異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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競争相手

 

「くそ、戦車がやられたぞ!」

 

「敵はこっちにいるんじゃないのか!? どこから攻撃してきた!?」

 

「2人いるのか!? そんな話は聞いてないぞ!?」

 

 C4爆弾を車内で起爆され、炎上するメルカバMk4から離れながら、俺は呆れていた。転生者の大半は端末の能力や自分のステータスに頼っている連中が多く、戦闘の経験を積んだり訓練して自分を鍛えている転生者はごく少数である。転生者を何人も狩った親父はそれを目の当たりにしているし、俺も実際に転生者たちと戦ってそういう真面目な奴が少ないという事は確認しているから、この仮説は合っている事だろう。

 

 稀に筋トレで体力をつけていたり、こっちの奇襲を見破れるほど警戒心の強い厄介な転生者と戦うことになるけれど、努力せずに端末に頼る阿呆ばかりと戦っているせいなのか、そういう努力家と出会うと嬉しくなってしまう。

 

 今回もいつも通りの連中(阿呆ばかり)だな、と思いつつ、メニュー画面を開いて再びC4爆弾を準備する。さっきみたいにRPG-30でアクティブ防御システムを欺いて攻撃するのもいいが、確実に戦車をぶっ潰すならば肉薄し、中に爆弾を放り込んでやった方がいいだろう。これでもかというほど防御力を高めた堅牢な戦車でも、中に乗っている人間の防御力はそれほどでもないのだから。

 

 戦車に随伴していた転生者たちの位置を確認し、俺は再び呆れる。

 

 俺を殺して報酬を受け取りたいからなのか、戦車を護衛する”随伴歩兵”として一緒についてきた転生者たちは、信じられないことに戦車から離れ、俺がさっき隠れていた場所に殺到していた。おかげで戦車の周囲にいるのはそいつらに置き去りにされた奴らだけになっており、戦車の周囲ははっきり言って隙だらけになっている。

 

 随伴歩兵として機能していないのだ。

 

 ちゃんと戦車の周囲に展開し、真面目に戦車を護衛していれば肉薄してC4爆弾で戦車をぶっ潰すことはできなかっただろう。

 

 やっぱり、私腹を肥やすことを優先する自分勝手な転生者たちが連携するのは不可能だったというわけだ。

 

 そう思いつつ、今度は一番右側にいる戦車に忍び寄っていく。ど真ん中の戦車の方が近いけれど、どちらも砲塔を10時の方向へと向けてさっき撃破された戦車や俺が隠れていた地点を確認しているらしい。ど真ん中の戦車に肉薄すれば、一番右側を走行している戦車に発見されてしまう恐れがある。

 

 キメラの外殻は大口径の弾丸を弾くことが可能だけど、さすがに戦車のAPFSDSに耐えるのは難しいかもしれない。辛うじて一発喰らっても耐えることはできるかもしれないが、それ以上被弾すれば外殻が砕けてしまう。

 

 幼少の頃に受けたフィオナちゃんの検査では、俺の外殻は『発達さえすればエンシェントドラゴン並みの防御力になる』という結果が出て親父たちが驚いていたけど、まだこの外殻は未発達だ。

 

 さっきのようにメルカバMk4の後ろに忍び寄る。手を伸ばして車体へとよじ登り、他国の戦車とは全く違う形状の砲塔の上へと上がる。ハッチへと手を伸ばして中にC4爆弾を放り込んでやろうと思ったが―――――――左側から戦車の砲塔が旋回するような音が聞こえてきたのを確認すると同時に、反射的に身体中を外殻で覆った。

 

 その直後、隣を走行していた戦車のブローニングM2重機関銃が火を噴いた!

 

「っ!」

 

 戦車の装甲に弾丸が弾かれるような音を奏でつつ、大口径の12.7mm弾が外殻に弾かれていく。歯を食いしばったまま隣の戦車を睨みつけると、砲塔に搭載された主砲同軸の機銃と砲塔の上の機関銃がこっちに弾丸をぶっ放しているのが見えた。

 

 舌打ちをしつつ、C4爆弾を車内へと放り込む。大急ぎでハッチを閉め、中にいた転生者の悲鳴を聞きながら起爆スイッチを取り出すが―――――――砲塔から伸びる砲身がこっちの戦車へと向けられたのを見た瞬間、この起爆スイッチの出番がないという事を悟った。

 

 咄嗟に砲塔の上からジャンプしつつ、両腕で頭を守る。

 

 その直後、隣を走行していたメルカバMk4の主砲が火を噴いた。爆炎を纏っていた砲弾がサボットを脱ぎ捨て、戦車の装甲を容易く貫く金属の矛(APFSDS)があらわになる。

 

 こいつらは、味方を撃ったのだ。

 

 現時点では協力しているが、彼らの目的は俺を殺すことで手に入る報酬を手に入れる事。それを手にする事ができるのは討伐した転生者だけになるのだから、他の転生者たちは”競争相手”でしかない。

 

 その競争相手が乗る戦車の上に標的が肉薄していたのならば、砲弾をぶち込めば俺を殺せるし、競争相手も潰すこともできるというわけである。先に機銃を掃射してきたのは、味方ごと俺を撃つことを躊躇ったからなのだろうか。

 

 やはり躊躇いは不要だな…………。

 

 猛烈な火花が煌き、装甲の破片が飛んでくる。外殻でそれを防ぎつつ着地した俺は、今しがた砲弾を喰らったメルカバをちらりと見ながらAK-15のホルダーへと手を伸ばす。見つかってしまった以上、サプレッサーでこっちの居場所をバレないようにする必要はない。

 

 どうやら哀れなメルカバは、味方のAPFSDSを、よりにもよってエンジンが搭載されている車体前部の側面にぶち込まれてしまったらしい。風穴が開いたと思われる部分から黒煙や火花を発しつつ、動かなくなってしまっている。

 

 やがてハッチが開き、真っ黒な煙と共に中から転生者の少年たちが飛び出してきた。

 

「おい、味方だろうが! 何で撃ったんだよ!?」

 

『うるせえ! 敵に肉薄されてるそっちが悪いんだ!』

 

「なんだと…………!? おい、砲塔は動くか!? あいつらに反撃だ!」

 

「無茶を言うな! それより正也(まさや)を引っ張り出すのを手伝ってくれ…………! 破片が身体中に刺さってるんだ…………!」

 

 あいつらを狙撃してやろうかと思ったが、仲間割れをしているのであれば撃つ必要はない。むしろこのまま仲間割れをしている隙を突けば、もう1両の戦車も撃破できる筈だ。

 

 そう思いつつ匍匐前進を始めたが―――――――唐突に銃声が響き渡り、戦車の砲塔の上から隣の戦車に抗議していた少年の上半身が千切れ飛んだ。

 

 ズタズタになった上半身や内臓の一部が、匍匐前進を始めた俺のすぐ近くに降ってくる。べちゃ、と目の前に落下してきた腸の一部を顔をしかめつつ横へと退け、戦車の上を見上げる。

 

 すると、今度はそのメルカバが爆発し、火達磨になった。

 

 おそらくさっきの戦車が”止め”を刺したのだろう。

 

 キーン、という音に聴覚が一時的に支配される。甲高い音が小さくなっていくのを待っていると、その甲高い音の代わりに、今度は戦車のキャタピラとエンジンが奏でる重厚な音が聴覚を支配し始める。その音が大きくなっているのを察知した俺は、ぎょっとしながら立ち上がった。

 

 すぐ近くで炎上するメルカバの前から回り込んできた最後のメルカバが、こっちへと砲塔を向けて機銃を撃ってくる。慌てて撃破されたメルカバの影に隠れ、呼吸を整えながらメニュー画面を開く。

 

 多分、あの戦車に肉薄するのは難しいだろう。こっちの居場所を察知されていなかったからこそ肉薄して爆弾を放り込む事ができたが、発見されてしまったのだから近付くのは不可能だ。

 

 もう一度RPG-30を使うべきだろうか。

 

『同志団長、聞こえますか? こちらタンプル搭中央指令室』

 

「聞こえてる、どうぞ」

 

『第87前哨基地のレーダーに敵の増援の反応があった模様。A-10が7機ほど接近中です』

 

「A-10が?」

 

『ええ。しかも、前哨基地からの報告では、観測員が50両以上の所属不明の戦車部隊を発見したそうです。おそらく転生者かと』

 

「…………了解だ」

 

 なんてことだ…………。

 

 50両以上の戦車部隊と7機のA-10の増援だと!?

 

 たった1人で最強の攻撃機の群れと戦車部隊を返り討ちにしなければならないと言うのか。

 

 タンプル搭に増援でも要請するべきだろうか、と思った瞬間、傍らで炎上しているメルカバの装甲を、転生者が放ったと思われるファイアーボールが直撃した。

 

 先ほど俺が隠れていた場所に殺到していた転生者共が、こっちに気付いて戻ってくる。このままでは戦車と転生者たちに挟み撃ちにされてしまう。

 

 RPG-30を使う隙はあるのだろうか、と思ったその時、俺は先ほどこの炎上している戦車の中へと放り込んだC4爆弾の事を思い出した。

 

 もしまだ無事ならば、起爆スイッチを押せば爆発する筈だ。

 

 あのメルカバが近くに来た瞬間に起爆すれば、その爆発で損害を与えることはできないだろうが、目くらましとして機能してくれる筈である。

 

 キャタピラの音が近づいてくる。嗅覚も活用してメルカバが接近していることを確認してから、左手をポケットの中の起爆スイッチへと伸ばしつつ戦車の残骸から距離を取る。

 

 メルカバが放った機銃が、外殻で覆われた肩や脹脛を直撃する。歯を食いしばりながら後ろを振り向いた俺は、メルカバを睨みつけながら起爆スイッチを押した。

 

 次の瞬間、炎上していたメルカバのハッチから、またしても火柱が顔を出した。黒煙を噴き上げながら砂漠の真っ只中に居座っていた黒い巨体がびくりと揺れ、ハッチから飛び出した爆炎と黒煙がもう1両のメルカバに絡みついていく。

 

 今だ!

 

 姿勢を低くしながら突っ走る。できるならC4爆弾を用意しておきたかったが、全力疾走しながらそんなことをするのは不可能だ。破壊力は劣るが、手榴弾で代用するしかない。

 

 AK-15へと手を伸ばし、炎上するメルカバの上へとジャンプする。爆炎が噴き出すハッチの上を飛び越え、火達磨になった焼死体を踏みつけてから、近くにいる最後のメルカバの砲塔の上へと思い切りジャンプする。

 

 そのまま強引にハッチを開く。中にいる車長を射殺してから手榴弾を投げ込むつもりだったんだが―――――――それよりも先にハッチから飛び出てきた転生者の少年のせいで、その作戦が台無しになってしまう。

 

「!」

 

 唐突に飛び出してきたその転生者に突き飛ばされ、砲塔の後ろへと転倒してしまう。顔面を蹴り上げるために振り上げられた転生者の足を横に転がって回避し、起き上がりつつ前へと進んでそいつのみぞおちを思い切り殴りつけた。

 

 みぞおちにパンチを叩き込まれた転生者が、腹を押さえながら必死に空気を吸い込もうとする。AK-15を一旦砲塔の上に置き去りにし、外殻で覆った右手でそいつの顔面に右手でストレートをお見舞いする。

 

 腰を捻りながら思い切り突き出した強烈な一撃を喰らった転生者が、そのまま車体の前の方へと吹っ飛ばされていく。体勢を立て直して起き上がろうと足掻きながら転がっていた転生者は、そのまま走行中のメルカバの車体の前へと転落し―――――――巨体を動かしているキャタピラの餌食になった。

 

 断末魔が、キャタピラに骨や肉を潰される湿った音にかき消されていく。

 

 呼吸を整えつつAK-15を拾い上げ、開きっ放しになっている車長のハッチの中へと銃身を突っ込む。白兵戦は得意だが、さすがに走行中の戦車の上で第二ラウンドを始めるつもりはない。とっととこの戦いを終わらせてタンプル搭に戻り、お姉ちゃんと早くイチャイチャしたいのだから。

 

 第二ラウンドが始まらないことを確認してから、安全ピンを引っこ抜いた手榴弾を3つほど放り込む。丁寧にハッチを閉めてから戦車の横へとジャンプして飛び降り、こっちへと接近してくる転生者の群れに向かってAK-15のフルオート射撃をお見舞いする。

 

 その直後、背後のメルカバの方から手榴弾が立て続けに爆発する音が聞こえてきた。ちらりと後ろを向くと、戦車の装甲よりもはるかに脆弱な乗組員たちを手榴弾で吹っ飛ばされたメルカバが、砂漠のど真ん中で停車しているところだった。

 

 よし、これで戦車は全滅だな。

 

 マガジンを交換しつつ安堵したが―――――――砂漠の向こうからエンジン音が聞こえてきたのを聞いて、俺はぎょっとしながら後ろを振り向く羽目になった。

 

 ―――――――乗組員を殺されて停車しているメルカバの向こうから、無数の戦車たちが進撃してきたのだ。

 

 双眼鏡や潜望鏡を使っていないのではっきりと見えないけれど、数は報告と同じく50両ほどだろう。今しがた戦ったメルカバMk4だけでなく、アメリカのエイブラムスらしき戦車や、イギリスのチャレンジャー2と思われる戦車も見受けられる。

 

 あらゆる最新型の戦車が、進撃してきたのである。

 

「嘘だろ…………」

 

 たった1人で、あの戦車部隊に打ち勝てと言うのか。

 

 しかもここへとやって来たのは、その戦車部隊だけではないらしい。

 

 戦車のエンジン音とは異なるエンジン音を耳にした俺は、目を見開いたまま空を見上げて絶句した。

 

 ―――――――航空機だ。

 

 地上部隊を蹂躙できるほどの獰猛な武装と、ミサイルに被弾しても飛行できるほど頑丈な装甲を併せ持つ7機の怪物たちが、編隊を組みながら俺の上空を旋回しているのである。

 

「もう到着したのか…………!」

 

 はっきり言うと、勝ち目がない。転生者の連中がA-10まで投入してくるのは予想外だ。

 

 すると、編隊から離れた1機のA-10が急に高度を落とし、旋回して機首をこっちに向けたまま接近してくるのが見えた。そのままこっちに接近しつつ、機首に搭載された”GAU-8”の30mm弾で攻撃するつもりなのだろう。

 

 AK-15をホルダーに戻し、背中に背負っていたOSV-96の銃身を展開する。銃弾を変更して14.5mm弾が発射できるようにしてあるとはいえ、ミサイルの被弾にも耐えられるような化け物をこれで撃墜できる可能性は極めて低いだろう。

 

 マガジンを外し、紅いラインが刻まれたマガジンに変更する。コッキングレバーを引いて残っていた1発の普通の14.5mm弾を排出してから、スコープを覗き込む。

 

 紅いラインが刻まれたマガジンに入っているのは、14.5mm徹甲弾だ。貫通力を底上げした弾丸だが、これでも撃墜は難しいだろう。

 

 息を呑みながらレティクルをA-10に合わせる。念のため外殻で体を覆っておいた方がいいだろうな、と思って血液の比率を変化させようとしたその時だった。

 

 パンッ、と、何の前触れもなくA-10のキャノピーが割れたのである。

 

「――――――!?」

 

 レティクルを覗き込むと、割れたキャノピーの内側が真っ赤に染まっていた。そこに座っているパイロットの胸から上はなくなっており、真っ赤に染まったパイロットスーツに身を包んだパイロットの胴体が、鮮血を噴き上げているのが見える。

 

 パイロットが死亡したそのA-10は、標的である俺に機銃掃射をせずに頭上を飛び越えていくと、こっちに向かって接近していた転生者たちがいた場所に落下し、轟音と爆炎を周囲にばら撒く羽目になった。

 

 スコープから目を離すと、風上から甘い匂いが漂ってきた。

 

 その匂いだけで、俺はあの哀れなA-10に何が起きたのかを理解する。

 

 ―――23mm徹甲弾で、コクピットを真横から狙撃されたのだ。

 

 いくら狙撃が得意な兵士でも、機関砲を掃射するために高度を下げたとはいえ、真横からコクピットの中のパイロットを狙撃するのは不可能だろう。真正面からならばまだ狙撃に成功する可能性もあるが、真横からの狙撃はかなり難しい。

 

 けれども、その難易度の高い狙撃を当たり前のように成功させてしまう狙撃手がいるのだ。

 

 幼少の頃に、あの親父が「狙撃の技術で娘に負けてしまった」と認めてしまうほどの技術を持つ、最強の狙撃手。

 

 そう、彼女が助けに来てくれたのだ。

 

「―――ラウラ」

 

 砂漠の向こうに、巨大なアンチマテリアルライフルを肩に担いだ赤毛の少女が見えた。

 

 お礼を言わないとなと思いつつ、俺は彼女に手を振った。

 

 

 

 

 

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