異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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転生者たちの攻勢

 

「急げ急げ!」

 

「隊長、全員搭乗しました!」

 

「よし」

 

 兵員室の中で部下からの報告を聞いた分隊長は、腕を組んだまま兵員室の天井を見上げた。

 

 兵員室の中に座っているのは、テンプル騎士団で採用されている黒と灰色の迷彩服を身に纏い、頭に昔のドイツ軍が採用していたシュタールヘルムやピッケルハウベに似たヘルメットをかぶった、様々な種族の兵士たちである。

 

 遠征することが多くなったとはいえ、魔物たちは未だに群れを形成して先住民たちの村やテンプル騎士団の拠点を襲撃してくる。それを防ぐために、テンプル騎士団では各地域での魔物の掃討作戦を定期的に実施していた。

 

 そのような任務に参加するのは、まだ経験の浅い兵士たちである。まだ難易度の低い魔物の掃討作戦で経験を積んだ兵士たちが海兵隊などに編入され、遠征へと派遣されていく決まりになっている。

 

 今回の掃討作戦は魔物の群れの規模が比較的大きかったため、歩兵部隊では荷が重いと判断したラウラが、彼らの元に強力な味方を派遣していた。

 

 彼らと共に魔物の群れを蹴散らしたのは―――――――テンプル騎士団が運用している、虎の子のシャール2Cの20号車『シャルル・ド・ゴール』であった。

 

 春季攻勢(カイザーシュラハト)に投入され、吸血鬼たちの攻勢を迎え撃った”初期型”の欠点を克服した改良型のうちの1両であり、正面装甲の分厚さを維持したまま側面や後方の装甲もさらに厚くなっている。車体は延長され、エンジンも増強されているため、小回りは利かないものの速度は速くなっている。

 

 主砲は152mm連装滑腔砲であり、巨大な砲身から大型の対戦車ミサイルも発射可能である。主砲同軸に搭載されているのは、対戦車ライフルにも使用されていた14.5mm弾を連射する重機関銃だ。

 

 本来ならば車体後部にも武装を搭載した砲塔が搭載されているのだが、このシャルル・ド・ゴールは後部の砲塔が撤去されており、武装の数が他の車両よりも少なくなっている。

 

 その代わりに搭載されているのが―――――――武装した兵士たちを乗せることが可能な”兵員室”であった。

 

 後部の砲塔のあったスペースや弾薬庫のスペースを利用し、超重戦車の車内に16人も兵士を乗せる事ができる兵員室を搭載したのである。更に機関室の上にも装甲で覆われた兵員室を増設したことにより、武装した24名の兵士たちを装甲と重装備で守りながら最前線へと運ぶことができるのである。

 

 戦車と歩兵戦闘車(IFV)が融合した兵器と言ってもいいだろう。

 

 後部の砲塔が撤去された代わりに、車体前部の両側と後部の両側に7.62mm弾を発射可能な機関銃が搭載されており、接近してくる歩兵を迎撃することが可能となっている。

 

 この超重戦車の任務は、敵の防衛線を強引に突破し、圧倒的な火力で敵部隊を蹂躙しつつ周囲の安全を確保してから歩兵たちを降ろして、防衛戦を制圧することである。

 

 圧倒的な火力と防御力を誇るとはいえ、そのような任務を1両で遂行するのは難しいため、同じく兵員室に24名の歩兵を乗せることが可能な19号車『フェルディナン・フォッシュ』と共に進撃することになっていた。

 

 登場するのは歩兵のみであり、戦車そのものの操縦は搭載された制御装置やAIが行う。そのため、必要な人員は前線で戦う歩兵のみなのだ。

 

 乗り込んだ兵士たちが車体後部のハッチを閉めると、兵士たちが乗り込んだことを確認した車体前部の制御装置が、タンプル搭から受信した命令通りに車体をゆっくりと走らせ始める。新型の戦車を踏みつぶせるのではないかと思ってしまうほど巨大なキャタピラが鳴動し、砂漠に巨大なキャタピラの後を刻み付けながら前進していく。

 

 エンジンの音が響く兵員室の中で、分隊長は自分の部下たちをちらりと見てから、後端部にあるハッチを睨みつけた。ハッチの左脇には機関部の上に増設された兵員室の兵士たちが降りてくるための階段が用意されている。分厚い装甲で覆われた車体よりも、車体上部に増設された兵員室の方が被弾率が高いため、降りる場合は上の兵員室の兵士たちを優先する必要がある。

 

 テンプル騎士団では1つの分隊は8名の兵士たちで構成されている。つまりこのシャルル・ド・ゴールとフェルディナン・フォッシュは、3つの分隊を運ぶことができる怪物なのだ。

 

「敵は転生者か…………」

 

 ハッチを見つめていると、隣の席に座る別の分隊の分隊長がそう呟いたのが聞こえた。

 

 これから彼らは、タクヤを殺すために集結してくる転生者たちを迎撃するために出撃するのである。

 

 敵の数は900人。しかも平均的なレベルは4000から5000と言われており、現在のタクヤのレベルに匹敵する。その900人の中で強くなるために訓練をしている努力家が何人いるかは不明だが、かなり熾烈な戦闘になるのは想像に難くない。

 

 隣で呟いた分隊長が、懐から白黒の写真を取り出す。写っているのは耳の長いエルフの女性で、優しく抱いているのは幼い赤子だった。

 

 彼の家族なのだろうか。

 

「安心しろ、別のシャール2Cと増援部隊も向かってる。それに、俺たちにはAK-15(カラシニコフ)があるじゃないか」

 

「そ、そうだな…………」

 

 仲間の兵士を励ましてから、彼は持っていたAK-15のグリップをぎゅっと握り、再び車体後部のハッチを睨みつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オイルと金属の臭いが遠くから流れ込んできたことを察知すると同時に、俺は寝袋の中から素早く飛び出し、近くに置いてあるAK-15へと手を伸ばした。壁に立てかけてあるOSV-96を取って折り畳んだ状態で背中に背負い、強力な14.5mm弾が装填されたでっかいマガジンをポーチの中へと放り込む。

 

 RPG-7と対戦車榴弾をいくつか手に取りつつ、塹壕の中に掘った穴の中から飛び出す。

 

 あの臭いが流れてきたという事は、敵が俺の嗅覚で探知可能な範囲に入ったという事だ。しかもオイルの臭いがしたという事は、今度の敵は今までの転生者のように剣や魔術で攻撃してくるタイプの転生者だけではない。そういう奴も混じっているかもしれないが、今度はきっと面倒な連中も一緒だろう。

 

 そう、現代兵器を装備した転生者だ。

 

 剣術や魔術で攻撃してくるタイプの奴らは基本的に戦いやすい。接近されたり魔術の詠唱が終わる前に、銃弾をぶち込んでやるだけで勝負がつくのだから。時折剣で弾丸を弾く奴もいるけれど、立て続けに弾丸をぶち込んでやれば防ぎ切れなくなり、数秒で蜂の巣と化してしまう。

 

 だからそういう奴らは戦いやすい。

 

 けれども、現代兵器を装備した連中は厄介だ。

 

 潜望鏡を覗き込み、塹壕の外の様子を確認した俺は、潜望鏡の向こうから進撃してくる敵の中に戦車が紛れ込んでいることを確認して舌打ちをする。

 

 分厚い装甲で覆われた巨大な車体の上に、強力な主砲を搭載したやけにでかい砲塔が乗っているかのような形状の戦車が、3両もこっちに向かってくるのだ。しかもその戦車の後方にはまるで装甲の厚い戦車を盾にして接近しようとしているかのように、大剣やライフルを手にした転生者と思われる少年や少女たちがずらりと並び、じりじりと塹壕に接近しつつある。

 

 俺1人を殺すためにあんなに戦力を投入してきたことに驚愕しつつ、潜望鏡で敵の戦車を確認する。

 

 おそらくあれは、イスラエルで開発された『メルカバMk4』だろう。

 

 最新型の戦車の中でも優秀な防御力を誇る主力戦車(MBT)である。厚い装甲を搭載している上に、”トロフィー”と呼ばれるアクティブ防御システムまで搭載しているため、対戦車ミサイルなどで撃破するのは難しいだろう。

 

 舌打ちをしながら、メニュー画面を開いてRPG-7を装備の中から解除。代わりに、アクティブ防御システムを欺くことが可能なRPG-30を装備して傍らに置いておく。

 

 タンプル搭からの連絡では、この塹壕へと向かっている転生者の人数は合計で900人ほどだという。今しがたこの塹壕へと進撃してきている連中は、戦車の後ろに隠れている”随伴歩兵”だけで50人ほどだ。

 

 ということは、あの連中は”先遣隊”なのだろうか。

 

 潜望鏡を傍らの木箱の上に置き、RPG-30を担いだまま姿勢を低くして塹壕を飛び出す。今の時刻はまだ午前4時50分。空の色はまだ藍色で、太陽が昇る気配はない。周囲が薄暗い上にこの砂漠の砂は灰色なので、黒い転生者ハンターのコートに身を包んだ俺を見つけるのは難しい筈だ。

 

 塹壕を飛び出し、姿勢を低くしたまま戦車部隊の側面へと回り込む。側面からこいつをぶち込んでやれば敵は慌てふためくかもしれないが、メルカバは優れた防御力を誇る戦車だ。装甲が薄い側面にぶち込んでも、もしかしたら撃破できないかもしれない。

 

 けれども敵を混乱させることはできる筈だ。嗅覚のおかげで敵の位置は分かるし、こっちは一週間以上もここで戦い続けている。あの塹壕の周囲の地形は全部覚えているのだから、こっちは奇襲し放題である。

 

 砂の上に伏せ、RPG-30の照準器を覗き込む。口の中に入り込んだ砂を静かに吐き出し、呼吸を整えながら標的へと狙いを定める。

 

 最初に攻撃するのは、敵の右側を進んでいるメルカバだ。まずあいつにRPG-30をプレゼントし、敵が混乱している隙にRPG-30を捨てて後ろへと回り込んでやろう。

 

 息を吐いてから、トリガーを引いた。

 

 アクティブ防御システムを欺くためのロケット弾と共に形成炸薬(HEAT)弾が飛び出して行く。唐突に発射されたロケット弾に数名の転生者が気付いたらしく、仲間に気を付けろと叫んでいる声が聞こえたけれど、アクティブ防御システムでこいつを防ぐのは難しいだろう。

 

 随伴歩兵は眼中にないと言わんばかりに、ロケット弾と形成炸薬(HEAT)弾が直進していく。メルカバに搭載されたトロフィーが接近してくるロケット弾を察知して瞬時に撃墜したが―――――――その爆炎を突き破って肉薄した形成炸薬(HEAT)弾を撃墜することはできなかった。

 

 形成炸薬(HEAT)弾がメルカバの砲塔の側面に喰らい付き、薄暗い砂漠の一角で緋色に煌いた。産声を上げた爆音が俺の頭上を通過していくと同時に、発射し終えたRPG-30を投げ捨て、姿勢を低くしたまま戦車部隊の後ろへと回り込みつつ敵の様子を窺う。

 

 被弾したメルカバは、動きは止まったものの、なんと砲塔はまだ辛うじて旋回しているようだった。あれを生産した転生者が装甲を増設して防御力を強化していたのだろうか。

 

 ハッチから顔を出した乗組員が、砲塔の上のブローニングM2重機関銃を掴み取って先ほど俺が攻撃した地点へと12.7mm弾を掃射する。随伴していた転生者たちも、装備していた銃や魔術用の杖を使って魔術を放ち、もう既に誰もいなくなった地点へと無駄な攻撃を始めた。

 

 それを嘲笑いたいところだったが、あいつらを嘲笑うのは敵を殲滅してからにしよう。

 

 姿勢を低くしたまま素早くメニュー画面を開き、C4爆弾を2つ装備する。メニュー画面の蒼い光がバレていないことを確認しつつ、サプレッサーとドットサイトも装備した強襲殲滅兵仕様のPL-14を引き抜き、そのまま戦車の後ろへと接近していく。

 

 最後尾で魔術を放ち続けていた魔術師みたいな服装の転生者の頭を9mm弾で撃ち抜く。サプレッサーで随分と小さくなった銃声を置き去りにして飛び出した銃弾が彼の頭を撃ちぬき、転生者を瞬く間に絶命させる。次は仲間の1人が背後からやって来た敵に殺されたことに気付いた転生者の少女に照準を合わせ、躊躇せずにトリガーを引いた。

 

 がくん、と少女の頭が大きく揺れる。眉間に9mm弾をプレゼントされた少女はそのまま仰向けに崩れ落ち、薄暗い砂漠を自分の血で彩る。

 

 他の連中は気付いていないだろうかと思いつつ確認したが、転生者たちは信じられないことにまだ俺に気付いていないらしい。中には剣を構えたまま雄叫びを上げ、さっき俺がRPG-30を投げ捨ててきた地点に突進していくバカ共もいる。

 

 排除する転生者はこれくらいでいいだろう。

 

 フォアグリップから手を離し、ポーチの中からC4爆弾を掴み取る。そのまま砲塔を旋回させて主砲同軸の機銃を掃射している手負いのメルカバの後ろへと接近した俺は、PL-14をホルスターの中へと戻してから血液の比率を変化させ、右手をキメラの外殻で覆ってから後部のハッチに手を伸ばした。

 

 メルカバは他の戦車と違って後部に装甲車のようなハッチがあるのである。

 

 そのハッチの隙間に鋭い爪を入れ、指に思い切り力を入れる。ゆっくりとハッチの隙間が大きくなっていくのを確認しつつ指を入れ、さらに力を入れてハッチを強引にこじ開ける。

 

「ん? お、おい、誰だお前は―――」

 

 中にいた操縦士がこっちを振り向いて目を見開く。俺はニヤリと笑いながらC4爆弾を2つ車内へと放り込むと、丁寧にハッチを閉めてからダッシュでメルカバから離れ、ニヤニヤしながら起爆スイッチを押した。

 

 車内で荒れ狂う爆風が、ハッチから身を乗り出して銃撃していた乗組員の肉体を押し上げる。ハッチから飛び出した爆炎が手負いのメルカバを紅く照らし、他の転生者たちに戦車の内の1両が撃破されたという事を告げた。

 

 残りは2両か。

 

 敵に居場所がバレる前に姿勢を低くした俺は、メニュー画面を開いて次の装備を用意しつつ、別のメルカバへと忍び寄るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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