異世界でミリオタが現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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転生者がトレーニングモードをするとこうなる

 

 基本的に、俺はいつもラウラと一緒に行動している。遊び相手はもちろんラウラだし、食事をする時もいつも隣にはラウラが座っている。訓練も一緒だし、風呂に入るのも一緒だ。寝る時は別々のベッドではなく、同じベッドで毛布をかぶりながら眠っている。

 

 だから、今の俺の隣ではラウラが可愛らしい寝顔で寝息を立てて眠っていた。

 

 彼女はもう俺と同じく6歳だ。そろそろ俺から離れ始めるんじゃないかと思いつつ一緒に行動しているんだが、彼女は全く俺から離れる気配がない。俺が外で遊ぼうとすると一緒について来るし、風呂に別々に入ろうとしても一緒に入るように誘われる。断れば、駄々をこねるか「弟なんだから、お姉ちゃんのいうことはきかないとだめなのっ!」と言っていつも威張り始める。

 

 確かに俺とラウラは同い年だ。それに母親が姉妹だから、姉弟というよりは双子に近い。

 

 ラウラはいつまで俺と一緒にいるつもりなんだろうか? さすがにいつまでも一緒にいるわけにはいかないだろう。彼女も彼氏を作って俺から離れる時がきっと来る筈だ。

 

 転生してからいつも一緒にいた同い年の姉がいなくなるのは寂しいかもしれないけどな。

 

 毛布の中から片手を出した俺は、俺よりも一足先に眠ってしまったラウラの頭を優しく撫でた。彼女の赤毛はふわふわしていて、その赤毛の下には短い角が生えている。親父からの遺伝らしく、親父にも似たような角が生えている。

 

「ふにゃ・・・・・・えへへ・・・タクヤぁ・・・・・・・・・」

 

「お・・・・・・」

 

 どうやら俺と一緒に遊んでいる夢を見ているらしい。

 

 彼女の頭からそっと手を離した俺は、部屋の中を見渡してから毛布の中に潜り込むと、左手を小さく突き出してメニュー画面を開き、生産をタッチして武器の確認を始めた。

 

 未だに俺のレベルは1だ。まだ俺は6歳だし、敵とも戦ったことはないから当たり前だろう。たまに親父が一緒に狩りに連れて行ってくれるが、鹿を狙撃してもレベルは全く上がる気配はない。

 

 おかげでポイントは全く溜まらないし、ステータスの数値も全く変わらない。ちなみにステータスはかなりシンプルで、攻撃力と防御力とスピードの3つしか存在しないんだ。スタミナなどのステータスもあるのかと思ったんだが、どうやらスタミナはステータスの中には含まれず、自分で鍛えなければならないようだ。この能力に頼りっきりになるのを防止するためなんだろうか?

 

 今の俺のステータスは3つとも100のままだ。親父も転生者ならば同じようにステータスがある筈なんだが、親父はどのくらいなんだろうか? 丸腰で熊を瞬殺するくらいだから、なんだか全部カンストしてそうな気がするんだが・・・・・・。

 

 恐ろしい親父だな。喧嘩できないじゃん。熊の腕を粉砕するくらいのパンチをぶっ放す男だから、あんな親父の拳骨を頭に喰らったら頭蓋骨が木端微塵になっちまいそうだ。反抗期は大変になりそうだぜ。

 

 下手したらあの親父の拳骨の威力は対戦車ライフル並みの威力があるんじゃないだろうか? 

 

 拳骨の威力を想像してビビった俺は、ステータスの画面を閉じてから、今度はトレーニングモードと表示されているところをタッチした。今まで一度もタッチしたことがないんだが、これは何なのだろうか? 

 

《トレーニングモードでは、様々なトレーニングや模擬戦を夢の中で行う事が可能です。ただし、肉体は眠っていますが疲労が抜けることはありませんので、このモードを睡眠の代わりにするのはおすすめしません》

 

 夢の中でトレーニングか。それならば射撃訓練みたいに親父から銃を借りて親に見守られながら訓練する手間がかからないな。便利なモードじゃないか。

 

 毛布の中からひょっこりと顔を出した俺は、ちらりとランタンの明かりの向こうに見える時計を見た。まだ午後9時だな。子供にとっては夜更かしかもしれないが、転生する前は12時を過ぎるまでゲームをやってたもんだ。全く問題ないぜ。

 

 どんなトレーニングができるのかとワクワクしながら、俺は再び毛布をかぶり、トレーニングモードをタッチする。

 

 すると俺の目の前からいきなりメニュー画面が消失し、猛烈な眠気が俺を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 真っ暗だった目の前が、いきなり蒼白い無数の光にこじ開けられる。あっという間にその光に制圧された暗闇の向こうに広がっていたのは、無数の蒼白い六角形の物体が浮遊する奇妙な世界だった。

 

 まるで分厚いガラスを六角形に削り出してつなぎ合わせたような足場の下には、蒼白い空間が続いているだけだ。この足場がぶっ壊れないか不安になった俺は、軽く何度か足場を踏みつけてみるが、まるで靴で分厚いコンクリートを踏みつけたような音が聞こえてくるだけだ。この下に落下するのは心配しなくていいらしい。

 

《トレーニングモードの起動を確認しました。どのトレーニングを行いますか?》

 

 いきなり目の前に出現するメッセージ。その下には、ずらりとどのようなトレーニングができるのか表示され始める。

 

 射撃や剣術だけでなく、魔術や必殺技などのトレーニングもできるようだ。銃をぶっ放す訓練をやろうと思った俺は真っ先に指を射撃訓練へと近付けようとしたが、一番下の方にあった『模擬戦』と、その上にあるカウンターの訓練が気になった。模擬戦はどんな事ができるんだろうか?

 

 試しに、伸ばしていた指で模擬戦をタッチする。

 

 すると、今度は『通常』と『ボス』の2つのメニューが表示される。

 

《模擬戦は、戦った事のある敵と戦う事ができるモードです。このモードではレベルが上がることはありませんが、ボスは撃破するとアイテムをドロップする可能性があります》

 

 ボスだって? もしかして、でっかいドラゴンや魔物と戦ったらここでもう一度戦う事ができるって事なのか? レベルが上がらないのは不便だが、アイテムがドロップするならばこれから何度かやることになるかもしれないな。

 

 どんな敵がボスに含まれるのかは分からないが、今のところ鹿しか倒していないから当然ながらボスはまだ倒したことがない。試しに通常と書かれているメニューをタッチしたが、敵の一覧の中に『鹿』と表示されているだけだった。

 

 鹿を倒しても訓練になるわけがない。しかも通常の敵はアイテムをドロップしないようだから、鹿を倒す意味は全くない。

 

 先ほどの画面に戻った俺は、今度はカウンターと書かれているメニューをタッチした。確か、生産できる必殺技や能力の下にもカウンターと書かれていたような気がする。

 

《カウンターは、相手の攻撃をガードか受け流した場合にのみ発動可能な必殺技です。通常の必殺技よりも威力が高いですが、相手の攻撃をガードしなければ発動できないため、使用するための難易度は高めです》

 

 なるほどね。相手の攻撃を受け流すかガードしなければ発動できないからリスクは高いが、うまくいけば一撃で敵を倒せる強力な技って事か。銃が使えるから接近戦はあまり考えなくてもよさそうだが、もし弾丸を弾いてしまうような強敵に接近されたら役に立つかもしれないな。

 

 一応訓練しておいた方が良いかもしれない。俺は目の前のメニューをタッチすると、カウンターのトレーニングを開始する。

 

 目の前のメニューがいきなり消失したかと思うと、勝手に俺の腰にサーベルが装備された。普通のサーベルなのかもしれないが、6歳の少年からすれば大剣のように長い。

 

 何とか鞘からサーベルを引き抜くと、今度は目の前にあった六角形の蒼白い床の1枚が盛り上がり、無数の蒼白い小さな六角形の粒で形成された奇妙な人形が、俺と同じデザインのサーベルを握った状態で出現した。

 

 どうやらこいつが訓練の相手のようだな。

 

《では、訓練を開始します。カウンターは『パリィ・アンド・ペイン』を装備してあります》

 

 確か、相手の攻撃をガードか受け流せば発動できるんだったな。

 

 目の前のメッセージが消失した直後、いきなり目の前の人形がサーベルを鞘から引き抜いた。そのまま引き抜いたばかりのサーベルを振り上げ、俺に向かって突っ走ってくる。

 

 トレーニングモードの筈だが、まるでサーベルを手にした騎士に襲い掛かられたような恐怖が滲み出し始める。だが、もしかしたら本当に武器を持った人間や魔物に襲われるかもしれない。ビビっている場合じゃないんだ。

 

 唇を噛み締めて恐怖を強引に黙らせた俺は、サーベルの柄をぎゅっと握ると、銀色の刀身を構え、人形が振り下ろしてきたサーベルに向かって俺のサーベルを振り上げた。

 

 刀身同士が激突する金属音。一瞬だけ火花が散り、サーベルを叩き付けられた衝撃が猛犬のように俺の小さな腕の中で暴れ回る。

 

 その瞬間、俺の頭の中に反撃する方法が浮かび上がってきた。そういえば、カウンターはもう装備されている筈だが、どのような攻撃なのか全く分からなかった。受け止めれば発動するらしかったんだが、勝手に発動するわけではないようだ。

 

 俺の頭に浮かんできたのは、剣をこのまま押し返してから相手の片足を蹴り飛ばして体勢を崩し、その隙に喉に切っ先を突き立てて止めを刺すというコンビネーションだった。技は思い浮かぶが、実行するか否かは俺が判断しなければならないらしい。

 

 これはカウンターの訓練だ。反撃しなければ全く意味はない。

 

 俺はこの人形を、思い浮かんだコンビネーションの通りに始末することを選んだ。

 

 思い切り刀身を押し上げ、人形が手にしている刀身を押し返す。何とかサーベルを押し返す事ができたが、すぐに次の攻撃を叩き込まなければもう一度あの剣戟が襲ってくることだろう。急いで次の攻撃を叩き込まなければならない。

 

 だが、剣を押し返されて体勢を崩している状態の相手が攻撃を繰り出すよりも、俺が相手の足を蹴り飛ばして再び体勢を崩す方が速いのは火を見るよりも明らかだ。

 

 左足を突き出し、人形の膝の辺りに蹴りをお見舞いする。六角形の蒼白い粒がこの人形を形成している筈だが、蹴った感覚は人間の足を蹴っているような感覚と全く変わらなかった。俺は叩き込んだ左足を更に押し込みつつ、右手のサーベルの切っ先を人形の喉へと合わせ始める。

 

 俺がサーベルを突き出す直前、人形の身体がぐらりと揺れた。俺の蹴りで体勢を崩され、せっかく準備されていた次の剣戟が台無しになる。

 

「はぁっ!!」

 

 人形の喉へと狙いを定めた俺は、サーベルの切っ先を人形の喉元へと向かって突き出した。

 

 蒼白い六角形の粒の集合体にめり込んだサーベルの切っ先が首の後ろまであっさりと貫通し、ぐらぐらとゆれていた人形の揺れがぴたりと止まる。鮮血の代わりに蒼白い光を傷口から放出しながら人形の身体が崩れ始め、再びその粒が足場へと沈んでいく。

 

 今のがカウンターか。

 

《以上で、カウンターの訓練は終了です》

 

 そのメッセージが表示された直後、俺の腰に装備されていたサーベルがいきなり消滅した。

 

 確かにこんなトレーニングならば、夢の中でのトレーニングでも疲労が抜けるわけがないな。まるで実際に現実で訓練をやった後のような疲れが俺に襲い掛かって来る。眠っている筈なんだが、このまま続ければむしろ疲れてしまうだろう。

 

 昼間は射撃訓練をやって、夜はこのトレーニングモードを活用しようと思ったんだが、そんなことをすれば俺が戦い方を身に着ける前に過労死しちまうな。

 

 とりあえず、今日はここで止めておこう。俺は左手を付きだ閉めてメニュー画面を開くと、トレーニングモードを終了することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクヤ、おきてー」

 

「う・・・・・・」

 

「タークーヤー! おきなさいっ!」

 

「ん・・・・・・ラウラぁ・・・・・・?」

 

 あれ? なんでラウラに起こされてるんだ? いつもは俺の方が早起きして、親父を見送ってからラウラを起こしている筈なんだが、今日は逆だな。もしかして寝坊しちまったのか?

 

 瞼をこすりながらゆっくりと起き上がると、両手を腰に当てて頬を膨らませた私服姿のラウラが立っていた。彼女は着替えだけ済ませたばかりなのか、いつもはふわふわしている赤毛がぼさぼさになっている。

 

「まったく・・・・・・。ほら、はやくごはん食べに行くわよ!」

 

「あ、ごめん・・・・・・」

 

「もう。いつもは逆なのに・・・・・・」

 

 そうだよな。いつも弟である俺が起こしてるんだもんな。しっかりしてくれ、お姉ちゃん。

 

 あくびをしながら起き上がった俺は、ラウラが鏡を見ながら髪型を整えている隙に素早く着替えを済ませると、ベッドの上の毛布をちゃんと直してから、ラウラと一緒に下のリビングへと向かう。

 

「いつもは早起きだけど、どうしたの?」

 

「いや・・・・・・どうしたんだろ?」

 

 まさか、トレーニングモードで訓練をやったせいなのか? あれをやったせいで疲労が更に増えて、いつも朝起きるのが遅いラウラよりも遅く目を覚ます羽目になっちまったんだろうか?

 

 拙いな。あのモードはほどほどにしないと、母さんにだらしがないぞって怒られちまう。

 

 ラウラに手を引かれてリビングへと向かうと、既にテーブルの上には人数分のスクランブルエッグとトーストが並んでいた。テーブルの椅子に一足先に腰を下ろしていたガルちゃんは、トーストにバターを塗るエリスさんの隣で牛乳を飲みながら新聞を広げている。

 

「む、タクヤ。今日は随分と起きるのが遅いのう?」

 

「ご、ごめんなさい・・・・・・」

 

「珍しいわね。我が家のしっかり者が寝坊なんて」

 

「夜更かししていたわけではないだろうな?」

 

「しっ、してないよ、お母さん!」

 

 そう言いながらいつものように席に着く。母さんはエプロンを外すと、俺の向かいの席に腰を下ろしてからトーストに手を伸ばし、バターを塗ってからトーストを齧り始めた。

 

 母さんとエリスさんは親父と一緒に傭兵をやっていたから、2人とも親父並みに強い筈だ。親父だけでなくこっちにも喧嘩を売るわけにはいかないな。母さんは毎朝素振りを欠かさない立派な剣士だし、エリスさんはかつてラトーニウス王国で『絶対零度』の異名を持っていた最強の騎士らしい。

 

 今度からトレーニングモードは、時間がある時に昼寝していると見せかけてやるようにしよう。下手したら母さんたちに怒られる。

 

 そう思った俺は、バターを塗ってからトーストを齧り始めた。

 

 

 

 

 

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