異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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ラーゲリ

 

 技術者共が兵士たちに”ある通達”をしてから、テンプル騎士団の兵士たちが殺した敵の数は以前よりも少なくなった。

 

 テンプル騎士団はモリガン・カンパニーの連中とは違って、降伏した敵は捕虜として受け入れている。祖国への帰国を希望するのであればちゃんと国に送り返してやるし、共に戦ってくれるというのであればその捕虜がまだ敵と繋がりを維持しているかどうかをシュタージが調べ、忠誠心が本物だという事が分かり次第仲間として受け入れている。

 

 だから兵士たちの中には、ヴリシアで殺し合いをしていた吸血鬼の兵士もいるのだ。

 

 けれども、敵を捕虜として受け入れるのは基本的にその捕虜が”普通の敵”であった場合だけである。もし俺たちと戦った敵が人々を虐げていた転生者や、何の罪もない人々を苦しめていたクソ野郎だったのであれば、俺たちは降伏勧告はせずに皆殺しにする。

 

 けれどもそのクソ野郎共を殺す数が、減ってしまったのである。

 

 その原因は―――――――技術者の連中が、各部隊に『人体実験のため、転生者を生け捕りにしてほしい』と要請したことだった。

 

 テンプル騎士団は三大勢力の中では最も兵士の質が低いと言われているが、現時点では何度も実戦を経験している兵士も多いし、中には転生者の討伐に成功している兵士もいる。しかしレベルの高い転生者は非常に危険な敵であり、端末を使って特殊な能力や強力な武器を使う事も多い。

 

 更に身体能力の一部がステータスによって強化されているため、相手のレベルによっては銃や戦車砲が通用しないこともある。

 

 そこで、技術者の連中は転生者の弱点を調べるために人体実験をする事にしたらしい。シュタージのエージェントが世界中に潜入して転生者の情報を手に入れ、武装した兵士たちが転生者を”適度に”負傷させてからタンプル搭まで連れてくるのだ。

 

 けれども敵の”殲滅”ばかりを経験していた兵士たちは、”適度に”負傷させるという加減が分からないようだった。五体満足の転生者もいるが、中には少しばかりやり過ぎてしまったのか、腕や足が捥ぎ取られた状態の転生者が運ばれてくることもある。

 

 目の前のモニターに映し出されている転生者にも、左足がなかった。傍らにはその転生者が持っていたと思われる灰色の端末が置かれており、自分の持ち主が縛り付けられている金属製の椅子を青い光で照らしているのが見える。

 

 どうして没収した端末をわざわざすぐ近くに置くのかと言うと、転生者が本来のステータスを維持できる状態で実験しなければ意味がなくなってしまうからだ。タクヤのようなタイプ(第二世代型)の転生者は完全に克服しているけれど、第一世代型の転生者は”端末から離れ過ぎるとステータスが急激に低下する”という弱点があるのである。

 

 残ったもう片方の足と両腕を椅子に縛り付けられた転生者の姿を見つめながら、近くで黄色いスイッチに手を近づけている技術者に合図を送る。技術者はまるでこれから遊びに行く子供のように楽しそうに笑うと、目の前にある黄色いスイッチを覆っていたガラスのカバーを外し、そのスイッチを押した。

 

『おい、ここから出せ! くそ、てめえら皆殺しにしてやる…………よくも俺の足を―――――――ゴホッ!?』

 

 転生者の周囲に、黄色い煙が漂い始める。その煙たちが椅子に縛られている転生者を取り囲んだかと思うと、椅子に座っていた転生者が急に咳き込み始めた。

 

 もちろんあの黄色い煙はただの煙ではない。かつて第一次世界大戦で猛威を振るったマスタードガスだ。

 

 前世の世界では条約によって使う事ができなくなった兵器だが、この異世界ではそのような条約が存在しないので好きなだけ使えるのである。とはいっても乱用すれば非常に危険なので、実戦で使用する際は円卓の騎士全員の承認が必要になっているが。

 

「同志ケーター、あの転生者のレベルは104だそうです」

 

「ふむ…………俺の4分の1じゃないか」

 

 ちなみにタクヤの奴は、転生者を狩り過ぎたせいでもうレベルが4000を超えているらしい。

 

 できればもっとレベルの高い転生者を実験に使いたかったな、と思っていると、画面の向こうで苦しんでいる転生者が口から血を吐き出し、まるで首を絞められているかのような呻き声を発し始めた。やがて身体中の皮膚が爛れ始め、手足を縛られているにもかかわらずもがき始める。

 

 あの転生者は領主をその領地から追い出し、代わりに独裁者ごっこを始めて住民を苦しめていた転生者だという。レベルもそれほど高くないのでタクヤではなく海兵隊の分隊が派遣され、あっさりと生け捕りにされたらしい。

 

 人々を苦しめていたクソ野郎だからなのか、目の前のモニターに自分と同い年くらいの少年が苦しんでいるというのに、全く心は痛まなかった。

 

 人々を虐げるクソ野郎には存在する価値がない、とタクヤたちは幼少の頃から言われていたという。だから何百人も転生者を惨殺してきたというのに、タクヤとラウラはPTSDになる気配は全くない。

 

 多分あの2人も、全く心が痛んでいないのだろう。大切な仲間が傷ついたり戦死すれば涙を流す優しい奴らだけど、こういう敵には全く容赦をしない。心を痛めずに淡々と始末し、その死体の血で転生者にしかわからないメッセージを残していく”異世界の切り裂きジャック”なのだ。

 

 しばらくすると、苦しんでいた転生者が口から血や唾液を垂らしたまま動かなくなった。

 

「…………終わりか」

 

「ええ」

 

 今の実験の結果をノートに記入した技術者が、くるりとこっちを向いて報告する。こいつは心を痛めずに実験を記録していたどころか、今の人体実験を楽しんでいたらしい。

 

 研究区画で勤務している技術者たちの大半はマッドサイエンティストだという話を何度も聞いていたが、この男もマッドサイエンティストなのだろう。

 

「レベルが低かったとはいえ、素晴らしい結果が得られましたよ」

 

「素晴らしい結果?」

 

「ええ。あの転生者はどうやら”毒物を無効化する”スキルを装備していたようなのです」

 

「…………どういうことだ? マスタードガスも立派な毒ガスだぞ」

 

 そう、マスタードガスは第一次世界大戦で猛威を振るった毒ガスなのだ。毒物を無効化する事ができる便利なスキルがあるのならば、マスタードガスの中でも防護服やガスマスクを身に付ける必要はないのではないだろうか。

 

 なのにあの転生者は、毒ガスの中で苦しみながら死んでいった。

 

 つまりマスタードガスが、転生者のスキルを無視したことになる。

 

「おそらく、転生者のスキルでも防ぎ切れない攻撃があるのではないでしょうか」

 

「マスタードガスは対象外ってことか」

 

 転生者のレベルやステータスを無視してダメージを与えられる攻撃手段があるという事が分かったのは、確かに”素晴らしい結果”だ。弾丸や砲弾は防御力のステータスが高い転生者に防がれてしまったり、一撃で仕留める事ができないことも多いのだが、確実に殺せるのであれば転生者の討伐も楽になるだろう。

 

「…………よくやった、引き続き実験を続けてくれ。レポートはシュタージに提出するように」

 

「喜んで」

 

 技術者に指示を出してから、俺はポケットの中の手帳に鉛筆で実験の結果をメモして部屋を後にする。部屋の外で警備をしていた警備兵たちに敬礼をして通路を歩き始めた俺は、研究区画のいたるところに用意されている実験室の中で変な研究をしている技術者たちを見て顔をしかめた。

 

 この研究区画では色んな実験を行っている。中には様々な薬草を調合してより高性能なエリクサーを作ろうとしたり、兵士たちがダンジョンから持ち帰った魔物の素材を調べている熱心な技術者たちもいる。

 

 けれどもここで働いている技術者の7割は、信じられないことにマッドサイエンティストだという。

 

 そのマッドサイエンティストたちがついに人体実験を始めてしまったのだから、研究区画はとんでもないことになっている。

 

 すぐ隣にはドワーフの団員たちの手によって生け捕りにした転生者を収容するための”強制収容所”も造られており、捕らえられた転生者たちはそこへと連れて行かれる。転生者との戦闘を経験したベテランの兵士たちが巡回しているし、実験の時以外は端末は没収されているので脱走は不可能だろう。

 

 転生者たちが収容されているその強制収容所は、団員たちには”ラーゲリ”と呼ばれている。

 

 そのラーゲリに収容された転生者たちは、少量の食事を与えられつつ実験に”使われる”まで待機させられるんだが、実質的にあいつらは死刑囚と同じだ。タンプル搭で行われている人体実験はその転生者が”壊れる(死ぬ)”まで続くので、生きてタンプル搭から出ることは不可能である。

 

 ちなみに今回の人体実験はまだ情けがあった方だ。中には何ヶ月も微量の有害な化学物質を投与させられ、身体が変異したり壊死していくのを観察する残酷な実験もあるという。

 

 もちろん、明るみに出れば糾弾されかねない人体実験の事を知っているのは、ここで勤務する技術者や組織の上層部だけだ。機密情報はシュタージのエージェントが厳重に管理しているし、漏洩させようとする者を発見したらすぐに告発するように義務付けている。

 

 今のところそんな愚か者は1人もいないがな。仮にいたとしたら、そいつもラーゲリの転生者共と同じ運命を辿るだろう。

 

 戦術区画へと続く扉へと向かって歩いていると、すぐ近くの実験場の扉が開き、背中に火炎放射器の燃料タンクを背負った巨漢が火炎放射器を肩に担ぎながら姿を現した。扉の向こうからは肉が焦げたような強烈な臭いが漏れ出ており、彼が担いでいる得物が一仕事してきたという事を告げている。

 

「ああ、ケーター」

 

「お疲れさん、木村」

 

 人体実験が始まってから、こいつは諜報部隊であるシュタージの一員だというのにどういうわけか研究区画で実験に協力することが多い。そのうちシュタージから研究区画に異動になるのではないだろうか。

 

「視察ですか?」

 

「まあな。そっちは?」

 

「焼いてきました」

 

 どういう実験だったんだよ…………。

 

「…………なにを?」

 

「”転生者をどれだけ燃やせば殺せるか”という実験ですよ。どうやら炎はスキルを装備していない限り、転生者のステータスに関係なくダメージを与えられるようです」

 

「つまり、転生者を焼いたと?」

 

「そういうことですね」

 

 ガスだけでなく、炎も転生者のステータスを無視してダメージを与える事ができるというわけか。レベルが高い転生者は脅威としか言いようがないが、そのステータスを無視できるのならば討伐するのは容易いだろうな。

 

 基本的に転生者は自分の能力やステータスに頼っている奴が多い。身体能力はステータスによって大幅に強化されるが、スタミナや武器を扱う技術などは強化されるわけではないので、自分で訓練して底上げするしかない。

 

 タクヤや魔王(リキヤ)のように鍛錬して強くなった転生者は、一握りなのである。

 

 木村と話をしつつ、研究区画を後にする。魔力認証を済ませてから警備兵に敬礼し、居住区へと繋がる小さなエレベーターのボタンを押す。

 

 やがて歯車が回転する金属音を幾重にも束ねたような金属音がエレベーターと共に下から上がってきて、俺たちの目の前で停止してから鉄格子にも似たデザインの扉を開いた。

 

 クランの仕事は午後6時までだから、そろそろ部屋に戻って夕食の準備をするとしよう。何を作れば彼女は喜んでくれるだろうか。

 

 前は和食を作ったら喜んでくれたんだよな、と天ぷらを作った時の事を思い出しながらエレベーターに乗り込んだ俺は、木村が乗り込んだと同時に鳴り響いたブザーを耳にして溜息をついた。

 

《重量オーバーです》

 

「…………木村」

 

「はい」

 

「火炎放射器を下ろせ。身に着けてる防具も外せ。あと、出来ればガスマスクを取れ」

 

 今の木村は、ソ連製のでっかい火炎放射器を身に着けている。しかも身に纏っている防具は耐火性と耐熱性が極めて高い、サラマンダーの素材を使った防具だ。その非常に重い装備を巨漢が身に纏っているのである。

 

 一般的なエレベーターよりも小型のエレベーターなので、運ぶことができる人数もそれほど多くないのだろう。でも2人乗っただけで重量オーバーになるなんて…………。

 

 木村の装備はどれだけ重いのだろうか。

 

 端末を取り出して火炎放射器を装備から解除し、防具を外し始めた木村(バカ)を見守りながら、俺は再び溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眉間に突き刺さったスペツナズ・ナイフの刀身を強引に引っこ抜き、動かなくなった死体を壁際へと引きずっていく。10秒くらい前までは俺とラウラの事を格下の相手だと勝手に決めつけ、滑稽としか言いようがないほど高を括っていた転生者の少年は、俺たちが遥かに格上の相手だという事を知る前に死んでいったに違いない。

 

 血まみれのナイフの刀身をグリップに再び装着し、暖かい血と脳味噌の一部が付着した刀身を撫でる。黒い革の手袋に付着した鮮血を壁に押し当てて赤い模様を描いてから、くるりと後ろを振り返った。

 

「ラウラ、残りの敵は?」

 

「いない」

 

「カノン、聞こえるか? そっちは?」

 

『クリアですわ』

 

 いつもと同じ結果だ。

 

 高を括っていた敵を瞬殺するか、出来るだけ生け捕りにする。今回はステータスに差があり過ぎたのか、スペツナズ・ナイフの刀身を発射しただけですぐ終わってしまったけれど。

 

 圧倒的な力を手に入れて、その力であらゆる敵を蹂躙してきたのだから、自分たちに逆らおうとする敵を見下してしまうのは仕方のない事だ。だから俺たちは幼少の頃から何度も「敵は常に格上だと思え」と言われてきた。

 

 俺たちは”下”なんか見ない。常に”上”を見るのだ。

 

 エコーロケーションで警戒を続けていたラウラが、溜息をついてから警戒を止めた。もう敵はいないと判断したのだろう。彼女は装備していたAK-15の安全装置(セーフティ)をかけると、黒いベレー帽をかぶり直しながら転生者の死体を見下ろす。

 

 彼女に渡してあるAK-15は、近距離戦を想定して銃身をショートバレルに換装してある。搭載されているのはフォアグリップとオープンタイプのドットサイトのみで、俺のAK-15と比べるとかなりシンプルだ。

 

 俺のAK-15は彼女の銃とは真逆で、銃身を中距離戦を想定してロングバレルに換装し、グレネードランチャー、ホロサイト、ブースター、折り畳み式のスパイク型銃剣を装備している。

 

「カノン、ごめん。標的を殺しちまった」

 

『仕方ありませんわね。では、技術者の皆様には伝えておきますわ』

 

「すまん」

 

 転生者を殺し過ぎたせいで、俺のレベルはとっくに4000を超えた。

 

 魔物や普通の敵兵を倒すよりも、転生者を殺す方がレベルは遥かに上がりやすい。なので転生者を何人も殺していれば簡単にレベルが上がっていく。

 

 彼らを殺す度に、輪廻の思惑通りなんだろうな、と思ってしまう。

 

 間違いなく輪廻の思惑通りだろう。俺と戦死してしまったブラドは、第二世代型転生者の試作品(プロトタイプ)。このように転生者を殺すことで容易くレベルが上がるように設定しておき、その転生者たちを俺たちに殺させることによって急激に強化させ、最終的にこの世界を守る守護者(ガーディアン)の代役にするのが輪廻の目的だという。

 

 つまり強くなればなるほど、輪廻の計画は進んでいく。

 

 だからと言って転生者の討伐を止めれば、テンプル騎士団の存在意義がなくなってしまうし、クレイドル計画も進まない。悔しいけれど、彼女の思惑通りに行動するしかないのだ。

 

 でも、世界を守ることが彼女の目的だというのであれば思惑通りに行動しても問題ない筈だ。

 

 スペツナズ・ナイフを逆手持ちにし、死亡した転生者の少年の腹に突き立てる。端末が機能を停止したことで常人に戻ってしまった彼の腹を切り裂くと、大量の血と共に腸や胃が溢れ出す。

 

 手袋を外してその鮮血の中に手を突っ込み、真っ赤になった手を近くの壁に押し付ける。前世の世界で使っていた言語である日本語で壁にメッセージを描き始めると、後ろにやって来たラウラもスペツナズ・ナイフを引き抜き、すぐ後ろで転生者の死体を淡々と”解体”し始めた。

 

 メッセージを書いてから、俺もラウラと一緒に転生者の死体をバラバラにしていく。このように標的を惨殺して日本語のメッセージを残せば、これを目にした転生者はきっと恐れるだろう。”蛮行を続ければ切り裂きジャックに殺される”ということを理解してくれれば、この世界のクソ野郎も減る筈だ。

 

 幼少の頃から狩猟を経験していたので、”獲物”を解体するのはお手の物である。

 

「これでいいだろう」

 

「そうね」

 

 息を吐いてから、血まみれのナイフを鞘に戻して部屋を後にする。ここは田舎の街とはいえ街の真ん中にある屋敷なのだから、騎士団や新聞の記者たちはすぐにここに居座っていた転生者が切り裂きジャックの餌食になったことに気付く筈だ。

 

 窓を開けて身を乗り出し、窓の縁を掴みながら素早く下へと降りていく。小さい頃に壁をよじ登る訓練や、ラウラと一緒に屋根の上や工場の煙突を使って鬼ごっこをやっていたことを思い出しながら下へと降り、ラウラが降りてくるまで周囲を警戒しておく。

 

 降りてきたラウラと共に屋敷の裏の路地へと出ると、サプレッサー付きのSVK-12を背負ったカノンが馬車の上で手綱を持って待っていた。

 

「早かったですわね」

 

「相手が弱過ぎたのよ。10秒くらいで終わったわ」

 

 下手したら、転生者を討伐しに行った俺とラウラよりも屋敷を警備していた警備兵を相手にしたカノンの方が時間がかかったのではないだろうか。

 

 その後死体を解体してメッセージを残してきたとはいえ、俺たちよりも先に合流地点で待ってるとはな。カノンも成長したという事だろう。

 

 そんなことを考えていると、ラウラがポケットからハンカチを取り出した。

 

「タクヤ、こっち向いて。顔に血が付いてるわ」

 

「マジで?」

 

「ふふっ、目が虚ろだったらヤンデレみたいね」

 

 お姉ちゃんに言われたくありません。

 

 最近はラウラの目が虚ろになることが少なくなったんだけど、時折手足をベッドに縛り付けられて部屋の中に監禁されることがある。2時間くらいするといつも解放してくれるけど。しかも監禁している最中はずっと目が虚ろな状態のままである。

 

「帰ったら一緒にシャワーを浴びましょう」

 

「うん、そうしよう」

 

 大人びてる方のラウラだったら襲われることはないと思う。

 

 安心しつつ、俺は馬車の窓の外を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”ツヴァイ”は順調に育っているみたい。

 

 転生者を次々に殺してレベルを上げ、自分が作り上げた組織をどんどん成長させている。核兵器に手を出したり、人体実験を始めてしまったのは予想外だけど、そのおかげでテンプル騎士団は極めて強力な組織になったと思う。

 

 目の前に映し出されている立体映像を眺めながら、私は笑った。

 

 守護者(ガーディアン)の代役が、順調に育っている。もう片方の試作品(プロトタイプ)を打ち倒し、あらゆる強敵を返り討ちにしてどんどん成長していく。

 

 それはとても喜ばしい事だった。

 

 この計画が成功するという事は―――――――数多の”リキヤ”たちが救われるという事なのだから。

 

 けれども、ツヴァイにこの世界を守らせるのはまだ早い。”仕上げ”をしなければ、彼はリキヤたちの代役になることはできない。

 

「そろそろ動くべきかもね」

 

 目の前の立体映像を消し、新しい立体映像を出現させる。

 

 そこに表示されているのは、あの世界へと転生した数多の転生者たち。死亡した転生者の名前が次々に消えていき、新たに転生した転生者の名前が続々とそのリストに表示されていく。

 

 ここに表示されている転生者たちは―――――――全て、”代役”を作り上げるための餌でしかない。

 

 こいつらの中から代役に相応しい者が現れない以上、役立たず共を全てツヴァイの餌にするしかないの。

 

 右上にあるメニューをタッチした私は、表示された画面をタッチし、あの世界にいる全ての転生者にメールを送信する事にした。

 

 餌たちにとっては、とても魅力的なメッセージ。

 

 生き延びたツヴァイにとっては―――――――守護者になるための、試練の始まりを告げる通告を。

 

 

 

 

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