異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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団長が身体を張るとこうなる

 

 テンプル騎士団の食堂で働いているのは、様々な種族の団員たちだった。人間の団員もいるし、エルフやハーフエルフの団員もいる。様々な国からやって来た団員が食堂で料理を作ってくれているおかげで、食堂のメニューはかなり豊富なのよ。

 

 カウンターのすぐ近くにある席に座ってからちょっとした雑誌くらいの厚さのメニューを手に取り、今日の昼食はどれにするか選び始める。先進国の料理がずらりと並んでいるけれど、次のページにはカルガニスタンや他の地域の部族の料理までずらりと並んでいる。

 

 もしかしたら、この異世界の全ての料理をここで注文する事ができるんじゃないかしら。

 

「あ、ちょっといいかしら」

 

「はい、どうぞ」

 

「野菜スープとソーセージをちょうだい。それとライ麦パンもお願いね」

 

「かしこまりました」

 

 カウンターに戻ってきたエルフの団員に注文してから、私は端末を取り出して自分のステータスを確認し始める。

 

 転生者のステータスやレベルは敵を倒すことで上がっていくんだけど、シュタージが設立されてからは諜報活動ばっかりやっているせいなのか、なかなかレベルが上がらないのよね…………。タクヤ(ドラッヘ)は総大将なのに最前線に行っちゃうからすさまじい速度で上がってるみたいなんだけど。

 

 今度ケーターを連れて魔物の掃討作戦に強引に参加させてもらおうかしら。シュタージの指揮官だからそれなりに権限も強いし。

 

 自分のステータスを眺めながら企んでいると、厨房の方で大きな肉を焼き終えたオークの団員が、ニコニコしながらこっちにやって来た。

 

「よう、お嬢ちゃん」

 

「お疲れ様」

 

 タンプル搭の食堂はここしかないので、かなりの広さの食堂に数多くの兵士たちが食事をするために集まってくる。将校用の食堂は用意されていないので、中には海軍の提督や陸軍の将校と一緒に食事をする兵士たちも見受けられるし、黒い軍服を着たまま奥さんや自分の子供と一緒に食事をする兵士もいる。

 

 なので、いつも食堂で勤務している料理人たちは大忙しだった。料理人を増員したり、調理用の設備を拡張して対応しているんだけど、そろそろ別の食堂を作るべきなのではないかという意見も出てるみたい。

 

 様々な種族の兵士たちがお互いを差別せず、楽しそうに食事をしている光景を眺めていた私は、こっちを覗き込んでいるオークの料理人の顔を見上げた。

 

 オークの男性って当たり前のように身長が2mを超えるから、普通に立っていても見上げざるを得ないのよね。

 

「みんな疲れてるみたいね」

 

「まあ、最近は遠征も増えたらしいからなぁ……………」

 

 カルガニスタン国内の転生者も一掃されつつあるし、ここを支配していたフランセンの連中も追い出したから、カルガニスタンの治安は良くなりつつある。相変わらず魔物の掃討作戦は毎日のように実施されているけれど、転生者の数が減ってきたことで今度は遠征が増えてるのよ。

 

 軍港から海兵隊を乗せた強襲揚陸艦が何隻も出航していくし、航空支援のためにミサイルや爆弾を搭載した戦闘機が飛び立っていくのは日常茶飯事なの。

 

「なあ、兵士たちを励ます良い手はねえか? こっちも美味い料理を作ろうとしてるんだけどさ…………」

 

「そうねぇ…………」

 

 兵士のみんなを励ます良い手か…………。

 

 そういえば男性の兵士が多いわよね。女性の兵士もいるけれど、女性の兵士は3割くらいかしら。

 

「ふふふっ、思いついたわよ…………♪」

 

「本当か!?」

 

「ええ。楽しみにしてなさい」

 

 これなら兵士のみんなも喜んでくれるに違いないわ…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自室へとやって来たクランが渡してきた書類を目にした俺は、その書類を見下ろしたまま絶句していた。

 

 最近は遠征も増えてきたので兵士たちの負担が増えているという事は、俺も最前線で戦う事が多いので知っている。後方で指揮を執るのが性に合わないという理由もあるけれど、一番大きな理由は前線の兵士たちが苦労していることを知るためだ。最前線の状況を知っていれば正確な命令を下す事ができるし、命懸けで戦ってくれている兵士たちも後ろについて来てくれる。

 

 確かに遠征に行った兵士はかなり疲れているようだった。カルガニスタンからオルトバルカの雪山まで遠征に行くこともあるし、ディレントリアのジャングルやフランセンの火山に遠征に行くことも増えてきた。

 

 なので兵士たちには積極的に休暇を取らせるようにしつつ、彼らを癒す方法を考えていたのである。

 

 だけど、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

 

「やれるでしょ?」

 

「おかしいでしょ」

 

 微笑んでいるクランにそう言いながら、俺は顔をしかめた。

 

 彼女が渡してきた書類には――――――『メイドの格好をした女性の団員を期間限定で食堂で勤務させる』と書かれていたのである。

 

 確かにそれなら男性の兵士は喜んでくれるだろうし、食堂で勤務している料理人たちも負担が減って大助かりだろう。いい作戦だとは思うんだけど、どうしてメイドの格好をすることになった女性の団員の一覧の中に俺の名前まであるんだろうか。

 

 おかしいよね? 俺男だよ?

 

「クランさん、男が混じってるんですが」

 

「ええ、そうよ」

 

「何でこんなことになったんです?」

 

「実はね、シュタージでこっそりとアンケートを実施してたの」

 

「何のアンケート?」

 

「”可愛いと思う女性団員”についてよ♪」

 

「だからおかしいでしょ!?」

 

 ”女性”団員でしょ!? 何で俺の名前まで挙がってるの!?

 

「俺は男なんですが」

 

「男の娘でしょ?」

 

「だから男ですって」

 

「ちなみにタクヤ(ドラッヘ)はアンケートで3位にランクインしてるわ。おめでとう♪」

 

「なんでやねん」

 

 何で男が3位になるんだよ…………。

 

 もうポニーテールにするの止めようかなと思ったけど、髪を切っても”ボーイッシュな美少女”に勘違いされるので多分無意味だろう。どれだけ必死に男に見える服装を着ても女に勘違いされるし。

 

 というか、俺に投票したの誰だ。見つけたら粛清してやる。

 

「というわけで、あなたの分のメイド服も用意してきたから着てみて♪」

 

 そう言いながらちゃんと畳んであるメイド服を差し出すクラン。しかもちゃんとヘッドドレスまで用意してあるし、真っ白なフリルがこれでもかというほど付いている。クランやラウラが着たら似合うとは思うけど、俺には絶対似合わないと思う。

 

 というか着たくない。俺は男なので。しかも明らかに女用の白と水色の縞々模様のパンツまで用意されてるし…………。俺にこれを穿けという事か。

 

「い、いや、俺は遠慮―――――――」

 

「ふにゅう…………お姉ちゃんは似合うと思うなぁ…………♪」

 

「そうよねぇ。可愛いんだから着てみなさいよ。勿体ないわ」

 

 後ずさりするけど、後ろから抱き着いてきたお姉ちゃんに阻止されてしまう。さすがに強引に逃げるわけにはいかないので、自室の入り口であっという間に追い詰められてしまった。

 

「兵士たちを癒すために身体を張るのも団長の義務よ?」

 

「ふにゅう、そうだよ。だからタクヤも着て♪」

 

「で、でも…………」

 

「大丈夫よ。兵士の大半はあなたの事を女だと思ってるし、声も高いからバレないわ♪」

 

 その代わりに俺のプライドが木っ端微塵になるんですけど。

 

 抗議しようと思ったけれど、後ろからラウラに抱き着かれた上に尻尾で身体を拘束されてしまったので、身動きが取れなくなってしまう。その隙にすぐ目の前までやって来たクランは、どういうわけかものすごく楽しそうに微笑みながら俺の上着のジッパーを下ろし始めやがった。

 

 そのまま上着を脱がせてネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外していくクラン。今度はズボンのベルトへと手を伸ばし始めやがった。

 

「あっ、く、クラン!?」

 

「ほら、動いちゃダメ♪」

 

「や、やめ―――――――ふにゃあああああああああ!?」

 

 やっぱり俺の声って男っぽく聞こえるように意識しなければラウラにそっくりだな、と思いながら、強引にメイド服を着せられる羽目になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こっちの異世界に転生してから、こんな便利な能力を身につけた上に優しい両親の子供として生まれる事ができたのは本当に幸せだと思う。前世の世界には母さんとの思い出くらいしか残ってないから、もし仮に元の世界に戻れると言われても俺はこっちの世界での生活を選ぶことだろう。

 

 けれども、不便だと思っていることはある。

 

 そう、母さんと瓜二つのこの容姿である。

 

 顔つきはそっくりだし、結構筋トレして筋肉をつけたにもかかわらず体格はすらりとしている。なので体格を見ても女だと勘違いされてしまう。更に声も男の声に聞こえるように意識して低くしなければラウラと聞き分けられないほど高いし、声を低くしているにもかかわらず男の声には聞こえないらしい。

 

 ポニーテールを止めて髪を短くしてもボーイッシュな美少女にしか見えないらしいので、もう諦めて長い間ポニーテールのまま生活してるんだけど、女に間違われる度にどうしてこんな容姿なのに男として生まれたんだろうか、と考えている。

 

 せめて親父みたいにがっちりした男だったら勘違いされることはないだろうし、メイド服を着せられることもなかった筈だ。

 

「…………」

 

「すいませーん、メイドさーん」

 

「はーい」

 

 溜息をついてから、俺を呼んだ兵士が座っているテーブルへとメモ用紙と鉛筆を持って向かう。

 

「カレーライスの大盛り1つとサラダお願いします」

 

「はい、カレーライスの大盛りとサラダですね?」

 

 メニューを確認してからすぐに厨房の方へと向かう。クランは大半の兵士が俺を女だと思っていると言っていたけど、中には俺が男だという事を知っている奴もいる筈だ。そいつらに見られないように注意しなければ。

 

「イリナ、カレーライスの大盛り1つとサラダ1つ」

 

「はーい♪」

 

 カウンターの近くにいたイリナに伝えると、彼女はそれを厨房の料理人たちに報告する前に、どういうわけか俺の顔を見てから顔を赤くした。

 

「どうしたんだ?」

 

「い、いや…………」

 

 や、やっぱり男だから似合ってるわけないよな。母さんに容姿がそっくりとはいえ、俺はアハトアハトが付いてる男だしメイド服は絶対似合わないと思う。

 

 よし、他の奴にお願いして料理人の手伝いをしよう、料理は得意だし、そっちの方が向いてる筈だ。

 

「タクヤってさ、女の子の服を着てる方が似合うと思うよ…………?」

 

「はっ?」

 

「だ、だって…………僕より可愛いじゃん」

 

「そんなわけないだろうが。イリナの方が遥かに可愛いよ」

 

「えぇっ!?」

 

 再び顔を赤くしながら恥ずかしそうに俯くイリナ。彼女はちらりともう一度だけ俺の顔を見ると、「あ、ありがと…………」と小声で言ってから、厨房の方へと走って行ってしまった。

 

 女装の方が似合ってるって言われたけど、似合ってないとしても俺は男装を続けるからな。俺は男なんだ。

 

「すいませーん」

 

「はーい…………ん?」

 

 ちょっと待て、今の声はケーターたちじゃないか?

 

 食事をしたり、料理が運ばれてくるのを待ちながら雑談する兵士たちの向こうで手を振っているのは、シュタージの制服に身を包んだ4人組だった。狼のような雰囲気を放つ黒髪の少年と常にガスマスクをかぶった変態。その2人の向かいに座っているのは、やけに背の小さい少年と黒髪のキメラの少女である。

 

 ケーター、木村、坊や(ブービ)、ノエルの4人だった。

 

 や、やべぇ! あいつらは俺の性別を知ってるぞ!

 

 だ、誰か代わりに行けないか!? 俺が言ったらヤバいことになる!

 

 助けを求めつつ周囲を見渡してみるけれど、他のメイドさんたちは大忙しらしく、他のテーブルの兵士たちからの注文を忙しそうにメモしていた。手が空いているのは残念なことに俺だけらしい。

 

 ち、ちくしょう…………俺しかいないのか。

 

 どうやって誤魔化そうかなと思いつつ、俺はそのテーブルへと向かう。

 

「メイドさん、ハーピーのソテーとアイントプ―――――――お前何やってんの?」

 

 ケーターに早くも気付かれた…………。

 

「…………団長だから身体張れってお前の彼女に言われた」

 

「……………た、大変なんだな………とりあえず、ハーピーのソテーとアイントプフくれ」

 

「かしこまりました………」

 

 お前の彼女(クラン)のせいだからな、ケーター…………。

 

 注文をメモしつつちらりと他のメンバーを見てみると、坊や(ブービ)とノエルはどういうわけか目を輝かせながらこっちを見上げていた。木村のバカはガスマスクをかぶっているので表情が全く分からないんだが、じっとこっちを見ているという事は他の2人のように目を輝かせているんじゃないだろうか。

 

「お兄ちゃん、可愛い…………♪」

 

「似合ってるぞ…………」

 

「ありがたくないッス」

 

 何でこんな容姿に生まれ変わってしまったんだろうね。

 

 溜息をつきながらメモをしていると、ケーターの隣に座っていた木村がいきなり立ち上がった。トイレにでも行くのかなと思いきや、こっちに手を伸ばしてメモをしていた俺の手を握り、俺を見下ろしながら言った。

 

「―――――――付き合ってくれませんか」

 

「「「「えっ」」」」

 

 …………お、俺、男なんですけど。

 

 お前も男だよね? 男同士ってことになるんですが。

 

 いきなり告白されて呆然としている間に、ガスマスクをかぶっている木村の呼吸が荒くなり始めた。

 

「お、俺男なんだけど」

 

「ご安心を。男の娘はセーフですッ!」

 

「だから男って言ってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 男の娘でも男同士ってことに変わりはないだろうが! お、俺は全力で拒否するからなッ! さすがに男に襲われるのは嫌だぞ!?

 

 後ろに下がろうとするけど、木村の握力は予想以上に強かった。

 

「というわけで、今夜デートにでも行きませんか?」

 

「遠慮しときます。というわけで手を離せ」

 

「そんなこと言わずに。では、車でドライブでもどうです? テクニカルしかありませんが」

 

「遠慮しますんで手を離せ」

 

「演劇でも一緒に見に行きましょう。近くに劇場もありますから」

 

「遠慮するから手を離せ」

 

「木村、諦めろ。こいつにはラウラやナタリアがいるんだぞ」

 

 おお、ありがとうケーター! 

 

 さすがにシュタージの副官に言われたらこのド変態も諦めるだろう。

 

「くっ…………ダメですか。でも…………百合も悪くない…………」

 

 だから男だって言ってるだろうが!

 

 そのままシュタージの連中の注文をメモした俺は、木村に襲われないうちにそのテーブルを離れ、踵を返して厨房へと向かう事にした。

 

 はぁ…………早く終わらないかなぁ…………。

 

 

 

 

 

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