異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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強襲擲弾兵

 

 放り投げられた無数の手榴弾が、唸り声をあげる魔物たちの周囲に降り注いだ。

 

 既に安全ピンを引き抜かれていたその手榴弾たちは、灰色の砂の上に着地した直後に起爆すると、爆炎と手榴弾の破片を周囲へとまき散らし、その破片や爆風の近くにいた魔物たちに猛威を振るう。

 

 起爆した手榴弾の爆発でズタズタにされ、血飛沫を噴き上げながら砂まみれになっていくゴブリンたちの死体を見つめながら、俺は生産したばかりのKS-23のチューブマガジンの中へと、12ゲージの散弾よりもさらに大口径の散弾たちを装填していた。

 

 あの手榴弾を放り投げたのは、俺ではない。俺は先ほど撃ち尽くした散弾をチューブマガジンの中へとぶち込む作業を続けていたのだから、いくら尻尾があるとはいえその最中に手榴弾を放り投げるのは難しい。

 

 魔物たちを蹂躙した手榴弾を放り投げたのは―――――――魔物たちの群れの側面で匍匐前進(ほふくぜんしん)をしている、黒服の男たちだった。テンプル騎士団で採用されている黒と灰色の迷彩服に身を包み、同じくテンプル騎士団で採用されている同じ模様のヘルメットをかぶっている。手榴弾の爆風や破片から目を守るためにゴーグルをつけており、胴体に取り付けたポーチやホルダーの中には、これでもかというほど大量の手榴弾をぶら下げているのが見える。

 

 彼らは、新しく編成された『強襲擲弾兵(きょうしゅうてきだんへい)』と呼ばれるテンプル騎士団の新しい兵士たちだった。

 

 一般的な兵士よりも多くの手榴弾を携行した兵士たちであり、味方の歩兵たちが敵部隊と交戦中に側面から敵の陣地へと忍び寄り、携行した大量の手榴弾をこれでもかというほど放り投げ続けるというかなり攻撃的な兵士たちである。しかも対人用の手榴弾ばかりではなく対戦車手榴弾も携行しているため、さすがに戦車をそれで撃破することは難しくなってしまったものの、装甲車にダメージを与えることができるのである。

 

 とはいえ、手榴弾は兵士が自分の腕力でぶん投げる兵器だ。それに対して銃は火薬の力を使って遠距離へと銃弾を射出する兵器であるため、当たり前だが必然的に手榴弾の方が射程距離が短くなってしまう。

 

 なので、この強襲擲弾兵たちが猛威を振るうには、敵部隊が味方の部隊と撃ち合っている最中に側面から忍び寄る必要がある。パーティーが始まるのは敵に肉薄してからなのだ。

 

 強襲擲弾兵たちは側面から攻撃させなければならないため、分隊の中に編入するのではなく、強襲擲弾兵だけで構成された部隊を編成し、その部隊を実戦に投入する予定だ。

 

 強襲擲弾兵のうちの1人が投擲したソ連対戦車手榴弾の”RKG-3”が、爆風でよろめいていたゴーレムの胸板へと飛び込む。戦車を吹き飛ばすために生み出された手榴弾の爆炎がゴーレムの外殻を彩ったかと思うと、岩にも似たゴーレムの外殻が次々に飛び散り、加熱された血の濃密な臭いがぶちまけられる。

 

 現代の戦車を撃破することはできなくなってしまった旧式の兵器だが、戦車よりもはるかに”装甲”が薄いゴーレムなどの魔物には有効な兵器である。なので魔物とも交戦することが多いテンプル騎士団では、旧式の兵器であるにもかかわらずまだ対戦車手榴弾は”現役”だった。

 

 他の強襲擲弾兵たちも、今度は対戦車手榴弾を投げまくる。何発かは外れてゴーレムの足元で爆発したためダメージは与えられなかったけれど、その爆風で驚いたのか、それとも爆風に突き飛ばされたのか、岩石のような外殻に包まれたゴーレムがよろめく。

 

 そこに後続の対戦車手榴弾が立て続けに飛び込み、哀れなゴーレムの上半身をミンチにしてしまった。

 

 おいおい、もうパーティーが終わっちまうんじゃねえか?

 

 せっかく試し撃ちに来たのに、と思いつつ、俺はショットガンを構えながら姿勢を低くして走り出す。俺が突撃したのを確認した強襲擲弾兵の1人が味方へと合図を送り、一時的に手榴弾の投擲を中止してくれた。

 

 ありがとよ、同志。ちょっと暴れたらすぐ離れるから、そうしたらパーティーを再開してくれ。

 

『ギィッ!』

 

「よう」

 

 仲間の血を浴びていたゴブリンに肉薄し、容赦なくKS-23をぶっ放す。

 

 このKS-23はソ連製のポンプアクション式ショットガンだ。アメリカのイサカM37をさらにがっちりとさせたような外見のショットガンで、一般的なショットガンが使用する12ゲージの散弾よりも巨大な弾丸を使用する事ができる。

 

 なんと、このショットガンは大口径の23mm弾を使用する対空機関砲の砲身を銃身に使っているので、砲弾に匹敵する大きさの弾丸を発射することが可能なのだ。あくまでもショットガンなのでアサルトライフルと比べると射程距離は短くなってしまうものの、世界中のポンプアクション式ショットガンの中でトップクラスの破壊力を誇る獰猛な代物と言っても過言ではない。

 

 なので、そんな代物から解き放たれた散弾を至近距離で叩き込まれたゴブリンが、原形を留めたまま倒れることはなかった。大口径の23×75mmR弾を叩き込まれたゴブリンの肉体が四散して周囲に鮮血や内臓の一部をまき散らし、砂漠を真っ赤に染める。

 

 地面に落ちた砂まみれの内臓を踏みつけ、そのまま前進。フォアエンドを引いてからすぐに味方の対戦車手榴弾で肩を抉られたゴーレムの口の中へと散弾をぶちまける。

 

 ズゴン、と強烈な銃声を轟かせると同時に、ゴーレムの口の周りが弾け飛ぶ。そのまま崩れ落ちたゴーレムを一瞥しつつフォアエンドを引き、やけにでかい薬莢を排出。このまま次の標的を狙おうかと思ったけれど、今回の戦闘の目的は魔物の撃滅と強襲擲弾兵たちの”テスト”だ。彼らの獲物を奪い過ぎるのは好ましくない。

 

 というわけで、大人しくそのまま群れの反対側から離脱する。後ろを追いかけてきたゴブリンをキメラの尻尾で弾き飛ばしてから味方に手を振り、パーティーを再開せよ、と指示を出す。

 

 その直後、再び安全ピンを引き抜く恐ろしい音が、砂漠の中に響き渡り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様ですわ、お兄様」

 

「ありがと」

 

 強襲擲弾兵たちと共にカサートカから降りると、格納庫でカノンが待ってくれていた。

 

 彼女からタオルを受け取り、汗を拭きつつ彼女の頭を撫でようとする。けれども自分の手に未だにゴブリンの返り血が付着していた事を思い出した俺は、はっとしつつ持ち上げた左手をすぐに引っ込めた。

 

 カノンを撫でてあげたいところだけど、血まみれの手で撫でたら彼女が汚れてしまうのでシャワーを浴びるまで我慢しよう。

 

 撫でてもらえると思っていたのか、手を引っ込めたのを見たカノンは残念そうな表情をする。シャワーを浴びたらちゃんと撫でてあげないとな、と思いつつ、とりあえず部屋に向かうことにした。

 

 さっきの戦闘はカルガニスタンに住む部族たちからの依頼だった。魔物たちはよく農作物と住民たちを狙って村を襲撃することがあったらしく、植民地だった頃はフランセンの騎士たちが村の防衛を担当していたらしい。

 

 今のカルガニスタンは独立しているので、もうフランセンに村の防衛を任せることはできない。というわけでテンプル騎士団が彼らの代わりに村を防衛したというわけだ。

 

 兵士たちを出撃させる回数は増えることになるだろうが、その分錬度を上げることはできるし、場合によっては今回のように新しい兵士や兵器のテストにも活用できるだろう。それにカルガニスタンに住む部族たちとも親密になることもできる。

 

 ちなみに今回のクライアントだった部族たちからは、ついさっきどっさりと野菜が送られてきたらしい。今夜の食卓は野菜を使った料理に支配されることになるだろう。カノンはちゃんと完食できるだろうか。

 

「そういえば、さっきクライアントから野菜がどっさりと届いたらしい」

 

「そ、そうですわね……………」

 

 野菜の話をした瞬間、カノンの顔が青くなった。彼女は相変わらずピーマンが嫌いらしい。

 

 今夜はその野菜を使って野菜スープでも作ろうかな。もちろん容赦なくピーマンはその中にぶち込むけど。

 

「お前まだピーマン苦手なのか?」

 

「ええ…………嫌いですの」

 

「ははははっ」

 

 彼女と一緒にエレベーターに乗り、居住区へと向かう。自室のある階でカノンと一緒に降りると、エレベーターの外でツナギ姿の獣人の整備兵たちが待っていた。これから戦車やヘリのメンテナンスへと向かうのだろうか。

 

 工具箱を持った彼らに「お疲れ様」と言ってからすれ違い、部屋へと向かう。

 

 とっととシャワーを浴びてカノンを撫でてあげようと思いながらドアノブを捻ってドアを開けると、どういうわけかカノンまで一緒に部屋の中に入ってきやがった。

 

 ん? 部屋に戻るんじゃないの?

 

「カノン?」

 

「なんですの?」

 

「俺、今からシャワー浴びるんだけど」

 

「知ってますわよ?」

 

「…………一緒に入るつもり?」

 

 そう問いかけると、正解だと言わんばかりにカノンは顔を赤くして、俺から目を逸らした。

 

 彼女と一緒にシャワーを浴びたら、そのまま襲われるんじゃないだろうか。数日前に彼女に睡眠薬―――――――正確に言うと対魔物用の麻酔薬だ―――――――を使われて眠らされた挙句、そのままカノンに襲われたことを思い出した俺は、ぞっとしながらカノンから距離を取る。

 

「な、何で離れるんですの!?」

 

「カノン、危険な敵からは距離を取るんだぞ」

 

「わたくしは危険ではありませんわよ!?」

 

「嘘つくなぁッ! お前俺に魔物用の麻酔薬使って眠らせやがったじゃねえか!!」

 

 しかも眠っている最中に襲われたので、ママから貰った妊娠を抑制してくれる便利な薬を飲む時間がありませんでした。下手したらラウラよりも先に妊娠する可能性があるのでやめてもらえないでしょうか。

 

 というか、あの日は俺のアハトアハトは何回火を噴いたのだろうか。

 

 カノンの事も好きだけど、出来るなら子供を作るなら結婚してからにしたいものである。でもラウラも薬を飲む前に頻繁に襲ってくるので、下手したら結婚する前にラウラかカノンが妊娠することになりそうだ。

 

 ラウラだったら問題ないかもしれないけど、カノンを妊娠させたらギュンターさんに殺されるかもしれない。下手したらカレンさんまで敵に回すことになるかもな…………。

 

 溜息をつきながらコートの上着を脱ぎ、着替えを準備してから洗面所へと持って行こうとしたその時だった。

 

『ねえ、ラウラってどうしてそんなに胸が大きいの?』

 

『ふにゅ? ママからの遺伝だよ?』

 

 …………ん? ラウラ?

 

 イリナも一緒なのだろうか。

 

『イリナちゃんだっておっぱい大きいじゃん』

 

『そ、そうかなぁ? でも一番大きいのはラウラなんじゃない?』

 

『ふにゅー…………』

 

『えいっ♪』

 

『ひゃんっ!? い、イリナちゃん!?』

 

『す、すごく柔らかい…………! えへへっ、もっと揉んでもいいよね?』

 

『ちょ、ちょっと、ダメ―――――――にゃあああああ!?』

 

 あの2人はシャワールームで何をしているんでしょうか。

 

 シャワールームのドアに耳を当てて2人の声を聞きいていた俺は、頭を掻きながらそっとドアから耳を離した。シャワールームに行くよりも大浴場に行った方が早いかもしれないな、と思いつつ踵を返そうとすると、いつの間にかドアに耳を当てて中の音を聴いていたカノンに手を掴まれた。

 

「お兄様」

 

「ん?」

 

「―――――――参戦しましょう」

 

「なんでやねん」

 

 今シャワールームの中に突入したらとんでもないことになるでしょうが。こういう時は撤退した方がいい。というか、このシャワールームの中に足を踏み入れてはいけません。片方はまだまともな女の子だけど、おっぱいが大きい赤毛の美少女は弟を容赦なく襲うとんでもないお姉ちゃんなんだから。

 

 突入したらラウラに襲われる可能性が高いし、カノンも便乗して一緒に襲ってくるだろう。最悪の場合はイリナまで襲ってくる可能性がある。

 

 2人に襲われた経験はあるけど、さすがに3人の美少女に襲われた経験はございません。

 

 というわけで私は撤退しますよ、カノンお嬢様。

 

 そう思いながら逃げようとするんだけど、カノンは俺の手を放してくれない。とりあえず彼女のもう片方の手がシャワールームのドアノブへと伸びる前に、全身の筋力をフル活用してカノンをそのまま部屋の外へと連れて行くことにした。

 

「ああ…………巡洋戦艦と超弩級戦艦がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「何のこと!?」

 

 足掻こうとするカノンを引きずりながら、自分の部屋を後にする。けれどもさすがにカノンをこのまま引きずって大浴場に突入するわけにはいかないので、とりあえず隣にあるカノンたちの部屋にお邪魔することにしよう。

 

 ステラは研究室にいる筈だし、ナタリアはラジオ・タンプルの収録に行っているから部屋には誰もいない筈だ。

 

「あら? わたくしの部屋?」

 

「そうだよ」

 

「ふふふっ、お兄様ったら。わたくしと2人きりになりたかったのですわね?」

 

「やかましい」

 

 お前が危険地帯(シャワールーム)の扉を開こうとしてたからここに退避しただけです。

 

 呆れながら洗面所のドアを開き、赤いネクタイを取ってからボタンを外し始める。どうせカノンも一緒にシャワーを浴びるつもりなんだろうな、と思いながらボタンを外していると、やっぱりカノンが洗面所へとやってきて、俺の着替えのすぐ隣に自分の分の着替えを置いた。

 

 何で一番上にピンク色の下着を置いたのだろうか。

 

「あ、お兄様。服でしたらわたくしが脱がせて差し上げますわ」

 

「け、結構ッス」

 

 拒否した筈なのに容赦なく手を伸ばしてくるカノン。彼女は俺の手をあっさりと受け流して肉薄してくると、素早くワイシャツのボタンを外してすぐにワイシャツを脱がせ、その下に着ていたTシャツまで5秒足らずで脱がせてしまう。

 

 そして今度はズボンのベルトへと手を伸ばすカノン。慌てて彼女のすらりとした手を両手で押さえつけ、両腕の筋力をフル活用してカノンの侵攻を食い止めようとする。

 

「ば、バカ、自分で脱ぐから! とりあえずタオルよこせ!」

 

「ふふっ、タオルなんか必要ありませんわ」

 

「全裸は拙いだろ!?」

 

「何言ってますの? この前は全裸になったではありませんか♪」

 

「あれはお前のせいだからね!?」

 

「ふふふふっ…………さあお兄様! 観念してわたくしと〇〇〇〇しようではありませんか!」

 

「普通にシャワーを浴びることはできないんですか!?」

 

 く、くそ、このままじゃズボンまで脱がされちまう…………!

 

 襲われるのを防ぐために抵抗していたその時、なんと部屋のドアが開く音が聞こえてきた。

 

 誰かが部屋に戻ってきたに違いない。この部屋に住んでいるのはナタリアとカノンとステラの3人なのだから、ナタリアかステラのどちらかだろう。

 

 こ、こんなところを見られるわけにはいかない…………!

 

『あら? こっちじゃないのかしら?』

 

 な、ナタリアだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 よりにもよってまともな人が戻ってきちゃった! まともじゃない人が戻ってきても拙いけど、まともな人が戻ってくるのも拙いじゃねえか! こんなところ見られたらナタリアにぶん殴られちゃう!

 

 こっちに来ませんように、と抵抗しながら祈ったけれど―――――――数秒後に洗面所のドアノブがくるりと回ったのを見た俺は、観念した。

 

 ゆっくりとドアが開き、私服姿のナタリアが洗面所の中を覗き込んでくる。もちろんすぐに彼女に見つかってしまった俺は、苦笑いしながらナタリアに手を振る。

 

「や、やあ」

 

「…………な、何やってんのよ」

 

「これからわたしくと2人きりで〇〇〇〇するところでしたの」

 

 バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

「へえ…………!」

 

 な、なっ、ナタリアさん?

 

 拳を握り締めながら、ゆっくりとこっちにやってくるナタリアさん。幸いホルスターからハンドガンを引き抜いてはいないけれど、彼女のパンチって結構強烈なんだよね。

 

 そう思いながら苦笑いしていた俺に、ナタリアさんは容赦なく拳を振り下ろした。

 

「この変態キメラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「びすまるくっ!?」

 

 か、カノンのせいだぞ…………!

 

 呻き声をあげながらそう思った俺は、ナタリアの強烈なパンチを叩き込まれた腹を押さえる羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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