異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
グリップを左に捻ってから引き、空になった23mm弾の薬莢を排出する。新しい23mm弾をホルダーの中から引き抜き、ライフルに装填してからグリップを前へと押し、右側へと捻って元の位置へと戻した私は、スコープの代わりに装着されたタンジェントサイトを覗き込んだ。
砂漠の向こうでは、つい先ほどパイロットを狙撃されて墜落したA-10が炎上している。上空で旋回しているA-10たちもタクヤへと攻撃しようとしていた味方機が撃墜されるとは思っていなかったらしく、旋回しながらこっちを見下ろして狼狽しているみたい。
姿勢を低くしながら銃を構え、照準器を覗き込む。敵の戦車部隊はまだこのゲパードM1の射程距離外だから、まずはあの残った転生者たちを始末しないと。
照準器の向こうでは、タクヤがAK-15のフルオート射撃で転生者たちを牽制しつつ、隙を見てセミオートに切り替えて狙撃しているところだった。数名の転生者がその狙撃で殺されたみたいだけど、中には防御力のステータスが高いのか、被弾しても反撃している転生者もいる。
叫びながらM16A3を連射している転生者の頭に照準を合わせ、トリガーを引いた。
従来のアンチマテリアルライフルや対戦車ライフルの弾丸よりもはるかに大口径の23mm弾が、転生者の首から上を食い千切る。しかも獰猛な運動エネルギーを纏ったその一撃は転生者の頭を易々と貫通すると、その向こうで魔術の詠唱をしていた転生者の少女の右半身と、大剣を構えて突っ込もうとしていた少年の上半身を捥ぎ取り、灰色の砂漠の一部を真っ赤な肉片と鮮血で彩る。
グリップを再び捻り、空になった薬莢を排出。ホルダーから大型の弾丸を引き抜き、ライフルに装填していると、転生者たちの声が聞こえてきた。
『そ、狙撃手!』
『なに? あいつの仲間か!?』
『気を付けろ、あの辺りにいるぞ!』
見つかっちゃったかな?
姿勢を低くしたまま微量の氷属性の魔力を放出し、周囲に小さな氷の粒子たちを生成する。周囲の気温に合わせて魔力の量を微調整しつつ自分の手を見下ろすと、身体に纏った氷の粒子が周囲の光景を反射し始め、私の姿を消してくれていた。
姿を消す事ができたとはいえ、もしかしたら敵が牽制するために放った攻撃が命中してしまうかもしれないから、このまま同じ位置で狙撃を続けるのは愚の骨頂でしかない。
姿勢を低くしたまま移動して、別の場所で砂の上に伏せる。バイポッドを展開して長大な銃身の先端部に取り付けられているT字型の大きなマズルブレーキを向けつつ、左耳に装着した小型無線機を使って味方に連絡する。
「…………ボチカリョーワ大尉」
『はい、こちらはいつでも大丈夫です』
彼女の名はアリス・ボチカリョーワ大尉。第2狙撃大隊に所属するエルフの狙撃手で、既に転生者を6人も葬っている優秀な狙撃手の1人なの。私よりも年上だから、彼女に”教官”と言われる度に違和感を感じてしまうけどね。
「―――――――
命令を出すと、別の方向から銃声が轟いた。
私のゲパードM1よりも小さな銃声と共に放たれた7.62mm弾は夜の砂漠を飛翔し、冷たい風と共に舞い上がる砂塵の群れに風穴を開けると、杖を使って魔術を放とうとしていた転生者の頭を貫き、獰猛な運動エネルギーで彼の脳味噌を木っ端微塵にしてしまう。
ボチカリョーワ大尉は今の狙撃を敵が察知するよりも先に姿勢を低くしたまま移動し、別の場所からの狙撃を始めようとする。砂の上に伏せ、テンプル騎士団で正式採用されているモシンナガンM1891/30を構えた彼女は、再びトリガーを引いて別の転生者の頭に風穴を開ける。
『教官』
「あら、みんなも着いたのね」
周囲を見渡すと、黒いフードのついた制服に身を包み、スナイパーライフルやアンチマテリアルライフルを背負った狙撃手部隊の狙撃手たちが、砂の上に伏せてスコープの蓋を開け、狙撃の準備を始めているところだった。
「―――――――各員、狙撃開始。クソ野郎共を殲滅しなさい」
『『『了解(ダー)』』』
SV-98や、使用する弾薬を14.5mm弾に変更した”テンプル騎士団仕様”のOSV-96を構えた兵士たちが、立て続けに狙撃を開始する。7.62mm弾が転生者たちの胸板に風穴を穿っていくのを見つめながら、私もゲパードM1のトリガーを引く。
本来ならこのゲパードM1は12.7mm弾を使うライフルなんだけど、タクヤにお願いして強引に大型化して23mm弾を使用できるようにしてもらい、より長距離を狙えるように銃身の長さを2mまで伸ばしてもらったの。もちろんスコープは取り外して、代わりにタンジェントサイトを装着してもらってるのよ。
大口径の弾丸を使用できるようにしたのは―――――――転生者を確実に殺すため。
転生者は防御力のステータスが高ければ、信じられない事だけどAPFSDSの直撃にも耐える事ができるらしいの。だからステータスの高い転生者にはあまり効果がないかもしれないけど、口径が大きい弾丸ならば多少ステータスが高い転生者でも強引に風穴を開ける事ができるから、私はタクヤにお願いして23mm弾を使えるように改造してもらった。
すると、上空を旋回していたA-10の中の1機が急に編隊から離れ、タクヤに向かって急降下を始めた。
グリップを捻ってから引き、ホルダーから薬莢の部分に紅いラインが刻まれた”23mm徹甲弾”を引っ張り出す。それをライフルに装填してから銃口を急降下してくるA-10へと向け、照準を合わせる。
さっきのA-10の仇を取るつもりなのかな?
悪いけど、あなたも無駄死にすることになるわよ。
呼吸を整え、照準器の向こうを凝視する。一旦照準をA-10のキャノピーに合わせてから右へと大きくずらして、私は発射された23mm弾の弾道をイメージする。
精密演算(クロックワーク)や演算共有(データリンク)を使わなくても、この狙撃は命中すると思う。
目を瞑って息を吐いてから左目を開けて、やがてA-10が通過することになるフロントサイトの向こうを睨みつけたまま―――――――トリガーを引いた。
23mm弾が生み出す猛烈な反動を感じつつ、マズルフラッシュの向こうを凝視する。飛び出した弾丸がマズルフラッシュを置き去りにしながら直進していったかと思うと、エンジンの音を響かせながら急降下してきたA-10のキャノピーの真横へと激突し、キャノピーの破片と鮮血を空にばら撒いた。
パイロットの上半身を弾丸に捥ぎ取られたことで上昇する事ができなくなったA-10は、そのまま砂漠に墜落して灰色の砂を巻き上げ、数名の転生者を巻き込んで動かなくなってしまう。
グリップを捻ってから引っ張り、徹甲弾の薬莢を排出。通常の23mm弾を装填し、グリップを元の位置へと戻す。
『ま、また墜としたんですか、教官…………』
『何者なんですか、あなたは…………!』
「うふふっ」
『お、おい、ラウラ! お前もう1機落としたのか!?』
あら、タクヤも今のを見てたみたい。
「すごいでしょ?」
『あ、ありえねえ…………』
タクヤを守るためだもん。
次の弾を装填して狙撃しようとしたその時、紺色の空の向こうから真っ白な煙が伸びてきたのが見えた。まだ太陽が昇っていない薄暗い空に白煙を刻み付けながら飛来してきたのは―――――――戦闘機から放たれた、凶暴な空対空ミサイルたちだった。
そのミサイルたちは上空を旋回していたA-10たちに容赦なく襲い掛かると、紺色の空の一角で緋色の爆炎を立て続けに生み出し、堅牢な装甲を持つA-10たちを粉々にしていく。
中にはミサイルに被弾しても飛び続けていた機体もいたみたいだけど、立て続けに2発もミサイルを叩き込まれ、火達磨になりながら回転して墜落していく。
5機のA-10たちが大空に遺した黒煙に穴を穿ちながら飛翔するのは、主翼や垂直尾翼の先端部のみを紅く塗装され、それ以外の部位を真っ黒に染められた5機のユーロファイター・タイフーンたち。垂直尾翼に描かれているのは2枚の翼で、その翼の中央には岩に突き刺さったエクスカリバーが描かれているのが見える。
戦場にやって来たのは、テンプル騎士団が誇る最強のエースパイロットたちで構成された”アーサー隊”だった。
『こちらアーサー1、敵航空隊を排除した。…………ふん、それにしても制空権を確保せずにA-10を使うとはな。戦術を知らんと見える』
「助かったわ、アーサー1」
『どういたしまして、フロイライン。…………悪いが任務の帰りでな。燃料が足りないから後はタンプル搭に戻らせてもらう』
「了解、気を付けてね」
編隊を組んだまま旋回し、タンプル搭がある方角へと戻っていくユーロファイター・タイフーンたち。彼らが支援してくれたら戦いは早く終わるかもしれないと思ったんだけど、ゆっくりと進撃してくる敵の戦車部隊の先頭を走行していたエイブラムスの側面に大穴が空き、炎上したのを目にした私は、アンチマテリアルライフルを持ったままニヤリと笑った。
敵の戦車部隊の側面から飛来した砲弾の弾道を予測しつつ、その砲弾が発射された地点を見つめる。
灰色の砂で埋め尽くされた大地の真っ只中には、いつの間にか蒼と黒のダズル迷彩が施された巨大な戦車が鎮座していて、巨大な砲塔から伸びた2本の砲身を戦車部隊へと向けていた。
車体に白いペンキで描かれている番号は”020”。そう、虎の子のシャール2Cの20号車『シャルル・ド・ゴール』だった。
その後ろからも、車体の側面に白いペンキで”019”と描かれた19号車『フェルディナン・フォッシュ』も合流し、一緒に敵の戦車部隊へと砲撃を始める。
すると、その2両の巨大な超重戦車の後部にあるハッチが開き、中からアサルトライフルやロケットランチャーを装備した兵士たちが次々に降り始めたのが見えた。
19号車『フェルディナン・フォッシュ』と20号車『シャルル・ド・ゴール』は、後部や側面に戦車砲を搭載した砲塔を搭載しない代わりに、24人も武装した兵士たちを乗せて運ぶことができる巨大な
しかも装甲の厚さは他の車両と変わらないし、152mm連装滑腔砲も搭載しているから、火力は従来の戦車を上回っている。
「ラウラ!」
「ふにゅ?」
あれ? もう転生者の殲滅は終わったのかな?
タクヤの声が聞こえてきた方を見てみると、既にさっきまで戦っていた転生者たちを殲滅したタクヤが、血まみれのスペツナズ・ナイフを持ったまま、氷の粒子を解除していた私の隣へとやって来た。
「ありがとう、助かったよ」
「どういたしまして。タクヤのためよ」
「はははっ、本当にありがとう。…………あいつらが”主力部隊”だな?」
「そうみたい」
戦車の数はかなり多いけれど、既に側面からやって来たシャール2Cたちの攻撃で損害が出ているようだった。
側面の装甲を貫かれて炎上したエイブラムスに、後続のチャレンジャー2が激突する。無人戦車であるシャール2Cは激突してしまったチャレンジャー2に容赦なくAPFSDSを叩き込んで擱座させると、絶叫しながら中から飛び出してくる乗組員たちにキャニスター弾を浴びせて木っ端微塵にし、反撃してくる別のエイブラムスに狙いを定める。
エイブラムスの放ったAPFSDSがシャルル・ド・ゴールの正面装甲を直撃したけれど、吸血鬼たちが投入した近代化改修型マウスとの戦闘を想定し、160mm滑腔砲から発射されたAPFSDSの直撃にも耐えられるほどの厚さの複合装甲を持つシャルル・ド・ゴールはびくともしない。
逆に攻撃してきたエイブラムスに主砲を向け、152mm連装滑腔砲のAPFSDSを2発も正面装甲へとお見舞いする。いくら高い防御力を誇るエイブラムスも従来の戦車砲よりも大型の主砲の直撃には耐えられなかったらしく、そのまま動かなくなってしまった。
戦車を盾にしながら魔術やロケットランチャーで反撃する転生者たちを、フェルディナン・フォッシュが放つ
「このままじゃ手柄を無人戦車に取られるな」
「そうね。これ、タクヤのレベルを上げるための試練なんでしょ?」
「ああ。…………よし、俺も突っ込むか」
「あ、じゃあお姉ちゃんも突っ込む!」
私だって白兵戦はできるんだよっ。
「分かった。じゃあ、久々に一緒に戦うか」
「うんっ♪」
えへへっ、タクヤと一緒にったかうのは久しぶりだね。
ゲパードM1を背中に背負い、腰の脇にあるホルダーの中からショートバレルに換装したAK-15を取り出す。タクヤのAK-15は中距離戦も想定してロングバレルに換装しているみたいだけど、私の場合はこの銃を使うのは敵に接近された時―――――――接近されることはまずないけどね―――――――だけだから、銃身は短い方が丁度いいの。
「みんな、援護お願い」
『『『了解!』』』
タクヤの顔を見て頷いてから、私は腹違いの弟と一緒に走り出す。
敵は数多の転生者たち。味方の超重戦車のおかげで戦局は逆転しつつあるけれど、だからと言って味方に任せるわけにはいかない。
だから、私たちが狩る。
私たちは”転生者ハンター”なのだから。
シャール2Cたちが敵の戦車部隊を引きつけてくれているおかげで、戦車部隊に接近するのは難しくはなかった。随伴歩兵を担当する転生者共も相変わらず敵を攻撃することを優先しているので戦車の周囲には数名の転生者しか残っていないし、その戦車も砲塔をシャール2Cに向けたまま砲撃しているので、接近している俺とラウラに気付かない。
後方にいる狙撃手部隊のエルフの狙撃手―――――――第2狙撃大隊所属の”ボチカリョーワ大尉”だ―――――――が、狙撃するように指示を出していないというのに、戦車に肉薄する前に排除しなければならない転生者を的確に狙撃して仕留めてくれる。
サプレッサー付きのPL-14のストックを静かに肩に当て、セレクターレバーをセミオートに切り替える。戦車の近くで木製の杖を持っていた転生者の少女の後頭部に向けてトリガーを引くと、9mm弾は彼女の後頭部に穴を開けて脳味噌をグチャグチャにし、転生者の少女をあっという間に絶命させてしまう。
≪レベルが上がりました≫
レベルが上がったというメッセージを無視し、そのまま戦車の上によじ登る。一緒によじ登ったラウラが手榴弾の安全ピンを外したのをちらりと見てから、目配せしてからチャレンジャー2の砲塔のハッチを勢い良く開けた。
それと同時にラウラが安全ピンを引き抜いた手榴弾を、砲塔の中へと放り込む。俺もついでに余ったSマインをその中に落としてからしっかりとハッチを閉めると、戦車の中から転生者たちの悲鳴が聞こえてきた。
手榴弾の爆音と共に、車内でSマインが搭載している無数の小型の鉄球が車内で跳弾する音が連なる。きっと戦車の中に乗っていた連中は手榴弾の爆風で身体を千切られるか、Sマインの鉄球でズタズタにされている事だろう。
動かなくなったチャレンジャー2からラウラと一緒に飛び降り、近くで砲撃を続けるメルカバへと向かう。ハッチから顔を出した車長が俺たちに気付いてぎょっとしたが、ハッチの近くに設置されているブローニングM2重機関銃に伸ばそうとした彼の手を、ラウラが足に装着していたナイフを下から上へと振り上げ、あっさりと両断してしまう。
ラウラは白兵戦用に2本のスペツナズ・ナイフ――――――刀身の長さを30cmに延長している―――――――を持っているだけでなく、踵に装着されているナイフの鞘のようなカバーに収納されているナイフまで装備しているので、彼女の接近戦はかなり変則的なのだ。
ちなみに、最近は俺も同じものを装備している。
サバイバルナイフにも似た形状の刀身が再びカバーの中へと戻っていくと同時に、振り上げた足を一気に振り下ろしたラウラが、右腕を切断されて絶叫する転生者を踏みつけ、強引に戦車の中へと押し戻す。
そいつが起き上がる前に、今度は俺がポーチの中から手榴弾を2つほど取り出し、それを戦車の中に放り込んでからハッチを閉じた。
メルカバの車内で、2つの手榴弾が生み出した爆炎が荒れ狂う。
≪レベルが上がりました≫
ステータスや今のレベルは後で確認するとしよう。
それにしても、やはり転生者を狩っていた方がレベルは上がりやすいようだ。先ほどからレベルが上がったことを伝えるメッセージがやかましい。
「おい、戦車の上にタクヤがいる! あいつがターゲットだ!」
「よし、俺がぶっ殺す!」
お、随伴歩兵の連中がやっと俺たちに気付いたようだ。
やけにでかい大剣を持った転生者の少年が、姿勢を低くしながら凄まじい勢いで走り始めたかと思うと、ジャンプして先ほどシャール2Cに撃破されたレオパルト2の残骸を飛び越え、落下しながら大剣をこっちに振り下ろしてくる。
ガードすればナイフごと切断されるだろうな…………。パワーだけはヤバそうだ。
―――――――だったらガードしなけりゃいい。
余ったC4爆弾を取り出し、起爆スイッチを手にしつつ横へとジャンプして、落下してくる転生者が踏みつける場所にC4爆弾を投げつける。
ラウラも反対側へとジャンプして、他の転生者へとショートバレルに換装したAK-15のフルオート射撃で牽制を始める。彼女が爆風に巻き込まれないことを確認した俺は、落下してくるバカに向かってニヤリと笑いながら起爆スイッチを押した。
大剣を手にした転生者が、撃破されたメルカバの砲塔の装甲を踏みつけると同時に、靴のすぐ脇に仕掛けてあったC4爆弾が起爆する。下半身をC4爆弾に吹っ飛ばされる羽目になった転生者の少年は爆炎に呑み込まれながら絶叫し、血まみれになりながらメルカバの上から転がり落ちてきた。
目の前に落ちてきた転生者の少年の上半身を見下ろしつつ、左足を振り上げる。
そのまま左足で呻き声を上げている転生者の少年の頭を踏みつけると、ゆっくりと体重を乗せながら足に力を込めていく。
やがて、断面から黒焦げになった腸や肋骨の一部が伸びている状態で目の前へと転がり落ちてきた少年の頭が潰れ、足元に脳味噌の一部がばら撒かれた。
「き、切り裂きジャックめ…………!」
左足のブーツの底を見て、踏まなきゃよかったと後悔する。後でこの脳味噌の破片を取らなきゃいけないんだよね…………。
グロテスクだから嫌だというわけではない。冒険者として活動しながら転生者を狩り続けてきたのだから、死体や内臓は何度も見ている。ただ単に脳味噌の破片を取るのが面倒なだけだ。
最初の頃は何度も吐いたけどね。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
日本刀を手にした黒髪の少女が、大きな声を出しながら真正面から突っ込んでくる。前世の世界では剣道をやっていたのか、それともこっちの世界にやってきてから訓練でもしたのか、他の奴らと構え方が違う。
こうやって真正面から突っ込んできてくれる真面目な奴は大好きだ。
―――――――俺の作戦に簡単に引っかかってくれるからな。
自分が風上にいることを確認してから右足を振り上げ、足元の砂を舞い上げる。
舞い上がった砂塵があっという間に、風によってその少女が突っ込んでくる風下へと連れ去られていった。
「!」
砂が目に入ったのか、少女が片手を柄から離して自分の目を手で覆う。突っ込んでくる速度が鈍った隙にスペツナズ・ナイフを引き抜くと、刀身を発射するスイッチを押し、30cmに延長された刀身を解き放つ。
漆黒の刀身はその少女の眉間へと突き刺さると、彼女の脳をあっさりと串刺しにしてしまった。
≪レベルが上がりました≫
やかましいって。
予備の刀身を装着し、ナイフを逆手持ちにする。
「お、女でも殺しやがったぞ、こいつ………!」
「バカか」
強襲殲滅兵仕様のPL-14をホルスターへと戻し、もう1本のスペツナズ・ナイフ引き抜く。転生者の少女の死体を見下ろしながら驚愕している甘い連中に切っ先を向けながら、俺は言った。
「”女だから殺されない”わけがないだろうが。敵なら、俺は女でも躊躇なく殺す」
だから容赦はしない。
第一、お前らは俺を殺すためにここにやって来たんだろうが。自分を殺そうとしている連中に容赦をするわけがないだろう。
前世の世界の常識はこの世界では邪魔にしかならないんだよ、日本人共(ヤポンスキー)。
姿勢を低くし、鍛え上げた瞬発力をフル活用しながら転生者たちへと急接近する。怯えていた転生者が剣を引き抜いて攻撃してくるが、そいつが腕を振り下ろすよりも先に、彼の肘を側面から飛来した7.62mm弾が撃ち抜く。
ラウラがセミオートで放った弾丸だった。
「がぁっ………!」
利き腕が使い物にならなくなった転生者にタックルして転倒させ、足に装着しているナイフの刀身を展開。起き上がる前にその切っ先で喉元を踏みつけて絶命させ、刀身を引っ込めてから更に前進する。
アサルトライフルを手にしていた転生者の銃撃をナイフの刀身で弾き、逃げようとしていた女の転生者へと尻尾を伸ばす。
こいつを盾にさせてもらおう。
「い、嫌ぁっ! 助け――――――あがっ………がぁっ………!」
”競争相手”でしかないからなのか、他の転生者たちは俺が転生者の少女を盾にしているにもかかわらず、容赦なくライフルで攻撃してきた。
後方から飛来した弾丸―――――――多分ボチカリョーワ大尉の狙撃だろう―――――――が、アサルトライフルを連射していた転生者の眉間を食い破る。銃撃が止まると同時に蜂の巣になっていた少女の死体を投げ捨て、彼女の血を浴びながら前進。ラウラに向かって剣を振り下ろそうとしていた転生者の剣戟を、両手のナイフで受け止める。
いきなり現れた俺に攻撃を邪魔された転生者が驚愕している隙に、ラウラが足を振り上げる。すでに展開していた刀身で胸板から下顎を切り裂いてから蹴り飛ばし、転生者を瞬殺してしまう。
彼女に向かって頷いてから、再び一緒に走り出した。
ラウラとは小さい頃から一緒にいたから、彼女の仕草を見れば何を考えているのかがすぐに分かる。
だから彼女とは、言葉を交わさずに”行動を察する”だけで連携を取ることができるのである。
尻尾をポーチへと伸ばしてラウラにAK-15の予備のマガジンを渡す。さっきから銃撃していたから、彼女のマガジンの中にある弾丸はそろそろ底をつく筈だ。
予想は当たっていたらしく、ラウラは空になったマガジンを外して受け取ったマガジンを装着すると、空になったマガジンを近くにいた転生者に投げつけて怯ませ、足のナイフで喉元を切り裂く。
その隙に彼女を背後から攻撃しようとしていた転生者のこめかみに、思い切りスペツナズ・ナイフを突き立てる。痙攣しながら崩れ落ちていく転生者の死体を蹴り飛ばし、後続の転生者と激突させる。
後続の転生者が死体と激突して怯んでいる隙に、俺とラウラはナイフを装備して肉薄し、転生者を血祭りにあげていった。
かつて、モリガンの傭兵を率いていたリキヤ・ハヤカワは、異世界に転生していた転生者たちを一度だけ絶滅寸前まで追い詰めたという。
虐げられている人々を救うために転生者を狩り、返り血を浴びながら戦い続けたのだ。
そして人々を虐げていた転生者たちは、彼の遺伝子を受け継いだ子供たちによって再び絶滅寸前まで追い詰められることになった。
天城輪廻によってカルガニスタンへと送り込まれた900人の転生者たちは、全員テンプル騎士団の守備隊や、騎士団を率いるハヤカワ姉弟によって返り討ちにされ、カルガニスタンの砂漠で死亡することになったのである。
彼らを打ち破ったタクヤ・ハヤカワは、輪廻の目論見通りに一気に成長し、最強の転生者であるリキヤ・ハヤカワに匹敵する転生者となった。
――彼以外の転生者は、タクヤ・ハヤカワを守護者(ガーディアン)の”代役”にするための”餌”でしかなかったのである。