異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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合同演習最終日

 

 倭国支部との合同訓練は、今日で4日目だ。

 

 4日目の訓練は主に狙撃兵の訓練や室内への突入の訓練となっており、そのような戦いの経験が少ない倭国支部の兵士たちを本部の兵士たちが指導することになっている。

 

 倭国支部の部隊には海兵隊もあり、あの春季攻勢(カイザーシュラハト)の最終局面で参戦しているので一部の兵士は大規模な戦闘を経験しているんだが、それ以外の兵士は魔物の討伐や盗賊の殲滅などの簡単な任務を経験している程度なので、演習で錬度を上げつつあるとはいえ、本部の兵士たちとの錬度の差は未だに大きいと言える。

 

 89式小銃を構えた兵士たちが、窓の中へと安全ピンを外したスモークグレネードを投擲する。ごとん、とスモークグレネードが床に激突し、白煙を吐き出し始めたのを確認すると、戦闘の兵士がすぐさまドアを開け、仲間たちと共に突入していった。

 

 スペツナズと比べるとぎこちないな、と思いつつ、俺は隣で腕を組んでいる柊と一緒にその様子を見守っていた。室内へ突入する訓練を受けているのはあの春季攻勢(カイザーシュラハト)にも参加した倭国支部の海兵隊で、現時点では倭国支部の部隊の中で一番錬度が高いと言われている。

 

 訓練用の建物の中から響いてくる銃声。白煙の中でうっすらと光るマズルフラッシュ。やはりライフルに使っている弾丸の光景が小さいからなのか、本部で採用されているAK-15やテンプル騎士団仕様のAK-12と比べると、どちらも控えめだった。

 

 テンプル騎士団では正式採用するライフルに7.62mm弾を使用するようにしている。魔物の中には硬い外殻で守られているものもおり、口径が小さい銃弾だと弾かれてしまう恐れがあるからだ。なのでより破壊力のある大口径の弾丸でなければ、外殻もろとも撃ち抜くことはできないのである。

 

 これはあのモリガンの傭兵たちが実証したことである。アラクネなどの外殻を持っている魔物に5.45mm弾を放っても、外殻で覆われていない頭以外には弾かれてしまったという。

 

 頭を正確に狙えば倒せるのだから頭を狙えばいいのかもしれないが、基本的に魔物は群れで襲い掛かってくるケースが多い。無数の魔物が押し寄せてくる状況で、正確に頭を狙って狙撃できる余裕があるわけがない。

 

 なので胴体の外殻を食い破り、風穴を開ける事ができるように大口径の弾丸を使用することが望ましいのだ。それに魔物との戦いだけでなく、対人戦でもこのストッピングパワーは猛威を振るう。小口径の弾丸よりも殺傷力が高いので、被弾した敵を”より確実に殺せる”のだから。

 

 けれども倭国支部で使っているのは、西側のアサルトライフルで使用されている小口径の5.56mm弾だった。

 

 反動が小さい上に命中精度も高い、非常に扱いやすい弾丸である。

 

 対人戦では問題ないだろうが、魔物との戦闘では火力が足りないのではないだろうかと心配になってしまうが、現時点では問題はないらしい。それに倭国に生息する魔物の大半は獣のような魔物ばかりで、本部の周囲に生息している魔物のように外殻を持つ魔物が少ないので、数名の兵士たちで集中砲火をぶちかませば討伐は難しくないという。

 

 できるならば組織で使う銃や弾薬は統一したいところだが、倭国支部にも事情があるのだろう。

 

 部屋の中の制圧を終えた兵士たちが、まだ薄れた煙が漂っている建物の中から顔を出す。使い終えたライフルからマガジンを外し、安全装置(セーフティ)をかけてから建物から出ていく兵士たち。彼らを見守ってから双眼鏡から目を離した俺は、隣にある射撃訓練場へと向かうことにした。

 

 ちょっと射撃訓練場に行ってくる、と告げてから、俺はメニュー画面を開いてAK-15を装備しつつ射撃訓練場へと向かった。

 

 射撃訓練場で俺も射撃訓練をしようかなと思ってたんだが、どうやら既に先客が利用している最中らしく、訓練場の中からは銃声とボルトハンドルを引く音が聞こえてきた。

 

 射撃訓練場で訓練をしていたのは、旧日本軍の軍服をそのまま黒くしたような制服に身を包んだ、倭国支部の狙撃兵たちだった。中には数名ほど本部の狙撃兵も混じっており、倭国支部の兵士たちに狙撃の指導をしている。

 

 本部の狙撃兵は全員ラウラの教え子たちだ。

 

 テンプル騎士団の狙撃兵は観測手(スポッター)と二人一組で行動することになっており、狙撃手の支援が必要な場合は、支援を要請していた部隊に一時的に貸し出されることになる。ラウラから指導を受けた狙撃兵たちは優秀な者が多いらしく、狙撃の精度も非常に高いため、陸軍や海兵隊からは非常に頼りにされているという。

 

 どこか空いてる場所はないかな、と思いつつ、ちらりと兵士たちの銃を確認する。

 

 倭国支部で使用されているスナイパーライフルは、旧日本軍が使用していた『九九式狙撃銃』と呼ばれるライフルだった。旧日本軍が正式採用していた”九九式小銃”にスコープを搭載してスナイパーライフルに改造した代物なんだが、なんとこの銃のスコープはライフル本体の上部ではなく、後方から見て左斜め上に搭載されている。

 

 旧日本軍が使用していた『三八式歩兵銃』の弾薬よりも口径の大きな7.7mm弾を使用するため、破壊力ではこちらの方が上になっているのだ。

 

 搭載しているのはスコープのみのようだが、中には狙撃用のライフルであるにもかかわらず、どういうわけか銃剣を装着して狙撃している猛者もいる。こいつは狙撃したら突っ込むつもりなんだろうか。というか、どうしてテンプル騎士団の兵士は白兵戦を好むんだろうか。

 

 信じられない話かもしれないが、テンプル騎士団が採用している銃の大半には銃剣が装着できるように改造が施されており、その気になればLMGやスナイパーライフルどころか、重機関銃にも銃剣を装着して白兵戦を行う事が可能になっている。アサルトライフルや一部のSMG(サブマシンガン)だけで十分だろうと思ってたんだが、色んな銃に銃剣が装着できるようにしてほしいという要望が非常に多かったのは予想外だった。

 

 どうやらここも同じらしいな…………。

 

 射撃訓練をする狙撃兵たちを苦笑いしながら見守っていると、一番端で女性の兵士が狙撃をしていることに気付いた。

 

 彼女は柊たちと一緒に転生してきた転生者の『青木千春(あおきちはる)』。倭国支部に所属する3人の転生者のうちの1人で、狙撃を得意とするスナイパーである。本部で保護していた頃は三八式狙撃銃にスコープを搭載した代物を使っていたんだが、今はより大口径の九九式狙撃銃を使っているらしい。

 

 現代のライフルと比べると旧式とはいえ、優秀な銃だからな。

 

 彼女の狙撃を見守りつつ、メニュー画面を開いてカスタマイズの項目を開き、AK-15の銃身をちょっとばかり延長しておく。メニュー画面を閉じて伸びた銃身を確認しているうちに、地面に伏せた状態でライフルを構えていた千春が発砲。彼女が放った7.7mm弾はマズルフラッシュを突き破ると、射撃訓練場の向こうにある的を正確に貫いた。

 

 距離は500mくらいだろうか。辛うじてアサルトライフルでも反撃できる距離だが、彼女の放った弾丸が直撃したのは人型の的の頭部。あれが人間なら標的は即死である。しかも肺や心臓のある部位には既に風穴が開いており、その気になれば急所を正確に撃ち抜けるという事を告げていた。

 

「やるな」

 

「え? あっ、団長」

 

 ボルトハンドルを引いていた千春は、ライフルから躍り出た薬莢が床に転がると同時にこっちを見上げた。さすがに彼女のライフルには銃剣は装着されておらず、代わりにバイポッドが装着されている。どうやら彼女はまともな人らしい。

 

「どのくらいの距離まで狙える?」

 

「今は800mが限界ですね…………」

 

 旧式のライフルで800m先の標的を狙えるってのか? なら、彼女に新型のライフルを渡せば1km先の標的を当たり前のように撃ち抜けるのではないだろうか。

 

 ボルトハンドルを引き、クリップで束ねた5発の7.7mm弾を装填する千春。AK-15を背負いながら彼女の訓練を見守っていると、射撃訓練場のドアが開く音が聞こえてきた。誰かが狙撃の訓練にでも来たんだろうかと思っていると、鼻腔に石鹸と花の香りを混ぜ合わせたような甘い香りが流れ込んできて、すぐに入ってきた人物が誰なのかを察した。

 

 そう、吸血鬼たちから”鮮血の魔女”と呼ばれていた、腹違いの姉のラウラである。教え子たちの様子を見に来たのだろうか。

 

「おう、ラウラ」

 

「ふにゅ? タクヤも訓練するの?」

 

「ああ。俺もちょっと訓練しようかなと思って」

 

「えへへへっ、小さい頃からタクヤは努力家だねぇ♪」

 

 そう言いながら近くにやってきて、少しばかり背の高い俺の頭を撫で始めるラウラ。撫でるのを止めた彼女は、背中に背負っていた九九式狙撃銃―――――――誰かから借りたのだろうか―――――――を構えたまま千春の隣に伏せると、スコープではなくフロントサイトとリアサイトを覗き込んだ。

 

 九九式狙撃銃はスコープを左斜め上に搭載しているだけなので、アイアンサイトはそのまま残っているのだ。なのでスコープとアイアンサイトを瞬時に使い分ける事ができるという利点がある。

 

 スコープを覗き込まずにアイアンサイトを覗き込み、トリガーを引くラウラ。鋭くなった彼女の紅い瞳に見据えられた500m先の標的に風穴が開くとほぼ同時に、ラウラはボルトハンドルを引いて次の狙撃の準備を終える。キンッ、と空の薬莢が地面に落下する音が聞こえてくる頃にはトリガーを引き、産声を上げようとしていた金属音を銃声で粉砕してしまう。

 

 弾丸が飛び込んだのは、ラウラが標的の頭の部分に開けた風穴だった。弾丸が風穴の縁に微かに掠める音を生んだ頃には、ラウラはまたしてもボルトハンドルを引き、狙撃の準備を終えていた。

 

 装填されていた全ての弾丸を的の風穴へと叩き込み、次のクリップを装填するラウラ。同じように的の風穴へと弾丸を正確に叩き込み、次のクリップへと手を伸ばす。

 

 いつの間にか、周囲で訓練をしていた倭国の狙撃兵や彼女の教え子たちが、呆然としながらラウラの狙撃を見つめていた。

 

 旧式のボルトアクションライフルで、スコープを使わずに500m先の標的の風穴に何発も弾丸をお見舞いするのは離れ業としか言いようがない。けれどもラウラはその気になれば2km先の標的にも同じことをするだろう。

 

 あの親父も、訓練中のラウラを見ながら「狙撃の技術ならば俺を超えている」と認める程なのだから。

 

 やがて20発の弾丸を放ち終えたラウラは、ライフルを持ってゆっくりと立ち上がった。

 

 彼女が20発の弾丸を撃ち尽くすのにかかった時間は1分ほど。もちろん弾丸は全て500m先の標的の頭部に穿たれた風穴を通過しているので、それ以外の場所に風穴は開いていない。

 

 しかもこんな技術を持つ狙撃手が、氷の魔術を応用して自分の姿を消した状態から狙撃してきたり、味方に敵の攻撃が飛来する方向や着弾予定の時間を教える事ができる能力を持っているのである。しかも吸血鬼と同じく再生能力まで持っているので、もし仮に狙撃で反撃されてもすぐに再生して弾道から敵の狙撃してきた地点を特定して反撃できるというとんでもない狙撃手だ。

 

 この世界では最強の狙撃手と言っても過言ではないだろう。

 

「ふう…………ふにゅ? みんなどうしたの?」

 

 いつの間にか他の兵士たちが狙撃を止め、ラウラの離れ業に注目していたことに気付いたラウラ。小さい頃から当たり前のようにこんなことばかりやってきたからなのか、ラウラは自分のやったことが離れ業としか言いようがないという事に気付いていないらしい。

 

 首を傾げた彼女は、ライフルを借りていた倭国支部の兵士にそのライフルを返すと、俺の近くへとやってきた。

 

「ねえねえ、どうだった?」

 

「すごいな。全弾命中だったぞ」

 

「えへへへっ♪」

 

 彼女を褒めながら頭を撫でると、まるで飼い主と楽しそうに遊ぶ犬のように、ラウラはミニスカートの中から伸びている尻尾を左右に振り始めた。彼女がこのように尻尾を左右に振るのは満足している証拠で、機嫌が悪い時は尻尾を縦に振るのである。

 

「す、すげえ…………」

 

「何なんじゃ、あの子は…………」

 

「信じられん…………本部にはあんな狙撃手がいるのか」

 

 甘えているラウラを見つめながらそう言う倭国の兵士たち。隣でラウラの狙撃を見ていた千春も、俺に甘えているラウラを目を見開きながら見上げていた。

 

「…………私も負けてられないわ」

 

 そう言って近くにあるクリップを掴み、自分のライフルに装填する千春。スコープを覗き込んだ彼女はまたしてもトリガーを引き、標的に風穴を開け始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、合同演習の最終日となった。

 

 今日の演習の内容は、倭国支部の部隊と本部の部隊による模擬戦である。20人で編成された部隊で、市街戦を想定した訓練場の中で模擬戦を行うのだ。ルールはどちらかのチームを全滅させた方が勝利で制限時間は無制限。戦車やヘリなどの兵器の使用は禁止なので、歩兵たちの技術が要求される。

 

 敬礼している兵士たちを見渡しながら、俺も敬礼をした。

 

 本部の兵士たちが身に着けているのはいつもの黒い制服で、制服の上にはボディアーマーを着用している。頭にかぶっているのは昔のドイツ軍が採用していた”シュタールヘルム”にそっくりなヘルメットで、中にはバイザー付きのヘルメットをかぶっている兵士もいる。

 

 今回は4人で1つの分隊となっており、分隊長はまるで棘のような部品が取り付けられた”ピッケルハウベ”と呼ばれるヘルメットをかぶっていた。

 

 ずらりと並ぶ本部の兵士たちの隣に並ぶのは、旧日本軍の軍服をそのまま黒くしたような制服に身を包んだ倭国支部の兵士たち。彼らもボディアーマーを身に着けており、ヘルメットを装備しているが、本部の兵士のようにバイザーを装備している兵士はいないので身軽そうに見える。

 

 こちらも4人で1つの分隊らしいが、分隊長の服装も他の兵士たちと同じなので見分けるのは難しそうだ。

 

「では、これより模擬戦を始める」

 

 模擬戦では、ペイント弾を装填した本物の銃を使用する。ペイント弾に入っている火薬は殺傷力を落とすために極限まで減らされているし、本部の兵士たちが持っている銃もAK-15ではなく5.45mm弾を使用するAK-12になっている。

 

「敵のチームを殲滅した方が勝利となる。被弾するか、接近してきた敵にナイフや銃剣を突き付けられた者は脱落だ。戦車やヘリの使用は禁止だが、それ以外ならどんな手を使ってもいい。…………同志諸君の実力を見せてくれ」

 

『『『『『Урааааааа!!』』』』』

 

 一番楽しみだったんだよね、この模擬戦が。

 

 あくまでも兵士たちの訓練が目的なので、俺やナタリアたちは上にある見張り台から模擬戦の様子を見下ろすだけだけど。

 

「倭国支部の兵士諸君! 相手は本部の兵士たちだ! 強敵だが、我々も訓練で技術を身に着けている! 奴らにサムライの誇りを見せつけてやれ!」

 

『『『『『おおおおおおおおおおおおおおッ!!』』』』』

 

「タンプル搭の兵士諸君、敵は倭国のサムライたちだ。いいか、決して油断はするな。―――――――全身全霊で迎え撃てッ!」

 

『『『『『Урааааааа!!』』』』』

 

 盛り上がってるねぇ。

 

 楽しみにしてるよ、同志諸君。

 

 

 

 

 

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