲身もやけに短いため、
An-225の中から躍り出たのは、ベトナム戦争でアメリカが運用していた『M551シェリダン』と呼ばれるアメリカ製の空挺戦車であった。主砲は対戦車ミサイルの”シレイラ”も発射可能な大口径の152mmガンランチャーとなっており、極めて高い攻撃力を誇っている。機動性も高い上に水上を進む事もできるため、広大な河を突破することも可能である。
だが、戦車の中では装甲がかなり薄いという欠点があるため、対戦車用のロケットランチャーに被弾すればあっさりと撃破されてしまう恐れがある。そのため、ハーレム・ヘルファイターズに配備されたシェリダンには少しでも生存率を上げるためにアクティブ防御システムと爆発反応装甲が搭載されており、防御力が向上していた。
爆発反応装甲とアクティブ防御システムを搭載したシェリダンが、3両ほどAn-225の格納庫から飛び出していく。戦車が格納庫から躍り出るよりも先に飛び出した巨大なパラシュートが猛烈な空気抵抗に晒され、格納庫の中の戦車を引きずり出していく。
An-225の中から3両のシェリダンが飛び出し、地上へと降り立って行った。
戦車の中では極めて軽いシェリダンの後に躍り出ようとしているのは、彼らよりもはるかに重いフランス製の
がっちりちした複合装甲に覆われた車体の上には、同じく分厚い装甲に覆われた砲塔が搭載されており、その正面からは長大な滑腔砲の砲身が伸びているのが分かる。その砲身の隣には、滑腔砲の砲身よりもはるかに小さな12.7mm機関銃の銃身が伸びており、砲塔の上にも同じく機関銃が鎮座している。
輸送機の中に搭載されていたその戦車は、『ルクレール』と呼ばれるフランスの戦車であった。分厚い装甲と圧倒的な攻撃力を兼ね備えている上に機動性も高く、強力な主砲の命中精度も優れている高性能な戦車である。
シェリダンのように強力な対戦車ミサイルを発射できるわけではないものの、様々な種類の砲弾を発射することができるようになっている。
コストが非常に高いという欠点があるが、端末でこの戦車を生産したリキヤはお構いなしに何両も生産しており、ハーレム・ヘルファイターズやエイナ・ドルレアンに配備されているドルレアン家の私兵たちに支給している。防御力も優秀な戦車だが、少しでも防御力を底上げするためにアクティブ防御システムまで搭載されており、接近してくる対戦車ミサイルを片っ端から迎撃することができるようになっていた。
空気抵抗に晒された巨大なパラシュートに引きずり出されるかのように、今度は灰色に塗装されたルクレールの巨体が輸送機の外へと躍り出た。パレットと共に灰色の砂漠へと怪物たちが降り立ったことを確認したAn-225は、まるで滑走路から離陸した直後の輸送機のようにゆっくりと高度を上げ、歩兵たちを降下させていた味方の編隊と合流すると、そのままカルガニスタンの砂漠から飛び去っていくのだった。
戦死したオークの兵士から拝借した棍棒が敵兵のヘルメットを打ち据えた直後、ぐしゃ、とヘルメットもろとも吸血鬼の頭が潰れる音がした。ちょっとした重機関銃よりも重い棍棒には釘バットのようなスパイクがこれでもかというほどついている上に、そのスパイクは全て吸血鬼が苦手とする銀でできているため、今しがたこれで頭を叩き割られた敵兵が再生することはないだろう。
血と脳味噌の破片がこびりついた棍棒を薙ぎ払い、銃剣を装着したXM8で突っ込んできた敵兵の頭を砕く。左から右へと思い切り振り払った棍棒で頭を粉砕された敵兵が頭蓋骨や脳味噌の一部を巻き散らしながら吹っ飛んで行き、灰色の砂の上で痙攣を始めた。
左手のPL-14を突き出し、セミオート射撃で敵兵の胴体に風穴を開ける。敵兵が崩れ落ちるのを確認しつつ棍棒を投げ捨て、ハンドガンをホルスターに戻してからAK-12を再び構えた。
かなりマガジンを使ってしまった。今装着されているマガジンが、間違いなく最後のマガジンだろう。これを使い果たしてしまったら味方から弾薬を分けてもらうか、別の武器を使って敵兵を退けるしかない。
敵部隊の隊列の中へと突入し、早くも白兵戦を繰り広げている強襲殲滅兵も損害を出しつつあった。いくら敵が全体的に後退を始めたとはいえ、死に物狂いで最終防衛ラインへと攻撃を仕掛けてきた敵部隊の指揮は未だに高い。アサルトライフルを投げ捨てて逃げ出す兵士も見受けられるが、中には逃げてたまるかと言わんばかりに味方の投げ捨てたライフルを拾い上げ、応戦してくる屈強な兵士たちもいた。
撃たれた味方の兵士を、ヒールを使うことのできるハーフエルフの兵士たちが必死に残骸の影で治療しているのが見える。いくら敵兵が使っている弾薬が5.56mm弾や6.8mm弾とはいえ、立て続けに被弾すればいくら身体が頑丈な種族でも危険なのだ。
胸板に何発も弾丸を叩き込まれた兵士を励ましながら治療していた兵士が、唐突に落下してきた迫撃砲の砲弾が生み出した爆風に包まれる。血まみれになった味方を励ましていた兵士の声が爆音に呑み込まれたかと思うと、俺の耳へと流れ込んでくるはずだった戦場の音が聞こえなくなった。キーン、という音だけが俺の耳の中で暴れまわり、全ての音をかき消してしまう。
ぼとん、と砂と血まみれの腕が、すぐ近くに落下してきた。
「…………!」
先ほどまで味方を治療していた兵士が、見当たらない。砲弾が落下してきた場所の近くには、砂まみれになった大きめの肉片がいくつか転がっていて、その肉片の傍らには血まみれのAK-12が転がっていた。
敵の迫撃砲か…………!
呼吸を整えながら耳に装着している小型無線機のマイクを左手で掴む。
「ステラ、聞こえるか?」
『はい、聞こえます』
「敵の迫撃砲は見えるか?」
『
「よし、制圧射撃を頼む」
『お任せください』
もう一度呼吸を整え、先ほど迫撃砲の砲撃で肉片になった味方の死体の群れへと向かって突っ走った。敵兵に見つかってしまったのか、やけに大きな弾丸の群れ―――――――多分MG3かブローニングM2重機関銃だろう――――――――がこっちに容赦なく飛んでくる。数発が肩や太腿に命中して凄まじい衝撃をプレゼントしてくれたが、防護服の下で外殻を使って硬化していたおかげで、俺まで肉片にならずに済んだ。
擱座したレオパルトの残骸の影へと滑り込み、肉片と化してしまった味方の兵士の死体が身につけていたホルダーやポーチの中から、まだ弾薬の入っているAK-12用のベークライト製のマガジンを拝借する。戦死した味方の死体に向かって「許せ」と呟いてから、そのマガジンを自分のポーチに突っ込み、擱座したレオパルトの影からこっちに弾丸を放ち続けている機関銃の射手の近くに、グレネードランチャーの水銀榴弾をお見舞いする。
ポンッ、とグレネード弾が飛び出していき、黒焦げになったM2ブラッドレーの砲塔を盾にしながらMG3を連射していた兵士のすぐ近くに着弾した。爆風と共に内蔵されていた水銀が飛び出し、衝撃波に押し出されたことによってちょっとした斬撃となった水銀が敵兵の肉体を切り刻む。
恐ろしいMG3のフルオート射撃が止まったのを確認しつつ、俺は前進した。
M2ブラッドレーの残骸を盾にしながら呼吸を整えながら、味方の強襲殲滅兵の様子を確認する。
一番最初に突撃した時は50人もいた筈だった。5.56mm弾や6.8mm弾が被弾しても意に介さずに前進を続け、装備した重機関銃をひたすらぶっ放し続ける強靭な兵士たちは、まさに敵兵たちの脅威だったに違いない。
しかし――――――――その屈強な兵士たちの数が、予想以上に減っていた。
焼け野原の一部や爆炎の一部にも見える深紅と黒の迷彩模様の防護服に身を包んだ兵士たちの数が、減っているのだ。突撃した時は50人もいたというのに、撤退していく敵部隊を追撃している兵士たちの数は30人を下回っているのが分かる。しかもその兵士たちの大半が、物陰で衛生兵にヒールで治療してもらっている状態であった。
隠れている俺の頭上を、14.5mm弾の群れが駆け抜けていく。大破したM2ブラッドレーの砲塔の上を通過していった大口径の弾丸の群れは、その向こうにいた敵兵の肉体を瞬く間にミンチにし、灰色の砂を巻き上げる。
ステラの制圧射撃だ。
ありがとよ、ステラ。
残骸の影から飛び出し、顔を出した敵兵をAK-12のセミオート射撃で仕留める。そのまま突っ走ろうとしたが――――――――敵の迫撃砲の砲手たちが潜んでいるマウスの残骸の向こうから、装甲と強力な武装を装備した怪物が姿を現す。
白と灰色の迷彩模様に塗装された、攻撃ヘリのアパッチ・ロングボウだった。
「くそったれ…………!」
機首の下部に搭載された機関砲のターレットが、ゆっくりとこっちに向けられる。咄嗟にグレネードランチャーでもお見舞いしてやろうかと思ったが、グレネード弾を装填するために左手をポーチに伸ばすよりも先に、何の前触れもなくアパッチ・ロングボウのキャノピーに亀裂が生まれる。
アパッチ・ロングボウがお構いなしに機関砲を連射し始めるが―――――――砲弾が地面に着弾して巻き上げた砂塵の向こうで、アパッチ・ロングボウのキャノピーの向こうが真っ赤に染まった。
ぴたりと機関砲の連射が止まり、パイロットをミンチにされた攻撃ヘリがぐるぐると回転しながら墜落していく。砂で覆われた大地に叩きつけられたアパッチ・ロングボウが奏でるメインローターがへし折られる金属音を聞きながら後ろを振り返ると、後方のレオパルトの残骸の影で、アンチマテリアルライフルよりも長大なでっかいライフルを構えた強襲殲滅兵の1人が、手を振っているのが見えた。
彼が手にしているのはおそらくソ連製対戦車ライフルの”デグチャレフPTRD1941”だろう。14.5mm弾を発射する事が可能なライフルで、第二次世界大戦でドイツの戦車に猛威を振るった単発型の銃である。
非常にコストが安いライフルであったため、いくらか生産しておいたのだ。テンプル騎士団の歩兵部隊にもいくらか配備しており、7.62mm弾でも貫通できない外殻を持つ魔物への攻撃や、敵のアクティブ防御システムへの攻撃に使用している。
おそらく今しがたぶっ放したのは14.5mm徹甲弾だろう。デグチャレフPTRD1941は単発型の銃であり、連射速度はセミオートマチック式の銃と比べると劣るため、少しでもダメージを与えられるように、あの対戦車ライフルを使用する兵士には徹甲弾を支給しているのだ。
こっちも手を振って対戦車ライフルの射手に礼を言ってから、再び突撃を再開する。
マウスの車体の影から飛び出した敵兵を3点バースト射撃で蜂の巣にし、車体の後方へと飛び出すよりも先に手榴弾の安全ピンを抜く。車体のすぐ後ろから敵兵の軍服の匂いがするから、間違いなくこの車体のすぐ後ろにさっきの迫撃砲の砲手たちが潜んでいる筈だ。
安全ピンを抜いた手榴弾を握り締め、息を吐いてからその手榴弾を車体の後ろへと放り込む。すると、ヴリシア語で『手榴弾だぁッ!!』と絶叫する兵士たちの声が聞こえてきた。
咄嗟に車体から離れつつ砂の上に伏せて、身体中を外殻で覆う。
その直後、戦車砲の砲弾が直撃したのではないかと思ってしまうほどの爆炎が、装甲をAPFSDSで撃ち抜かれて沈黙していたマウスの車体を一瞬だけ揺らした。
放り投げた手榴弾が、迫撃砲の予備の砲弾を誘爆させてしまったらしい。
背中やヘルメットに降りかかった砂を軽く払い落とし、口の中に入り込んだ砂を吐き出しながら立ち上がる。灰色の砂まみれになったAK-12を拾い上げ、迫撃砲の砲手たちがどういう運命を辿ったのかを想像しながら、マウスの車体の後ろを覗き込んだ。
案の定、黒焦げの肉片と迫撃砲のひしゃげた砲身しか見当たらなかった。当たり前だけど、超重戦車の車体が揺れるほどの爆発なのだから、原形を留めている死体が残っているわけがない。
もし生きている敵兵がいたら止めを刺すつもりだったが、止めを刺すために弾丸を使う羽目にはないらしい。
その時、負傷した吸血鬼の兵士たちを砲塔の上に乗せながら離脱していた傷だらけのレオパルトの砲塔の側面に、高速で飛来した一発の砲弾が飛び込んだのが見えた。レオパルトに牙を剥く数秒前に外殻らしきものを脱ぎ捨てていたのが見えたから、多分あれはAPFSDSだろう。正面装甲よりも装甲が薄い砲塔の側面に直撃したのだから、あのレオパルトが無事で済むわけがない。
被弾した衝撃で、負傷兵たちが砂漠の上へとぶちまけられる。”傷口”から黒煙を吹き上げ始めたレオパルトがゆっくりと動きを止めたかと思うと、中から血まみれの乗組員たちが絶叫しながら飛び出してきた。
呼吸を整えながら敵の戦車が撃破される様子を見守っていた俺は、違和感を感じた。
味方の戦車はまだ強襲殲滅兵の後方で応戦を続ける敵の戦車部隊と交戦中の筈だ。側面から回り込んだ部隊でもいたのだろうか?
やがて、今しがた撤退するレオパルトに容赦のない砲撃をお見舞いした戦車が、砂で覆われた大地の向こうから姿を現す。分厚い複合装甲で覆われた車体と長大な砲身が突き出た砲塔があらわになったかと思うと、その戦車は仕留めたレオパルトの近くで負傷兵たちを助けようとしていた歩兵たちへと、躊躇せずに機関銃をぶち込み始めた。
「あの戦車は…………!」
テンプル騎士団に所属する戦車かと思ったけれど、明らかに砲塔の形状が違う。テンプル騎士団の戦車の大半はロシアの戦車で、円盤のような形状の砲塔が車体に装着されている戦車が多い。けれどもその戦車の砲塔は円盤のような形状ではなく、前まで運用していたチャレンジャー2やエイブラムスに近い形状だった。
多分あの戦車は、さっき戦場の上空を飛行していたAn-225ムリーヤの群れから投下された戦車なのだろう。
車体の側面に、これ見よがしにモリガン・カンパニーのエンブレムが描かれているのを見た俺は、苦笑いしながらその戦車を眺めた。
砂漠の向こうからやってきたのは――――――――モリガン・カンパニーが派遣した、ルクレールだった。
おまけ
強靭過ぎる
兵士1「うーん…………」
兵士2「どうした?」
兵士1「強襲殲滅兵に志願してみようと思うんだけど、悩んでて…………」
兵士2「マジかよ…………無理だって」
兵士1「何でだよ」
兵士2「これ見てみろって」
条件《5.56mm弾が被弾してもそのまま戦闘を継続できる強靭な肉体を持っている事》
兵士1「…………諦めよう」
完