異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる 作:往復ミサイル
「
分隊長が号令を発した直後、19号車『フェルディナン・フォッシュ』、20号車『シャルル・ド・ゴール』の周囲に展開した歩兵たちが持つ銃が、立て続けに火を噴いた。ライフルマンたちが構えるAK-15がマズルフラッシュを生み出し、機関銃を持つ”分隊支援兵”が、装備していたビラール・ペロサM1915の弾幕で迫り来る転生者たちを薙ぎ倒していく。
分隊支援兵の持つビラール・ペロサM1915は、かつてイタリア軍が第一次世界大戦に投入したかなり旧式の機関銃だが、タクヤによって7.62mm弾を連射できるように改造を施されており、猛威を振るった連射速度も維持されたままになっていた。
マガジンはAK-15と同じものを使用できるが、基本的にこれを支給された分隊支援兵には60発入りのマガジンが支給される。
テンプル騎士団で正式採用されている機関銃の1つであり、歩兵に装備させるだけでなく、戦車や装甲車に搭載する機関銃や、ヘリに搭載するドアガンとしても使用されている。
銃身とマガジンが2つも搭載されている異形の機関銃から解き放たれた弾丸たちが、転生者たちを蜂の巣にしていく。中には防御力のステータスのおかげで7.62mm弾の連射に耐え続ける転生者も見受けられたが、数名の分隊支援兵の集中砲火を受けてズタズタにされるか、グレネードランチャーを装備した兵士たちの集中砲火でミンチにされていった。
「マガジンを!」
「ほらよ!」
弾丸が空になった60発入りのマガジンを取り外した分隊支援兵に、傍らで援護射撃をしていたライフルマンが30発入りのマガジンを2つ渡す。「この大食いめ」と言いながらマガジンを渡した兵士は、セレクターレバーをセミオートに切り替えて射撃を続けた。
ビラール・ペロサM1915の連射力は、この異世界の戦場でも猛威を振るっている。しかし連射力があまりにも早過ぎることと、支給されるマガジンが60発入りのマガジンであるため、分隊支援兵が装備すると彼らはすぐに弾切れになってしまうという欠点がある。
そのためビラール・ペロサM1915は、テンプル騎士団の分隊支援兵たちからは『大食い』という愛称で呼ばれていた。
ちなみにドアガンとして運用する場合は、マガジンではなくベルトを使用するため、すぐには弾切れが起こることはない。
受け取ったマガジンをすぐに装着し、コッキングレバーを引いて反撃を開始する。アサルトライフルを構えて接近してくる転生者の胸板をズタズタにし、後方で魔術の詠唱を始めた女性の転生者に照準を合わせ、これでもかというほど7.62mm弾を叩き込む。
その弾丸たちは女性の転生者が構築しつつあった魔法陣を容赦なく粉砕すると、詠唱の途中だった女性の胸板と腹を食い破り、蜂の巣にしてしまった。
「くそ、30発じゃ少なすぎる…………!」
「ほら、持って来てやったぞ!」
残った弾を確認しようとしたその時、後ろから先ほどマガジンを分けてくれた兵士の声が聞こえてきた。
分隊支援兵が振り返ると、たっぷりとマガジンや弾薬の入った木箱を兵士たちの隊列の後ろへと置いた彼が、60発入りのマガジンを両手に持ってニヤニヤと笑っていた。
シャール2Cの兵員室の中には、予備の弾薬や食料を詰め込んでおくスペースもあるのだ。その弾薬の入った箱は、おそらく車内から取ってきた物なのだろう。
「その食いしん坊にはこいつを喰わせてやりな、同志」
「助かるよ」
残っていた弾丸を全て放ち、30発入りのマガジンを取り外してから60発入りのマガジンを装着し、コッキングレバーを引く。彼にマガジンを持って来てくれたその兵士はライフルを背中に背負うと、両手に予備のマガジンをたっぷりと持ち、奮戦を続けている兵士たちに配り始める。
照準器を覗き込んで射撃を再開し始めた分隊支援兵は、転生者たちの後方から進撃してくる戦車部隊を睨みつけながら舌打ちをした。
シャール2Cの的確な砲撃と、敵陣の後方で奮戦するラウラとタクヤの活躍で戦車の数は減りつつある。テンプル騎士団の歩兵部隊も複数のRPG-9での同時攻撃や、RPG-30での攻撃でアクティブ防御システムを突破し、戦車部隊に損害を与える戦果をあげていた。
だが、敵の戦車の数は未だに30両以上も残っており、無数の転生者たちも攻撃を継続している。シャール2Cと随伴歩兵たちは奮戦し続けているが、このままでは転生者の群れに突破されてしまうのは火を見るよりも明らかである。
「軍曹、このままでは突破されます!」
「くっ…………!」
砂の上に伏せたまま奮戦する歩兵たちの頭上を、敵のエイブラムスが放ったAPFSDSが通過していく。獰猛な貫通力を誇るAPFSDSは後方で攻撃を続けるシャルル・ド・ゴールの正面装甲を直撃したが、従来の戦車とは比べ物にならないほど強靭な正面装甲を貫通することはできなかった。
テンプル騎士団のシャール2Cは、元々は吸血鬼たちの運用する近代化改修型マウスに対抗するために生み出された超重戦車である。最新型の戦車の正面装甲を易々と食い破る160mm滑腔砲を防ぐ事ができるほどの厚さの装甲で覆われているため、120mm滑腔砲の集中砲火でも装甲を貫通するのは極めて困難と言える。
またしても敵の戦車の放った砲弾が、奮戦するシャルル・ド・ゴールの左側面の装甲を直撃し、無数の火花を生み出す。やはり虎の子の超重戦車は何事もなかったかのように砲塔を旋回させると、上下二連式の152mm連装滑腔砲を同時に放ち、2発のAPFSDSで逆にエイブラムスの正面装甲に大穴を穿った。
「ディミトリ、タンプル搭に航空支援要請を!」
唇を噛み締めながら、大型の通信機を背中に背負った若いハーフエルフの兵士に向かって叫ぶ。
既に敵の航空機はアーサー隊の攻撃によって壊滅しており、他の航空機もレーダーサイトで探知されていない。つまり、今のところはテンプル騎士団が制空権を確保している状態である。
爆弾や対戦車ミサイルを搭載した攻撃機がやってくれば、戦車部隊はあっという間に蹴散らされてしまうだろう。
タクヤたちがいるとはいえ、超重戦車2両と随伴歩兵だけでは荷が重いと判断した分隊長は、航空支援を要請して空軍の力を借りる事にした。
テンプル騎士団の兵士の質は他の二大勢力よりも低いと言われているが、空軍は現時点で海軍や陸軍のように大きな損害を出しておらず、テンプル騎士団が創設され、空軍が設立された頃からのベテランのパイロットが何名も残っているため、テンプル騎士団の中では最も質が良いと言われているのである。
「ぐ、軍曹…………!」
「なんだ?」
無線機で中央指令室と連絡を取り合っていたディミトリが、目を見開きながら報告した。
「が…………”ガラハッド隊”が既に飛行場を飛び立ったとのことです!」
「なっ…………あいつらがか!?」
テンプル騎士団の航空隊の中には、優秀なエースパイロットのみを選抜して編成された部隊が存在する。部隊の名前には円卓の騎士たちの名前が冠されており、通常の部隊では荷が重いと判断された危険な作戦にしか投入されない精鋭部隊なのだ。
最も有名なのは、5機のユーロファイター・タイフーンで構成された”アーサー隊”だろう。モリガン・カンパニーや殲虎公司(ジェンフーコンスー)の航空隊とも積極的に模擬戦を行っているため、隊員たちの錬度は他の部隊よりもはるかに高いと言える。
派遣されたのは、そのエースパイロットたちで構成された精鋭部隊の中でも対地攻撃を最も得意とする、”ガラハッド隊”であった。
通常の攻撃機か攻撃ヘリが派遣されるのではないかと思っていた分隊長は、中央指令室の指揮官たちが切り札と言っても過言ではないほどの戦力を投入したことに驚愕しつつ、早くもエンジンの音が轟き始めた空を見上げた。
太陽が昇り始めた紺色の空を飛翔していたのは―――――――大きな主翼に爆弾やロケットポッドをこれでもかというほど搭載した、6機の”シュトゥルモヴィーク”たちであった。
『こちらガラハッド1、吹っ飛ばして欲しい連中はどこだ?』
無線機から聞こえてきた低い声を聞きつつ、メニュー画面を開いて信号弾とワルサー・カンプピストルを用意する。ワルサー・カンプピストルの中に信号弾を装填した俺は、その銃口を敵の戦車部隊の頭上へと向け、装填された信号弾を解き放つ。
銃口から信号弾が飛び出し、敵の戦車部隊の頭上を真っ赤に染め上げる。
「こちらタクヤ、目印は紅い信号弾だ。真下にいるバカ共を木っ端微塵にしてやれ」
『了解(ダー)、退避願います』
俺たちにそう連絡しつつ、6機の航空機で構成されたガラハッド隊の隊員たちは編隊を組んだまま戦場の上空を通過しつつ、打ち上げられた信号弾の位置を確認していく。数名の転生者が彼らに攻撃を始めたが、空を自由に飛び回る航空機にそんな攻撃が命中するわけがない。
今しがた俺たちの頭上を通過していった航空機は―――――――ソ連で開発された『Su-25』と呼ばれる攻撃機たちであった。地上部隊を蹂躙できるほどの極めて圧倒的な攻撃力と堅牢な防御力を併せ持つ機体で、大型の主翼に強力な武装をこれでもかというほど搭載することが可能な攻撃機である。
テンプル騎士団で採用されているのは、ロシアが近代化改修を施した”Su-25SM”だ。
ロケットポッドや爆弾をこれでもかというほど搭載しているのが見えたが―――――――編隊の真ん中を飛んでいる隊長機は、他の機体と武装が違うような気がする。
あの装備は何だ? 爆弾やロケットポッドではないみたいだが、何を積んできたんだろうか?
さっきの信号弾を発射したのが俺たちだという事に気付いたらしく、数名の転生者がこっちに発砲してくる。銃口がこっちを向く前にそれを察知した俺とラウラは、一瞬だけ目配せをしてからすぐに左右へとジャンプ。近くで擱座していたメルカバMk4の影に隠れ、銃弾を回避する。
弾丸がメルカバの装甲に弾かれる音を聞きながら、俺は双眼鏡でその変わった装備を搭載した機体を凝視する。
明らかに他の機体とは装備が違う。切り詰められた砲身らしき部品の先端部にはでっかいマズルブレーキが搭載されており、後端部の左右にはアサルトライフルのマガジンをそのまま大きくしたかのようなマガジンが伸びているのが分かる。
それの正体を知った瞬間、俺は戦場のど真ん中で絶句した。
「た、タクヤ? どうしたの?」
隣で擱座しているレオパルト2の影に隠れつつ、銃撃してくる敵をAK-15のセミオート射撃で牽制していたラウラが尋ねてくる。質問に答えようとはしているんだけど、双眼鏡の向こうに見えた代物があまりにも衝撃的過ぎて、俺は質問に答える事ができなかった。
そのSu-25SMは―――――――どういうわけか、左右の主翼の下にソ連製の榴弾砲を1門ずつ積んでいたのである。
搭載しているのはソ連製の”D-20”と呼ばれる榴弾砲だ。152mmの榴弾を発射することが可能な兵器で、歩兵の群れを容易く吹き飛ばしてしまうほどの破壊力を誇る。旧式の兵器だけど、その圧倒的な破壊力は現代でも猛威を振るうだろう。
けれども、本来ならば砲兵たちが運用する兵器である。明らかに航空機に搭載する武装ではない。
あんな代物を飛行中にぶっ放せば、機体がバランスを崩したり、強烈すぎる反動で失速するのは火を見るよりも明らかだ。しかも軽量化を図るために砲身を切り詰めて搭載しているようなので、命中精度や弾速も間違いなく悪化しているだろう。
そういえば3ヵ月前に「砲身を切り詰めた榴弾砲が欲しい」と要求されたことがあったんだが、その榴弾砲はあれに搭載するためだったんだろうか。
信じられない装備を搭載した機体を見上げたまま、俺はラウラに報告した。
「お、お姉ちゃん」
「何?」
「変態が混じってる」
「えっ?」
そう、編隊に変態が混じっているのだ。
重い榴弾砲を強引に搭載したせいで機動性まで悪化しているらしい。他の機体は平然と旋回しているというのに、隊長機だけは旋回の途中によろめいたり、バランスを崩しそうになっているのが見える。
何でそんなものを積んだんだ、バカ。
多分モリガンのミラさんの真似なんだろうな、と思いつつ、やっと旋回してきたバカを見守る。
既に反対側で応戦していたシャール2Cや随伴歩兵たちは後方へと退避しているし、狙撃手たちも俺たちの後方にいる。信号弾の真下にいるのは、あの変態の獲物しかいない。
『ガラハッド隊、攻撃開始!』
『斉射(サルヴォー)!』
搭載したロケットポッドから立て続けにロケット弾を放ち、紺色の空をロケット弾の生み出す白煙で埋め尽くしていく。6機のSu-25SMから放たれた無数のロケット弾たちは、未だに煌き続けている紅い信号弾の真下を直撃すると、瞬く間に戦車部隊を炎で呑み込んだ。
戦車の周囲にいた転生者たちの肉体が木っ端微塵になり、砲撃を続けていた戦車たちが爆炎を浴びて火達磨になる。中には砲塔を旋回させて主砲同軸の機銃で応戦したり、味方の転生者をお構いなしに踏み潰して離脱しようとする戦車もいたけれど、獰猛な攻撃機たちから戦車が逃げ切れるわけがない。
戦車は強力な兵器だが、圧倒的な火力と防御力を併せ持つ上に、エンジンと翼によって空を飛び回る権利を与えられている攻撃機には手も足も出ないのだ。
大口径の機関砲が戦車の砲塔の上部を穿ち、中にいる車長の肉体を食い破る。蜂の巣にされた戦車が次々に動かなくなり、爆炎の中で擱座していく。
応戦せずに逃げようとした戦車に向けて投下された爆弾が、撤退しようとしていたチャレンジャー2を容易く破壊してしまう。爆炎を噴き上げて動かなくなったチャレンジャー2の車体に退避しようとしていたエイブラムスが追突し、後続のSu-25SMが放った機関砲や爆弾の餌食になっていった。
そして―――――――ついに、編隊の最後尾に置き去りにされていた
やけに動きの遅いSu-25SMの主翼に搭載されていた榴弾砲の砲口が、一瞬だけ緋色に輝いた。マズルブレーキから飛び出した炎が瞬く間に置き去りにされ、マガジンの近くに搭載されたハッチからでっかい薬莢が排出されていく。
猛烈な反動のせいで、Su-25SMがぐらりと揺れる。しかしあれを搭載して戦う訓練を何度も繰り返していたのか、ド変態のパイロットはすぐに体勢を立て直すと、装填が完了するまでロケット弾を連続発射。そして装填が終わると同時に連射を止め、再び榴弾砲の同時発射で体勢を崩す。
砲身が切り詰められたとはいえ、その圧倒的な破壊力は健在らしい。
発射された砲弾が砲塔の上部を直撃し、メルカバMk4をあっという間に火達磨にしてしまう。続けて放たれたロケット弾や砲弾たちはその周囲に命中すると、砲兵隊の集中砲火を彷彿とさせる爆炎で周囲の転生者たちを薙ぎ払っていく。
ロケット弾と榴弾を放ち終えたド変態の乗るSu-25SMが、最後に機関砲で地上を掃射してから飛び去って行った。
垂直尾翼に描かれていたのは―――2枚の灰色の翼と、聖杯が描かれたガラハッド隊のエンブレムだ。
隊長機は一足先に高度を上げていた仲間に合流すると、再び編隊を組んで旋回を始める。
今の圧倒的な攻撃で火の海と化した砂漠を見下ろしてから、旋回を続けるガラハッド隊の連中を見上げた俺は、苦笑いしながら言った。
「変態が多いなぁ……」