異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

526 / 560
掃討焼却兵

 

 デザインがバラバラな制服を身に纏った兵士たちと共に、建設途中の要塞へと押し寄せてくる魔物たちを蜂の巣にしていく。彼らが手にしているAK-15やRPK-12が火を噴き、エジェクション・ポートから煙と熱を纏った薬莢を排出する度に、荒々しいマズルフラッシュの向こうにいる魔物たちの身体に風穴が開き、血飛沫が噴き上がる。

 

 アメリカ製のホロサイトの向こうで眉間を抉られたゴブリンを一瞥し、セレクターレバーを3点バーストに変更。7.62mm弾の強烈な3点バースト射撃でデッドアンタレスの外殻を砕き、その後方にいるゴーレムやデッドアンタレスの変異種にグレネードをお見舞いする。

 

 魔物は様々な場所に生息している。ダンジョンには当たり前のように徘徊しているし、森や草原でもゴブリンやアラクネなどの魔物に出くわすことがある。それに信じられない事だけど、一見すると平穏な先進国の大都市でも、地下にある下水道の中には小型の魔物が生息していて、整備のために地下へと降りた業者に襲い掛かってくる事もあるのだ。小さい頃に下水道のメンテナンスに行った業者が行方不明になり、数日後に下水の中からその業者の千切れた腕が流れてきたという新聞の記事を見た時、ラウラと2人でぞっとした。

 

 それゆえに、この世界の全ての場所が魔物の生息している地域と言っても過言ではない。

 

 どれだけ掃討しても全く絶滅する気配がない魔物たち。人間が彼らを討伐するよりも、彼らの繁殖する速度の方が上回っているというのだろうか。魔物の研究をしている学者たちが長年調査しているが、未だにその難問の答えが出たことは一度もない。

 

 なので、こうやって魔物と戦うのもテンプル騎士団の仕事になっている。放っておけば先住民たちの集落にも被害が出るし、拠点の建設も遅れてしまうのだから。

 

 それにテンプル騎士団がカルガニスタンで自由に活動し、あらゆるところに要塞や前哨基地を建設することを先住民たちから許可してもらった代わりに、俺たちが彼らを守らなければならないのである。

 

 RPK-12を装備した”分隊支援兵”が、強烈な弾幕を魔物の群れに叩き込む。7.62mmの容赦のない連続攻撃を喰らう羽目になったデッドアンタレスの変異種は、尻尾を振り上げながらまだ抵抗を続けようとしていたが、そいつに狙いを定めていた選抜射手(マークスマン)の放った7.62mm弾に尻尾を撃ち抜かれ、自分の毒液を浴びながら崩れ落ちていった。

 

 デッドアンタレスの変異種は、通常のデッドアンタレスと外殻の色や模様が異なる。変異種は紫とピンクのダズル迷彩にも似たかなり気色悪い模様なので、通常のデッドアンタレスとすぐに見分ける事ができるのだ。どうやらより強力な毒を持っているらしく、加熱しても毒を分解できないため、変異種は食えないらしい。

 

 止めを刺した選抜射手(マークスマン)がマガジンを交換している隙に、近くで銃撃していた歩兵が味方に手榴弾を使う事を告げ、安全ピンを引っこ抜いてから手榴弾を投擲。まだ突っ込んで来ようとしていたゴブリンたちをまとめて吹っ飛ばし、密集していた魔物の群れを抉る。

 

「同志、魔物共が後退し始めました!」

 

「よし、”掃討焼却兵(そうとうしょうきゃくへい)”の出番だ」

 

 ヘルメットをかぶった兵士にそう命令し、俺は前方の洞窟の中へと逃げていく魔物の群れを見つめていた。

 

 テンプル騎士団で採用しているヘルメットの形状は、昔のドイツ軍が採用していた”シュタールヘルム”というヘルメットにそっくりなデザインだ。黒いヘルメットをオリーブグリーンに塗り替え、第二次世界大戦中のドイツ軍の軍服を兵士に着させてMP40を持たせたら、きっと昔のドイツ兵と見分けがつかなくなるだろう。

 

 テンプル騎士団のヘルメットは俺やクランが能力や端末で生産したものではなく、工房のドワーフたちが作って支給している代物である。素材はタンプル搭の岩山の中にある鉱脈から採掘された豊富な鉱石を使っているので、生産にはそれほどコストはかからないという。

 

 普通のヘルメットよりもやや重いものの、表面に硬い鉱石を使用し、その内側に柔らかい鉱石を薄くして張り付け、その内側にまた硬い鉱石を使用するという複合装甲のような構造になっているので、防御力が非常に高いのだ。信じられないことに砲弾の破片どころか7.62mm弾でも貫通できないほどの防御力があるので、身に着けた兵士の生存率は大きく高まるだろう。

 

 顔を保護するためのバイザーを取り付けられたタイプのヘルメットも採用されており、分隊支援兵や一部のライフルマンたちが身に着けている。とはいえそのバイザーまでヘルメットと同じく金属で作られているため、重量が増加する上に視界が一気に狭くなってしまうという欠点があるので、普段はバイザーを上に上げている。

 

 それにヘルメットも重いので、ヘルメットではなく略帽やフードをかぶる兵士も多い。中には先住民たちの伝統的な装備なのか、仕留めた魔物の頭骨を頭にかぶっている兵士も見受けられる。

 

 式典用の制服だけは同じデザインになったんだが、相変わらず普段の制服は統一感がないなぁ…………。

 

 洞窟の中へと逃げ込んだ魔物を双眼鏡で確認しつつ、ちらりと周囲を走り回る兵士たちを見ていた俺は、そう思いながら灰色の砂の上に伏せつつ背中に背負っているOSV-96へと手を伸ばした。

 

 このライフルは非常にサイズがでかいので扱いにくいんだが、2つに折り畳む事ができるという強みがあるので、折り畳んでいれば非常に持ち運びやすいのだ。

 

 銃身の下にぶら下がっているバイポッドを展開してスコープの蓋を開け、レティクルを前方の洞窟に合わせる。搭載しているレンジファインダーによると、洞窟までの距離は400mほど。アサルトライフルでも狙撃できる距離だし、魔物たちの攻撃やデッドアンタレスの毒液の射程距離外だから、あいつらが姿を現せばすぐに蜂の巣になるだろう。

 

 その前に―――――――黒焦げになるかもしれないが。

 

 火薬や体液の臭いが充満している戦場の中に、別の臭いが混ざったのを感じ取った俺は、ニヤリと笑いながら後方を振り向いた。

 

 猛烈な燃料の臭いを纏いながら戦場へとやってきたのは―――――――背中に背負った燃料タンクとケーブルで繋がれたライフルのような得物を抱え、ガスマスクと特徴的な防具に身を包んだ数名の兵士たちであった。

 

 一見すると、火炎放射器とガスマスクを装備し、背中に燃料タンクを背負った”騎士”のようにも見える。けれども身に纏っている防具の素材は、よく見ると金属製ではなく、空を自由自在に舞いながらブレスで人類に猛威を振るうドラゴンの外殻で作られていることが分かる。

 

 ドラゴンの外殻で作られた防具と言うべきだろうか。

 

 燃料の臭いと猛烈な威圧感を纏いながら戦場へとやってきたその兵士たちは、『掃討焼却兵』と呼ばれるテンプル騎士団の新しい兵士たちである。ソ連製火炎放射器の”LPO-50”を装備し、敵に肉薄して炎をぶちまけ、敵を殲滅するのが役割である。

 

 とはいえ、現代戦で火炎放射器が投入されることは殆どないと言ってもいい。火炎放射器は銃よりもはるかに射程距離が短く、更に背中に背負っている燃料タンクに敵の放った弾丸が命中すればとんでもないことになるからだ。第一次世界大戦や第二次世界大戦の時よりも、フルオート射撃が可能な銃器がより発達した現代戦の方が、火炎放射器の射程距離に入る前に被弾する確率が高いのは火を見るよりも明らかである。

 

 そこで、テンプル騎士団では火炎放射器を装備した兵士たちを、後退して建物の中などに立て籠もった敵への”ダメ押し”として投入することにしている。予め通常の部隊で敵の戦力を大きく削り、敵が撤退して体勢を立て直しているところにこいつを投入し、一気に焼き殺すのである。簡単に言えば”ダメ押し部隊”だ。

 

 戦力が削られているという事は、肉薄しようとする掃討焼却兵を食い止めるために弾幕を張ることが困難になり、彼らの接近を阻止できないという事を意味するのだから。

 

 更に、もし敵の攻撃が背中の燃料タンクを直撃しても、信じられないことにこの掃討焼却兵たちは無傷で済むのである。

 

 燃料タンクの爆発や炎から、彼らの身に纏っている防具が彼らを守ってくれるのだ。あの防具の素材に使用されているのは、火山に生息しているサラマンダーの外殻である。耐熱性に非常に優れているサラマンダーの外殻は、あらゆる炎属性の攻撃を無効化してしまうほどの耐熱性と耐火性を兼ね備えており、マグマの中に放り込んでも無傷だという。

 

 更に防御力にも優れており、7.62mm弾でも外殻を貫通させることは難しい。

 

 なので燃料タンクに被弾し、戦場に巨大な火柱を生み出すことになってしまったとしても、火炎放射器を装備していた兵士は無事という事になるのだ。

 

 火炎放射器が使用不能になった場合を想定して、サイドアームにPL-14を支給しているほか、近接武器には量産型のテルミット・ナイフを支給している。とにかく相手を焼き殺すことを想定した装備を身に着けた、恐ろしい兵士たちなのだ。

 

 4名の掃討焼却兵は火炎放射器の点検を済ませると、数名のライフルマンに護衛されながら、魔物たちが逃げ込んだ洞窟へと向かって走り出す。強烈な燃料の臭いでこっちの兵士たちが接近していることを悟ったのか、彼らが距離を詰めていくうちに洞窟の中からゴブリンが顔を出したが、小柄なゴブリンが顔を引っ込めるよりも先にマズルフラッシュが煌き、人間よりも小さなゴブリンの頭を吹っ飛ばしてしまう。

 

 そして、洞窟へと無傷で肉薄した掃討焼却兵たちが火炎放射器を構え―――――――彼らの逃げ込んだ洞窟の中を、地獄に変貌させた。

 

「うわっ…………」

 

 先住民の中から志願してきた兵士の1人が、火炎放射器が吐き出す炎を見つめてドン引きしていた。

 

 4人の掃討焼却兵が装備するLPO-50が吐き出した炎が激流と化し、火の粉と陽炎を引き連れながら洞窟の中へと流れ込んでいく。洞窟の中から聞こえてくるのは、猛烈な炎に焼き殺されていく魔物たちの呻き声や断末魔だけだ。

 

 数体のゴブリンが火達磨になりながら洞窟の中から飛び出してきたが、即座に護衛のライフルマンたちがそいつらを射殺し、火炎放射器の餌食になった敵の無残な姿を俺たちに晒す。

 

「あんなのに焼かれたくないな…………」

 

「俺もだ…………弾丸で頭を貫かれたほうが楽に死ねるよ…………」

 

 洞窟の中にいる魔物たちを容赦なく焼き殺していく掃討焼却兵たち。スコープを覗き込みながら、俺は彼らが火炎放射器のトリガーから指を離すまで、ずっと掃討焼却兵たちを見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水面へと伸びる細い糸を見つめながら、アイスティーの入った水筒を口へと運ぶ。いつになったらこの糸は海の中へと引っ張られ、獲物を引っ張り上げるチャンスだという事を教えてくれるのだろうか、と思いながら口の端についたアイスティーの雫を拭い去り、周囲に停泊している巨大な艦艇を見渡した。

 

 タンプル搭のすぐ近くには地下を流れている広大な河がある。信じられないことに、超弩級戦艦や巨大な原子力空母が容易く並走できるほどの広さで、水深も潜水艦が潜航したまま入港できるほどの深さだ。しかも頭上は分厚い岩盤と、ドワーフの職人たちが作ってくれた鋼鉄の装甲で覆われているので、敵の爆撃機がこれでもかというほど爆弾を落としていっても、停泊している艦艇には傷一つつかないというわけだ。

 

 さすがにバンカーバスターを落とされたら、ここから大空を見る事ができそうな穴が開くかもしれないが。

 

 けれどもタンプル搭の周囲にある前哨基地にはレーダーや対空ミサイルもあるし、飛行場も建設されている。バンカーバスターを搭載した敵機が対空ミサイルと迎撃部隊を突破し、この軍港へとバンカーバスターを無事に投下できる確率は5%以下だろう。

 

 この安全な軍港に停泊しているのは、軍拡によって一気に規模が大きくなったテンプル騎士団艦隊に所属する艦艇たち。退役することになったソヴレメンヌイ級やウダロイ級の数は減っていて、彼らの代わりにアドミラル・グリゴロヴィチ級やネウストラシムイ級が数を増やしつつある。その奥に停泊しているのは増産することになったスターリングラード級重巡洋艦やスラヴァ級巡洋艦で、中にはダズル迷彩に塗装されている艦も見受けられる。

 

 そして一番奥に鎮座しているのは―――――――テンプル騎士団海軍の力の象徴だった。

 

 前部甲板と後部甲板に搭載された、大口径の4連装40cm砲。一斉に砲撃すれば12発も砲弾をぶちまける事ができる上に、艦橋の脇には対艦ミサイルが入った4連装キャニスターがずらりと並んでおり、攻撃力を重視した戦艦だという事が分かる。

 

 その超弩級戦艦が、5隻もずらりと並んでいた。

 

 テンプル騎士団艦隊総旗艦『ジャック・ド・モレー』と、彼女の同型艦()たちである。

 

 史実のテンプル騎士団を率いていた団長の名を冠した超弩級戦艦たちは、現時点ではテンプル騎士団で最強の戦艦といっても過言ではないだろう。対潜用の装備を殆ど搭載していないため、潜水艦に襲われたら手も足も出ないという欠点はあるが。

 

 ジャック・ド・モレーはタンプル搭に残るが、他の同型艦は別の海域で活動する艦隊の旗艦となるため、軍港の用意や艦隊の編成が終わり次第、ここに残る一番艦(長女)と別れることになる。

 

 ちなみに二番艦『ユーグ・ド・パイヤン』は”第一打撃艦隊”の旗艦になる予定で、母港は倭国のエゾになることになっている。なので倭国支部の艦たちと共に、軍港に停泊することになるだろう。来週の倭国支部との合同演習の際に倭国まで向かい、そのまま倭国で第一打撃艦隊旗艦として活躍することになる。

 

 でっかい主砲が搭載された戦艦を見つめてから、竿の代わりに使っているOSV-96を見下ろす。相変わらずマズルブレーキの下から伸びる糸はぴくりとも動いておらず、魚がこの周囲にいない事を告げていた。

 

 魚が釣れたら焼き魚にしようと思ってたんだがなぁ…………。

 

「何で対物(アンチマテリアル)ライフルを竿にしてんだよ」

 

「あ? おう、ケーター少佐」

 

 制服姿のケーターは隣に腰を下ろすと、竿の代わりにされているOSV-96を見て苦笑いしつつ、肩に担いでいた手作りの釣り竿から伸びる糸を水面へと垂らし始めた。

 

 軍港の隅にある防波堤は、団員たちがよく釣りをする人気の場所なのである。

 

「銃身が長いから丁度いいんだよ」

 

「弾は抜いてるんだろうな?」

 

「マガジンは抜いてるし、薬室の中にも弾はない。あと安全装置(セーフティ)もかけた」

 

「さすが」

 

 戦闘以外の時は、そういう事に注意しないとな。銃は敵を殺す武器なのだから。

 

 俺やラウラは釣り竿代わりに使う事もあるが。

 

 アンチマテリアルライフルは銃身が長いし、狙撃を想定したバイポッドを使うと非常に便利なのである。普通の竿よりも結構重いけど。

 

 黙って水面を見下ろしていると、唐突に頭の上に柔らかい物体がのしかかってきた。

 

「ん?」

 

「えへへへっ、釣れそう?」

 

 俺の頭の上に大きなおっぱいを乗せながら見下ろしているのは、腹違いの姉のラウラだった。匂いですぐに接近しているのが探知できると思ったんだが、ラウラが接近してきたのは風下からだから分からなかったらしい。

 

 匂いでの索敵には、風向きによって死角ができてしまうという欠点もあるのだ。ラウラはそれを把握していたのだろうか。

 

 びっくりしながら彼女の顔を見上げていると、ラウラは探知されずに接近されてぎょっとしていることを見破ったらしく、微笑みながら耳元で言った。

 

「お姉ちゃんはね、タクヤの事なら何でも知ってるんだよ?」

 

「マジで?」

 

「うんっ。2ヵ月分のスケジュールは全部把握してるよ♪」

 

 そういえば、俺のお姉ちゃんはヤンデレでした。

 

 なるほど、能力の欠点やスケジュールも全部把握されてるってことか。というかそのスケジュールはプライベートのスケジュールも含まれてるのかな? もしそうだったら俺のプライバシーは消し飛んだことになるんですが。

 

「相変わらず仲がいいよなぁ」

 

「えへへっ、だってタクヤのお嫁さんになるんだもんっ♪」

 

「未来のお嫁さんねぇ…………ん? おい、糸見ろ。引いてるぞ」

 

「お?」

 

「ふにゅ?」

 

 あらら。

 

 バイポッドを展開していたライフルの銃床とキャリングハンドルを掴み、長い銃身を引っ張り上げる。どうやら水中から引っ張っているのは結構でっかい魚らしく、予想以上に重い。

 

 でもな、こっちはその気になればアンチマテリアルライフルを片手でぶっ放せるくらい筋力が発達してる種族(キメラ)なんだよ。その程度で俺から逃げれるわけがないだろ。

 

 とっとと釣られて焼き魚にされやがれぇッ!

 

「Ураааааа!」

 

 雄叫びを上げながら思い切り引っ張ると、ついにその獲物が水中から躍り出た。

 

 けれども水の中から出てきたのは―――――――変なのだった。

 

 というか、魚じゃなかった。

 

 ヒレのようなものはないし、胴体から首と四肢が伸びている。鱗が一切ない代わりにオリーブグリーンの濡れた軍服に身を包み、顔をガスマスクで覆っていた。頭にかぶっているのは昔のドイツ軍が採用していたシュタールヘルムというヘルメットで、腰には折り畳み式のスコップやルガーP08の入ったホルスターをぶら下げている。

 

 要するに、昔のドイツ兵のコスプレをした、背の小さな変な奴が釣れたのである。

 

 なにこれ。

 

「―――――――ぐ、グーテンターク。あんた誰?」

 

『テンプル騎士団のマスコットの”ゲルマンくん”だよっ♪』

 

 え、こんなマスコット承認した覚えがないんですけど。というかこれがマスコットなのか。

 

 釣り糸を右手で掴んだ状態で釣り上げられた変な奴を見てから、ケーターやラウラと目配せする。どうやらこの2人もこの変なマスコットを知らないらしく、呆然としながらこっちを見てきた。

 

「…………リリース」

 

『あああっ! ちょ、ちょっと待って! リリース禁止!』

 

「うるせえ! こんな変なマスコット承認した覚えねえんだよコラァ!」

 

『待ってよ! ここ結構深―――――――ゴボゴボゴボゴボッ』

 

 シュタールヘルムを手で押さえてリリースしようとすると、ゲルマンくんは必死に抵抗してきやがった。仕方がないので助けてやることにした俺は、そいつの手を掴んで強引に防波堤の上に引っ張り上げる。

 

 ごつん、とヘルメットを防波堤の上に叩きつけたゲルマンくん。ガスマスクのフィルターから水を垂らしながら起き上がった彼は、濡れた軍服の中に入っていたケースを取り出し、それを俺に差し出した。

 

『クラン大佐からの書類です』

 

「普通に渡せよコラ。何で釣られたんだよ」

 

『ふっふっふっ、釣られたのはあなたの方だったみたいですね』

 

「やかましいわ」

 

 突き落としてやろうかと思いつつ書類を受け取り、それを広げて書いてある文章を確認する。

 

 …………ああ、今度の倭国との合同演習の件だ。ついでに倭国支部の視察もしようと思ったからクランに申請してたんだが、どうやら承認してもらえたらしい。

 

「ふにゅ? 何それ?」

 

「今度の合同演習だ。ついでに倭国支部の視察に行くつもりだったんだよ。ラウラも行く?」

 

「うんっ♪ えへへへっ、新婚旅行みたい♪」

 

 おいおい…………。

 

 ラウラに抱き着かれて苦笑いしながら、彼女の頭を撫でる。

 

 新婚旅行じゃなくて合同演習と支部の視察だからな、ラウラ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。