異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

559 / 560
テンプルの戦士

 

『海の向こうからよくここまで来たものだ、テンプルの戦士の長よ』

 

 大きな椅子に座ったダークエルフの老人が、両手で木製の杖を掴みながらそう言った。

 

 身に包んでいるのは他の住民たちと同じく魔物の毛皮で作った服で、頭にはやけに大きな魔物―――――――おそらく小型のドラゴンの一種なのだろう―――――――の頭骨をかぶっている。マルス族には仕留めた魔物の骨を身に付けることで、その魔物の力を借りる事ができるという言い伝えがあるらしく、魔物や外敵と戦う戦士たちはほぼ全員頭に魔物の頭骨をかぶっている。

 

 けれども、ドラゴンの頭骨をかぶっているのはこの人物だけだろう。

 

 頭にかぶる魔物の頭骨は、力を借りる事ができるという言い伝えであると同時に、その人物の実力を知らしめるための目安でもあるのだ。

 

 つまりこのダークエルフの老人は、他の戦士たちとは比べ物にならないほどの力を持っているという事だろう。

 

 そう、このダークエルフの老人がマルス族の族長なのだ。ダークエルフは他のエルフたちよりも肌の色が浅黒く、長い耳がやや下へと伸びているから他のエルフたちと見分ける事ができる。ハーフエルフのように屈強な肉体を持つわけではないものの、闇属性の魔術や呪術などを得意とする種族であると言われている。

 

 この族長は杖を持っているから、魔術師なのかもしれない。きっと先住民たちの魔術なのだから俺たちの国の魔術とは違うんだろうな、と思いつつ床の上で跪いていると、族長が『長よ、面を上げよ』と言った。

 

 族長との交渉に参加するのは俺とカノンの2人のみ。ウラルには他の兵士たちと一緒に里の中で待ってもらっている。本当なら俺1人で交渉をする予定だったんだが、カノンは俺の事が心配だったらしく、ボディガードをしてくれることになった。

 

 ゆっくりと顔を上げ、族長の目を見つめる。

 

 ダークエルフも人間より寿命が長い種族の1つである。というか、エルフ系の種族は寿命が人間よりもはるかに長い。一番寿命が長いのがハイエルフで、その次がダークエルフとなっている。一番短いのは人間との混血であるハーフエルフらしいが、短いと言っても当たり前のように500年は生きるらしい。

 

 この族長はいったい何歳なのだろうか。

 

『お主がタクヤ・ハヤカワか』

 

『はい。テンプルの戦士の長として、偉大なる先住民の皆様へ挨拶に参りました』

 

『ふむ…………』

 

 発音は大丈夫かな? ちゃんと伝わってるみたいだが。

 

『お主の率いる戦士たちは、よく我々を助けてくれる。礼を言わせてもらいたい』

 

『いえいえ。我々もあなた方に土地を与えていただいているのですから、力になるのは当然の事です』

 

 今のところ、先遣隊は先住民たちとかなり仲良くしている。彼らの狩りを手伝ったり、里を攻撃しようとする魔物を一緒に撃退しているらしい。時折里での宴会に招かれたり、拠点にあるレーションと里の食材を交換することもあるという。

 

 拠点を作るために土地を与えてもらったのだから、力になるのは当たり前だ。自分たちのために先住民を殲滅するのはクソ野郎共のやる事である。

 

『ところで長よ』

 

『はい、何でしょう』

 

『お主の率いる戦士たちは変わった武器を持っておる。儂も彼らの戦いを目にしたが、あんな武器は見たことがない。大きな音を響かせ、遠くにいる敵を瞬く間に薙ぎ倒してしまう。…………海の向こうの大国では、あのような武器が使われているのか?』

 

 多分、兵士たちが持っているAK-15の事だろう。

 

 俺たちの持っている銃の方が高性能とはいえ、こちらの世界でも段々と剣が廃れ、飛び道具が戦場の主役になりつつある。先進国の騎士団は当たり前のように戦列歩兵たちにスチームライフルを持たせており、強力なスチームカノンを運用する砲兵隊も編成されているのだ。

 

 鎧と剣を装備した騎士は、発展途上国の騎士団でしか目にできなくなっており、オルトバルカ王国の博物館には早くも剣と鎧を装備した騎士の人形が展示されている。かつて戦場の主役だった騎士は、先進国ではもう博物館の中でしか目にできないのだ。

 

 族長の顔を見つめながら、俺は首を縦に振る。

 

『我々が装備しているのはちょっとばかり”特別製”ですが…………大国は、あのような武器を大量に保有しております』

 

『ふむ…………長よ、その大国に我らの戦士は勝てそうか?』

 

 心配なのだろう。

 

 味方だったとはいえ、見たこともない武器の火力を見せつけられたのだから。

 

 彼らの持つ棍棒は、当たり前だが敵肉薄しなければ意味はない。それに使用している素材も骨や石であるため、硬い外殻を持つ魔物や堅牢な装甲で覆われた兵器にダメージを与えるのは難しいだろう。弓矢を装備した戦士たちもいるが、射程距離が短い上に使用している素材は木材だ。人間に命中すれば致命傷だが、こちらも魔物へのダメージは小さいだろう。

 

 それに対し、銃は圧倒的な破壊力と射程距離を誇る。標的に接近しなくても敵を蜂の巣にできるし、使用する弾薬を徹甲弾に変えれば硬い外殻や装甲を貫通することも不可能ではないのだから。しかも弓矢を遥かに上回る速度で連射ができるし、その気になれば超遠距離からの狙撃もできる。

 

 当たり前だが、有利なのは銃の方だ。棍棒で武装した戦士だけで銃を装備した兵士を倒すには、再装填(リロード)している隙に肉薄するか、弾薬が足りなくなるほどの人数で大損害を出しながら戦うしかない。

 

 族長の周囲に並んでこっちを見ている戦士たちを見渡してから、俺は首を横に振った。

 

『―――――――不可能でしょう』

 

『なっ…………!』

 

『貴様、マルスの戦士を侮辱する気か!』

 

『飛び道具に頼る臆病者に、屈強な戦士が負けるわけがないだろう!』

 

『落ち着くのだ、戦士たちよ。…………………確かにあの飛び道具は恐ろしい破壊力だ。全ての部族で立ち向かったとしても蹂躙されるのが関の山だろう』

 

 族長がそう言うと、他の戦士たちは唇を噛み締めた。

 

 しかもオルトバルカ王国やヴリシア帝国などの列強は、その気になれば戦列歩兵だけでなく装甲艦や戦艦も派遣してくるだろう。場合によっては飛竜も投入してくるに違いない。

 

 戦列歩兵の一斉射撃だけでなく、艦砲射撃や飛竜のブレスで一斉攻撃されればひとたまりもないだろう。

 

 自分の祖国(オルトバルカ)が保有する戦力の事を思い出しつつ、俺は先住民たちに重大な事を告げる。

 

『それに―――――――もう少しすれば、大国はこのアナリア大陸に狙いを定めるでしょう』

 

『なぜだ?』

 

『海の向こうにある大国がまだ足を踏み入れていない大陸だからです。しかも奴らは人間以外の種族を奴隷として売り、虐げています。………………大国が攻め込んでくれば、この大陸の部族たちも同じ運命を辿ることになるでしょう』

 

 先進国がダンジョンの調査に力を入れたことで、危険なダンジョンは次々に調査されている。世界地図の空白だった地帯も急激に減少しており、この世界の世界地図は完成しつつある。

 

 しかし、未だにアナリア大陸は空白のままとなっている。もし他の地域のダンジョンの調査がほぼ完全に完了すれば、大国は空白になっているアナリア大陸へとやってくるだろう。

 

 モリガン・カンパニーやカノンの母であるカレンさんの活躍で、オルトバルカは最近では段々と奴隷の売買を禁止するべきだと主張する貴族も増えつつあるという。だがオルトバルカ王国以外の国では未だに奴隷の売買が当たり前のように行われており、世界中に住むエルフやオークの人々が虐げられ続けている。

 

 もしオルトバルカ以外の国がここへとやってくれば、彼らは戦士たちを蹂躙し、人々を奴隷として売るために連れ去っていくことだろう。

 

『長よ、お主は我らの味方か?』

 

『ええ。土地を与えていただいた恩もありますし、我らも人々を虐げるような輩を絶滅させるために活動しています。もしこの大陸を侵略するために攻め込んできたのであれば、我らは全身全霊で侵略者と戦います』

 

 テンプル騎士団の目的は、人々を虐げるクソ野郎を殲滅し、人々が虐げられることのない揺り籠(クレイドル)を作り上げることだ。この計画はほぼ確実に俺の生きている間に実現することはないが、きっと理想を受け継いだ子供たちや子孫たちが成し遂げてくれるだろう。

 

 だから俺たちは、全力で戦う。

 

 揺り籠(クレイドル)を作り上げ、守るために。

 

『ありがとう。お主たちが一緒に戦ってくれるのであれば―――――――』

 

 安心しながら族長がそう言おうとした瞬間だった。

 

 木製の床を思い切り踏みつける音が、立て続けに連なる。誰かがこの部屋へと走ってきているのだろうと察した数秒後、部屋の出入り口から狼の頭骨をかぶった若い戦士が、息を切らしながら飛び出した。

 

『族長、大変です! 森の魔物たちが里へと向かっています!』

 

『なんじゃと!?』

 

『数は!?』

 

『お、およそ50体! ゴブリンとサイクロプスの群れです!』

 

 ゴブリンってこの大陸にも生息してたのか……………。サイクロプスはあまり聞いたことがない魔物だな。というか、今まで旅をしていた時に戦ったことは一度もない。この大陸にしか生息しない魔物なのだろうか。

 

 興味深いな。

 

 できるなら調べてみたいところだが、そういうことは魔物共を血祭りに上げてからにしよう。

 

『…………さっそく力になれるチャンスが来たようですな』

 

 彼らの言語でそう言いながら、俺はカノンと共に立ち上がった。

 

 先ほどの話は全部マルス族の言語で行われていたので、多分カノンはどんな話をしていたのかは理解できなかった事だろう。けれども若い戦士が慌てて入ってきたのを目にして大変なことが起きているのだという事は分かったらしく、隣になっているカノンはいつの間にか真面目な目つきになっていた。

 

『我々が何とかしましょう』

 

『テンプルの戦士よ、頼む』

 

『お任せを』

 

 そう言ってから2人で族長に頭を下げ、踵を返して部屋を後にする。

 

 部屋の外で警備をしていた数名の戦士に挨拶してから建物を後にすると、隣を歩いていたカノンが首を傾げながら声をかけてきた。

 

「トラブルでも起きましたの?」

 

「魔物だそうだ。数はおよそ50体らしい」

 

 アナリア大陸に派遣された先遣隊の人数は、拠点で負傷した兵士の治療を行う治療魔術師(ヒーラー)や料理を作る料理人などを含めれば合計で70名。今回俺と一緒に上陸した兵士の人数は20人ほどである。

 

 全員で迎え撃てば容易く殲滅できるが、この里にやってきているのは俺、カノン、ウラルの3人を含めて23名のみ。しかも武装はアサルトライフルやLMG程度だ。

 

 魔物を相手にするには十分な装備だがな。

 

 族長の家を後にすると、家の外でウラルと兵士たちが待っていた。戦士が慌てて家の中に入っていったのを見て魔物が襲撃してきていることを察したのか、兵士たちは既にAK-15にマガジンを装着しており、安全装置(セーフティ)を外すだけですぐに戦闘を始められる状態になっていた。

 

「同志諸君、お仕事の時間だ」

 

 そう言いながら、俺も自分のAK-15にマガジンを装着する。コッキングレバーを引き、俺も安全装置(セーフティ)を外すだけで発砲できるようにしてから、ずらりと並んだ様々な種族の兵士たちを見渡す。

 

「敵はおよそ50体の魔物の群れ。中には”サイクロプス”とかいう魔物も含まれているらしい」

 

 他の大陸や先進国のダンジョンには生息していない魔物だ。多分、この中でそのサイクロプスを目にした事のある兵士はいないだろう。

 

 どんな姿なのかは予想がつくが、実際に目にした事はないのでどんな攻撃をしてくるのかは予想できない。もしかしたら遠距離から魔術で攻撃してくるかもしれないし、7.62mm弾の連続射撃にも耐えられるほど堅牢な外殻を持っている魔物かもしれない。

 

 一応数名の兵士にはRPG-7を支給する予定だ。できるなら戦車や歩兵戦闘車(IFV)が欲しいところだが、この森の中でそう言った車両を使うのは難しいだろう。できるなら森の中を開拓して道を作りたいところだが、そうする前に族長や他の部族たちからも許可を得る必要がありそうだ。

 

 というわけで、残念ながら歩兵の武装だけで何とかするしかない。

 

「これより、我々は魔物の迎撃に向かう。奴らにAK-15(カラシニコフ)の鉄槌をぶちかましてやれ」

 

「「「「「Ураааааааа!!」」」」」

 

 メニュー画面を出し、RPG-7を4丁用意する。それを4名の兵士に予備の弾薬と一緒に支給してから、今度はソ連製対戦車手榴弾の『RKG-3EM』を用意してから、それをさっきのRPG-7を支給された兵士以外の兵士たちに2つずつ支給する。

 

 このような対戦車手榴弾は現在では廃れており、高性能な対戦車ミサイルや無反動砲に取って代わられてしまっているが、この異世界では有効な装備の1つである。確かにロケットランチャーよりも射程距離は短く、戦車を撃破できるほどの破壊力はないものの、簡単に使う事ができるため、巨大な魔物にも大きなダメージを与える事ができる。

 

 なので、テンプル騎士団では強襲擲弾兵だけでなく、大型の魔物とも遭遇する恐れのある任務に参加する兵士にこれを2つずつ支給しているのだ。

 

 棒のついた古めかしい手榴弾をそのまま大型化したような形状の対戦車手榴弾を受け取った兵士たちが、それを腰のホルダーやポーチの中へと収めていく。俺も自分用の対戦車手榴弾をポーチの中へとぶち込むと、お気に入りのOSV-96を装備して背中に背負った。

 

 弾薬を14.5mm弾に変更しているため、攻撃力は向上していると言える。長距離狙撃用のスコープの上にはオープンタイプのドットサイトが乗っており、更にT字型マズルブレーキの下には折り畳み式のスパイク型銃剣が装着されている。ライフル本体の左斜め上にはソ連製のPEスコープが装着されており、中距離狙撃でも対処することが可能だ。

 

 銃身の下には折り畳み式のバイポッドとパームレストが装備されており、立った状態でも伏せた状態でも銃を極力揺らさずに狙撃ができるようにしてある。銃床には折り畳み式のモノポッドもあるので、伏せた状態での狙撃では極めて高い命中精度を誇る。

 

 色々と装備を付けてしまったので結構重くなってしまった。

 

 過保護なカスタマイズが施されたライフルを背負った俺は、息を吐いてから仲間たちに告げる。

 

「同志諸君―――出撃だ」

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。